通勤手当の非課税限度額|令和8年4月改正でマイカー65km以上が引上げ・駐車場代も非課税に
結論から言うと、通勤手当の非課税限度額は電車・バスなら1か月15万円まで、マイカー・自転車なら片道の通勤距離に応じた定額です。そして令和8年(2026年)4月1日以後に支払われるべき通勤手当から、マイカー通勤の限度額が改正されました。
改正点は2つだけです。① 片道65km以上の限度額が引き上げられた(改正前は「55km以上=38,700円」で頭打ちだったのが、95km以上で66,400円まで伸びた)。② 一定の要件を満たす駐車場等の料金(上限5,000円)を、距離区分の限度額に加算できるようになった。この駐車場代の加算はまったく新しい取扱いです。
そして、この記事でいちばん伝えたい落とし穴があります。通勤手当は所得税では非課税でも、社会保険料はかかります。「非課税だから給与計算に影響しない」と考えると、標準報酬月額を取り違えます。後半で、月給30万円の人が通勤手当15,000円をもらうと本人負担が年34,056円増えるという実額を出します。
非課税限度額の早見表(令和8年4月1日以後)
1か月あたりの非課税限度額です。限度額を超えて支給した部分は、その月の給与に上乗せして源泉徴収します(通勤手当そのものが課税になるのではなく、超過部分だけが課税されます)。
電車・バスなどの交通機関で通勤する場合
「最も経済的かつ合理的な経路および方法」による1か月の定期券代などの金額が、そのまま非課税になります。ただし1か月15万円が上限です。
マイカー・自転車など(交通用具)で通勤する場合
片道の通勤距離(通勤経路に沿った長さ)で、1か月あたりの限度額が決まります。
| 片道の通勤距離 | 1か月あたりの限度額 (令和8年4月1日以後) | 改正前 |
|---|---|---|
| 2km未満 | (全額課税) | 同左 |
| 2km以上 10km未満 | 4,200円 | 同左 |
| 10km以上 15km未満 | 7,300円 | 同左 |
| 15km以上 25km未満 | 13,500円 | 同左 |
| 25km以上 35km未満 | 19,700円 | 同左 |
| 35km以上 45km未満 | 25,900円 | 同左 |
| 45km以上 55km未満 | 32,300円 | 同左 |
| 55km以上 65km未満 | 38,700円 | 38,700円 |
| 65km以上 75km未満 | 45,700円 | 38,700円 (55km以上は すべてこの額) |
| 75km以上 85km未満 | 52,700円 | |
| 85km以上 95km未満 | 59,600円 | |
| 95km以上 | 66,400円 |
2km未満は「全額課税」です。少額だから非課税、ではありません。徒歩圏内とみなされ、支給した通勤手当は全額が給与になります。
駐車場代(令和8年4月から新設)
交通用具で通勤する人(片道2km未満の人を除く)が一定の要件を満たす駐車場等の料金を負担することを常例としている場合、上の距離区分の限度額に、1か月あたりの駐車場等の料金相当額(上限5,000円)を加算できます。
令和8年4月の改正点は「65km以上」と「駐車場代」
改正されたのは交通用具(マイカー等)の部分だけです。電車・バスの15万円上限は変わっていません。
いつから適用されるのか
適用は「令和8年4月1日以後に支払われるべき通勤手当」からです。ここは日付の取り方が決まっています。
- 契約や慣習で支給日が定められているものは、その支給日で判定する(定められていなければ実際に支給を受けた日)
- 給与規程の改訂をさかのぼって実施したために支払う新旧の差額は、その支給日(定めがなければ改訂の効力が生じた日)で判定する
「一定の要件を満たす駐車場等」とは(自宅付近はNG)
駐車場代を非課税で加算できるのは、どんな駐車場でもよいわけではありません。場所の要件があります。
非課税の対象になるのは、通勤に使う交通用具を駐車するための施設のうち、①勤務する場所の周辺にあるもの、または②通勤に利用する交通機関の駅・停留所などの周辺にあるものです(「その他の施設」にはフェリー乗り場や空港も含まれます)。
そのほか、実務で迷いやすい点を国税庁のQ&Aから拾うと、次のとおりです。
- 駐輪場も対象。自転車やバイクの駐輪場も「駐車場等」に含まれます
- 複数の駐車場を使ってもよい。要件を満たすものなら料金の合計額で判定します(ただし加算できるのは合計で5,000円まで)
- 片道2km未満の人は対象外。距離区分が「全額課税」の人は、駐車場代も非課税になりません
- 領収書の提示を受ける法令上の義務はない。ただし「1か月あたりの料金相当額」を算出する必要があるので、金額が確認できる書類の提示等は受ける必要があります。支給の都度でなくてよく、料金の変更があったときに申し出てもらえば足ります(すでに5,000円を超えている人の値上げなら、確認自体が不要です)
「1か月あたりの駐車場等の料金相当額」の出し方
月極でない駐車場でも計算できます。国税庁の示す方法は次のとおりです。
| 料金の定め方 | 1か月あたりの料金相当額 | 例 |
|---|---|---|
| 月単位 | その料金の額(数か月単位なら月数で割る) | 3か月24,000円 → 8,000円 |
| 年単位 | 12で割る(2年単位なら24で割る) | 1年79,200円 → 6,600円 |
| 都度払い | 1か月の実際の負担額の合計、または1回の料金×利用回数 | 回数券11枚1,200円で月20日利用 → 2,182円(1円未満切上げ) |
| 上記以外 | 年間料金相当額(料金×365÷算定日数)を12で割る | 7日で5,880円 → 25,550円 |
判定は「合計額どうし」で行う
ここは間違えやすいところです。非課税限度額の判定は、支給した通勤手当の合計額と限度額の合計額を比べて行います。「距離分は距離分、駐車場分は駐車場分」と内訳ごとに判定するのではありません。
片道50km(距離区分の限度額32,300円)の従業員で見てみます。
| ケース | 支給額 | 非課税限度額 | 結果 |
|---|---|---|---|
| 駐車場代8,000円を実費支給 (距離分32,300円+駐車場8,000円) |
40,300円 | 37,300円 (32,300+5,000) |
3,000円が課税 |
| 距離分を少なめに支給 (距離分28,000円+駐車場8,000円) |
36,000円 | 37,300円 (32,300+5,000) |
全額が非課税 |
| 内訳を区分せず 「通勤手当」として支給 (駐車場の実際の料金は4,400円) |
35,000円 | 36,700円 (32,300+4,400) |
全額が非課税 |
2つ目のケースが分かりやすい例です。駐車場代として8,000円を払っていて、加算できるのは5,000円まで。しかし距離分を28,000円しか支給していないので、支給額の合計36,000円は限度額の合計37,300円に収まり、全額が非課税になります。内訳ごとに見ると「駐車場代が3,000円オーバー」と誤解しますが、そうはなりません。
3つ目のケースのとおり、内訳を区分せずに支給していても、駐車場代の加算は使えます(実際に駐車場代の負担があり、その金額が確認できることが前提です)。
最大の落とし穴:非課税でも社会保険料はかかる
ここが実務でいちばん多い誤解です。所得税が非課税であることと、社会保険料がかからないことは、まったく別です。
日本年金機構は明確にこう答えています。「通勤手当は報酬に含まれます」。厚生年金保険法でいう報酬とは、労務の対償として支給されるすべてのもので、名称にかかわらず対象になるためです。つまり通勤手当は標準報酬月額の計算に含める必要があります。
いくら変わるのか(東京都・30歳・月給30万円)
通勤手当15,000円(電車通勤・全額非課税)を支給する場合で比べます。令和8年度の協会けんぽ東京支部の料率(健康保険9.85%・子ども・子育て支援金0.23%)と厚生年金18.3%で計算しました。
| 通勤手当なし | 通勤手当15,000円 | |
|---|---|---|
| 報酬月額 | 300,000円 | 315,000円 |
| 標準報酬月額(等級) | 300,000円(22等級) | 320,000円(23等級) |
| 健康保険料(本人) | 14,775円 | 15,760円 |
| 子ども・子育て支援金(本人) | 345円 | 368円 |
| 厚生年金保険料(本人) | 27,450円 | 29,280円 |
| 本人負担の合計 | 42,570円 | 45,408円 |
差は月2,838円。年間で34,056円です。会社負担も同額増えるので、労使合計では年68,112円変わります。所得税では1円も課税されない15,000円が、社会保険料では等級を1つ押し上げるからです。
通勤手当は等級の境目にいる人ほど影響が大きくなります。上の例は報酬月額が300,000円(22等級の範囲)から315,000円になり、310,000円以上の区分に入って23等級へ上がったケースです。
自分の標準報酬月額と保険料は、下の計算機で確認できます。報酬月額には通勤手当を含めた額を入れてください。
社会保険料 計算機で、通勤手当を含めた保険料を計算するよくある質問
Q. 通勤手当は結局いくらまで非課税ですか?
A. 電車・バスなどの交通機関なら1か月15万円が上限、マイカー・自転車などの交通用具なら片道の通勤距離に応じた定額(2km未満は全額課税、95km以上で66,400円)です。両方を使う場合は合計で15万円が上限になります。
Q. 令和8年4月の改正で何が変わったのですか?
A. 変わったのは2点です。片道65km以上の非課税限度額が引き上げられたこと(改正前は55km以上が38,700円で頭打ち、改正後は95km以上で66,400円まで)と、一定の要件を満たす駐車場等の料金相当額(上限5,000円)を加算できるようになったことです。令和8年4月1日以後に支払われるべき通勤手当から適用されます。
Q. 自宅の近くに借りている駐車場の代金も非課税になりますか?
A. なりません。非課税の対象になる駐車場等は、勤務する場所の周辺、または通勤に利用する駅・停留所などの周辺にあるものに限られます。自宅付近の駐車場はこれに該当しません。
Q. 通勤手当が非課税なら、社会保険料もかからないのですか?
A. かかります。通勤手当は標準報酬月額の対象となる報酬に含まれます(日本年金機構)。所得税の非課税と社会保険の報酬は別の判定です。通勤手当を含めずに報酬月額を届け出ると、標準報酬月額を誤ることになります。
Q. 会社が駐車場を契約して従業員の代わりに支払っている場合はどうなりますか?
A. 実態として駐車場代相当額の通勤手当を支給しているのと変わらないため、その負担額を通勤手当として非課税限度額の計算に含めます。現金を渡していないため見落としやすく、限度額を超えていれば超過部分が課税されます。
Q. 片道1.8kmのマイカー通勤に月3,000円を支給しています。少額なら非課税ですか?
A. 非課税にはなりません。片道2km未満は全額課税で、支給した3,000円は全額が給与として課税されます。金額の多寡は関係ありません。
出典
- 国税庁「通勤手当の非課税限度額の改正について」(令和8年4月)— 改正後・改正前の非課税限度額の対比表
- 国税庁「通勤手当の非課税限度額の改正に関するQ&A」(令和8年4月)— 適用時期、駐車場等の範囲、料金相当額の計算、ケースA〜E、会社が契約する駐車場の取扱い
- 国税庁 タックスアンサー No.2582「電車・バス通勤者の通勤手当」(令和8年4月1日現在法令等)
- 国税庁 タックスアンサー No.2585「マイカー・自転車通勤者の通勤手当」(令和8年4月1日現在法令等)
- 日本年金機構「標準報酬月額の対象となる報酬に、通勤手当は含まれるのですか。」
- 日本年金機構「複数月単位で従業員に支給した通勤手当は、報酬月額に含めますか。」
- 全国健康保険協会「都道府県毎の保険料率(令和8年度)」— 本記事の社会保険料の試算に使用
本記事は一般的な情報提供を目的としたものです。個別の判断は税務署・年金事務所・税理士・社会保険労務士にご確認ください。