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育児休業給付金はいくら?67%+13%の計算と「手取り10割」の条件

結論から言うと、育児休業給付金の額は 「休業開始時賃金日額 × 支給日数(原則30日) × 67%」 です。休業日数が通算180日を超えると、181日目からは 50% に下がります。

これに、2025年(令和7年)4月に新設された 出生後休業支援給付金(13%) が乗ると、給付率は 合わせて80% になります。育児休業給付は非課税で、育休中は社会保険料も免除されるため、厚生労働省はこの80%を「手取り10割相当」と説明しています。

ただし、この13%には多くの解説が省略している条件があります。母親がこの13%を受け取るには、父親が14日以上の育児休業を取る必要があります。逆に父親は、妻が産後休業に入るだけでこの条件を自動的に満たします。同じ制度なのに、父親が育休を取らないと損をするのは母親だけという非対称があります。

いくらもらえるか(計算式と早見表)

計算式は雇用保険法61条の7第6項が定めています。

育児休業給付金 = 休業開始時賃金日額 × 支給日数(原則30日) × 67%
(休業日数が通算180日に達した後は 50%)

出生後休業支援給付金 = 休業開始時賃金日額 × 休業日数(28日が上限) × 13%

休業開始時賃金日額とは、育休開始前の直近6か月間に支払われた賃金の総額を 180で割った額です(雇用保険法61条の7第6項・17条)。「日額」といっても実際に働いた日数で割るのではなく、常に180で割ります。

月給30万円(賞与なし)の人なら、賃金日額は 300,000円 × 6 ÷ 180 = 10,000円 です。この人が受け取る額は次のとおりです。

時期給付率1か月(30日)あたりの額
育休開始〜180日目67%201,000円
181日目〜50%150,000円
出生後休業支援給付金(28日分・一度きり)13%36,400円
給付率の推移(月給30万円・賃金日額10,000円の場合) 80% 67%+13% 67% 50% 育休開始 28日 180日 1歳 手取り10割相当 201,000円/月 150,000円/月 13%(出生後休業支援給付金)の28日分=36,400円は、 母親の場合「父親が14日以上の育児休業を取ること」が条件(雇用保険法61条の10第1項3号)。 父親が取らなければ、母親はこの28日分を受け取れない。
給付率は「80%(最大28日)→ 67%(180日まで)→ 50%」と下がる。13%の部分には配偶者の条件が付く。(横軸は区間の切り替わりを示す模式図で、幅は日数に比例していません)

「手取り10割」の正体 — 80%で10割になる理由

「育休中は手取りが減らない」という説明を見たことがあるかもしれません。これは厚生労働省自身が公式資料に書いている表現で、根拠は次の3点です。

給付率80%が「手取り10割相当」になる理由(厚労省リーフレット注記)

①育児休業中は申出により健康保険・厚生年金保険料が免除され、②勤務先から給与が支給されない場合は雇用保険料の負担もなく、③育児休業等給付は非課税である。このため、休業開始時賃金日額の80%の給付率で手取り10割相当の給付となる。ただし、休業開始時賃金日額の上限額があることに留意すること。

③の非課税は、条文をたどると少し変わった作りになっています。非課税を定めているのは雇用保険法12条(公課の禁止)ですが、この条文は「失業等給付として支給を受けた金銭」について書かれており、育児休業給付は失業等給付ではありません(2020年の改正で別建ての「育児休業等給付」になりました)。ではなぜ非課税かというと、61条の6が12条を準用しているからです。「第十条の三から第十二条までの規定は、育児休業等給付について準用する。」 という一文が、育休給付の非課税を支えています。

つまり「額面の80%しかもらえない」のではなく、手取りで比べると休業前とほぼ同じになる、というのが制度の設計です。ただし、上限額に当たる人はこの前提が崩れます(次章)。

13%は「配偶者が14日以上育休」が条件 — 母親だけに生じる不利

ここが、この記事でいちばんお伝えしたい点です。

出生後休業支援給付金(13%)の支給要件は、雇用保険法61条の10第1項が3つ定めています。

  1. 育休開始前2年間に、みなし被保険者期間が通算12か月以上あること
  2. 対象期間内に、自分が14日以上の育児休業を取ったこと
  3. 配偶者も、その子について14日以上の育児休業を取ったこと(1項3号)

問題は3番目です。ただし同条2項が、次の場合には3番目の要件を不要としています(厚労省リーフレットの「配偶者の育児休業を要件としない場合」1〜7)。

ここに非対称が生まれます。

配偶者は誰か3番目の要件は?結果
父親が受け取る場合母親(産後休業中「配偶者が産後休業中」に当たるので不要自分が14日取ればもらえる
母親が受け取る場合父親(産後休業は取れない)必要。父親が14日以上の育休を取らないと満たせない父親が取らなければもらえない

男性に産後休業という制度はないため、母親側は「配偶者が産後休業中」という免除に当てはまりません。厚労省のリーフレットも、父親が受け取る場合について「子の出生日の翌日時点で配偶者が…(主に「6.配偶者が産後休業中」)…に該当するため」と明記しています。

いくら損をするのか

月給30万円(賃金日額10,000円)の母親の場合、13% × 28日分 = 36,400円。父親が14日以上の育休を取るかどうかだけで、この金額が出るか出ないかが決まります。父親の育休が「13日」で終われば、母親の36,400円も消えます(父親自身の13%も、14日に足りないので出ません)。

なお、父親が公務員で雇用保険の被保険者でない場合も、各種法律に基づく育児休業を14日以上取っていれば要件を満たせます(申請書の21欄に記載)。父親が自営業・フリーランス・無業なら、そもそも要件が免除されます。いちばん損をしやすいのは「父親が会社員で、育休を取らない(または13日以下しか取らない)」という、いちばん多いケースです。

出生後休業支援給付金(13%)— 配偶者の要件はどうなるか 父親が受け取る 自分が14日以上取得 配偶者(母)は産後休業中 → 配偶者要件は免除 13% もらえる 母親が受け取る 自分が14日以上取得 配偶者(父)が14日以上の 育休を取ったか? はい 13% もらえる いいえ 13% は出ない
父親は妻の産後休業によって配偶者要件が自動的に免除される。母親にはこの免除がないため、夫の育休取得が条件になる。

対象期間(14日を数える期間)も父母で違います(61条の10第7項)。父親は子の出生日から8週間、母親は産後休業を挟むため16週間です。

上限額16,110円と、賞与が1円も入らないこと

「手取り10割」が崩れるのは、上限額に当たる人です。休業開始時賃金日額には上限があり、16,110円です(令和8年7月31日までの額)。月給に換算すると 483,300円(16,110円 × 30日)が頭打ちで、これを超える給与の人は、超えた分が給付に反映されません。

給付金給付率支給上限額支給下限額
育児休業給付金67%323,811円60,581円
育児休業給付金50%241,650円45,210円
出生時育児休業給付金(産後パパ育休・28日)67%302,223円
出生後休業支援給付金(28日)13%58,640円10,970円
この上限額は、2026年8月1日に変わります

上限額は毎月勤労統計の平均定期給与額の増減にもとづき、毎年8月1日に改定されます。上に挙げた額は令和8年(2026年)7月31日までの額です。実際に申請するときは、休業開始時点で有効な額を必ず確認してください。前回(2025年8月1日)の改定では、育児休業給付金の67%の上限額は 315,369円 から 323,811円 に上がりました。

月給50万円(賞与なし)の人なら、賃金日額は 500,000円 × 6 ÷ 180 = 約16,667円 で上限を超えるため、16,110円 で計算されます。67%期間の月額は上限額そのままの 323,811円 となり、額面月給に対する割合は 64.8% です。「67%」には届きません。

賞与は1円も入らない

もうひとつ見落とされがちなのが賞与です。賃金日額の計算に使う「賃金」からは、3か月を超える期間ごとに支払われる賃金(=賞与)が除かれます。

月給30万円+賞与年120万円(年収480万円)の人の場合、賃金日額は月給だけで計算されるので 10,000円 のままです。67%期間の月額は 201,000円 ですが、年収を12で割った月収相当額は 400,000円 なので、実質の補償率は50.2% にとどまります。賞与の比率が高い人ほど、「67%」という数字から遠ざかります(保険料は賞与からも取られるのに、給付には反映されません。この構造は傷病手当金とまったく同じです)。

社会保険料計算機で、育休前後の保険料を確認する

67%はいつまでか — 「180日」の数え方の落とし穴

給付率が67%から50%に下がる境目は「休業日数が通算180日」です(61条の7第6項)。「6か月」ではなく日数で数える点に注意してください。

そして、ここに落とし穴があります。

産後パパ育休で使った日数は、67%の180日枠を食う

厚労省の資料は「出生時育児休業給付金が支給された日数は、育児休業給付金の給付率67%の上限日数である180日に通算されます」と明記しています。つまり父親が産後パパ育休(出生時育児休業)を上限の28日取ると、その後の育児休業で67%が続くのは 残り152日 だけです。180日がリセットされるわけではありません。

さらに条文(61条の7第6項)は、180日目が支給単位期間の途中に来る場合の按分まで定めています。その月は「180日目までの日数×67%」と「181日目以降の日数×50%」を足した額になります。月の途中で率が切り替わるため、「6か月目まで67%、7か月目から50%」という理解のままだと、実際の振込額と合いません。

その他の落とし穴(就業・12か月要件)

育休中に働いて賃金をもらうと、給付が減る(80%が天井)

育休中に一時的に就業して勤務先から賃金が支払われた場合、賃金+給付金が「賃金日額×支給日数」の80%を超える分は、給付金から差し引かれます(61条の7第7項)。賃金だけで80%以上になると、その支給単位期間の育児休業給付金は不支給です。

そして、これが13%にも波及します。厚労省の資料は「就労状況・賃金支払状況により出生時育児休業給付金または育児休業給付金が不支給となった場合は、出生後休業支援給付金の支給は行いません」としています。働きすぎて育休給付金が不支給になると、13%も一緒に消えます

12か月に足りなくても、あきらめない(特例基準日)

受給には「育休開始前2年間に、みなし被保険者期間が通算12か月以上」が必要です。しかし産前産後休業を取った人は、育休開始日を起点にすると、産休期間のせいで12か月に届かないことがあります。

そこで61条の7第4項は、産後休業をした被保険者でみなし被保険者期間が12か月に満たない場合、起算日を「特例基準日」(=産前休業を開始した日)に振り替えることを認めています。妊娠・出産をきっかけに要件を落とさないための救済です。「12か月に足りないから無理」と自己判断せず、ハローワークに確認してください。

母親の賃金日額は「産休前」の賃金で決まる

賃金日額の計算に使う直近6か月は、産前産後休業を取った人については原則として産前産後休業の開始前の6か月です。産休・育休に入る直前に時短勤務などで賃金が下がっていた場合、その低い賃金ではなく産休前の賃金で計算されます。

よくある質問

Q. 育児休業給付金に税金はかかりますか?

A. かかりません。雇用保険法12条(公課の禁止)が「租税その他の公課は、失業等給付として支給を受けた金銭を標準として課することができない」と定めており、この規定を61条の6が育児休業等給付にも準用しています。所得税も住民税もかからず、翌年の住民税の算定にも入りません。さらに育休中は健康保険・厚生年金保険料も申出により免除されるため、給付率80%でも手取りは休業前の約10割相当になります(ただし休業開始時賃金日額の上限額に当たる人は、この限りではありません)。

Q. 賞与(ボーナス)は育児休業給付金の計算に含まれますか?

A. 含まれません。賃金日額の計算に使う賃金からは「3か月を超える期間ごとに支払われる賃金」が除かれるため、賞与は1円も反映されません。月給30万円・賞与年120万円(年収480万円)の人の場合、67%期間の給付は月201,000円で、年収を12で割った月収相当額400,000円に対する実質の補償率は50.2%にとどまります。賞与の比率が高い人ほど、額面の67%という数字からは遠ざかります。

Q. 夫が育休を取らないと、妻の給付は減りますか?

A. 出生後休業支援給付金(13%)は減ります。この給付は雇用保険法61条の10第1項3号で「配偶者もその子について14日以上の育児休業をしたこと」を要件としており、母親の場合、夫が会社員であればこの要件を満たす必要があるためです。父親の側は、妻が産後休業中であることが同条2項の免除事由に当たるため、この条件を自動的に満たします。月給30万円の母親なら、13%×28日分=36,400円が受け取れるかどうかが夫の育休次第で決まります。夫が自営業・フリーランス・無業の場合や、配偶者がいない場合は、この要件は免除されます。

Q. 産後パパ育休を28日取ると、その後の育休の67%は短くなりますか?

A. 短くなります。厚生労働省の資料は「出生時育児休業給付金が支給された日数は、育児休業給付金の給付率67%の上限日数である180日に通算されます」と明記しています。産後パパ育休で28日を使うと、その後の育児休業で67%が適用されるのは残り152日分となり、それ以降は50%に下がります。180日の枠がリセットされるわけではない点に注意してください。

Q. 上限額はいくらですか。いつ変わりますか?

A. 休業開始時賃金日額の上限額は16,110円で、これは令和8年(2026年)7月31日までの額です。この上限は毎月勤労統計の平均定期給与額の増減にもとづいて毎年8月1日に改定されるため、2026年8月1日から変わります。上限額に当たる場合、育児休業給付金の月額は67%期間で323,811円、50%期間で241,650円が上限です。月給に換算すると483,300円を超える部分は給付に反映されないため、それより給与が高い人は「手取り10割」にはなりません。

Q. 育休中に少しだけ働いても給付はもらえますか?

A. もらえますが、賃金と給付金の合計が「賃金日額×支給日数」の80%を超えると、超えた分だけ給付金が減額されます(雇用保険法61条の7第7項)。賃金だけで80%以上になると、その支給単位期間の育児休業給付金は不支給になります。さらに、育児休業給付金が不支給になると出生後休業支援給付金(13%)も支給されないため、働きすぎると13%まで失うことになります。就業日数・時間の上限もあるため、就業を予定している場合は事前にハローワークに確認してください。

出典

この記事は令和8年(2026年)7月時点の法令・公表資料に基づく一般的な解説です。上限額は2026年8月1日に改定されます。個別の支給可否・金額は、お住まいの地域を管轄するハローワーク(公共職業安定所)にご確認ください。