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社会保険の扶養の条件|130万円と税法上の扶養の決定的な違い

「扶養」で検索して出てくる記事の多くは、2つの制度をひとつに混ぜて書いています。これが最大の誤りのもとです。

結論から言うと、扶養には2種類あります税法上の扶養(配偶者控除・扶養控除 → 世帯の所得税・住民税が安くなる)と、社会保険上の扶養(被扶養者 → 本人が健康保険料・年金保険料を払わなくてよくなる)。条件も、判定のしかたも、外れたときの影響も、全部違います。

とくに決定的なのは判定期間です。税法上の扶養は1月〜12月の実績で確定しますが、社会保険上の扶養は「これから先1年間の見込み」で判定します。だから社会保険では「今年はまだ50万円しか稼いでいない」は言い訳になりません。月収が108,333円を継続して超えた時点で、その先1年の見込みは130万円以上だとみなされます。

扶養は2種類ある(まずここを分ける)

同じ「扶養」という言葉ですが、根拠の法律が違います。税法上の扶養は所得税法社会保険上の扶養は健康保険法。判定するのも、税は税務署、社会保険は年金事務所・健康保険組合です。片方だけ外れることも普通に起こります。

税法上の扶養
(配偶者控除・扶養控除)
社会保険上の扶養
(被扶養者)
何が得になるか扶養する人の所得税・住民税が下がる扶養される人本人の健康保険料・年金保険料がゼロになる
判定する期間その年の1月1日〜12月31日の実績(12月31日の現況で確定)認定日以降の、今後1年間の見込み(過去の実績ではない)
収入の数え方課税所得(合計所得金額)。通勤手当・失業給付・遺族年金・障害年金は非課税なので数えない総収入。通勤手当・失業給付・傷病手当金・出産手当金・公的年金も数える
金額の基準合計所得金額62万円以下(給与だけなら年収136万円以下)※令和8年分から(令和7年分は58万円/123万円)年収130万円未満(60歳以上・障害者は180万円未満/19歳以上23歳未満は150万円未満)
基準を超えたとき配偶者特別控除で段階的に減る(配偶者の場合)=崖ではない保険料がいきなり全額発生する=
手続き年末調整の扶養控除等申告書/確定申告会社経由で被扶養者(異動)届(事実発生から5日以内)
税法上の扶養(配偶者控除・扶養控除) 社会保険上の扶養(被扶養者) 得をする人 扶養する人の税金が下がる (世帯の所得税・住民税) 本人の保険料がゼロになる (健康保険料・年金保険料) 判定する期間 ← 最大の違い 1月〜12月の「実績」 12月31日の現況で確定する 今後1年間の「見込み」 月108,333円を超えた時点で外れる 収入の数え方 課税所得だけ 通勤手当・失業給付・遺族年金は除外 総収入(非課税でも数える) 通勤手当・失業給付・傷病手当金も込み 金額の基準 合計所得 62万円以下 給与だけなら年収136万円以下(令和8年分) 年収 130万円未満 60歳以上・障害者は180万円未満 外れたときの影響 控除が段階的に減る 配偶者特別控除があるので崖ではない 保険料が一気に発生する 年20万〜30万円(本人負担・後述) 判定・届出先 税務署(年末調整・確定申告) 年金事務所・健康保険組合(認定)
「税法上の扶養」と「社会保険上の扶養」は別の制度。判定期間(実績 vs 見込み)収入の範囲(課税所得 vs 総収入)が違うため、税法上は扶養のままなのに社会保険だけ外れるということが普通に起こる。
混同が生む典型的な事故 「今年の給料はまだ90万円だから大丈夫」——これは税法上の話です。社会保険は今後1年間の見込みで見るので、月収が108,333円を継続的に超えた時点で扶養から外れます。年末に慌てて調整しても、社会保険では手遅れです。

社会保険の扶養の条件(3つの関門)

健康保険の被扶養者になるには、日本国内に住所(住民票)があり、被保険者に主として生計を維持されていることを前提に、次の関門をすべて通る必要があります。

関門1: 年収130万円未満(60歳以上・障害者は180万円未満)

基本の金額基準です。ただし年齢によって基準が変わります

扶養される人年間収入の基準
原則130万円未満
60歳以上、または障害厚生年金を受けられる程度の障害者180万円未満
19歳以上23歳未満(被保険者の配偶者を除く)150万円未満
※扶養認定日が令和7年10月1日以降

19歳以上23歳未満の150万円は、令和7年度税制改正(特定扶養控除の見直し)に合わせて社会保険側も引き上げられたもので、比較的新しいルールです。年齢は扶養認定日が属する年の12月31日時点で判定します(11月に19歳になる人は、その暦年から150万円で見ます)。配偶者は対象外で、配偶者は19歳でも130万円のままです。

関門2: 同居なら「被保険者の収入の半分未満」、別居なら「仕送り額未満」

130万円未満でも、これを満たさないと認定されません。

たとえば被保険者の年収が200万円なら、同居の家族は100万円未満でなければ扶養に入れません(130万円未満でもダメ)。別居の親に月5万円(年60万円)を仕送りしているなら、親の年金収入が60万円以上あると扶養に入れないのが原則です。

「半分以上」でも認められることがある 日本年金機構は、収入が被保険者の半分以上でも「被保険者の年間収入を上回らないときで、その世帯の生計の状況を総合的に勘案して、被保険者が生計維持の中心的役割を果たしていると認めるときは被扶養者となることがあります」としています。半分をわずかに超えただけで機械的に否認されるわけではありません。

関門3: 対象になる親族の範囲(同居が要る人・要らない人)

誰でも扶養に入れられるわけではありません。3親等内の親族が上限で、そのなかが2つに分かれます。

同居が不要な人(生計維持だけでよい)同居が必要な人(生計維持+同一世帯)
・配偶者(未届の事実婚を含む)
・子、孫、兄弟姉妹
・父母、祖父母などの直系尊属
・上記以外の3親等内の親族
 (伯叔父母、甥姪とその配偶者など)
・内縁関係の配偶者の父母および子

まちがえやすいのが兄弟姉妹配偶者の親です。兄弟姉妹は同居不要(別居の弟に仕送りしていれば扶養に入れられる)。一方配偶者の父母(義父母)は「直系尊属」ではないので、同居していないと扶養に入れられません。自分の親は別居でもOK、義理の親は同居が必須——ここは対称ではありません。

「収入」の数え方が税法とまったく違う

ここが最大の落とし穴です。社会保険の130万円は「課税所得」ではなく「総収入」で見ます。所得税では非課税のものも、社会保険では収入として数えます。

受け取るもの税法上の扶養社会保険上の扶養(130万円)
給与・賞与数える数える
通勤手当(交通費)非課税分は数えない数える
雇用保険の失業給付非課税。数えない数える
健康保険の傷病手当金・出産手当金非課税。数えない数える
公的年金(遺族年金・障害年金を含む)遺族・障害年金は非課税。数えない数える
自営業の収入収入 − 必要経費収入 − 事業遂行のための必要経費

日本年金機構は明記しています——「被扶養者の収入には、雇用保険の失業等給付、公的年金、健康保険の傷病手当金や出産手当金も含まれますのでご注意願います」。非課税=収入ゼロではありません。

失業給付の「日額3,612円の壁」

この論点は、上の原則から機械的に出てきます。130万円を日額に割り戻すと 1,300,000 ÷ 360 = 3,611.1…円。日本年金機構は「(雇用保険等の受給者の場合、日額3,611円以下であれば要件を満たします)」「ただし、基本手当(3,612円以上)の支給が始まった場合は、扶養削除の届出が必要となります」としています。

退職 → 失業給付 の順番で起きること ・退職して収入ゼロ → 配偶者の扶養に入れる(雇用保険の待期期間中・給付制限中も、収入要件を満たせば被扶養者でいられます)
・基本手当日額 3,612円以上の支給が始まる → 扶養から外れる(削除の届出が必要)
・受給が終わる → また扶養に入れる
つまり数か月だけ扶養を出入りするのが正しい姿です。「失業給付は非課税だから扶養のままでいい」は誤りで、これを放置すると後述の医療費返還に直結します。

なお、60歳以上・障害者は基準が180万円なので、日額は 1,800,000 ÷ 360 = 5,000円 が境目になります。

130万円は「見込み」——月108,333円が実務の物差し

日本年金機構の定義はこうです。「年間収入とは、過去の収入のことではなく、被扶養者に該当する時点および認定された日以降の年間の見込み収入額のことをいいます。(給与所得等の収入がある場合、月額108,333円以下であれば要件を満たします。)」

130万円 ÷ 12 = 108,333.3…円。つまり月給が108,333円を継続的に超える見込みになったら、その時点で扶養から外れます。1月から12月までの合計が130万円に到達した日ではありません。ここが税法との決定的な違いです。

踏み込んだ一段: 令和8年4月から「労働契約の内容」で判定できるようになった 扶養認定日が令和8年4月1日以降で、扶養される人の収入が給与収入のみの場合、労働条件通知書などに書かれた賃金から見込まれる年間収入が130万円未満(かつ他の収入が見込まれず、同居なら被保険者の年収の1/2未満)であれば、原則として被扶養者に該当するものとして取り扱われます。「見込み」の中身が、契約書という客観的な物差しに寄せられた改正です(日本年金機構)。
踏み込んだ一段: 一時的に130万円を超えても、事業主の証明で連続2回まで残れる 人手不足による労働時間の延長などで一時的に収入が増え、年収が130万円以上(60歳以上・障害者は180万円、19歳以上23歳未満は150万円)となっても、事業主の証明を添付することで、原則、連続2回まで被扶養者の認定が可能です(全国健康保険協会「被扶養者の認定における特例」)。恒常的な増加は対象外です。

扶養から外れるとどうなるか(実数)

扶養に入っている間、本人の保険料は0円です(健康保険の被扶養者+国民年金の第3号被保険者)。外れると、いきなり全額が発生します。行き先は2つに分かれます。

ケースA: 勤め先の社会保険に入れる場合(労使折半なので負担は半分)

週20時間以上などの加入条件を満たせば、勤め先の健康保険・厚生年金に入ります。保険料は会社と折半です。

東京都・39歳・年収140万円(月116,667円)の場合(令和8年度)——標準報酬月額は118,000円(第8等級)。

項目料率本人負担(月額)年額
健康保険9.85%5,811円69,732円
子ども・子育て支援金0.23%136円1,632円
厚生年金18.3%10,797円129,564円
合計16,744円200,928円

※ 当サイトの社会保険料計算ロジックで算出(協会けんぽ 令和8年度の東京都料率)。会社も同額(年200,928円)を負担しています。

ケースB: 勤め先の社会保険に入れない場合(国保+国民年金を全額自己負担)

週20時間未満のまま年収130万円を超えた、配偶者が自営業、といった場合は、国民健康保険+国民年金に自分で加入します。労使折半はありません。全額自己負担です。

世田谷区・39歳・単身世帯・前年の給与収入140万円の場合(令和8年度)——給与所得 75万円 − 住民税基礎控除43万円 = 賦課基準額 32万円。総所得75万円は2割軽減の基準(43万+57万=100万円)以下なので、均等割は2割軽減されます。

区分所得割均等割(2割軽減後)年額
基礎(医療)分32万円 × 7.51% = 24,032円47,600円 × 0.8 = 38,080円62,112円
後期高齢者支援金分32万円 × 2.80% = 8,960円17,600円 × 0.8 = 14,080円23,040円
子ども・子育て支援金分32万円 × 0.27% = 864円1,873円 × 0.8 = 1,498円2,362円
国民健康保険料 計約87,500円

※ 40〜64歳の方は、これに介護分(所得割2.43%・均等割17,800円)が加わります。100円未満の端数処理・軽減の適用は自治体により異なるため概算です。

扶養を外れたときの年間負担(東京都・39歳・年収140万円)
  • 扶養に入っている間: 0円
  • ケースA(勤め先の社会保険): 年 約200,900円(うち厚生年金 129,564円)
  • ケースB(国保+国民年金): 年 約302,500円(国民年金 215,040円+国保 約87,500円)

同じ年収でも、勤め先の社会保険に入れるかどうかで年間10万円ほど違います。130万円を「超えるか」より、超えるならどちらの入口に行くかのほうが金額のインパクトが大きい。

本人が1年間に払う保険料(東京都・39歳・年収140万円・令和8年度) 扶養に入っている 0円 ケースA 勤め先の社会保険 健保等 71,364 厚生年金 129,564 約200,900円 ケースB 国保+国民年金 国保 約87,500 国民年金 215,040(月17,920円) 約302,500円 0 10万円 20万円 30万円 労使折半のあるケースAと、全額自己負担のケースBでは、同じ年収でも年間10万円ほど差がつく
扶養を外れたときの本人負担の年額。会社の社会保険に入れれば会社が同額を負担してくれるが、国保・国民年金は全額が自分の財布から出る。国民年金保険料は令和8年度で月17,920円

ただし、外れるとメリットもある(損得は保険料だけではない)

勤め先の社会保険に入る場合(ケースA)は、払う代わりに給付が増えます

「130万円を超えないように働き方を抑える」だけが正解ではありません。手取りの減少は一時的でも、厚生年金は一生の給付です。

無料ツール:社会保険料 計算機 扶養を外れて社会保険に入ったら、毎月いくら引かれるのか。月給を入れるだけで本人負担・会社負担を自動計算。47都道府県の令和8年度料率に対応。

手続きと、遡って外れたときの医療費返還

外れるときの手続き

扶養から外れる事実が起きたら、会社を通じて「健康保険 被扶養者(異動)届」を提出します(削除=非該当の届出)。届出が必要になるのは、たとえば次のときです。

そして配偶者の扶養を外れて厚生年金にも入らない場合は、自分で国民年金(第1号被保険者)の加入手続きが要ります。会社が代わりにやってくれるわけではありません。保険証(資格確認書)も返します。

いちばんの実害: 遡って外れると、その間の医療費を返せと言われる 扶養の削除は「事実が発生した日」に遡って行われます。届出を忘れて健康保険証を使い続けていた場合、その受診は無資格受診になり、保険者が負担した医療費(総医療費の7割〜8割)を返還することになります。窓口で3割しか払っていなくても、残りの7割をあとから請求されるということです。
返還した後、その期間に本来加入していた保険(国民健康保険など)へ療養費として請求し直せますが、療養を受けた日の翌日から2年で時効です。放置するほど取り返せなくなります。「バレなければいい」で済む話ではありません。

年に一度、扶養は検査されている(被扶養者資格の再確認)

協会けんぽは、健康保険法施行規則第50条に基づき、毎年度「被扶養者資格の再確認」を行っています。会社に「被扶養者状況リスト」が届き、事業主が現在も要件を満たしているかを確認して提出します。扶養から外れる人がいれば、そこで「被扶養者調書兼異動届」を出すことになります。

つまり、届出をしていなくても年1回は突き合わせが走ります。そのときに「実は2年前から130万円を超えていた」と判明すると、上の遡及削除と医療費返還が現実になります。

よくある質問

Q. パート収入が130万円を超えそうです。いつ扶養から外れますか?

A. 月収が108,333円を継続的に超える見込みになった時点です。1月からの合計が130万円に達した日ではありません。社会保険の「年間収入」は過去の実績ではなく、認定日以降の今後1年間の見込み額で判定するためです(日本年金機構)。

Q. 失業給付を受け取ると扶養から外れますか?

A. 基本手当の日額が3,612円以上なら外れます。日本年金機構は「基本手当(3,612円以上)の支給が始まった場合は、扶養削除の届出が必要」としています。待期期間中や給付制限中は、収入要件を満たしていれば被扶養者のままでいられます。

Q. 交通費(通勤手当)は130万円に含みますか?

A. 含みます。所得税では通勤手当は一定額まで非課税ですが、社会保険の被扶養者認定では非課税かどうかは関係なく、実際に受け取る総収入で見ます。時給×時間だけで計算していると、交通費を足した瞬間に130万円を超えていた、という取りこぼしが起きます。

Q. 一時的に残業が増えて130万円を超えました。すぐ外れますか?

A. 事業主の証明を添付すれば、原則として連続2回まで被扶養者のまま認定を受けられます(全国健康保険協会「被扶養者の認定における特例」)。人手不足による労働時間延長など一時的な理由に限られ、恒常的な増加は対象外です。

Q. 夫婦とも収入があります。子どもはどちらの扶養に入れますか?

A. 年間収入の多い方の被扶養者として認定されます(被扶養者の人数にかかわらず)。なお、生計維持していた側が育児休業を取ったことで一時的に夫婦の収入が逆転しただけなら、休業期間中の異動の手続きは不要です。

Q. 税法上の扶養と社会保険の扶養、どちらが金額のインパクトが大きいですか?

A. 多くの世帯では社会保険です。税は配偶者特別控除で段階的に減るので崖になりませんが、社会保険は130万円を超えた瞬間に年20万〜30万円の保険料が本人に発生します。働き方を調整するなら、まず社会保険の130万円を基準に考えるのが実務的です。

出典

本記事は一般的な情報提供を目的としたものです。個別の判断は年金事務所・健康保険組合・社会保険労務士にご確認ください。