上の計算機で、遺産総額と法定相続人の数から相続税の目安が計算できます。以下では、基礎控除の決まり方・税率・早見表など、その計算のしくみを解説します(一般的な計算方法の説明であり、個別の税務相談ではありません)。
使い方と注意点
- 遺産の総額(正味の遺産額=課税価格の合計)を万円で入れます。生命保険金・死亡退職金があるときは「正味の遺産額を内訳から作る」を開くと、非課税枠を引いた額を入れられます。
- 配偶者・子・父母・兄弟姉妹の数を入れて「計算する」を押します。
結果は、相続税の総額と、配偶者が法定相続分を取得した場合の実際の納税額の2つです。この前提では、配偶者の税額は配偶者の税額軽減で0円になります(配偶者の税額軽減)。
相続人の順位
- 相続の順位は ①子(いなければその孫)→ ②父母(直系尊属)→ ③兄弟姉妹 の順です(民法887〜890条)。
- 子がいない場合だけ、父母・兄弟姉妹が相続人になります。子が1人でもいれば、父母・兄弟姉妹は相続人になりません(計算機の欄に入れても無視されます)。
- 基礎控除で数える法定相続人の数には、放棄と養子の決まりがあります(基礎控除)。
このツールは「目安」です。次の個別事情は反映していません。
- 小規模宅地等の特例(自宅の土地を最大8割減)
- 生命保険金・退職金の非課税枠(500万円×法定相続人の数)。上の「正味の遺産額を内訳から作る」で引いた額を入れることはできます
- 未成年者控除・障害者控除・相次相続控除
- 農地や自社株の納税猶予
- 相続時精算課税、生前贈与加算
実際の納税額は「配偶者が法定相続分を取得する典型的な分け方」を前提にした目安で、実際の分け方によって各人の負担は変わります。正確な税額は税理士や国税庁の「相続税の申告書等作成コーナー」で確認してください。
基礎控除は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」
相続税には「遺産に係る基礎控除」があり、正味の遺産額(課税価格の合計額)がこの額以下なら相続税はかかりません(相続税法15条・国税庁No.4102)。
基礎控除額 = 3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数
正味の遺産額がこの額以下なら、相続税はかからず、申告も不要です(国税庁No.4205)。
法定相続人の数ごとの基礎控除額は次のとおりです。
| 法定相続人の数 | 基礎控除額(ここまで相続税0円) |
|---|---|
| 1人(子1人だけ、配偶者だけ など) | 3,600万円 |
| 2人(配偶者と子1人 など) | 4,200万円 |
| 3人(配偶者と子2人 など) | 4,800万円 |
| 4人(配偶者と子3人 など) | 5,400万円 |
つまり「いくらから」の答えは家族構成で変わりますが、どんな構成でも3,600万円まではかからない(法定相続人が最低1人はいる前提)ということです。
基礎控除の「法定相続人の数」は、相続の放棄をした人がいても、その放棄がなかったものとした場合の人数で数えます(国税庁No.4152)。子が放棄しても基礎控除は減りません。また養子は、実子がいる場合は1人まで、実子がいない場合は2人までしか数に含められません。養子縁組を増やせば基礎控除が無制限に増える、とはならないようにする制限です。
家族構成別の早見表
正味の遺産額と家族構成ごとの「実際に納める相続税の合計」です(当サイトの相続税 計算機と同じ計算式で算出)。前提は「法定相続分どおりに分けた場合」で、配偶者の分は税額軽減(後の節)で0円になった後の金額です。小規模宅地等の特例など個別の特例は反映していません。
| 正味の遺産額 | 配偶者と子1人 | 配偶者と子2人 | 子1人だけ | 子2人だけ |
|---|---|---|---|---|
| 4,000万円 | 0円 | 0円 | 400,000円 | 0円 |
| 5,000万円 | 400,000円 | 100,000円 | 1,600,000円 | 800,000円 |
| 6,000万円 | 900,000円 | 600,000円 | 3,100,000円 | 1,800,000円 |
| 8,000万円 | 2,350,000円 | 1,750,000円 | 6,800,000円 | 4,700,000円 |
| 1億円 | 3,850,000円 | 3,150,000円 | 12,200,000円 | 7,700,000円 |
| 1億5,000万円 | 9,200,000円 | 7,475,000円 | 28,600,000円 | 18,400,000円 |
| 2億円 | 16,700,000円 | 13,500,000円 | 48,600,000円 | 33,400,000円 |
| 3億円 | 34,600,000円 | 28,600,000円 | 91,800,000円 | 69,200,000円 |
表を見比べると、同じ遺産額でも「配偶者がいるかどうか」で税額が大きく違うことが分かります。遺産1億円なら、配偶者と子2人で315万円、子1人だけなら1,220万円 — 約4倍の差です。これは基礎控除の人数差に加えて、後の節の配偶者の税額軽減が効いているためです。
「正味の遺産額」に何を数えるか
基礎控除と比べる「正味の遺産額」は、預貯金・不動産・株式などの遺産総額そのままではありません。足すものと引くものがあります(国税庁No.4102・No.4114・No.4161)。
| 項目 | ポイント | |
|---|---|---|
| 足す | 生命保険金・死亡退職金(みなし相続財産) | それぞれ「500万円×法定相続人の数」の非課税枠があり、超えた分だけを足す(相続人が受け取った場合) |
| 足す | 亡くなる前の一定期間内の贈与(生前贈与加算) | 暦年課税の贈与を、贈与時の価額で足し戻す(下の表の期間) |
| 引く | 債務・葬式費用 | 借入金・未払金・葬式費用は差し引ける |
| 引く | 非課税財産 | 墓地・仏壇など、そもそも課税されない財産 |
生前贈与加算は贈与税がかかったかどうかに関係なく行います。基礎控除110万円以下で贈与税が0円だった贈与も、加算対象期間内なら相続税の課税価格に足し戻します(国税庁No.4161)。なお、加算されるのは相続や遺贈で財産を取得した人が受けた贈与だけで、相続で何も取得しない人(たとえば相続人でない孫)への贈与は原則加算されません。
この生前贈与加算の期間は、令和5年度改正で3年から7年へ段階的に延長中です(国税庁No.4161)。
| 相続開始日(亡くなった日) | 足し戻す贈与の期間 |
|---|---|
| 〜令和8年12月31日 | 相続開始前3年以内 |
| 令和9年1月1日〜令和12年12月31日 | 令和6年1月1日から死亡の日まで |
| 令和13年1月1日〜 | 相続開始前7年以内(3年より前の分は総額100万円まで加算されない) |
超えたらいくら?計算は3段階
正味の遺産額が基礎控除を超えたら、超えた分(課税遺産総額)に対して相続税がかかります。ここで大事なのは、各人が実際に取得した財産に直接税率を掛けるのではないということです(国税庁No.4155が冒頭で明言しています)。計算は3段階です(国税庁No.4152)。
- 課税遺産総額を出す … 正味の遺産額 − 基礎控除額
- 相続税の総額を出す … 課税遺産総額を法定相続分で取得したと仮定して按分し(1,000円未満切り捨て)、各人分に速算表を当てて合計する(相続税法16条)
- 各人に割り振る … 相続税の総額を、実際に取得した財産の割合で各人に割り振り、配偶者の税額軽減・2割加算などを反映する
この仕組みのおかげで、同じ遺産額でも相続人が多いほど1人あたりの税率が下がり、相続税の総額は小さくなります。
2割加算: 配偶者・親・子・代襲相続人である孫 以外(兄弟姉妹など)が相続すると、その人の税額に2割が加算されます(相続税法18条)。
相続税の速算表(法定相続分に応ずる取得金額に当てる)
| 法定相続分に応ずる取得金額 | 税率 | 控除額 |
|---|---|---|
| 1,000万円以下 | 10% | 0円 |
| 1,000万円超 3,000万円以下 | 15% | 50万円 |
| 3,000万円超 5,000万円以下 | 20% | 200万円 |
| 5,000万円超 1億円以下 | 30% | 700万円 |
| 1億円超 2億円以下 | 40% | 1,700万円 |
| 2億円超 3億円以下 | 45% | 2,700万円 |
| 3億円超 6億円以下 | 50% | 4,200万円 |
| 6億円超 | 55% | 7,200万円 |
速算表を当てるのは「課税遺産総額を法定相続分で按分した額」であって、各人が実際に取得した金額ではありません。この仕組みのおかげで、遺産の分け方をどう変えても「相続税の総額」は変わらないようにできています(分け方で変わるのは各人への割り振りです)。実際にもらった額に速算表を直接当てると、分け方しだいで総額が変わる誤った計算になります。
国税庁No.4155の計算例(妻と子2人・課税遺産総額1億5,200万円 = 正味の遺産額2億円)で追うと次のとおりです。
正味の遺産額2億円・妻と子2人の場合(基礎控除4,800万円 → 課税遺産総額1億5,200万円)
妻(法定相続分1/2 = 7,600万円): 7,600万円 × 30% − 700万円 = 1,580万円
子(法定相続分1/4 = 3,800万円): 3,800万円 × 20% − 200万円 = 560万円(2人で1,120万円)
相続税の総額 = 1,580万円 + 560万円 + 560万円 = 2,700万円
この総額を、実際に取得した割合(法定相続分どおりなら妻1/2・子1/4ずつ)で割り振ると、妻1,350万円・子675万円ずつです。
法定相続分どおりに分けた場合、妻の分は配偶者の税額軽減で0円になり、実際に納めるのは子の675万円×2人 = 合計1,350万円です。
配偶者の税額軽減で大きく減る
配偶者が実際に取得した正味の遺産額のうち、「1億6,000万円」と「配偶者の法定相続分相当額」のどちらか多い金額までは、配偶者に相続税はかかりません(相続税法19条の2・国税庁No.4158)。
- 遺産が3億2,000万円までなら、配偶者が半分(法定相続分)を取得しても1億6,000万円以内 → 配偶者の税額は0円
- それを超える遺産でも、法定相続分までなら金額の上限なく配偶者は非課税
軽減を使った結果、納める税金が0円になる場合でも申告は必要です。
提出するのは、税額軽減の明細を記載した相続税の申告書です。遺言書の写しや遺産分割協議書の写しなど、配偶者の取得した財産が分かる書類を添えます(国税庁No.4158)。
申告期限までに分割されていない財産は軽減の対象になりません。「申告期限後3年以内の分割見込書」を添付して後から分割すれば、対象にできます。
もう1つ、教科書があまり書かない実務の注意点として、配偶者に寄せすぎると「二次相続」で子の負担が増えることがあります。配偶者が多く取得するほど今回(一次相続)の税額は減りますが、次にその配偶者が亡くなったとき(二次相続)は配偶者の税額軽減が使えず、基礎控除の人数も1人減った状態で、一次で寄せた財産にまとめて課税されます。目先の軽減だけで分け方を決めないことが大事です。
申告と納税は10か月以内
相続税の申告と納税は、被相続人が死亡したことを知った日(通常は死亡の日)の翌日から10か月以内です(国税庁No.4205)。たとえば1月6日に死亡した場合、その年の11月6日が期限です。期限が土日祝に当たるときは翌日(翌開庁日)が期限になります。
提出先は被相続人(亡くなった人)の住所地を所轄する税務署です。相続人(自分)の住所地の税務署ではありません。e-Taxでも提出できます。
期限までに申告しなかった場合や少なく申告した場合には加算税が、納税が遅れた場合には延滞税がかかることがあります。納税は金銭一括が原則ですが、相続税には延納(分割払い)・物納という特別な納税方法もあります(いずれも期限までに申請が必要)。
正味の遺産額が基礎控除以下なら申告不要 — この判定は小規模宅地等の特例などを適用する前の課税価格で行います(国税庁No.4205)。つまり「特例を使えば基礎控除以下になる」場合は、申告して特例の適用を受けることで初めて税額が0円になるのであって、黙って無申告でよいわけではありません。配偶者の税額軽減で0円になる場合も同じく申告が必要です。
よくある質問
相続税は、遺産がいくらからかかりますか?
正味の遺産額が基礎控除「3,000万円+600万円×法定相続人の数」を超えたときからです。法定相続人が1人なら3,600万円、2人なら4,200万円、3人なら4,800万円までかかりません。法定相続人が1人以上なら、3,600万円以下は基礎控除の範囲内です。法定相続人がいない場合の基礎控除は3,000万円です。
遺産が基礎控除以下なら、申告もしなくてよいですか?
原則不要です。取得した財産の価額の合計額が基礎控除の範囲内であれば、申告も納税も必要ありません(国税庁No.4205)。ただしこの判定は小規模宅地等の特例などを適用する前の金額で行うので、特例や配偶者の税額軽減を使って0円にする場合は、期限内の申告が必要です。
生命保険金も遺産に数えますか?
数えます。被相続人が保険料を負担していた死亡保険金は「みなし相続財産」として相続税の対象です。ただし相続人が受け取った場合は「500万円×法定相続人の数」の非課税枠があり、超えた部分だけを課税価格に足します(国税庁No.4114)。相続人以外の人が受け取った保険金には、この非課税枠はありません。
相続放棄をした人がいると、基礎控除は減りますか?
減りません。基礎控除の「法定相続人の数」は、放棄がなかったものとした場合の人数で数えます(国税庁No.4152)。たとえば妻と子2人のうち子1人が放棄しても、法定相続人の数は3人のままで、基礎控除は4,800万円です。
亡くなる前に贈与された財産も相続税の対象になりますか?
なります。相続や遺贈で財産を取得した人が、亡くなる前の一定期間内に被相続人から暦年課税の贈与で取得した財産は、贈与時の価額で相続税の課税価格に足し戻します。期間は、相続開始日が令和8年12月31日以前なら「相続開始前3年以内」、令和13年1月1日以後なら「相続開始前7年以内」です(途中の期間と100万円の扱いは正味の遺産額の表)。年110万円以下で贈与税がかからなかった贈与も加算対象です(国税庁No.4161)。
配偶者は1億6,000万円まで相続税がかからないと聞きました。本当ですか?
本当です。配偶者が実際に取得した正味の遺産額が「1億6,000万円」と「配偶者の法定相続分相当額」のどちらか多い金額までは、配偶者に相続税はかかりません(国税庁No.4158)。ただしこの軽減は相続税の申告をすることが条件で、申告期限までに分割されていない財産は対象になりません。また配偶者に寄せすぎると、次の相続(二次相続)で子の負担が増える点にも注意が必要です。
相続税の申告はいつまでですか?
被相続人が死亡したことを知った日(通常は死亡の日)の翌日から10か月以内です(国税庁No.4205)。1月6日に死亡した場合はその年の11月6日が期限です。提出先は被相続人の住所地を所轄する税務署で、相続人の住所地ではありません。期限に遅れると加算税・延滞税がかかることがあります。
出典
- 相続税法 第15条(遺産に係る基礎控除・法定相続人の数の数え方)・第16条(相続税の総額)・第18条(相続税額の2割加算)・第19条の2(配偶者に対する相続税額の軽減)、民法 第900条(法定相続分)— e-Gov法令検索
- 国税庁 タックスアンサー No.4102「相続税がかかる場合」— 基礎控除額の算式(3,000万円+600万円×法定相続人の数)、正味の遺産額の考え方、養子の算入制限(実子がいる場合1人・いない場合2人)、申告期限(死亡を知った日の翌日から10か月以内)
- 国税庁 タックスアンサー No.4152「相続税の計算」— 課税価格→課税遺産総額→法定相続分で按分(千円未満切捨て)→速算表→総額→実際の取得割合で割り振りという計算の順序、放棄がなかったものとした法定相続人の数、2割加算の対象
- 国税庁 タックスアンサー No.4155「相続税の税率」— 相続税の速算表(8区分)、実際に取得した財産に直接税率を乗じるのではないこと、計算例(妻と子2人・課税遺産総額1億5,200万円 → 妻1,580万円・子560万円×2 = 相続税の総額2,700万円)
- 国税庁 タックスアンサー No.4158「配偶者の税額の軽減」— 1億6,000万円と法定相続分相当額のいずれか多い金額まで非課税、申告書に取得財産が分かる書類を添えて提出すること、申告期限までに未分割の財産は対象外(3年以内の分割見込書)
- 国税庁 タックスアンサー No.4205「相続税の申告と納税」— 基礎控除の範囲内なら申告も納税も不要であること、その判定は小規模宅地等の特例等を適用しない場合の課税価格で行うこと、申告期限の例(1月6日死亡→11月6日)、提出先は被相続人の住所地の所轄税務署、延納・物納
- 国税庁 タックスアンサー No.4114「相続税の課税対象になる死亡保険金」— 非課税限度額(500万円×法定相続人の数)、相続人以外が取得した保険金に非課税の適用はないこと
- 国税庁 タックスアンサー No.4161「贈与財産の加算と税額控除(暦年課税)」— 加算対象期間(相続開始日が令和8年12月31日以前は3年以内・令和9年〜令和12年は令和6年1月1日以後・令和13年以後は7年以内)、3年より前の分は総額100万円まで加算されないこと、贈与税がかかったかどうかに関係なく加算すること
この記事は令和8年分の法令にもとづく一般的な情報であり、個別の事案に対する助言ではありません。相続税の額は、財産の評価(不動産・非上場株式など)や特例の適用可否、遺産の分け方によって大きく異なる場合があります。判断に迷う場合は、所轄の税務署または税理士にご確認ください。