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雇用保険料率【令和8年度】5/1,000へ引き下げ|労使折半でない理由

結論から言うと、令和8年度(2026年4月1日〜2027年3月31日)の雇用保険料率は、一般の事業で 13.5/1,000。うち労働者の負担は 5/1,000事業主の負担は 8.5/1,000 です。前年度(令和7年度)の 14.5/1,000(労働者 5.5/1,000)から引き下げられました。月給30万円の人なら、天引きされる雇用保険料は月1,500円です。

ここで多くの人が引っかかるのが、労働者と事業主の負担が同じでないことです。健康保険も厚生年金も「労使折半」なのに、雇用保険だけは会社のほうが 3.5/1,000 だけ多く払っています。これは会社が親切だからでも、労働者が優遇されているからでもありません。この差額は、そもそも労働者のための給付に使われないお金だからです。

そしてもう一つ、給与計算で必ず間違えるポイントがあります。雇用保険料は標準報酬月額にかかりません。健康保険・厚生年金が等級表を使うのに対し、雇用保険は賃金総額(総支給額)そのものにかかります。同じ等級の2人でも、雇用保険料は違う額になります。

令和8年度の雇用保険料率(一覧)

厚生労働省「令和8年度 雇用保険料率のご案内」による、令和8年4月1日から令和9年3月31日までの料率です。カッコ内は令和7年度の率です。

事業の種類労働者負担事業主負担雇用保険料率(合計)
一般の事業5/1,000
(令和7年度 5.5/1,000)
8.5/1,000
(令和7年度 9/1,000)
13.5/1,000
(令和7年度 14.5/1,000)
農林水産・清酒製造の事業6/1,000
(令和7年度 6.5/1,000)
9.5/1,000
(令和7年度 10/1,000)
15.5/1,000
(令和7年度 16.5/1,000)
建設の事業6/1,000
(令和7年度 6.5/1,000)
10.5/1,000
(令和7年度 11/1,000)
16.5/1,000
(令和7年度 17.5/1,000)

健康保険料率は都道府県で変わり、業種では変わりません。雇用保険料率はその逆で、業種で変わり、都道府県では変わりません。全国どこでも同じ率です。

「農林水産」でも一般の事業の率になることがある

厚生労働省の案内には注が付いていて、園芸サービス、牛馬の育成、酪農、養鶏、養豚、内水面養殖、および特定の船員を雇用する事業については、農林水産の率ではなく一般の事業の率(13.5/1,000)が適用されます。名前で判断すると料率を間違えます。

なぜ労使折半ではないのか — 差の3.5/1,000の正体

一般の事業で、労働者が 5/1,000、事業主が 8.5/1,000。差は 3.5/1,000 です。この差額は 「雇用保険二事業」 と呼ばれる部分で、事業主だけが負担します

雇用保険二事業とは、雇用保険法62条の雇用安定事業と、63条の能力開発事業のことです。62条を読むと、その中身は「事業活動の縮小を余儀なくされた場合において、労働者を休業させる事業主……に対して、必要な助成及び援助を行うこと」——つまり雇用調整助成金のような、事業主に対する助成金です。63条は職業訓練の振興で、これも助成の相手は事業主等です。

会社が受け取る助成金の原資なので、会社だけが払う。雇用保険料の非対称は、ここから来ています。労働者が受け取る失業手当(失業等給付)や育児休業給付の部分は、きちんと労使で半分ずつです。

雇用保険料率 13.5/1,000(一般の事業・令和8年度)の内訳 失業等給付・育児休業給付 10/1,000 ← 労働者に給付されるもの 雇用保険二事業 3.5/1,000 労使で折半する 折半しない 労働者 5/1,000 事業主 5/1,000 事業主 3.5/1,000 労働者の負担 = 5/1,000 事業主の負担 = 5 + 3.5 = 8.5/1,000
差の3.5/1,000は「雇用保険二事業」(雇用調整助成金などの財源)。事業主向けの助成金の原資なので、事業主だけが負担する。

法律は「5/1,000」と書いていない — 引いてから半分にする

ここが、会計ソフトのブログがまず書かない一段です。労働保険徴収法のどこを探しても、「労働者の負担は5/1,000」とは書いてありません。法律が書いているのは計算の順序だけです。

労働保険徴収法 31条1項1号(労働保険料の負担)
次の各号に掲げる被保険者は、当該各号に掲げる額を負担するものとする。
一 第十二条第一項第一号の事業に係る被保険者 イに掲げる額からロに掲げる額を減じた額の二分の一の額
 イ 当該事業に係る一般保険料の額のうち雇用保険率に応ずる部分の額
 ロ イの額に相当する額に二事業率を乗じて得た額

つまり「イ(雇用保険の分)から ロ(二事業の分)を引いて、その半分」。二事業を抜いてから折半すると、法律が明示しているわけです。

この「二事業率」の定義が、少し離れた 12条6項 にあります。

労働保険徴収法 12条6項(抜粋)
……当該一般保険料徴収額に二事業費充当徴収保険率を雇用保険率で除して得た率(第三十一条第一項において「二事業率」という。)を乗じて得た額……

二事業率は「3.5/1,000」そのものではなく、「3.5 ÷ 13.5」という比率です。ここを読み飛ばして 3.5/1,000 を代入すると、答えが桁違いになります。順に当てはめると、賃金をW円として:

= W × 13.5/1,000
= イ × 二事業率 = W × 13.5/1,000 × (3.5 ÷ 13.5) = W × 3.5/1,000
労働者の負担 = (イ − ロ)÷ 2 = W × (13.5 − 3.5)/1,000 ÷ 2 = W × 5/1,000

雇用保険率(13.5)が約分で消えます。残るのは「(雇用保険率 − 二事業分)÷ 2」という式だけ。事業主の負担は、31条3項が「労働保険料の額から被保険者の負担すべき額を控除した額」と定めているので、13.5 − 5 = 8.5/1,000 です。

この式は、3業種すべてで厚生労働省の公表値を再現します。公表された料率2つ(雇用保険率と二事業率)だけを入れれば、労働者負担は自動的に出てくる——つまり、暗記する必要のある数字ではありません。

事業の種類雇用保険率二事業(事業主のみ)(雇用保険率 − 二事業)÷ 2公表の労働者負担
一般の事業13.53.5(13.5 − 3.5) ÷ 2 = 55/1,000 ✓
農林水産・清酒製造15.53.5(15.5 − 3.5) ÷ 2 = 66/1,000 ✓
建設の事業16.54.5(16.5 − 4.5) ÷ 2 = 66/1,000 ✓

建設業だけ二事業が 4.5/1,000 と高いのは、12条4項3号が「第一号ハに掲げる事業(=土木、建築その他工作物の建設等)については、千分の四・五とし」と定めているためです。だから建設と農林水産は労働者負担が同じ6/1,000でも、事業主負担は10.5と9.5で違います

料率が毎年動くのは、法律がそれを許しているから

12条4項が定める本則の率は、二事業費充当徴収保険率=千分の三・五(建設は千分の四・五)です。一方、失業等給付に充てる率は12条5項で「千分の四から千分の十二までの範囲内において変更することができる」(農林水産・建設等は千分の六から千分の十四まで)とされています。年度ごとに料率が上下するのは、この弾力条項によるもので、法律の改正を待たずに変わります。だから「去年の料率」をそのまま使うと必ず間違えます。

社会保険料計算ツールで、雇用保険料を含めた手取りの控除額を計算する

雇用保険料は「賃金総額」にかかる(標準報酬月額ではない)

給与計算での実害は、たいていここで出ます。雇用保険料の計算のもとになるのは、標準報酬月額ではありません。

労働保険徴収法 11条1項 一般保険料の額は、賃金総額に次条の規定による一般保険料に係る保険料率を乗じて得た額とする。

同 2条2項 この法律において「賃金」とは、賃金、給料、手当、賞与その他名称のいかんを問わず、労働の対償として事業主が労働者に支払うものをいう。

厚生労働省の資料も「被保険者の賃金総額(総支給額)に被保険者負担分雇用保険料率を乗じて算定し」と書いています。残業代も、通勤手当も、賞与も、実際に支払った額がそのまま入ります。健康保険・厚生年金のように等級表で丸めることをしません。

健康保険・厚生年金雇用保険
計算のもと標準報酬月額(等級表で丸める)賃金総額(総支給額そのもの)
月額の上限あり(健保 第50級139万円/厚年 第32級65万円)なし
賞与の上限あり(健保は年度累計573万円/厚年は1回150万円)なし
賞与の1,000円未満切捨あり(標準賞与額)なし
料率が変わる軸都道府県(健保)業種
労使の負担折半折半でない(二事業の分だけ事業主が多い)
同じ等級の2人でも、雇用保険料は違う

月給30万円の人と、月給30万5千円の人。標準報酬月額はどちらも第22級(30万円)で同じなので、健康保険料も厚生年金保険料も1円まで同額です。ところが雇用保険料は等級表を経由しないので、1,500円と1,525円で25円違います。給与システムに標準報酬月額を渡してしまうと、この差が黙って消えます。金額が小さいので気づかれず、毎月ずれ続けます。

計算例(月給・賞与・年間)

一般の事業(労働者 5/1,000・事業主 8.5/1,000)の場合です。金額はすべて当サイトの社会保険料計算ツールの計算ロジックで算出しています。

賃金(総支給額)労働者負担事業主負担合計
月給 20万円1,000円1,700円2,700円
月給 30万円1,500円2,550円4,050円
月給 50万円2,500円4,250円6,750円
賞与 50万円2,500円4,250円6,750円
賞与 300万円15,000円25,500円40,500円

月給30万円・賞与50万円が年2回の人なら、年間の賃金総額は460万円。労働者が1年間に負担する雇用保険料は 23,000円 です。令和7年度の料率(5.5/1,000)なら25,300円だったので、引き下げによって年2,300円の負担減になります。

賞与に上限がないことの意味

厚生年金の保険料は、賞与300万円でも150万円で頭打ちです。健康保険も年度累計573万円で止まります。雇用保険にはこの頭打ちがありません。賞与300万円ならその全額に率がかかり、労働者負担は15,000円です。高収入の人ほど、社会保険料が頭打ちになったあとも雇用保険料だけは青天井で増え続けます

端数処理は「天引きか、現金払いか」で1円ずれる

賃金総額に 5/1,000 を掛けると、たいてい1円未満の端数が出ます。厚生労働省は、端数処理を支払い方法によって2つに分けて示しています。

被保険者負担分の支払い方端数の扱い
賃金から源泉控除する場合(=通常の給与天引き)端数が50銭以下なら切り捨て50銭1厘以上なら切り上げ
被保険者が事業主へ現金で支払う場合端数が50銭未満なら切り捨て、50銭以上なら切り上げ

ふつうに読み飛ばしそうですが、この2つは「ちょうど50銭」のときに結論が逆になります。

賃金 100,100円 × 5/1,000 = 500.5円(ちょうど50銭)

・給与から天引きする場合 → 50銭「以下」なので切り捨てて 500円
・本人が現金で支払う場合 → 50銭「以上」なので切り上げて 501円

給与計算の実務では、ほぼすべてが天引き(源泉控除)なので「50銭以下は切り捨て」を使います。四捨五入だと思い込んでいると、ちょうど50銭の月だけ1円多く天引きしてしまいます。なお厚生労働省は「慣習的な取扱い等の特約がある場合には、この限りではありません」とも書いており、労使で別の扱いを続けることは否定されていません。

間違えやすい点

「64歳以上は雇用保険料が免除」という説明は、現行法にない

かつては高年齢の労働者について保険料を免除する仕組みがありましたが、現在の労働保険徴収法には、年齢を理由に雇用保険料を免除する規定は一つもありません。条文を全文検索しても「高年齢労働者」も「免除」も出てきません。64歳以上でも、雇用保険の被保険者である限り保険料は天引きされます。古い記事の記述をそのまま信じないでください。

週20時間未満の人は、そもそも被保険者でない

雇用保険法6条1号は「一週間の所定労働時間が二十時間未満である者」を適用除外とし、2号は「同一の事業主の適用事業に継続して三十一日以上雇用されることが見込まれない者」を適用除外としています。被保険者でなければ、雇用保険料はかかりません。パート・アルバイトの人の給与から雇用保険料が引かれていないのは、多くの場合これが理由です(学生も原則として適用除外です)。

健康保険と雇用保険では、新料率に切り替わる時期が違う

雇用保険料率は保険年度(4月1日〜翌年3月31日)で切り替わります(徴収法2条4項)。一方、協会けんぽの健康保険料率は3月分(4月納付分)から切り替わります。「年度」と「月分」という別の物差しで動いているので、料率改定の時期に、片方だけ新料率で計算してしまう事故が起きます。

「雇用保険二事業」なのに、能力開発事業の一部は二事業の財布から出ていない

踏み込んだ話をひとつ。徴収法12条4項3号は、二事業費充当徴収保険率を「雇用安定事業及び能力開発事業(同法第六十三条に規定するものに限る。)に要する費用に対応する部分の率」と定義しています。わざわざ「63条に規定するものに限る」と書いてあるのがポイントです。雇用保険法64条(求職者支援制度の職業訓練受講給付金など)も条文上は「能力開発事業として」行われますが、その費用は二事業の分ではなく、労使が折半する側(失業等給付費等充当徴収保険率)に含まれています(12条4項1号)。名前は「二事業」でも、中身はかっこ書きで切り分けられています。

社会保険料計算ツール(健康保険・介護保険・厚生年金・雇用保険)で試算する

よくある質問

Q. 令和8年度の雇用保険料率は、結局いくらですか?

A. 一般の事業で13.5/1,000です。内訳は労働者の負担が5/1,000、事業主の負担が8.5/1,000です。農林水産・清酒製造の事業は15.5/1,000(労働者6/1,000・事業主9.5/1,000)、建設の事業は16.5/1,000(労働者6/1,000・事業主10.5/1,000)です。いずれも令和8年4月1日から令和9年3月31日までに適用されます。前年度の令和7年度は一般の事業で14.5/1,000(労働者5.5/1,000)だったので、引き下げられています。健康保険料率と違い、都道府県によって変わることはありません。

Q. なぜ労働者と事業主で負担が同じでないのですか?

A. 差額の3.5/1,000が「雇用保険二事業」の分で、これは事業主だけが負担するためです。雇用保険二事業とは雇用保険法62条の雇用安定事業と63条の能力開発事業のことで、その中身は雇用調整助成金のように事業主に対して行う助成です。会社が受け取る助成金の原資なので、会社だけが負担します。労働者が受け取る失業等給付や育児休業給付の部分は、労使できちんと折半しています。労働保険徴収法31条1項1号が、雇用保険の分から二事業の分を引いた額の2分の1を労働者の負担と定めており、二事業を抜いてから折半する仕組みになっています。

Q. 給与から引かれる雇用保険料は、どう計算しますか?

A. 賃金総額(総支給額)に労働者負担率を掛けます。一般の事業なら5/1,000です。月給30万円なら1,500円、月給20万円なら1,000円です。ここで重要なのは、健康保険や厚生年金と違って標準報酬月額を使わないことです。残業代も通勤手当も、実際に支払った金額がそのまま計算のもとに入ります。労働保険徴収法11条1項が「賃金総額に……保険料率を乗じて得た額とする」と定め、2条2項が賃金を「賃金、給料、手当、賞与その他名称のいかんを問わず、労働の対償として事業主が労働者に支払うもの」と定義しているためです。

Q. 標準報酬月額が同じなら、雇用保険料も同じですか?

A. 同じにはなりません。月給30万円の人と月給30万5千円の人は、標準報酬月額がどちらも第22級の30万円なので健康保険料も厚生年金保険料も同額になりますが、雇用保険料は賃金総額にかかるため1,500円と1,525円で25円違います。雇用保険は等級表を経由しないので、賃金が違えば保険料も違います。給与システムに標準報酬月額を渡してしまうと、この差が黙って消えたまま毎月ずれ続けるので注意してください。

Q. 賞与にも雇用保険料はかかりますか?上限はありますか?

A. かかります。そして上限はありません。厚生年金の保険料は賞与150万円で頭打ちになり、健康保険も年度累計573万円で止まりますが、雇用保険にはこうした頭打ちの規定がありません。標準賞与額のように1,000円未満を切り捨てることもなく、支払った賞与の額がそのまま計算のもとになります。賞与50万円なら労働者負担は2,500円、賞与300万円なら15,000円です。高収入の人ほど、社会保険料が頭打ちになったあとも雇用保険料だけは増え続けます。

Q. 計算したら1円未満の端数が出ました。四捨五入でよいですか?

A. 四捨五入ではありません。給与から源泉控除する通常のケースでは、端数が50銭以下なら切り捨て、50銭1厘以上なら切り上げます。つまりちょうど50銭のときは切り捨てです。一方、被保険者が事業主へ現金で支払う場合は、50銭未満なら切り捨て、50銭以上なら切り上げになり、ちょうど50銭のときの結論が逆になります。たとえば賃金100,100円に5/1,000を掛けると500.5円ちょうどですが、天引きなら500円、現金払いなら501円です。ただし厚生労働省は、慣習的な取扱い等の特約がある場合はこの限りではないとしています。

Q. 64歳以上になれば雇用保険料は免除されますか?

A. 免除されません。現在の労働保険徴収法には、年齢を理由に雇用保険料を免除する規定は一つもなく、条文を全文検索しても「高年齢労働者」や「免除」という語は出てきません。64歳以上でも、雇用保険の被保険者である限り保険料は賃金から天引きされます。かつての免除の説明が残っている古い記事を見かけますが、現行法の扱いとは違います。

Q. パートですが雇用保険料が引かれていません。おかしいですか?

A. 被保険者でない可能性が高く、その場合はおかしくありません。雇用保険法6条は、1週間の所定労働時間が20時間未満である者と、同一の事業主に継続して31日以上雇用されることが見込まれない者を適用除外としています。適用除外に当たる人は雇用保険の被保険者ではないので、保険料もかかりません。学生も原則として適用除外です。逆に、週20時間以上で31日以上の雇用見込みがあるのに引かれていない場合は、加入手続きがされていない可能性があるので勤務先に確認してください。

出典

この記事は令和8年度(2026年4月1日〜2027年3月31日)の制度にもとづく一般的な情報であり、個別の事案に対する助言ではありません。実際の取り扱いは、事業の種類の判定や個別の事情によって異なる場合があります。判断に迷う場合は、所轄の労働局・ハローワークまたは社会保険労務士にご確認ください。