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失業保険はいくらもらえる?計算方法と自己都合・会社都合の違い

結論から言うと、失業保険(雇用保険の基本手当)の金額は3つのステップで決まります。①離職前6か月の賃金から賃金日額を出し、②そこに給付率(50〜80%)を掛けて基本手当日額を出し、③所定給付日数を掛けたものが、受け取れる総額の目安です。

35歳・月給30万円・勤続12年の人なら、基本手当の日額は6,207円。これに日数を掛けると、自己都合なら120日で744,840円、会社都合なら240日で1,489,680円になります。

ここでほとんどの人が誤解しています。自己都合か会社都合かで、1日あたりの金額は1円も変わりません。上の例で、日額はどちらも同じ6,207円です。離職理由が変えるのは「何日分もらえるか」と「いつからもらえるか」だけ。それだけで総額が倍になります。この記事では、その3ステップを実数で追いかけ、条文のどこにそう書いてあるのかまで示します。

失業保険の金額は3ステップで決まる

雇用保険の基本手当は、次の順番で計算します。条文でいうと、①が雇用保険法17条、②が16条、③が22条・23条です。

失業保険(基本手当)の計算 — 日額は離職理由で変わらない 離職前6か月の 賃金総額 180万円 ÷180 ① 賃金日額 10,000円 ×62.1% ② 基本手当日額 6,207円 ここまでは離職理由と無関係 自己都合 ③ 6,207円 × 120日 744,840円 会社都合 ③ 6,207円 × 240日 1,489,680円 日額は同じ 日数だけ違う 総額は2倍 例: 35歳・月給30万円・勤続12年(令和7年8月1日から適用されている額で計算)
失業保険の金額は「賃金日額 → 基本手当日額 → 所定給付日数」の順に決まる。離職理由が効くのは3つ目の日数だけで、1日あたりの金額は自己都合でも会社都合でも同じ。

ステップ1: 賃金日額(離職前6か月の賃金 ÷ 180)

まず賃金日額を求めます。雇用保険法17条1項は、離職前6か月に支払われた賃金の総額を180で割ると定めています。月給30万円なら、180万円 ÷ 180 = 賃金日額10,000円です。

賞与は入れない

17条1項がいう賃金には、3か月を超える期間ごとに支払われる賃金(=賞与)は含まれません。夏冬のボーナスは、賃金日額を1円も押し上げないということです。一方で、通勤手当や残業代のように毎月支払われるものは含まれます。

賃金日額には上限と下限があり、上限は年齢で変わります(17条4項)。令和7年8月1日から適用されている額は次のとおりです。

離職時の年齢賃金日額の上限これに対応する基本手当日額の上限
30歳未満14,510円7,255円
30歳以上45歳未満16,110円8,055円
45歳以上60歳未満17,740円8,870円
60歳以上65歳未満16,940円7,623円
下限(全年齢共通)3,014円2,411円

この上限の効き方が、実務でいちばん誤解されます。30歳以上45歳未満の賃金日額の上限は16,110円なので、月給に直すと約48万円で頭打ちです。月給50万円の人も月給60万円の人も、基本手当の日額は同じ8,055円になります。給料が月10万円違っても、失業保険は1円も変わりません。

ステップ2: 基本手当日額(給付率は50〜80%)

賃金日額に給付率を掛けたものが、1日あたりに受け取れる基本手当日額です(16条)。給付率は一律ではなく、賃金が低い人ほど高く、高い人ほど低くなります。80%から50%へ、賃金日額に応じて連続的に下がっていきます(60〜64歳は80%から45%)。

実際に計算すると、こうなります(45歳未満・令和7年8月1日から適用されている額)。

月給(総支給)賃金日額給付率基本手当日額
15万円5,000円80.0%4,000円
20万円6,666円74.9%4,993円
25万円8,333円68.5%5,707円
30万円10,000円62.1%6,207円
40万円13,333円50.0%6,666円
50万円16,110円(上限で頭打ち)50.0%8,055円

月給が2倍になっても、基本手当は2倍になりません。月給15万円の人の日額4,000円に対し、倍の30万円をもらっていた人は6,207円。1.55倍にしかならないのです。失業保険は、賃金が低い人ほど手厚くなるように作られています。

60〜64歳だけ、計算式が2本ある

厚生労働省が公表している基本手当日額の計算式を見ると、60〜64歳の欄にだけ「いずれか低い方の額」という但し書きが付いていて、式が2本並んでいます。なぜ2本あるのかは公表資料に書かれていませんが、根拠は雇用保険法施行規則28条の3第2項のかっこ書きです。この項は給付率に上限を課す読み替えを定めており、それが賃金日額のある地点(およそ6,800円)から効き始めます。厚労省の「いずれか低い方」という書き方は、この読み替えをそのまま式に落としたものです。

失業保険(基本手当)計算機で、自分の日額と総額を計算する

ステップ3: 所定給付日数(ここが自己都合と会社都合で変わる)

基本手当日額に掛ける所定給付日数は、離職理由・年齢・雇用保険に入っていた期間(算定基礎期間)の3つで決まります。ここが、自己都合と会社都合の分かれ道です。

自己都合・定年退職の場合(22条1項)

雇用保険法22条1項の日数は、年齢に関係なく3段階しかありません。20歳でも59歳でも、勤続12年なら同じ120日です。

雇用保険に入っていた期間所定給付日数(年齢は関係ない)
1年未満90日(ただし自己都合は原則として受給資格なし。後述
1年以上10年未満90日
10年以上20年未満120日
20年以上150日

会社都合(倒産・解雇など)の場合(23条1項)

倒産・解雇などで離職した人は「特定受給資格者」と呼ばれ、日数が大きく増えます。こちらは年齢でも変わります。

離職時の年齢1年未満1年以上
5年未満
5年以上
10年未満
10年以上
20年未満
20年以上
30歳未満90日90日120日180日
30歳以上35歳未満90日120日180日210日240日
35歳以上45歳未満90日150日180日240日270日
45歳以上60歳未満90日180日240日270日330日
60歳以上65歳未満90日150日180日210日240日

30歳未満・20年以上の欄が「―」なのは、30歳未満で加入期間20年ということが起こり得ないからです(厚生労働省の公表表も同じく空欄になっています)。

最も長いのは45歳以上60歳未満・勤続20年以上の330日です。この人の基本手当日額が上限の8,870円なら、総額は2,927,100円になります。

「契約更新なし」も会社都合と同じ日数になる(ただし期限つき)

有期契約で働いていて、本人は更新を希望したのに更新されなかった人(特定理由離職者)は、上の会社都合と同じ日数の表が適用されます。ただしこれは雇用保険法附則4条の暫定措置で、令和9年3月31日までの離職に限られます。
同じ特定理由離職者でも、病気・介護・配偶者の転勤といった「正当な理由のある自己都合」は日数が増えません(増えるのは後述の給付制限が消えることだけ)。ここは混同されやすいところです。

34歳と35歳の間にある「30日の崖」

上の会社都合の表をもう一度見てください。年齢の区切りは30歳・35歳・45歳・60歳です。一方、ステップ1で見た賃金日額の上限の区切りは30歳・45歳・60歳でした。35歳の境目は、日数の表にしかありません。

これが何を生むか。月給30万円・勤続12年・会社都合で辞めた人を、34歳と35歳で比べます。

離職時の年齢基本手当日額所定給付日数総額の目安
34歳で離職6,207円210日1,303,470円
35歳で離職6,207円240日1,489,680円
0円30日186,210円

日額は1円も違わないのに、総額は186,210円違います。分けているのは誕生日だけです。所定給付日数は離職時の年齢で決まるので、35歳の誕生日の前日に辞めるか、翌日に辞めるかで、この差が出ます。会社都合での退職日が交渉できる状況にあるなら、知っておく価値のある数字です。

自己都合で勤続1年未満なら、1円も出ない

ここまで金額の話をしてきましたが、そもそも受け取る資格があるかは別の条文(13条)で決まります。そして、この条文は離職理由によって要件が違います

離職理由必要な被保険者期間(13条)
自己都合・定年退職離職日以前2年間に通算12か月以上(1項)
会社都合・契約更新なし・正当な理由のある自己都合離職日以前1年間に通算6か月以上(2項)

つまり、同じ会社に10か月勤めて辞めた月給25万円の人でも、辞め方によって結論が正反対になります

同じ勤務期間・同じ給料で、0円と513,630円に分かれます。離職票に書かれた離職理由に心当たりのない区分が入っていたら、ハローワークに異議を申し立てることができます(離職票の「離職理由」欄には、本人が異議を記入する欄があります)。

「12か月」は在籍した月数ではない

ここでいう被保険者期間は、在籍した月をそのまま数えるのではありません。賃金支払の基礎となった日数が11日以上(または賃金支払の基礎となった時間数が80時間以上)ある月を1か月と数えます(雇用保険法14条)。休職や欠勤が多く、11日も出勤していない月は1か月に数えません。ぎりぎり12か月のつもりでも、足りていないことがあります。

いつからもらえる?(待期7日と給付制限)

金額が決まっても、すぐには振り込まれません。ここでも自己都合と会社都合で差がつきます。

「給付制限が2か月から1か月になった」のは、法改正ではない

これは意外と知られていません。雇用保険法33条を読んでも、「2か月」も「1か月」も出てきません。条文が定めているのは「待期の満了後1か月以上3か月以内の間で公共職業安定所長の定める期間」というだけです。その幅の中のどこにするかは、33条2項がいう厚生労働大臣の定める基準(=通達)で決まります。令和7年4月1日から原則1か月になったのは、通達の改正であって法改正ではありません。
一方で、法律のほうで実際に変わったものもあります。33条1項に但し書きが新設され、教育訓練を受けた自己都合離職者は給付制限そのものが解除されるようになりました(離職日前1年以内に受けた場合、または離職日以後に受ける場合)。

給付制限が何か月になるかは、厚生労働省の公表資料では次のように整理されています。「3か月」になる条件の数え方に注意してください。

退職のしかた給付制限
会社都合・契約更新なし・正当な理由のある自己都合・定年なし
正当な理由のない自己都合(令和7年4月1日以降の退職)原則1か月(同年3月31日以前の退職なら原則2か月)
退職日から遡って5年間のうちに、2回以上正当な理由なく自己都合退職して受給資格の決定を受けている3か月
自己の責めに帰すべき重大な理由による解雇(重責解雇)3か月(教育訓練による解除の対象外)

よく「5年間に3回目の自己都合なら3か月」と書かれますが、厚生労働省の書き方は「遡って5年間のうちに2回以上、正当な理由なく自己都合退職し受給資格決定を受けた場合」です。数えるのは今回より前の受給資格決定であって、今回の離職は含みません(結果として今回が3回目以降なら3か月、ということになります)。

もう一つ、期限があります。受給期間は離職日の翌日から1年です(20条1項)。所定給付日数が330日ある人でも、この1年を過ぎると残りは消えます。1年に収まらない330日の人(45〜59歳・20年以上)と、就職困難者で360日の人だけ、受給期間が30日・60日延びます。

病気・出産・育児ですぐ働けないなら、受給期間を延長できる

20条1項のかっこ書きは、妊娠・出産・育児・疾病・負傷などで引き続き30日以上職業に就くことができないときは、その日数だけ受給期間を延ばすと定めています(合計で最長4年)。退職後すぐに求職活動ができない事情があるなら、1年の受給期間を黙って使い切ってしまう前に、ハローワークで延長の手続きをしてください。

条文に書かれた金額は、今日の実額ではない

最後に、この制度でいちばん危険な落とし穴を書いておきます。雇用保険法16条・17条には具体的な金額が書かれていますが、その金額は今日の実額ではありません。

条文にある「4,920円」「12,090円」、上限額の「13,370円〜16,340円」といった数字は、平成27年度を基準にした原型です。これらは18条の「自動変更対象額」として、毎年8月1日に、平均給与額の変動に応じて改定されます。

条文だけを読んで計算すると、金額が全部ずれます。この記事の数字と本サイトの計算機は、条文の額ではなく、厚生労働省が公表している現に適用されている額(令和7年8月1日~)を使っています。次の改定は2026年8月1日です。それ以降は、上限額・下限額が変わる可能性があります。

まとめ
  • 失業保険は「賃金日額(賃金÷180)→ 基本手当日額(給付率50〜80%)→ 所定給付日数」で決まる
  • 自己都合か会社都合かで、日額は1円も変わらない。変わるのは日数と、もらい始める時期だけ
  • 35歳・月給30万円・勤続12年なら日額6,207円。自己都合120日=744,840円/会社都合240日=1,489,680円
  • 会社都合の日数だけ35歳の境目がある(34歳と35歳で30日=186,210円の差)
  • 自己都合で勤続1年未満なら0円。会社都合なら6か月で受給できる
  • 条文の金額は原型にすぎず、毎年8月1日に改定される(次回は2026年8月1日)
失業保険(基本手当)計算機 — 年齢・給料・勤続年数・離職理由を入れるだけ

よくある質問

Q. 失業保険は自己都合だといくらもらえますか?

A. 日額は会社都合とまったく同じで、変わるのは日数です。35歳・月給30万円・勤続12年なら、基本手当日額は自己都合でも会社都合でも6,207円です。ただし所定給付日数は、自己都合が120日(雇用保険法22条1項)、会社都合が240日(23条1項)となるため、総額は744,840円と1,489,680円で倍の差がつきます。さらに自己都合の場合は、待期7日のあとに原則1か月の給付制限があり、もらい始める時期も遅くなります。

Q. 失業保険の給付率は何%ですか?

A. 50〜80%です(60〜64歳は45〜80%)。一律ではなく、賃金が低い人ほど高くなります。45歳未満で計算すると、月給15万円の人は80.0%、月給25万円の人は68.5%、月給30万円の人は62.1%、月給40万円以上の人は50.0%です。給付率は賃金日額に応じて連続的に下がるため、月給が2倍になっても基本手当が2倍になることはありません。

Q. 失業保険はいつからもらえますか?

A. 会社都合なら、ハローワークで求職の申込みをしてから通算7日間の待期が明けた日から支給対象になります(雇用保険法21条)。正当な理由のない自己都合の場合は、待期のあとにさらに給付制限があり、退職日が令和7年4月1日以降なら原則1か月です。ただし退職日から遡って5年間のうちに2回以上、正当な理由なく自己都合退職して受給資格の決定を受けている場合は3か月になります(重責解雇の場合も3か月です)。なお実際の振込は、認定日を経てからになるため、支給対象になった日からさらに時間がかかります。

Q. 勤続1年未満でも失業保険はもらえますか?

A. 離職理由によります。自己都合や定年退職の場合は「離職日以前2年間に被保険者期間が通算12か月以上」が必要なので(雇用保険法13条1項)、勤続1年未満では原則として受け取れません。一方、会社都合・契約更新なし・正当な理由のある自己都合であれば「離職日以前1年間に通算6か月以上」で足ります(13条2項)。同じ勤続10か月・月給25万円でも、自己都合なら0円、会社都合なら90日分の513,630円と結論が正反対になります。

Q. 賞与(ボーナス)は失業保険の計算に入りますか?

A. 入りません。賃金日額は離職前6か月に支払われた賃金の総額を180で割って求めますが(雇用保険法17条1項)、この賃金には3か月を超える期間ごとに支払われる賃金、つまり賞与は含まれません。したがって夏冬のボーナスは賃金日額を1円も押し上げません。一方、通勤手当や残業代のように毎月支払われるものは含まれます。

Q. 給料が高いほど失業保険も多くもらえますか?

A. 途中で頭打ちになります。賃金日額には年齢別の上限があり、30歳以上45歳未満なら16,110円(月給にしておよそ48万円)です。これを超えると、いくら給料が高くても基本手当日額は上限の8,055円で止まります。つまり月給50万円の人と月給60万円の人は、失業保険の日額がまったく同じです。上限額は30歳未満が14,510円、45歳以上60歳未満が17,740円、60歳以上65歳未満が16,940円です。

出典

なお、ハローワークインターネットサービスの「雇用保険の具体的な手続き」のページは、この記事の執筆時点で給付制限を「2か月間」と記載したまま更新されていません(令和7年4月1日以降は原則1か月です)。同じ厚生労働省のサイト内でも記載が食い違っているため、給付制限の日数は上記のリーフレット(LL070228保01)でご確認ください。

この記事は令和8年7月時点の法令にもとづく一般的な情報であり、個別の事案に対する助言ではありません。実際の支給額・所定給付日数・給付制限の有無は、離職票に記載された離職理由の区分、被保険者期間の計算、賃金の範囲などによって異なり、最終的にはハローワーク(公共職業安定所)の判断で決まります。記事中の金額は令和7年8月1日から適用されている額で計算した目安であり、毎年8月1日に改定されます。正確な金額は、離職票を持参のうえハローワークでご確認ください。