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少額減価償却資産と一括償却資産|10万・20万・40万円の判定と選び方

パソコンを買った。机を買った。これは経費にできるのか、資産計上して減価償却なのか。結論から言うと、「取得価額がいくらか」で使える処理が変わります。

20万円未満の資産は、即時に全額経費にできる少額特例より、3年に分ける一括償却資産のほうが有利になることがあります。一括償却資産には償却資産税(固定資産税)がかからないからです。この記事では、15万円のパソコンで比較用の概算を計算します。

どの処理にも、損金経理や申告などの条件があります。それぞれの処理を使う条件と特例の要件で確認してください。貸付け用の資産やリース資産は、例外・少数のケースにまとめました。

令和8年度税制改正で「30万円未満」が「40万円未満」になりました ・対象 … 令和8年4月1日以後に取得したものから、対象が取得価額40万円未満に拡充されました。令和8年3月31日以前の取得分は、従来の30万円未満です
・適用期限 … 令和11年(2029年)3月31日まで3年延長されました
・従業員数 … 特定法人を除く対象法人の要件が、500人以下から400人以下に引き下げられました

取得価額でこう分かれる(4つの選択肢)

ここでは少額資産の処理として次の4つを比較します。金額の区間によって、選べるものが変わります。

各処理には条件があります(表の下)。使用可能期間1年未満の資産は別の区分です。
取得価額選べる処理償却資産税
(固定資産税)
10万円未満 ① 全額を損金算入(消耗品費など)
法人は② 一括償却資産/④ 通常の減価償却も選択可。個人は供用年の必要経費
①②は対象外
法人が④個別償却を選んだ場合は申告対象となり得る
10万円以上
20万円未満
② 一括償却資産
③ 少額減価償却資産の特例(中小企業者等・青色申告)
④ 通常の減価償却
②なら対象外
③④は申告対象となり得る
20万円以上
40万円未満
※
③ 少額減価償却資産の特例(中小企業者等・青色申告・年300万円まで)
④ 通常の減価償却
申告対象となり得る
40万円以上※ ④ 通常の減価償却 申告対象となり得る

※ 令和8年3月31日以前に取得したものは「20万円以上30万円未満」「30万円以上」で読み替えてください。③の上限が40万円未満になったのは、令和8年4月1日以後に取得したものからです。

取得価額 0 10万円 20万円 30万円 40万円 償却資産税 ① 全額を損金算入 供用年度の損金経理等が条件 10万円未満 かからない ② 一括償却資産 法人は年度月数による 20万円未満 かからない ③ 少額償却の特例 中小企業者等・青色申告 30万円未満 〜40万円 申告対象の場合あり ④ 通常の減価償却 耐用年数で毎年少しずつ 金額の上限なし 申告対象の場合あり ※ ③の上限が40万円未満になったのは、令和8年4月1日以後に取得したもの(それ以前に取得したものは30万円未満) ※ 区間が重なるところは、どれを選ぶかで税額と償却資産税が変わる。②を選べば償却資産税がかからない
取得価額 → 使える処理の分岐。10万・20万・30万(40万)の3つの境界で選択肢が変わる。青い帯(①②)は償却資産税がかからない処理、オレンジの帯(③④)は申告対象となり得る処理です。10万円以上20万円未満の区間は、②と③が重なる——ここが勝負どころ。

それぞれの処理を使う条件

金額だけでは適用は決まりません。処理ごとに、次の条件があります。

①と②に、青色申告・資本金の制限はありません。個人の②は、所得税法施行令139条の対象所得・資産と申告保存要件によります。

貸付け用の資産、所定のリース資産、使用可能期間が1年未満の資産は扱いが別です(例外・少数のケース)。経営強化税制など別要件による特別償却・税額控除は、この比較に含めていません。

一括償却資産の本当のメリットは「償却資産税がかからない」こと

一括償却資産は地方税法施行令49条本文により償却資産の対象外です。少額特例の適用資産は申告対象となり得ますが、申告対象であることと実際の課税は別で、免税点等も確認します。

多くの記事は「3年で均等に償却できます」と書いて終わります。本当に効くのは、償却資産税の違いです。一括償却資産のしくみを確認してから、15万円のパソコンで比較します。

一括償却資産のしくみ(3年で損金にする)

法人の一括償却は、その事業年度に供用した20万円未満の対象資産をまとめる方法を選定し、損金経理額のうち次の限度額までを損金にする制度です。

損金算入限度額 = 一括償却対象額 ÷ 36 × その事業年度の月数

事業年度が12か月なら、限度額は毎年3分の1です。掛けるのは事業年度の月数です。その資産を使い始めた月からの月数ではありません。月数の端数は切り上げます(法人税法施行令133条の2第1項・6項)。

法人税法施行令133条の2第1項の抜粋:当該一括償却資産に係る一括償却対象額を三十六で除しこれに当該事業年度の月数を乗じて計算した金額

この式は、通常の購入で組織再編がない場合のものです。適格組織再編で引き継いだ資産は月数の数え方が変わります(組織再編・解散があった一括償却資産)。

買った月ではなく、供用した年度が基準です 期末までに供用し、損金経理等の要件を満たせば12か月年度の限度額は3分の1です。これに対し、法人が年度中途に供用した定額法・定率法の資産は、施行令59条により供用日から年度末までの月数で按分します(端数月切上げ)。

15万円のPCで概算比較:一括償却 vs 少額特例

15万円のサーバー用以外のパソコン(新品・耐用年数4年)を1台買った場合で比べます。前提は次のとおりです。

① 一括償却資産
(3年均等)
② 少額減価償却資産の特例
(即時に全額損金)
1年目の損金50,000円150,000円
2年目の損金50,000円0円
3年目の損金50,000円0円
3年間の損金 計150,000円150,000円
3年間の節税額(30%)45,000円45,000円
償却資産税 1年目
評価額 150,000×0.781=117,150円
0円約1,640円(個別評価額×税率の概算)
償却資産税 2年目
評価額 117,150×0.562=65,838円
0円約922円(個別評価額×税率の概算)
償却資産税 3年目
評価額 65,838×0.562=37,000円(1円未満切り捨て)
0円約518円(個別評価額×税率の概算)
償却資産税 3年 計0円約3,080円(合算・端数処理前の概算合計)
3年間の手残り
(節税額 − 償却資産税)
+45,000円概算+41,920円(実際の増加税額によって変動)

※ この設例は東京23区・課税標準の特例なしです。課税対象資産を所在地の区ごとに集計し、課税標準の1,000円未満を切り捨てて税率1.4%を掛け、税額の100円未満を切り捨てます。ここでは1台の評価額に税率を掛けた概算を示し、既存資産との合算・端数処理後の実際の増加税額は計算していません。

① 一括償却資産(3年均等) ② 少額償却の特例(即時に全額) 各年の損金 各年の損金 5万円 5万円 5万円 1年目 2年目 3年目 15万円 0円 0円 1年目 2年目 3年目 3年間の節税 45,000円(実効税率30%と仮定) 償却資産税 0円 手残り +45,000円 3年間の節税 45,000円(実効税率30%と仮定) 概算 約3,080円(3年計) 概算差引 +41,920円
15万円のパソコン1台。3年間の損金の合計はどちらも15万円で同じ——節税額も同じ45,000円。一括償却資産は対象外、少額特例ではこの1台の個別評価額×税率の3年概算が約3,080円です。この概算では差引額に約3,080円の差が出ますが、実際の差は合算・端数処理等で変わります。
税額と資金繰りを分けて比較します 損金の計上時期は処理方法によって異なります。有利不利は所得・欠損金・将来の課税標準・適用資格等により変わります。一括償却資産にした当該資産は申告対象外ですが、他の対象資産についての申告事務は残ります。

償却資産税は、所在地ごとに合算して計算する

償却資産税は、その年の1月1日時点で所有する対象資産について、所在地の市町村(東京23区は区)ごとに課税標準となる額を合算して計算します。計算の順番は次のとおりです。

  1. 課税標準の特例があれば、評価額に特例率を反映します
  2. 課税標準の1,000円未満を切り捨てます
  3. 所在地の税率を掛けます(標準税率・東京23区の税率は1.4%)
  4. 税額の100円未満を切り捨てます

免税点は令和8年度150万円、令和9年度以後180万円で、合計がこれに満たなければ原則課税されません(地方税法351条ただし書による条例の例外があります)。

評価額は次のように減っていきます。

東京都の手引きではA=1−減価率÷2、B=1−減価率としています。計算には同じ手引きの公表A・B欄を直接使います(東京都「令和8年度申告の手引き」減価残存率表)。

減価率は耐用年数で決まります。サーバー用以外のパソコン(新品・耐用年数4年)なら減価率0.438(東京都主税局「申告の手引き」別表第15 減価残存率表)。上の比較表の評価額は、耐用年数4年のA欄0.781・B欄0.562で計算しています。

4年目以降も評価額は残りますが、税額は所在地ごとの合算で決まります

少額特例の資産は3年経過だけでは申告対象から外れませんが、所有の終了や免税点等によって課税は変わります。

帳簿上の経費化が終わったパソコンにも評価額は残りますが、毎年一定額の納税が続くという意味ではありません。この設例の1台だけなら、東京都の免税点未満なので税額は0円です。実際の税額は所在地ごとの合算と端数処理で決まります。経費化が終わっただけで所有中の対象資産を申告書から削除すると、申告漏れになります。

償却資産の申告は、毎年1月31日までに資産の所在地へ

固定資産税の納税義務がある償却資産の所有者は、毎年1月1日現在の資産について、「一月三十一日までに当該償却資産の所在地の市町村長に申告しなければならない」と定められています(地方税法383条)。

申告対象でも、免税点等により課税されない場合があります。「経費にし終わったから終わり」ではありません。

一括償却資産:通常の除却・売却だけでは残額を一時に損金算入できない

一括償却資産は個々の資産を管理しなくてよいのが制度の趣旨です。その裏返しとして、通常の除却・売却だけでは、未算入残額を一時に損金算入できません。

国税庁の質疑応答事例「一括償却資産を除却した場合の取扱い」は、まさに15万円のパソコン10台の例でこう答えています。翌期に3台を除却しても、損金にできるのは10台分(除却した3台を含む)の3分の1=50万円まで。除却した3台の未償却額30万円を上乗せすることは認められない、と(法人税基本通達7-1-13)。

つまり通常の除却・売却で1〜2年以内に手放す資産は、残額を一時に損金算入できない点も、償却資産の対象外になる利点とあわせて比較します。解散や合併のときの例外は、組織再編・解散があった一括償却資産にあります。

少額減価償却資産の特例の要件(見落とすと使えない)

「中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例」(租税特別措置法67条の5・個人は28条の2)は、誰でも使えるわけではありません。要件を1つでも落とすと使えないので、必ず確認してください。

要件内容
事業者青色申告書を提出する中小企業者等。資本金1億円以下でも外れる場合があります(下の「3つの線」)
従業員数常時使用する従業員数が400人以下(令和8年3月31日以前の取得は500人以下)。特定法人は300人以下
取得価額40万円未満(令和8年3月31日以前の取得は30万円未満)
対象資産機械・器具備品などの有形資産のほか、ソフトウエアなどの無形減価償却資産、中古資産も対象(国税庁 No.5408 注意事項2)
年間の上限供用事業年度の対象資産の取得価額合計で300万円まで。事業年度が1年未満なら「300万円 × 月数 ÷ 12」(1か月未満の端数は1か月)
適用期限平成18年4月1日から令和11年(2029年)3月31日までに取得し、事業の用に供したもの
使えない資産10万円未満の資産、即時算入や一括償却を適用した資産、貸付けの用に供した資産など(下の「特例を使えない資産」)
手続き(法人)供用した事業年度に取得価額全額を損金経理し、確定申告書等に別表十六(七)と適用額明細書の両方を添付する
手続き(個人)青色申告決算書の「減価償却費の計算」の「摘要」欄に「措法28の2」と記載する

別表十六(七)の名称は「少額減価償却資産の取得価額に関する明細書」です(国税庁 No.5408)。適用額明細書の添付は、中小企業庁「少額減価償却資産の特例を拡充しました」によります。国税庁タックスアンサーNo.5408は本記事の執筆時点で「令和7年4月1日現在法令等」のままなので、30万円という記載は、取得日と説明の基準日を確認してください。

資本金1億円以下でも特例の対象から外れる主な3つの線

要件表のいちばん上、「中小企業者等」は、資本金1億円以下なら自動的に当たる、ではありません。一般的な資本のある法人では資本金・出資金1億円以下が基本ですが、次の主な除外を確認します。①②は中小企業者の定義からの除外、③は特例の適用対象からの除外です(租税特別措置法67条の5第1項・42条の4第19項7号)。

外れる線内容
① 1社で1/2以上発行済株式又は出資の総数・総額(自己株式・自己出資を除く)の2分の1以上を同一の大規模法人が所有する法人
② 複数で2/3以上①以外でも発行済株式又は出資の総数・総額(自己株式・自己出資を除く)の3分の2以上を複数の大規模法人が所有する法人
③ 適用除外事業者過去3年以内の所得を年換算した金額が15億円を超える法人(計算は表の下)

ここでいう大規模法人は、資本金・出資金が1億円を超える法人、資本や出資を持たない法人で常時使用する従業員が1,000人を超えるもの、資本金5億円以上の大法人に完全支配されている普通法人などを指します(中小企業投資育成株式会社は大規模法人から除かれます)。

③の適用除外事業者は原則として、次の金額が15億円を超える法人です(国税庁 No.5432、措置法施行令27条の4)。

基準年度の所得金額の合計額 ÷ 各基準年度の月数の合計 × 12

このほか、次の法人も確認します。

従業員数の要件と「特定法人」

個人事業主の要件

上の3つの線は法人の話です。個人事業主が使う措置法28条の2は「中小事業者」を対象にしていて、資本金も大規模法人の持株比率も出てきません。個人の事業者側の要件は次の2つです。

対象所得・資産、取得供用期限・年枠・申告等の要件も別途満たす必要があります(措置法28条の2)。

特例を使えない資産

次の資産には、この特例を使えません(国税庁 No.5408 注意事項1)。

所有権移転外リース取引で賃借人が取得したとされる資産は、この特例の対象になります(国税庁 No.5408 注意事項2)。

年300万円の枠は、思ったより早く埋まります 令和8年4月1日以後に取得し、少額特例の他の要件も満たす30万円のノートPCなら、12か月の事業年度では10台で満枠です。同日前の取得は30万円未満が条件なので、30万円ちょうどは対象外です。設立初年度など事業年度が1年に満たない会社は、さらに月割で枠が縮みます(例: 6か月なら150万円)。枠を使い切った後の30万円のPCは通常の減価償却です。
枠が足りないときは、20万円未満のものを先に一括償却資産に回して、300万円の枠を高額な資産に温存するのが定石です(一括償却資産に金額の年間上限はありません)。

一括償却資産には、青色申告・資本金の要件がない

一括償却資産(②)には、青色申告・資本金・従業員数による要件はありません。年間の上限もありません。白色申告の個人事業主でも、大企業でも使えます(所得税法施行令139条/法人税法施行令133条の2)。申告の手続きは次のとおりです。

ただし経理の側の縛りは残ります。法人税法施行令133条の2第1項が損金算入を認めるのは、その法人が「損金経理をした金額」のうち限度額に達するまでの金額です。決算で3分の1を費用に落とし忘れた年の分を、あとから申告書だけで取り返すことはできません。

①の10万円未満も、③の少額特例も、同じく損金経理が要件です(法人税法施行令133条1項・措置法67条の5第1項)。法人のこの3つのルートは、どれも「決算で費用に落としてあること」が入口になっています。

「取得価額」の判定で必ず間違える3点

ここまでの判定は、どれも「取得価額がいくらか」で決まります。間違えやすいのは次の3点です。

1. 税込か税抜かは「経理方式」で決まる(実害が出ます)

国税庁は明快に答えています。「取得価額が10万円未満であるかどうかは、法人が適用している消費税等の経理処理方式に応じて算定した価額により判定する」——つまり税抜経理なら税抜金額、税込経理なら税込金額で判定します(国税庁 No.5403 関連QA、法人税法施行令133条・平元直法2-1「5」「9」)。所得税でも同じです(No.2100 注5)。どちらの経理方式を選べるのか、選ぶと決算の何が変わるのかは税抜経理と税込経理の違いで扱っています(免税事業者はそもそも選べません)。

国税庁自身が挙げている例がこれです。税込107,800円(税抜98,000円)のパソコンを買った場合——

経理方式取得価額判定
税抜経理98,000円10万円未満 → 即時算入の金額要件を満たす
税込経理107,800円10万円未満の金額要件は対象外 → 一括償却資産・少額特例・通常償却から選ぶ

※ 表の判定は金額要件だけです。どの処理も、それぞれの処理を使う条件を満たす場合の選択肢です。

同じパソコンでも、経理方式が違えば10万円未満の制度の適否が変わります。境界の金額でも同じことが起きます。

境界の実例:税込43万円の新品のパソコン(サーバー用以外・令和8年4月1日〜令和11年3月31日に取得・供用) ・税抜経理 … 取得価額は390,909円 → 40万円未満 → 少額減価償却資産の特例の金額要件を満たす
・税込経理 … 取得価額は430,000円 → 40万円以上 → 特例は使えず、4年かけて減価償却
令和8年3月31日以前に取得・供用した改正前の30万円ラインでも同じです。税込32万円のPCは、税抜経理なら290,909円で特例の金額要件を満たし、税込経理なら金額要件の対象外。
金額要件を満たしても、特例を適用するには要件表の資格・対象資産・取得供用期限等も満たす必要があります。
なお、消費税の免税事業者は税込経理しか採用できませんので、必ず税込金額で判定します(国税庁 No.5403 関連QA・No.2100 注5)。

無料ツール:消費税 計算機(税込・税抜と端数処理)

「10万円未満か」「40万円未満か」の判定は、税抜経理なら税抜金額で行います。

2. 送料・設置費・セットアップ費は「取得価額に含める」

取得価額は購入代価+事業の用に供するために直接要した費用です。引取運賃・荷役費・運送保険料・購入手数料・関税など購入のために要した費用も含めます(国税庁 No.5400、法人税法施行令54条)。

送料等を含む取得価額で判定します 本体98,000円+送料3,000円=101,000円なら10万円未満の制度の金額要件には該当しません。一括償却資産と少額特例は、それぞれの条件を満たす場合の選択肢です。

逆に、取得価額に含めないことができる費用もあります(国税庁 No.5400)。

自動車のように「本体価格+諸費用」で買うものは、どれを取得価額に入れるかで金額が変わり、判定も変わります。

3. 通常取引される1単位で判定する(器具備品は1個・1組・1そろいごと)

取得価額は「通常1単位として取引されるその単位ごと」に判定します。国税庁が取引単位の例として挙げているのは、この2つです(No.5403)。

「その単位だけで機能するか」「通常1単位として取引される単位はどこか」で判断することになるので、金額が境界に近い場合は、税理士や所轄税務署に確認してください。通常1組・1そろいとして取引されるものを恣意的に分割して、「1台ずつなら9万円だから全部消耗品費」とすることはできません。

結局どれを選ぶか

取得価額から選ぶ、実務の判断手順
  • 10万円未満 … 個人事業者は供用年に全額を必要経費にします。法人は対象資産を供用した年度に取得価額全額を損金経理する場合、全額を損金算入できます。一括償却資産や通常の減価償却も選べます
  • 10万円以上20万円未満 … 一括償却資産と少額特例を比べます(下の表)
  • 20万円以上40万円未満(令和8年3月31日以前の取得は30万円未満) … 青色申告の対象中小企業者等なら少額減価償却資産の特例(年300万円まで)。使えないなら通常の減価償却
  • 40万円以上(同上) … 通常の減価償却。耐用年数に応じた償却限度額の範囲で償却します(法人は損金経理した金額のうち償却限度額までが損金)
10万円以上20万円未満の資産で、一括償却資産と少額特例を比べる
比べる点一括償却資産少額減価償却資産の特例
償却資産税償却資産の対象外申告対象となり得る
損金になる時期各年度の限度額まで(12か月年度なら3年均等)供用年度に算入
年300万円の枠使わない使う
途中で除却・売却したとき通常の除却・売却だけでは残額を一時損金にできない供用年度に全額を算入済み

どの処理も、それぞれの処理を使う条件と特例の要件を満たす場合の選択肢です。貸付け用の資産・所定のリース資産・使用可能期間1年未満の資産は、例外・少数のケースを確認してください。

もう一つ、忘れられがちな視点があります。赤字(欠損)の年の即時損金算入は、当期所得に対する法人税額を減らす効果はありません。ただし、次の点も確認します。

各年度の所得と適用条件を置いて比較します。制度は「どれが正解」ではなく、自社の状況で選ぶものです。

決めたあとに打つ仕訳

選び終わったら、最後に手が動くのは仕訳です。3つのルートを、次の前提で並べます。

ルート買ったとき決算のとき
① 10万円未満
(例: 98,000円のプリンタ)
消耗品費98,000/普通預金98,000 仕訳なし。購入年度の期末までに供用し、買ったときに費用へ落ちているので、それが損金経理にあたります
② 一括償却資産
(例: 150,000円のPC)
一括償却資産150,000/普通預金150,000 減価償却費50,000/一括償却資産50,000(供用年度以後の各年度が12か月で、各期損金経理する設例)
③ 少額減価償却資産の特例
(例: 350,000円の複合機)
工具器具備品350,000/普通預金350,000 減価償却費 350,000
/ 工具器具備品 350,000
全額を落としきる。翌期以降の仕訳はありません

損金経理だけでは足りず、少額特例の明細添付、一括償却の申告書記載・計算書類保存等の要件も必要です。

税法は勘定科目の名前を決めていない(求めるのは損金経理)ので、②を「一括償却資産」、③を「工具器具備品」としたのは一例です。買ったときに直接 消耗品費などで費用処理しても、その事業年度に損金経理をした事実は残ります。一括償却した資産は償却資産の対象外となるため、通常償却・少額特例の適用資産との区別を確認します。逆に③で費用化した器具備品などの有形の事業用資産は、帳簿から消えても償却資産の申告には残ります(償却資産の申告)。

例外・少数のケース

ここまでの説明に当てはまらない資産と、組織再編・解散があった場合の扱いをまとめます。

貸付けに使う資産・リース資産

使用可能期間が1年未満の資産

金額とは別に、使用可能期間が1年未満の対象資産は即時算入の区分があります。法人は供用年度に全額を損金経理すること、個人は供用年の必要経費算入が定められています(法人税法施行令133条・所得税法施行令138条)。この記事の金額による表・図・判断手順は、この別区分を除いた比較です。

組織再編・解散があった一括償却資産

一括償却資産の「÷36×事業年度の月数」と「途中で手放しても残額を一時に損金算入できない」には、法人の主な例外があります(法人税法施行令133条の2)。

適格分割等とは、適格分割、適格現物出資、適格現物分配(残余財産の全部の分配を除く)をいいます。所定要件とは、移転事業のために取得した資産又は移転資産に係るもの等をいいます。

償却資産の申告先が市町村長でない資産

地方税法389条1項により知事・総務大臣が評価する資産と、742条1項・3項により知事が指定した資産の所有者は、同法383条の市町村長への申告の対象から除かれます。

よくある質問

10万円未満のものは、必ず「消耗品費」で処理しないといけませんか?

科目名は問いません。消耗品費・事務用品費など実態に合った費用科目で構いません。法人の場合は、事業の用に供した事業年度に取得価額の全額を損金経理していることが条件です。いったん資産に計上したものを、その後の事業年度で一時に損金経理しても損金にはなりません(国税庁 No.5403 注2)。

一括償却資産を3年の途中で捨てたら、残りは経費にできますか?

通常の除却・売却だけではできません。未算入残額を一時に損金算入することはできず、各年度の限度額までの損金算入を続けます(法人税基本通達7-1-13、国税庁 質疑応答事例「一括償却資産を除却した場合の取扱い」)。解散や合併のときの例外は組織再編・解散があった一括償却資産にあります。1〜2年で手放す可能性が高い資産は、この点を踏まえて選んでください。

少額減価償却資産の特例は個人事業主も使えますか?

使えます。青色申告をする常時使用従業員400人以下の個人が対象です(令和8年4月1日以後取得分)。不動産・事業・山林所得を生ずる業務に供した対象資産に限り、取得価額40万円未満・年間300万円の枠、除外資産・明細添付等の要件があります。開廃業年の枠は300万円÷12×業務を営んだ月数(端数月は切上げ)です(租税特別措置法28条の2・同施行令18条の5)。手続きは特例の要件の表にあります。

白色申告でも使える処理はありますか?

あります。10万円未満の全額損金算入と、20万円未満の一括償却資産は、青色申告でなくても使えます。この記事で比較する3制度のうち、青色申告が要件になるのは中小企業者等の少額減価償却資産の特例です。

年間300万円の枠は、事業年度が1年未満でも300万円ですか?

いいえ。事業年度が1年に満たない場合は「300万円 × その事業年度の月数 ÷ 12」が上限になります(国税庁 No.5408)。この月数は暦にしたがって数え、1か月に満たない端数は1か月に切り上げるので、6か月と1日なら7か月です(措置法67条の5第2項)。設立初年度などは枠が小さくなるので注意してください。

中古のパソコンやソフトウェアも、少額減価償却資産の特例の対象になりますか?

対象になります。国税庁 No.5408 の注意事項は、器具備品・機械装置などの有形減価償却資産のほか、ソフトウエア・特許権・商標権等の無形減価償却資産、所有権移転外リース取引で賃借人が取得したとされる資産、そして中古資産も対象になるとしています。ただし令和4年4月1日以後に取得して貸付けの用に供したもの(主要な事業として行う貸付けを除く)は対象外です。

償却資産税の申告は、いつまでにどこへ出すのですか?

毎年1月1日現在に所有する申告対象の償却資産は、原則1月31日までに所在地の市町村(東京23区は資産の所在する区の都税事務所)へ申告します。期限が土日祝等なら翌開庁日となり、令和8年度の期限は令和8年2月2日(月)でした(地方税法383条・20条の5、東京都の令和8年度申告の手引き)。本店の所在地ではなく資産の所在地です。申告の対象になる資産・ならない資産は償却資産の申告にあります。

償却資産税は、どの会社にも必ずかかりますか?

かかりません。所在地の市町村(東京23区は区)ごとの償却資産の課税標準となる額の合計が、令和8年度は150万円未満、令和9年度以後は180万円未満なら免税点未満となり原則課税されません(地方税法351条。ただし条例による例外があります)。免税点未満の当年に償却資産税がかからなくても、どちらが有利かは所得・欠損・将来の課税標準や特例の適用条件を置いて比較する必要があります。

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出典

国税庁タックスアンサー・財務省「令和8年度税制改正の大綱」・東京都主税局の公表資料に基づいて作成。

本記事は一般的な情報提供を目的としたものです。償却資産税の税率・免税点は市区町村により異なる場合があります。個別の判断は税理士・所轄税務署・資産所在地の市区町村にご確認ください。

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