賞与(ボーナス)の社会保険料|上限・計算方法・免除されるケース
結論から言うと、賞与の社会保険料は「賞与の総支給額(税引き前)から1,000円未満を切り捨てた額」に、そのまま料率をかけた額です。毎月の給与と違い、等級表(標準報酬月額の表)は使いません。賞与額そのものが計算の基礎になります。
東京都・30歳・賞与60万円なら、本人負担は 85,140円。40歳以上なら介護保険料が加わって 90,000円 です(令和8年度・協会けんぽ)。
単純なのはここまでで、賞与には毎月の給与にはない 3つの落とし穴 があります。上限が2つあって数え方がまったく違うこと、退職日が1日ずれるだけで保険料が丸ごと消えること、そして育休中でも賞与の保険料は免除されないことがあることです。順に、条文と日本年金機構の資料で確認します。
計算方法(等級表は使いません)
賞与の保険料は、次の2ステップで決まります。
- 標準賞与額を出す… 賞与の支給額から1,000円未満を切り捨てる(健康保険法45条、厚生年金保険法24条の4)。賞与が456,789円なら、標準賞与額は456,000円です。
- 料率をかけて、労使で折半する… 標準賞与額 × 保険料率 ÷ 2 が本人負担です。
かかる保険料は次の4つです。子ども・子育て支援金は令和8年4月に新設されたもので、年齢に関係なく全員にかかります(健康保険法156条1項)。賞与にも同じようにかかります。
| 保険料 | 料率(東京都・令和8年度) | 賞与60万円・30歳 | 賞与60万円・45歳 |
|---|---|---|---|
| 健康保険 | 9.85% | 29,550円 | 34,410円 |
| 介護保険(40歳以上65歳未満) | 1.62% | —(かからない) | |
| 子ども・子育て支援金 | 0.23% | 690円 | 690円 |
| 厚生年金(全国一律) | 18.3% | 54,900円 | 54,900円 |
| 本人負担の合計 | — | 85,140円 | 90,000円 |
いずれも労使折半後の本人負担額です(会社も同額を負担します)。40歳になると介護保険料の分だけ4,860円増えます。健康保険料率は都道府県ごとに違うため、他県の方は下のツールで計算してください。
社会保険料計算機で、自分の賞与の保険料を計算する(上限も自動判定) 税金まで含めた手取り額は、ボーナス手取り計算機で計算する上限は2種類ある。しかも数え方が違う
ここが毎月の給与と大きく違うところです。健康保険と厚生年金で、上限の数え方が根本的に違います。
- 健康保険:年度の累計で573万円(健康保険法45条)。年度は4月1日から翌年3月31日まで。年度内の賞与を足し上げ、累計が573万円に達すると、その先の賞与の標準賞与額はゼロになります。
- 厚生年金:1回(その月)あたり150万円(厚生年金保険法24条の4)。回ごとにリセットされるので、何回もらっても毎回150万円までは保険料がかかります。
1回の賞与が200万円なら、健康保険は200万円まるごとが対象(年度累計573万円までなら)ですが、厚生年金は150万円までが対象で、残り50万円には厚生年金保険料がかかりません。
この違いが効いてくるのが、年度累計が573万円に達した後の賞与です。
健康保険の上限は「年度の累計」なので一度573万円に達すればそこで打ち止めですが、厚生年金の上限は「1回ごと」なので毎回リセットされるためです。累計が573万円に達した後にさらに賞与100万円を受け取ると、健康保険・介護保険・子ども・子育て支援金はすべて0円、厚生年金だけが91,500円かかります。「上限に達したからもう引かれない」と考えていると、ここで必ず外します。
年度内に賞与が3回ある場合の実例です(東京都・30歳・夏250万円/冬350万円/期末100万円)。
同じ月に2回以上の賞与を出したときは合算します。日本年金機構は「同月内に2回以上支給されるときは合算した額で上限額が適用される」としています。賞与を2回に分けて支給しても、厚生年金の150万円の上限は回避できません。
免除されるケース(育休・産休)
育児休業中は社会保険料が免除される、と広く知られています。ただし賞与の保険料は条件が違います。根拠は健康保険法159条1項の、次のかっこ書きです。
…当該被保険者に関する保険料(その育児休業等の期間が一月以下である者については、標準報酬月額に係る保険料に限る。)は、徴収しない。
「標準報酬月額に係る保険料に限る」=毎月の給与にかかる保険料だけという意味です。つまり育休が1か月以下の場合、免除されるのは給与の保険料だけで、賞与の保険料は免除されません。賞与の保険料まで免除されるには、賞与月の末日を含む、1か月を超える育休が必要です(厚生年金保険法81条の2にも同じかっこ書きがあります)。
以前は「賞与月の末日に育休中であれば免除」だったため、月末の数日だけ育休を取って賞与の保険料を免除させる運用が問題視され、賞与については「1か月を超える育休」が必要に改められました。
たとえば12月31日だけ育休を取っても、賞与の保険料は免除されません。ただし月給の保険料は、この場合でも免除されます(免除の対象が「標準報酬月額に係る保険料」に限られるだけだからです)。
一方、産前産後休業の免除を定めた健康保険法159条の3には、このかっこ書きがありません。条文は単に「その産前産後休業を開始した日の属する月から…保険料を徴収しない」と書いてあるだけです。したがって産休中の賞与は、期間の長さにかかわらず保険料が免除されます。育休と産休で結論が分かれるのは、条文にかっこ書きがあるかないかの違いです。
| 状況 | 給与の保険料 | 賞与の保険料 | 根拠 |
|---|---|---|---|
| 産前産後休業中 | 免除 | 免除 | 健保法159条の3(かっこ書きなし) |
| 育休が1か月以下 | 免除 | 免除されない | 健保法159条1項かっこ書き |
| 育休が1か月超 | 免除 | 免除 | 健保法159条1項 |
連続する2つ以上の育休は、全部で1つの育休とみなして期間を数えます(健保法159条2項)。細切れに取った場合は、通算して1か月を超えるかどうかで判定します。なお免除は本人分・会社分の両方が対象で、免除された期間も保険料を納めたものとして年金額が計算されるため、将来の年金が減ることはありません。
退職する月の賞与はどうなるか
健康保険法156条3項は、こう定めています。
前月から引き続き被保険者である者がその資格を喪失した場合においては、その月分の保険料は、算定しない。
社会保険の資格を失う日(資格喪失日)は退職日の翌日です。したがって、同じ月に賞与を受け取っても、退職日が1日違うだけで結論が変わります。日本年金機構も「退職月に支給する賞与は、月末に退職する場合を除き、保険料控除の対象となりません」と明記しています。
ただし「月末の前日に辞めれば得」という単純な話ではありません。3月30日に退職すると3月は会社の社会保険の被保険者ではなくなるため、その月は国民健康保険(または任意継続)と国民年金に自分で加入して払う月になります。厚生年金の加入期間も1か月短くなり、将来の年金額に効きます。会社の保険料が引かれないことと、負担がゼロになることは別物です。なお、賞与の保険料がかからない場合でも「賞与支払届」の提出は必要です。
年4回以上の賞与は、そもそも「賞与」ではなくなる
健康保険法3条6項は「賞与」を「三月を超える期間ごとに受けるもの」と定義しています。逆に、3か月以内の間隔で繰り返し支払われるものは「報酬」です(同条5項)。これを回数で言い換えたのが、日本年金機構の次の運用です。
- 年3回以下の支給 → 賞与(賞与支払届の対象。上限573万円/150万円が使える)
- 年4回以上の支給 → 標準報酬月額の対象(毎月の給与に上乗せして保険料がかかる)
つまり賞与の支給回数を年3回から年4回に増やすと、その手当は社会保険では「賞与」ではなくなり、賞与の上限(健保573万円・厚年150万円)の恩恵が消えます。支給回数の設計は、社会保険料の額そのものを変える論点です。
名称は関係ありません。給与規程で「7月・12月に支給」と月が明確に定められている手当は、名称にかかわらず賞与として扱われます。一方、結婚祝金・大入袋・見舞金など労働の対償でないものは対象外です(日本年金機構)。賞与を支給したら、支給日から5日以内に「被保険者賞与支払届」を提出します。
- 賞与の保険料=標準賞与額(1,000円未満切捨て)× 料率 ÷ 2。等級表は使わない
- 東京都・30歳・賞与60万円 → 本人負担 85,140円(40歳以上は90,000円)
- 上限は健保=年度累計573万円/厚年=1回150万円。573万円に達した後も厚生年金だけは引かれ続ける
- 育休中の賞与の免除には1か月超の育休が必要。産休中は期間を問わず免除
- 月末退職を除き、退職月に支給された賞与に保険料はかからない(健保法156条3項)
よくある質問
Q. 賞与の社会保険料はいくら引かれますか?
A. 賞与の支給額から1,000円未満を切り捨てた「標準賞与額」に保険料率をかけ、労使で折半した額です。東京都・30歳・賞与60万円なら、健康保険29,550円+子ども・子育て支援金690円+厚生年金54,900円で、本人負担は合計85,140円になります(令和8年度・協会けんぽ)。40歳以上65歳未満は介護保険料が加わり90,000円です。
Q. 賞与の社会保険料に上限はありますか?
A. 2つあり、数え方が違います。健康保険は年度(4月1日から翌年3月31日まで)の累計で573万円が上限で、累計が573万円に達するとその先の賞与の標準賞与額はゼロになります(健康保険法45条)。厚生年金は1回あたり150万円が上限で、回ごとにリセットされます(厚生年金保険法24条の4)。このため年度累計が573万円に達した後の賞与でも、厚生年金保険料だけはかかり続けます。
Q. 賞与の計算は毎月の給与と同じですか?
A. 違います。毎月の給与は標準報酬月額の等級表に当てはめて計算しますが、賞与は等級表を使わず、1,000円未満を切り捨てた賞与額そのものに料率をかけます。そのかわり、給与にはない上限(健康保険は年度累計573万円、厚生年金は1回150万円)があります。
Q. 同じ月に賞与を2回に分けて支給すれば、厚生年金の150万円の上限を回避できますか?
A. できません。日本年金機構は、同月内に2回以上支給されるときは合算した額で上限額が適用されるとしています。分割しても、上限の判定は合算後の額で行われます。
Q. 育児休業中の賞与は社会保険料が免除されますか?
A. 賞与月の末日を含む1か月を超える育休を取得している場合だけ免除されます。健康保険法159条1項のかっこ書きが「その育児休業等の期間が一月以下である者については、標準報酬月額に係る保険料に限る」としているため、育休が1か月以下だと免除されるのは毎月の給与の保険料だけで、賞与の保険料は免除されません。2022年10月の改正で、月末の数日だけ育休を取って賞与の保険料を免除させる運用が封じられたためです。なお連続する2つ以上の育休は全部で1つの育休とみなして期間を数えます(同条2項)。
Q. 産前産後休業中の賞与も同じ条件ですか?
A. 違います。産前産後休業の免除を定めた健康保険法159条の3には、育休のような「一月以下なら標準報酬月額に係る保険料に限る」というかっこ書きがありません。そのため産休中に支給された賞与は、期間の長さにかかわらず保険料が免除されます。
Q. 退職月に賞与をもらうと社会保険料はかかりますか?
A. 月末に退職する場合を除き、かかりません。資格喪失日は退職日の翌日で、資格を喪失した月分の保険料は算定しないためです(健康保険法156条3項)。3月30日退職なら資格喪失日は3月31日で喪失月が3月になるため、3月に支給された賞与に保険料はかかりません。3月31日(月末)退職なら資格喪失日は4月1日となり、3月は被保険者のままなので保険料がかかります。ただし月末前に退職した月は国民健康保険・国民年金に自分で加入することになるため、負担がゼロになるわけではありません。
Q. 決算賞与や寸志も社会保険料の対象ですか?
A. 名称は関係ありません。労働の対償として支給されるものは賞与として社会保険料の対象になります。ただし結婚祝金・大入袋・見舞金など、労働の対償とみなされないものは対象外です。また年4回以上支給されるものは「賞与」ではなく「報酬」として扱われ、標準報酬月額に含めます(健康保険法3条5項・6項)。
出典
- 健康保険法 第45条(標準賞与額の決定。1,000円未満切捨て、年度=4月1日から翌年3月31日、累計573万円が上限、超えた月の翌月以降の標準賞与額はゼロ)、第156条1項・3項(保険料額=標準報酬月額および標準賞与額に一般保険料率と子ども・子育て支援金率を乗じた額/資格を喪失した月分の保険料は算定しない)、第159条1項・2項(育児休業等の期間が一月以下の場合は標準報酬月額に係る保険料に限る/連続する2以上の育児休業等は1つとみなす)、第159条の3(産前産後休業期間中の保険料免除)、第3条5項・6項(報酬と賞与の定義。賞与=三月を超える期間ごとに受けるもの)— e-Gov法令検索
- 厚生年金保険法 第24条の4(標準賞与額の決定。1,000円未満切捨て、150万円が上限)、第81条3項(保険料額=標準報酬月額および標準賞与額に保険料率を乗じた額)、第81条の2(育児休業期間中の保険料の徴収の特例)— e-Gov法令検索
- 日本年金機構「従業員に賞与を支給したときの手続き」— 標準賞与額の上限(健康保険は年度の累計額573万円、厚生年金保険は1カ月あたり150万円。同月内に2回以上支給されるときは合算した額で上限額を適用)/賞与支払届の対象は年3回以下の支給、年4回以上支給されるものは標準報酬月額の対象/届出は支給日から5日以内
- 日本年金機構「退職した従業員の保険料の徴収」— 退職月に支給する賞与は、月末に退職する場合を除き、保険料控除の対象とならない
- 全国健康保険協会(協会けんぽ)令和8年度 都道府県毎の保険料率 — 東京都の健康保険料率9.85%、介護保険料率1.62%、子ども・子育て支援金率0.23%。厚生年金保険料率は全国一律18.3%
本記事は一般的な情報提供を目的としたものです。個別の判断は年金事務所・社会保険労務士にご確認ください。