電子帳簿保存法の検索要件|専用システムなしで満たす2つの方法
結論から言います。電子帳簿保存法の検索要件は、専用システムを買わなくても満たせます。国税庁が具体的な方法を2つ示しており、どちらか一方をやればそれで終わりです。
- 方法① ファイル名方式 … 保存するファイルの名前を
20260708_Amazon_8978.pdfのように「日付_取引先_金額」で統一する - 方法② 索引簿方式 … ファイルは
1.pdf2.pdfと連番で保存し、Excel/CSVの一覧表(索引簿)で中身を管理する
しかも、その前に確かめるべきことがあります。基準期間(2年前)の売上高が5,000万円以下なら、検索要件そのものが不要です。まず自分が「どの段」にいるかを見てから、手を動かしてください。
この記事は検索要件を無料で満たす手順だけを扱います。電帳法の全体像(何が義務で何が任意か、猶予措置、罰則)は 電子帳簿保存法をわかりやすく をご覧ください。
検索要件の中身と、3段階で緩む仕組み
検索要件は3つです(電子帳簿保存法施行規則2条6項5号。電子取引には規則4条1項で準用)。
- 取引年月日その他の日付・取引金額・取引先を検索の条件として設定できること
- 日付または金額は、その範囲を指定して条件を設定できること
- 2つ以上の任意の記録項目を組み合わせて条件を設定できること
ここまでは多くの記事が書いています。大事なのはこの先です。この3つは、2段階で減ります。
「ダウンロードの求めに応じる」は、ほぼ全員が満たせます
税務調査のときに、調査担当者から求められた電子取引データをコピーして渡せる状態にしておく、という意味です。ファイルをPCやクラウドに普通に保存していれば満たせます。形式や並び順の決まりはなく、記憶媒体そのものを提出する必要もありません(問59)。
この1段を降りるだけで、(2)範囲指定と(3)組み合わせが消えます。残るのは「日付・金額・取引先で探せること」だけです。
売上5,000万円の数え方(間違えやすい3点)
- 基準期間=2年前です。個人事業者は前々年(1/1〜12/31)、法人は前々事業年度。今年の売上ではありません。
- 税抜金額で判断します。そして、消費税法上の「課税売上高」とは違い非課税売上を含みます。逆に営業外収益・特別利益は含みません。
- 基準期間がない新規開業者・新設法人は、初年度と2年目は検索要件が不要です(問51)。
また、いったん要件どおり保存できていたのに特段の事情なく検索要件を満たせなくなった場合は、猶予措置の対象になりません(問96)。「一度も対応していない」より「やめた」のほうが立場は悪くなります。
方法①と②、どちらを選ぶか(判断基準)
検索要件を満たす方法は2つ。どちらか一方でOKです(問19・問50)。両方やる必要はありません。
| ① ファイル名方式 | ② 索引簿方式 | |
|---|---|---|
| 準備 | フォルダを作るだけ | Excel/CSVを1枚用意する |
| 1件あたりの作業 | ファイル名を書き換える | 表に1行足す(ファイルは連番のまま) |
| 満たせる要件 | (1)のみ ダウンロードの求めに応じることが前提 | (1)(2)(3)すべて 免除に頼らず原則どおり満たせる |
| 金額の範囲検索 (例: 1万〜3万円) | できない | できる(オートフィルタ) |
| 値引き等で金額が変わったら | ファイル名を直す | セルを直すだけ |
| 同じ日・同じ取引先・同じ金額が2件 | 枝番が必要(同名は保存できない) | 連番が別なので問題なし |
| 件数が増えたとき | 破綻しやすい | 耐える |
| 向いている規模(当サイトの目安) | 月10件くらいまで | 月20件を超えたら |
ここは、ほとんどの解説記事が書いていません。国税庁の一問一答問50は、ファイル名方式をこう説明しています──「税務職員のダウンロードの求めに応じることができるようにしておき、当該取引データのファイル名を『取引年月日その他の日付』『取引金額』『取引先』を含み、統一した順序で入力しておくことで(中略)検索機能の確保の要件を満たす」。
ダウンロードの求めに応じることが、文中で前提として置かれているのです。理由は単純で、ファイル名では金額の範囲検索((2))ができないから。つまりファイル名方式=(2)(3)の免除に乗る方法です。
いっぽう索引簿(Excel)方式について、同じ問50は「入力された項目間で範囲指定、二以上の任意の記録項目を組み合わせて条件設定をすることが可能な状態であれば」要件を満たす、と書き、解説で「上記①〜③のいずれの機能も満たす」と明言しています。免除に頼らず、原則どおり3要件をフルで満たせる無料の方法は、索引簿だけです。
実務上、ダウンロードの求めに応じるのは普通にファイルを保存していれば満たせるので、これがすぐ問題になるわけではありません。ただし「ファイル名にしたから完璧」ではないことは知っておいてください。
方法① ファイル名方式のやり方
保存するファイルの名前に、日付・取引先・金額を、統一した順序で入れます。国税庁が示している例はこれです(問19・問50)。
2021年(令和3年)1月31日付、株式会社霞商店からの110,000円の請求書データ
→ 20210131_㈱霞商店_110000
これを自分の取引に当てはめると、こうなります。
| 受け取ったもの | ファイル名 |
|---|---|
| 2026年7月8日 Amazon 8,978円の領収書 | 20260708_Amazon_8978.pdf |
| 2026年7月10日 株式会社ヤマダ商事 132,000円の請求書 | 20260710_ヤマダ商事_132000.pdf |
| 2026年7月15日 楽天モバイル 3,278円の請求書 | 20260715_楽天モバイル_3278.pdf |
ルールは4つだけ
- 日付は8桁(
20260708)。和暦・西暦はどちらでも構いませんが、混在させないこと。国税庁は「混在は抽出機能の妨げとなる」と明記しています(問50)。 - 金額はカンマなしの数字(
8978)。税抜・税込は、帳簿の処理方法に合わせるのが基本です(問57。詳細はFAQへ)。 - 取引先は自分が分かる名前で統一。「アマゾンジャパン合同会社」でも「Amazon」でも構いませんが、同じ相手を毎回同じ表記にすること。表記が揺れると検索で拾えません。
- 順序は自由。ただし変えない。「日付_金額_取引先」でも要件は満たせます(求められているのは「統一した順序」だけ)。
取引先ごとにフォルダを分けるなら、ファイル名は「日付_金額」でよい
これは知られていない緩和です。国税庁は問50でこう認めています。「取引先」ごとにフォルダを区分して保存し、そのフォルダ内のファイル名に「日付」と「金額」だけを入れて管理していても、日付・金額・取引先を検索の条件として設定できるなら要件を満たす。
つまり、ヤマダ商事/20260710_132000.pdf という形でも構いません。取引先が固定されている定期購入・サブスクは、この形のほうが楽です。
20260708_Amazon_8978_1.pdf / 20260708_Amazon_8978_2.pdf のように末尾に枝番を足してください。3項目が統一した順序で入っている状態は保たれます(一問一答に明示の記載はありませんが、要件は「3項目を含み、統一した順序で入力しておくこと」なので、末尾の枝番はこれを損ないません)。ただし、こうした衝突は件数が増えるほど頻発します。索引簿方式に移るサインだと考えてください。
探し方は、WindowsやMacの検索窓で足ります
専用の検索ソフトは不要です。エクスプローラー(Windows)やFinder(Mac)の検索窓に Amazon や 20260708 と打てば、ファイル名で絞り込めます。これで「取引年月日・取引金額・取引先を検索の条件として設定することができる」状態です。
② 件数が増えると破綻する。年間240件のファイルが1フォルダに並ぶと、目視での確認は現実的ではなくなります。金額の範囲検索もできないため、「7月に3万円以上払った先」といった調べ方ができません。
方法② 索引簿方式のやり方
やることは2つだけです。
- 受け取ったファイルを
1.pdf2.pdf3.pdf…と連番で保存する - Excel/CSVに連番・取引年月日・取引金額・取引先の一覧表(索引簿)を作り、連番でファイルと対応づける
国税庁も索引簿のサンプル(Excel)を無料で配布しています(「参考資料(各種規程等のサンプル)」のページ)。その列構成は、次のとおりです。
| 列 | |
|---|---|
| 国税庁のサンプル | 連番 / 日付 / 金額 / 取引先 / 備考 |
| 当サイトのテンプレート | 連番 / 取引年月日 / 取引先 / 取引金額(税込) / 書類種別 / 書類番号 / 保存ファイル名 / 備考 |
当サイトのテンプレートは、この国税庁サンプルをベースに、実務で必要になる保存ファイル名・書類種別・書類番号の列を足したものです。保存ファイル名の列があるので、ファイルを 1.pdf の連番にしなくても(=ファイル名方式と併用しても)そのまま突き合わせられます。記入例つきのCSVで、Excel・Googleスプレッドシート・Numbersでそのまま開けます。
Excelのオートフィルタで、検索要件は満たせます
索引簿を作ったら、見出し行を選択して[データ]→[フィルター]を押すだけです。これで3要件がそろいます。
| 要件 | Excelでの操作 |
|---|---|
| (1) 日付・金額・取引先で検索 | 各列のフィルターで値を選ぶ |
| (2) 範囲指定 | 金額列 →[数値フィルター]→[指定の範囲内] 日付列 →[日付フィルター]→[指定の範囲内] |
| (3) 組み合わせ | 取引先で絞ったあと、続けて金額でも絞る |
「組み合わせ検索」と聞くと、AND検索の専用画面が要ると思いがちですが、そうではありません。一問一答問49は、こう書いています。
・「A又はB」(OR)の組合せは必要ない── それぞれの項目で二度検索するのと実質的に変わらないため。
・「一の記録項目で検索し、探し出された記録事項を対象に、別の記録項目で再度検索する方式(段階的な検索)も要件を満たす」。
これはまさにExcelのオートフィルタで列を順に絞り込む操作そのものです。特別な機能はいりません。表計算ソフトが1つあれば、検索要件は原則どおり満たせます。
2026-07-08 のように桁をそろえる(2026/7/8 だと並べ替えが崩れる環境があります)。金額はカンマを入れず数値だけにする(文字列になると範囲検索ができません)。取引先の表記は1つに統一する。この3つを守れば、あとは行を足していくだけです。
索引簿づくりが一番つらいのは Amazon・楽天
ここまでの手順は、メールで届くPDFには難なく効きます。届いたときに1件ずつ名前を付けるか、索引簿に1行足せばいいだけだからです。
問題はECサイトです。Amazon・楽天での購入は、まぎれもなく電子取引(保存義務あり)。ところが──
- 領収書は自分でダウンロードしに行かないといけない(メールでは届かない)
- 注文履歴は「注文日・金額・注文番号」がバラバラの場所にあるので、1件ずつ開いて転記することになる
- キャンセルした注文も同じ見た目で並んでいる。お金を払っていない取引を索引簿に入れてはいけない
- 年に何十件も買っていると、それだけで半日仕事になる
つまり手作業で転記する必要はありません。ツールで取得して構いません。
そこで、Amazonの注文履歴から索引簿CSVを自動生成するChrome拡張を用意しました。
Chrome拡張:アマゾン領収書・電帳法索引簿メーカー Amazonの注文履歴を開いて1クリック。取引年月日・取引先・取引金額・注文番号の索引簿CSVを自動生成します(Excelで文字化けしないUTF-8 BOM付き)。キャンセル注文は自動で除外。ページ上に金額が出ない注文は領収書ページから自動補完し、それでも取れなかった項目は「要確認」列で申告します(推測値で埋めません)。処理はすべてブラウザ内で完結し、注文データは外部に送信しません。無料で、いま開いている注文履歴ページ(通常10件)ぶんを作れます。全ページの自動巡回と領収書ページの一括保存はPro版。キャンセル注文の除外は、ただの親切機能ではありません。支払っていない取引を索引簿に載せると、索引簿と帳簿が合わなくなります。逆に、金額が¥0と表示される注文(無料サブスク・ポイント全額充当・請求前)は実在するので、この拡張は行を消さずに「要確認」を立てて人に確認させます。索引簿では誤った値のほうが空欄より有害だからです。
検索要件だけでは足りない(真実性の要件)
最後に、忘れずに。検索要件(可視性)を満たしても、それだけでは電子取引データの保存要件は完成しません。もう1つ、真実性の確保(改ざん防止)が要ります(規則4条1項)。
ただし、こちらも無料で終わります。4つの選択肢のうち、「正当な理由がない訂正及び削除の防止に関する事務処理規程」を定めて備え付け、規程どおり運用するを選べばよく、国税庁がWordのサンプルを無料で配布しています(法人用・個人事業者用の2種類。問33)。会社名・管理責任者・保存年数などを埋めれば完成です。
詳しくは 電子帳簿保存法をわかりやすく|義務は3区分のうち電子取引だけ で解説しています(猶予措置・罰則・スキャナ保存が任意である理由も、こちらです)。
- まず売上5,000万円以下(2年前)かを確認する。該当すれば検索要件そのものが不要(ただしデータの保存は必要)
- 該当しないなら、方法①か②のどちらか一方を選ぶ。両方は不要
- 月10件くらいまでならファイル名方式。
20260708_Amazon_8978.pdf(和暦・西暦を混在させない) - 月20件を超えたら索引簿方式。ファイルは連番、Excelで一覧表。オートフィルタで3要件すべてを満たせる
- 改ざん防止は事務処理規程(国税庁のWordサンプル)で無料で終わる
- Amazon・楽天は手作業だと破綻する。ツールでの自動取得は国税庁が認めている(問68)
よくある質問
Q. ファイル名は「日付_取引先_金額」の順でないとダメですか?
A. 順序に決まりはありません。国税庁が求めているのは「取引年月日その他の日付・取引金額・取引先を含み、統一した順序で入力しておく」ことだけです(問50)。金額を先に書いても構いませんが、途中で順序を変えないでください。日付の和暦・西暦も、どちらでも構いませんが混在させないこと(混在は抽出機能の妨げになります)。
Q. 索引簿に書く取引金額は、税抜と税込のどちらですか?
A. 帳簿の処理方法(税抜経理か税込経理か)に合わせるのが基本です。ただし、授受した電子取引データに記載されている取引金額をそのまま記録項目としても差し支えない、とされています(問57)。税務調査は帳簿を起点に進むため、帳簿と同じ金額で検索できるほうが望ましい、という理由です。
Q. 同じ日・同じ取引先・同じ金額の領収書が2枚あるときは?
A. ファイル名方式では末尾に枝番を足してください(例: 20260708_Amazon_8978_1.pdf / 20260708_Amazon_8978_2.pdf)。同じ名前のファイルは同じフォルダに置けないためで、3項目が統一した順序で入っている状態は保たれます。索引簿方式なら連番が別なので、この問題はそもそも起きません。件数が増えるほど衝突は起きやすくなるので、これも索引簿方式へ移る理由のひとつです。
Q. 金額が書かれていない契約書や見積書はどう扱いますか?
A. 単価契約のように記載すべき金額がない電子取引データは、「取引金額」を空欄または0円と設定して差し支えありません(問58)。ただし空欄にする場合は、取引金額が空欄であることを条件として検索できるようにしておく必要があります。索引簿ならオートフィルタの「空白セル」で絞り込めるので、そのまま満たせます。
Q. 1か月分の取引がまとめて書かれた納品書は、1行ですか、明細ごとですか?
A. どちらでも構いません(問55)。個々の取引ごとの取引年月日・取引金額を使う方法のほか、そのデータを受領した年月日と記載された取引金額の合計額を使う方法も認められています。ただし各課税期間において自社で一貫した規則性を持たせることと、日付を個々の取引日にしたなら金額も個々の取引金額にする(合計額なら受領日と合計額で揃える)ことが必要です。
Q. Amazonの注文履歴からツールでデータを取り出して索引簿を作ってもよいのですか?
A. 認められています。国税庁は、ECサイトのマイページ等からAPI連携・ファイル連携・スクレイピング・RPA等の方法で電子取引データを取得し保存する場合であっても問題ない、と明記しています(問68)。ECサイトから取得した領収書データを保存しておけばよく、出品者から直接受け取っていなくても代理交付として扱われます。
Q. ファイル名方式と索引簿方式は、両方やる必要がありますか?
A. 不要です。どちらか一方で検索要件は満たせます。ただし索引簿方式でも、ファイル名を連番だけにせず「日付_取引先_金額」にしておくと、索引簿を開かなくても目視で探せて便利です。二重に作業が増えるわけではないので、余力があれば両方の形にしておくと安心です。
出典
- 国税庁「電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】」(令和8年7月)── 問19(ファイル名の付け方・フォルダ格納・索引簿の作成例)、問33(事務処理規程のサンプル)、問48(検索要件の3項目と免除)、問49(「A又はB」は不要/段階的な検索でよい)、問50(専用システムがない場合の索引簿方式・ファイル名方式)、問51(売上5,000万円以下の判定)、問52(出力書面の整理方法)、問55(1か月分をまとめた納品書)、問57(取引金額の税抜・税込)、問58(金額のないデータ)、問59(ダウンロードの求め)、問68(ECサイトの領収書・スクレイピング/RPAでの取得)、問96(検索要件を満たせなくなった場合)
- 国税庁「参考資料(各種規程等のサンプル)」── 索引簿の作成例(Excel)、電子取引データの訂正及び削除の防止に関する事務処理規程(法人の例・個人事業者の例/Word)
- 電子帳簿保存法施行規則 2条6項5号(検索機能の確保)・4条1項(電子取引の保存要件)・4条1項4号(事務処理規程)
- 電子帳簿保存法取扱通達 4-12(ファイル名による検索)・7-3(出力書面の整理方法)
本記事は一般的な情報提供を目的としたものです。個別の判断は税務署または税理士にご確認ください。