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電子帳簿保存法をわかりやすく|義務は3区分のうち「電子取引」だけ

電子帳簿保存法の解説が難しく感じるのは、3つの制度をまとめて説明しているからです。3つのうちあなたに義務があるのは1つだけで、残りの2つは「やってもいい」という任意の制度にすぎません。ここを分けずに読むから、いつまでも自分が何をすべきか分からないのです。

結論から言うと、義務なのは「電子取引データ保存」だけです。メールやWebで受け取った請求書・領収書を、データのまま保存する。これだけです。

そして、よくある誤解を先に潰しておきます。紙で受け取った請求書をスキャンする義務はありません。紙は紙のまま保存して構いません。スキャナ保存は任意の制度です。

義務なのは3区分のうち1つだけ

電子帳簿保存法には3つの区分があります。このうち義務は「③ 電子取引データ保存」だけで、①と②は任意です。

電子帳簿保存法の3つの区分 ① 電子帳簿等保存 任意 会計ソフトで自分が作った 帳簿・決算書を データのまま保存する やらなくてよい 紙に印刷して保存でもOK ② スキャナ保存 任意 紙で受け取った 請求書・領収書を スキャンして保存する やらなくてよい 紙は紙のまま保存でOK ③ 電子取引データ保存 義務 メール・Webで 受け取った請求書・ 領収書などのデータ 法人・個人とも全事業者 データのまま保存する 条文の言い回しが違う ── 法4条・5条「…に代えることができる」/ 法7条「…保存しなければならない」
3区分のうち、義務は「電子取引データ保存」だけ。①②は「代えることができる」=任意の制度。

この違いは、法律の書きぶりにそのまま表れています。電子帳簿等保存(法4条1項・2項、5条)とスキャナ保存(法4条3項)は「その電磁的記録の保存をもって…の保存に代えることができると書かれています。できる=やってもよい、つまり任意です。

いっぽう電子取引(法7条)だけが「その電子取引の取引情報に係る電磁的記録を保存しなければならないと書かれています。ここだけが義務です。

いちばん多い誤解:「紙の請求書をスキャンしないといけない」 違います。紙で受け取ったものは、紙のまま保存して構いません。スキャナ保存(②)は、紙の保管をやめたい会社が自分の意思で選ぶ制度です。義務ではないので、要件を気にする必要すらありません。

「電子取引」とは何か(具体例)

では、義務である「電子取引」とは何か。法律の定義は「取引情報の授受を電磁的方式により行う取引」(法2条5号)ですが、これでは分かりません。具体例で覚えてください。

よくある電子取引保存するもの
メールに添付されたPDFの請求書・領収書添付ファイル(PDF)
メール本文に金額等が書かれている場合そのメール自体
Amazon・楽天などECサイトの領収書ダウンロードした領収書データ
Webサイトからダウンロードする請求書(携帯電話・クラウド等)ダウンロードしたPDF
クレジットカードのWeb明細明細データ
インターネットバンキングの振込取引年月日・金額・振込先名が分かるデータ(画面のPDF化でも可)
交通系ICカード・スマホアプリ決済の利用明細利用明細データ
クラウド請求書サービスでの受領そのデータ
EDI取引・ペーパーレスFAXそのデータ

ポイントは「請求書だけではない」ことです。注文書・契約書・送り状・納品書・見積書・領収書──紙でやりとりしていたら保存が必要になる書類が、データで届いたら、すべて対象です。水道光熱費や旅費交通費など、仕入以外の経費のものも含まれます。

ここが一番の実害:印刷して紙で保存するのはNG 2024年(令和6年)1月1日以後の電子取引については、データを印刷した書面で保存しても、電子データを保存したことにはなりません。もとのデータを消してしまうと、取り返しがつきません。
ただし、データをきちんと保存したうえで、経理の便宜のために紙にも印刷して綴じておくことは自由です(国税庁も明示的に問題なしとしています)。禁止されているのは「紙だけ」にすることです。

ちなみに、消費税だけは扱いが違います。消費税法上、保存が必要な電子データについては、書面に出力して保存することも引き続き認められています(保存の有無が税額計算に直結するため)。義務化されているのは所得税・法人税の保存義務者に対してです。とはいえ、法人税・所得税の側で義務がある以上、実務上は「データで残す」の一択です。

やることは2つだけ(改ざん防止・検索)

電子取引データを保存するときにやることは、大きく2つです(このほか、ディスプレイ・プリンタなど普通のパソコン環境の備付けが要りますが、通常は自動的に満たしています)。

請求書・領収書を受け取った どうやって届いた? 紙・郵送 紙のまま保存でOK スキャナ保存は任意 メール・Web 電子取引 = 義務 データのまま保存する ① 真実性の確保(改ざん防止) タイムスタンプ/履歴の残るシステム/事務処理規程 のどれか1つ ② 可視性の確保(検索できること) 取引年月日・取引金額・取引先 で検索できる(ファイル名 or 索引簿) ※ データで届いたものを印刷して、紙だけを保存するのは NG(データ自体を残すこと)
紙は紙のままでよい。データで届いたものだけが「電子取引」で、①改ざん防止と②検索の2つを満たして保存する。

① 真実性の確保(改ざん防止)── 無料でできます

次の4つのうち、どれか1つを満たせば足ります。

方法費用
タイムスタンプが付されたデータを受け取る相手次第
受け取ったデータにタイムスタンプを付す有料サービス
訂正・削除の履歴が残る(または訂正削除できない)システムで授受・保存する有料システム
訂正・削除の防止に関する「事務処理規程」を定めて備え付け、運用する無料

中小企業・個人事業者の現実的な答えは、いちばん下の「事務処理規程」です。国税庁がWordのサンプルを無料で配布しており、会社名・管理責任者名・保存年数などを埋めれば完成します(法人用と個人事業者用の2種類)。費用ゼロ、システム導入ゼロで、真実性の要件はこれで終わりです。

事務処理規程は「作って終わり」ではありません 要件は「定め、備え付け、運用する」ことです。作った規程は事業所に備え置き、電子取引データを扱う従業員に内容を周知してください。ファイルを勝手に消さない・上書きしない、という運用が実体として回っていることが前提です。

② 可視性の確保(検索できること)

保存したデータを、次の3項目で検索できる状態にしておきます。

専用システムは要りません。国税庁が示している方法は2つです。

  1. ファイル名に規則性を持たせる … 例:2026年7月8日にAmazonから受け取った8,978円の領収書 → 20260708_Amazon_8978.pdf(和暦・西暦はどちらでも可。ただし混在させないこと。混ざると検索できなくなります)
  2. 索引簿(一覧表)を作る … Excel等で「日付・金額・取引先」の一覧を作り、ファイル名(連番でも可)と対応づける

件数が少ないうちはファイル名だけでも回りますが、件数が増えると索引簿の方が圧倒的に楽です。金額の範囲検索や取引先ごとの絞り込みが表計算ソフトの機能でそのまま使えるためです。

無料ダウンロード:電子帳簿保存法の索引簿テンプレート(CSV・記入例つき) 取引年月日・取引先・取引金額・書類種別・保存ファイル名の列をそろえた索引簿テンプレート。Excel・Googleスプレッドシートでそのまま開けます(登録不要・無料)。書き方の解説と記入例つき。

検索要件は3段階で緩む(5,000万円以下の免除)

「検索できるようにする」と聞くと身構えますが、実際には3段階で緩みます。ほとんどの中小事業者は、いちばん下の段に落ちます。

あなたの状況必要な検索機能
原則 (1) 日付・金額・取引先で検索できる
(2) 日付・金額は範囲指定で検索できる
(3) 2つ以上の項目を組み合わせて検索できる
税務調査でダウンロードの求めに応じられるようにしている (1) だけでよい
((2)(3)は不要)
上記に加えて、
・基準期間の売上高が5,000万円以下
 または
・データを出力した書面を日付・取引先ごとに整理して提示・提出できる
検索機能はすべて不要

「ダウンロードの求めに応じる」とは、税務調査の際に調査担当者にデータのコピーを渡せるようにしておく、という意味です。普通にPCやクラウドにファイルを保存していれば満たせます。

5,000万円はどう数えるか(間違えやすい)

「検索要件が不要」=「保存しなくてよい」ではありません 検索要件が免除されても、電子取引データそのものの保存義務は残ります。データを消して紙だけ残す、はどの段階でもNGです。免除されるのは「探しやすくしておく」義務だけです。

2024年1月からの猶予措置(相当の理由)

ここが最も誤解されているところです。2つの措置がまぎらわしいので、分けて理解してください。

宥恕(ゆうじょ)措置
〜2023年12月31日の取引
猶予措置
2024年1月1日以後の取引
現在の扱い廃止済み現在も有効(期限の定めなし)
理由の要件「やむを得ない事情」相当の理由」を税務署長が認める
電子データの保存不要(紙だけでもよかった必須(データも保存する)
調査時に求められるもの出力書面の提示・提出出力書面の提示・提出 データのダウンロードの求めに応じること
事前申請不要不要

猶予措置に乗れば、改ざん防止も検索要件も不要になります。「データを消さずに保存しておく」だけでよい、という状態です。ただし――

猶予措置の落とし穴:紙だけの保存はもう認められません 2023年までの宥恕措置では「印刷した紙を保存しておけばよい」でした。2024年からの猶予措置では、電子データそのものの保存が必要です。データの保存に代えて出力書面のみを保存する対応は認められません(国税庁 取扱通達7-13)。
ここを勘違いして「猶予されているから紙でいい」と考えているケースが本当に多いのですが、それは2023年で終わった話です。

「相当の理由」とは何か

国税庁は具体例を示しています。要件どおりに保存するためのシステムや社内のワークフローの整備が間に合わないといった、環境が整っていない事情があればよく、パンフレットでは「人手不足」「システム整備の資金不足」「システム整備が間に合わない」も相当の理由として認められると明記されています。事前の届出も申請も不要です。

逆に、認められないのはこういうケースです。

つまり猶予措置は「これから対応する事業者のための時間稼ぎ」であって、対応を放棄した事業者の逃げ道ではありません。事情が解消したら、その後の取引には使えなくなります。

罰則の実際(青色取消・重加算税10%加重)

ここは煽られがちですが、正確に書きます。

青色申告の承認取消し ── 「対象となり得る」が「直ちに取消し」ではない

国税庁は明確にこう言っています。災害等のやむを得ない事情も税務署長が認める相当の理由もなく、要件に従って保存していない場合は、青色申告の承認の取消対象となり得ます。データの保存に代えて書面出力していた場合も同じです。

一方で、同じ回答の中でこうも言っています。「青色申告の承認の取消しについては、違反の程度等を総合勘案の上、真に青色申告書を提出するにふさわしくないと認められるかどうかを検討した上、その適用を判断しています」。事務運営指針に基づく判断であり、要件違反があったことをもって直ちに必ず行われるものではないと明記されています。

実際、従業員の立替経費について電子データが適正に保存されず出力書面だけが残っていた、という事実「のみ」をもって、直ちに青色申告の承認が取り消されたり、その支出がなかったものと判断されたりはしない、とも書かれています。

とはいえ、過小評価もしないでください 「直ちに取り消されない」のは取消しの話であって、保存義務がなくなるわけではありません。要件を満たさず保存されたデータや出力書面は「国税関係書類以外の書類」とみなされないとされ、申告内容の適正性は追加の説明・資料提出・取引先への確認で個別に検証されることになります。「証拠として当然に通る」状態ではなくなる、ということです。

重加算税の10%加重 ── こちらは実弾です

電子取引データに関連して隠蔽・仮装が行われた場合、重加算税が10%加重されます(法8条5項)。具体的には、データを削除・改ざんして売上を除外した、経費を水増しした、保存データの内容が取引実態を表していない(架空取引)といったケースです。データは紙より改ざんの痕跡が残りにくい、という理由で重くされています。

ここで押さえるべきなのは、「うっかり要件を満たしていなかった」ことに対する罰金ではないという点です。加重されるのは不正をした場合です。要件不備と不正は、まったく別の話です。

踏み込んだ一段:2027年から「10%加重の対象外」になる制度が始まります

令和7年度税制改正で、請求書等の電子取引データを自動で保存し帳簿に自動連携する仕組み(デジタルシームレス)に対応した制度が新設されました。国税庁長官が定める基準に適合するシステムを使い、規則第5条第5項の要件を満たして送受信・保存している電子取引データについては、重加算税の10%加重の対象から除外され、あわせて青色申告特別控除65万円の適用も受けられます。
適用は重加算税の除外が令和9年(2027年)1月1日以後に法定申告期限が到来する国税から青色申告特別控除は令和9年分以後の所得税からです。あらかじめ届出書の提出が必要で、ディスプレイ・プリンタの備付けと検索要件も満たしている必要があります。今は準備期間ですが、システム選定を控えている会社は頭に入れておく価値があります。

Amazonの領収書をどうするか

実務でいちばん詰まるのがここです。Amazonや楽天での購入は、まぎれもなく電子取引です。件数が多く、しかも1件ずつ注文履歴を開いて領収書を確認する必要があるため、索引簿づくりが苦行になります。

「Amazonのサイトで見られるんだから、ダウンロードしなくてもいいのでは?」と考える人は多く、実は国税庁もそれを認めています。ECサイト上でその領収書データを随時確認できる状態であれば、必ずしもダウンロードして保存しなくても差し支えない、とされています。ただし条件があります。

ダウンロード不要の条件(ここを読み飛ばすと危険) ① そのECサイト側が、あなたが満たすべき真実性の確保と検索機能の確保の要件を満たしていること。
各税法に定められた保存期間が満了するまで(法人は原則7年、欠損金が生じた事業年度は10年)、そのサイト上で領収書データを確認できる状態が続くこと。
② を満たせるかどうかは、ECサイト側の都合です。Amazonの注文履歴が7年後も同じ形で参照できる保証は、どこにもありません。手元にデータを落として索引簿を作っておくのが、確実で安上がりな対応です。

とはいえ、注文履歴を1件ずつ開いて日付・金額・注文番号を転記する作業は、件数がそのまま時間になります。しかもAmazonの注文履歴は、キャンセルした注文も同じ見た目で並んでいるサブスクなど金額がページ上に表示されない注文がある——と、機械的にコピーするだけでは正しい索引簿になりません。

Chrome拡張:アマゾン領収書・電帳法索引簿メーカー Amazonの注文履歴を開いて1クリック。取引年月日・取引先・取引金額・注文番号の索引簿CSVを自動生成します。キャンセル注文は自動で除外、金額が表示されない注文は領収書ページから自動補完。処理はすべてブラウザ内で完結し、注文データは外部に送信されません。無料で使えます(全ページ自動巡回・領収書の一括保存はPro版)。
まとめ:やることはこれだけ
  • 紙で来たものは紙のまま。スキャンは任意(やらなくてよい)
  • データで来たものはデータのまま保存。印刷して紙だけにするのはNG
  • 改ざん防止は「事務処理規程」を作れば無料で済む(国税庁がサンプル配布)
  • 検索は「日付_取引先_金額」のファイル名か、索引簿(一覧表)で足りる
  • 売上5,000万円以下(2年前)なら、ダウンロードの求めに応じられることを条件に検索要件はすべて不要
  • 間に合わないなら猶予措置。ただしデータは必ず残す

よくある質問

Q. 紙でもらった請求書は、スキャンしてデータで保存しないといけませんか?

A. いいえ、不要です。紙は紙のまま保存して構いません。スキャナ保存は「保存に代えることができる」と書かれた任意の制度で、義務ではありません。義務なのは、メールやWebでデータとして受け取ったもの(電子取引)だけです。

Q. メールで届いたPDFの請求書を印刷して、紙のファイルに綴じています。これではダメですか?

A. 紙だけを残してPDFを消しているならNGです。2024年1月1日以後の電子取引は、データそのものの保存が必要で、出力書面での保存に代えることはできません。ただし、データをきちんと保存したうえで、経理の便宜のために紙にも印刷して綴じておくことは問題ありません。

Q. 検索要件が免除されるのは、売上いくらまでですか?

A. 基準期間(個人は前々年、法人は前々事業年度)の売上高が5,000万円以下で、税務調査の際にデータのダウンロードの求めに応じられるようにしている場合は、検索機能の確保がすべて不要になります。この「売上高」は消費税の課税売上高とは異なり非課税売上を含む点に注意してください(営業外収益・特別利益は含みません)。基準期間のない新規開業者・新設法人は、初年度と2年目は検索要件が不要です。

Q. 事務処理規程はどこで手に入りますか? 自分で書くのですか?

A. 国税庁がWordのサンプルを無料で配布しています(「参考資料(各種規程等のサンプル)」のページに、法人用と個人事業者用の2種類があります)。会社名・管理責任者・保存年数などを埋めれば使えます。作成後は事業所に備え付け、データを扱う従業員に周知して、規程どおりに運用してください。

Q. 対応できていないと、すぐに青色申告が取り消されますか?

A. 取消しの対象にはなり得ますが、直ちに必ず取り消されるわけではありません。国税庁は「違反の程度等を総合勘案の上、真に青色申告書を提出するにふさわしくないと認められるかどうかを検討して判断する」としています。ただし猶予措置に乗るには電子データそのものの保存が必要なので、受け取ったデータを消さないことが最優先です。

Q. Amazonの注文履歴はサイト上で見られるので、ダウンロードしなくてよいのでは?

A. 条件つきでは認められますが、実務上はダウンロードするのが安全です。ECサイト上で領収書データを随時確認できる状態なら必ずしもダウンロード不要とされていますが、それはサイト側が真実性・検索の要件を満たしていること、かつ保存期間(法人は原則7年)が満了するまで確認できる状態が続くことが前提です。ECサイト側の仕様変更で過去分が見られなくなるリスクは自分では制御できないため、手元にデータを落として索引簿を作っておくことをおすすめします。

出典

本記事は一般的な情報提供を目的としたものです。個別の判断は税務署または税理士にご確認ください。