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インボイス制度とは?わかりやすく3行で|買い手の控除と売り手の負担

インボイス制度を3行で
  • インボイス制度とは、「支払った消費税を差し引くための、請求書の様式ルール」です。
  • 登録番号(T+13桁)が書かれた請求書がないと、本則課税の買い手は仕入税額控除に制限を受けます。
  • 影響を受けるのは、本則課税の買い手(控除できる額)と、登録して課税事業者になる免税の売り手(申告・納税)です。売り手には、価格交渉などの影響が生じる場合もあります。

登録番号のない相手からの仕入れでも「80%は差し引ける」という経過措置は、2026年9月30日で終わります。10月1日からは70%です。2割特例は、その日を含む課税期間まで適用されます(個人事業者は令和8年分まで)。この記事では、その期限を軸に、立場別に何をすればいいかを整理します。

制度の中心にいるのは、請求書を受け取る側(買い手)です。買い手は、売上で預かった消費税から「仕入れで支払った消費税」を差し引いて納税します(仕入税額控除)。この差し引きの証拠として認められる書類が、インボイス(適格請求書)です。

本則課税の買い手は、保存要件を満たさなければ原則として控除できません。少額特例や公共交通機関等のように帳簿のみで控除できる取引は別です。簡易課税では、仕入先の登録有無で税額は変わりません。

仕組み: なぜ買い手が損をするのか

数字で見ると一瞬でわかります。110万円(税込)の外注費を払った買い手の納税額を比べます(売上は税込1,100万円)。

相手が登録事業者
(インボイスあり)
相手が免税事業者
(インボイスなし・2026年9月まで)
相手が免税事業者
(2026年10月から)
売上で預かった消費税100万円100万円100万円
差し引ける消費税10万円(全額)8万円(80%)7万円(70%)
納める消費税90万円92万円93万円

※ 計算の前提:一般課税・標準税率10%で、課税売上高5億円以下かつ課税売上割合95%以上。保存要件等を満たし、経過措置以外の控除制限や中間納付・返還等の調整はないものとします。

本則課税では、同じ110万円の支払でも相手の登録や経過措置・保存要件によって買い手の仕入控除額が変わる場合があります。売り手は1円も損していません。これがインボイス制度の本質です。売り手(免税事業者)が「登録しないと仕事が減る」と言われるのは、買い手のこの2万円・3万円を、誰が負担するのかという交渉が起きるからです。

立場別の判定フロー(あなたは何をすればいい?)

「インボイス制度への対応」は、立場によってやることがまったく違います。まず自分がどこにいるかを確かめてください。

その取引で、あなたは? 請求書を「出す」側=売り手 請求書を「受け取る」側=買い手 消費税を納めている(課税事業者)? 受け取った請求書に登録番号がある? はい いいえ ある ない 課税事業者 ・登録して番号を  請求書に印刷 ・端数処理は税率  ごとに1回だけ → 登録だけで税額は決まらない 免税事業者 ・登録する/しない  を選べる ・登録すると納税が  発生する → 2割は9/30を含む課税期間まで 登録番号あり ・要件を満たす税額を  控除(全額とは限らない) ・請求書を7年保存 → 記載確認と帳簿・書類の保存 登録番号なし ・差し引けるのは  80%(〜26/9/30)  70%(26/10/1〜28/9/30) ・帳簿に経過措置の  対象である旨を記載 ただし「少額特例」が使えるなら 税込1万円未満は、番号がなくても 全額控除(令和11年9月30日まで) 買い手の控除額と、登録する売り手の納税負担に影響。 免税の売り手が登録して課税となれば、申告・納税も必要
立場別の判定フロー。売り手側の分岐は「登録するか」、買い手側の分岐は「番号があるか」で、悩みどころがまったく違う。

インボイス(適格請求書)に必要な6項目

様式は決まっていません。手書きや「納品書」という名称でも、通常の適格請求書は次の6項目を満たせば使えます。小売・飲食・タクシー等の適格簡易請求書は宛名不要で、適用税率と消費税額等はいずれか一方の記載で足ります。

  1. 適格請求書発行事業者の氏名又は名称 及び登録番号
  2. 取引年月日
  3. 取引内容(軽減税率の対象品目である旨)
  4. 税率ごとに区分して合計した対価の額(税抜き又は税込み)及び適用税率
  5. 税率ごとに区分した消費税額等
  6. 書類の交付を受ける事業者の氏名又は名称

登録番号は、法人番号のある課税事業者は「T+法人番号」、個人事業者などは「T+13桁の数字」です。請求書と納品書のように複数の書類を合わせて6項目を満たしてもかまいません。書類相互の関連が明確で、対象取引を正確に認識できることが条件です。

80%は2026年9月30日まで、10月1日から70%

いま経理がやるべきことは1つです。2026年10月1日以後の課税仕入れから、会計ソフトの税区分を「80%控除」から「70%控除」へ切り替えること。帳簿に控除割合を記載している場合、その印は「80%控除対象」から「70%控除対象」に変わります(記号「※」+欄外に「※は70%控除対象」といった方式も認められます)。切替を忘れると、控除しすぎ=過少申告になります。

ここが、古い記事といちばん差が出るところです。2026年(令和8年)3月の税制改正で、経過措置のスケジュールが書き換わりました。

改正前は「80%(3年)→ 50%(3年)→ 0%」の6年間でした。改正後は適用期限が2年延長され、「80% → 70% → 50% → 30% → 0%」の5段階になっています。

期間免税事業者からの仕入れで控除できる割合
令和5年10月1日 〜 令和8年9月30日80% ← 2026年9月30日までここ
令和8年10月1日 〜 令和10年9月30日70%
令和10年10月1日 〜 令和12年9月30日50%
令和12年10月1日 〜 令和13年9月30日30%
令和13年10月1日 〜0%(控除できない)
80% 3年間 70% 2年間 50% 2年間 30% 0% 控除なし 〜2026年9月30日 80%は2026年9月30日まで R5.10 R8.10 R10.10 R12.10 R13.10 2026/10/1 2031/10/1
免税事業者等からの課税仕入れに係る経過措置(令和8年度税制改正後)。国税庁「インボイスQ&A」問113(令和8年4月改訂)の表に基づく。
踏み込んだ一段: 「1億円の上限」が新設されました(見落とされがち) 令和8年10月1日以後に開始する課税期間から、一の免税事業者等からの課税仕入れの合計額が、その年(事業年度)で税込1億円を超える場合、超えた部分にはこの経過措置を適用できません(改正前は10億円)。免税事業者に外注が集中している事業者は、相手先ごとの年間集計を持っておく必要があります。

売り手(免税事業者): 2割特例の終了と3割特例

インボイス制度を機に免税事業者から課税事業者になった人は、納税額を「売上税額の2割」にできる2割特例を使ってきました。これが終わります。

2割特例3割特例(新設)
納める消費税売上税額の2割売上税額の3割
対象個人事業者・法人個人事業者のみ
使える期間令和5年10月1日から令和8年9月30日までの日の属する課税期間まで令和9年分・令和10年分の申告
個人事業者の場合令和8年分(2026年分)が最後令和9年分・令和10年分の2回
12月決算法人の場合令和8年12月期が最後使えない
手続き事前の届出は不要。確定申告書に「適用を受ける旨」を付記するだけ

※ どちらの特例も、登録等がなければ免税となる課税期間に限ります。基準期間・特定期間の売上等や課税期間の短縮などで、使えない課税期間があります(2割特例の対象にならない課税期間)。

法人にとっては「崖」です

3割特例は個人事業者だけの制度です。12月決算の小規模法人は、令和8年12月期を最後に2割特例が使えず、令和9年12月期からは2割特例も3割特例も使えません。

原則課税(一般課税)か簡易課税かを比較して選びます。直前期に2割特例を適用した場合は、簡易課税の届出期限に下の特例があります。

簡易課税の届出は「翌課税期間の申告期限」まで

そのための救済も同じ改正で入りました。「1年やってみてから決める」ことができる、実務的にありがたい改正です。

買い手の実務: 少額特例と帳簿の書き方

買い手にとって、いちばん効くのが少額特例です。しかも2026年10月以後は、これがあるかどうかで手間が大きく変わります。

少額特例(税込1万円未満はインボイス不要)
  • 使える人: 基準期間の課税売上高が1億円以下、または特定期間の課税売上高が5,000万円以下の課税事業者
  • 効果: 税込1万円未満の国内の課税仕入れは、インボイスの保存が不要。一定事項を書いた帳簿の保存だけで全額控除できる
  • 相手が免税事業者でも同じ。つまり80%(70%)計算そのものが要りません
  • 期限: 令和5年10月1日 〜 令和11年(2029年)9月30日までに行う課税仕入れ
  • 例外: 金・白金の地金は、相手方の本人確認書類の保存も必要
1万円未満は「1回の取引」で判定します(商品ごとではない) 5,000円の商品と7,000円の商品を同時に購入した場合、合計12,000円なので少額特例の対象外です。「1つ1つが1万円未満だからOK」ではありません。

少額特例の「基準期間」と「特定期間」

個人事業者法人
基準期間(1億円以下)前々年原則として前々事業年度
特定期間(5,000万円以下)前年1〜6月原則として前事業年度開始後6か月

少額特例のほかにも、公共交通機関特例など、帳簿のみで仕入税額控除できる取引があります。

期限の切れ方にも罠があります。少額特例は「課税仕入れを行った日」で判定するため、課税期間の途中でも令和11年10月1日以後の仕入れは対象外になります。12月決算法人が本則課税で、少額特例以外の保存免除もない取引をする場合、令和11年10月1日以後の仕入れはインボイス等の保存が必要です。

経過措置を使うときの帳簿の書き方

登録番号のない請求書で80%(10月からは70%)控除を受けるには、帳簿と請求書の両方が要ります。

無料ツール:消費税・端数処理 計算機 インボイスの消費税額は「一の請求書につき、税率ごとに1回」しか端数処理できません(明細ごとに端数処理して合計するのは認められません)。税率ごとの処理と明細ごとの処理を比較する際に利用できます。

返還インボイス: 振込手数料は1万円未満なら不要

インボイス制度の開始時、経理の現場をいちばん騒がせたのが「振込手数料を先方負担にしたら、売り手が返還インボイスを出さないといけないのか」という問題でした。

結論は「出さなくてよい」です。値引き(売上に係る対価の返還等)の金額が税込1万円未満なら、返還インボイスの交付義務は免除されます。振込手数料は通常440円程度なので、まず該当します。

その「440円程度」は、銀行と振込経路(ATM・窓口・インターネットバンキング)で変わります。実額は銀行別 振込手数料 一覧で比較しています。

国税庁の例 500,000円の請求に対し、買い手が振込手数料相当額440円を差し引いた499,560円を支払い、売り手が440円を「対価の返還等」として処理する場合
→ 値引き額が1万円未満なので、適格返還請求書の交付は不要

この免除は恒久措置です。適用期限も、対象者の規模の制限もありません(少額特例が令和11年9月30日で切れるのとは違います)。ここは混同しやすいので注意してください。

ただし売り手側の処理には分岐があります。振込手数料相当額を「売上値引き」として処理しない場合は、次の点に注意してください。

差引額そのものの計算(3万円の壁・差引前基準/差引後基準)は、別記事で詳しく扱っています → 振込手数料の先方負担|差引額の計算「3方式」と仕訳・インボイス対応

よくある勘違い(落とし穴)

よくある勘違い正しくは
免税事業者は消費税を請求してはいけない違います。免税事業者も税込価格で請求できます。できないのは「インボイスの交付」だけです
インボイスがないと経費にできない違います。法人税・所得税の経費(損金・必要経費)にはなります。影響を受けるのは消費税の仕入税額控除だけです
登録すれば必ず得違います。免税の売り手が登録して課税事業者になれば、売上先が消費者や免税事業者でも申告・納税の対象になります
相手が免税事業者だから消費税分は払わない危険です。再交渉が形式的で、買い手の都合だけで著しく低い価格を設定すると優越的地位の濫用(独占禁止法)、取適法の対象取引なら買いたたきとして問題になります(財務省・公正取引委員会等の共同Q&A)
簡易課税ならインボイスの保存は要らないそのとおりです。簡易課税・2割特例・3割特例は売上から納税額を計算するので、仕入側のインボイス保存は要りません(ただし自分が売り手として交付する義務は残ります)
登録をやめたい人へ(期限に癖があります)

2割特例の終了を機に登録をやめるなら、「適格請求書発行事業者の登録の取消しを求める旨の届出書」を、やめたい課税期間の初日から起算して15日前の日までに出します。

  • 例: 個人事業者が令和9年分から免税に戻るなら令和8年12月17日まで。この日が土日祝でも翌日に延長されません。
  • 遅れた場合: 1日でも遅れると、効力を失うのは翌々課税期間の初日になります。
  • 戻れない期間: 免税事業者が登録に係る経過措置で、令和5年10月1日を含む課税期間より後に登録した場合、登録日以後2年を経過する日の属する課税期間まで免税に戻れません。

よくある質問

インボイス制度で、結局いちばん損をするのは誰ですか?

本則課税の買い手です。仕入控除額が減る場合があります。少額特例等を使わない場合、登録番号のない請求書では原則全額控除できません(経過措置で2026年10月1日〜2028年9月30日は70%。同一未登録者ごとの限度あり)。簡易課税・2割特例の買い手や消費者・免税事業者には、この納税増はありません。免税のままの売り手に登録による納税は生じませんが、価格交渉などの影響を受ける場合があります。

免税事業者のままだと、取引を切られますか?

取引条件は当事者の自主的判断が原則です。ただし、再交渉が形式的で、優越的地位にある買い手の都合だけで著しく低い価格を設定することは、優越的地位の濫用として独占禁止法上問題になります。取適法の対象取引では「買いたたき」に当たるとされています(財務省・公正取引委員会等の共同Q&A、最終改正 令和8年1月30日)。

登録番号がない請求書を受け取ってしまいました。どうすればいいですか?

捨てずに保存してください。経過措置により2026年9月30日までの仕入れは80%、2026年10月1日から2028年9月30日までの仕入れは70%を控除できます(同一未登録者ごとの仕入限度内。その後の割合は経過措置の表)。そのためには帳簿に「80%控除対象」(10月以後は「70%控除対象」)などと記載し、区分記載請求書と同じ内容の請求書を保存する必要があります。税込1万円未満の課税仕入れは、少額特例を使える事業者なら、一定事項を記載した帳簿だけで全額控除できます。

2割特例が終わったあと、個人事業者はどうなりますか?

令和9年分・令和10年分は「3割特例」(納税額=売上税額の3割)を使えます。事前の届出は不要で、確定申告書にその旨を付記します。使えない課税期間もあります。令和11年分からは3割特例も使えないため、原則課税か簡易課税を選ぶことになります。直前の令和10年分に3割特例等を適用していれば、簡易課税の届出は、令和11年分の申告期限である令和12年4月1日までに提出すれば間に合います。

法人は3割特例を使えますか?

使えません。3割特例は個人事業者だけの制度です。法人は令和8年9月30日までの日の属する課税期間(12月決算なら令和8年12月期)で2割特例が終わり、その後は原則課税か簡易課税になります。

振込手数料を差し引かれたとき、返還インボイスは必要ですか?

不要です。税込1万円未満の売上に係る対価の返還等は、返還インボイスの交付義務が免除されます。振込手数料相当額(440円など)はまず1万円未満なので該当します。この免除に適用期限や事業者規模の制限はありません。ただし、その手数料を「売上値引き」ではなく「課税仕入れ」として処理する場合は、少額特例など帳簿のみで控除できる場合を除き、金融機関等のインボイス等の保存が原則必要です。

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出典

国税庁「インボイス制度特設サイト」「インボイスQ&A(令和8年4月改訂)」に基づいて作成。

本記事は一般的な情報提供を目的としたものです。個別の判断は税務署・税理士にご確認ください。

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