有給休暇の付与日数|勤続年数ごとの一覧表と、出勤率8割・時効2年の落とし穴
結論から言うと、通常の労働者の有給休暇は入社から6か月で10日です。その後は1年ごとに11日 → 12日 → 14日 → 16日 → 18日 → 20日と増え、勤続6年6か月以降は20日で頭打ちです。
- 通常の労働者:週の所定労働時間が30時間以上、週の所定労働日数が5日以上、または年間の所定労働日数が217日以上の人です。これより少ない人は比例付与の日数になります。
- もらえる条件:6か月の継続勤務と、全労働日の8割以上の出勤の2つだけです。2回目以降は、直前1年の出勤率で判定します。
- 落とし穴:出勤率が8割に届かず「その年の付与がゼロ」になっても、勤続年数はリセットされません。翌年は10日に戻らず、勤続年数どおりの日数(たとえば18日)です。
付与日数の一覧表(通常の労働者)
週5日以上(または週の所定労働時間が30時間以上)働く人の付与日数です。労働基準法39条1項が「6か月で10日」を定め、同2項の表が「継続勤務年数1年ごとの加算日数」を定めています。
| 継続勤務年数 | 6か月 | 1年 6か月 | 2年 6か月 | 3年 6か月 | 4年 6か月 | 5年 6か月 | 6年6か月 以上 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 付与日数 | 10日 | 11日 | 12日 | 14日 | 16日 | 18日 | 20日 |
| 前年からの加算 | ― | +1日 | +1日 | +2日 | +2日 | +2日 | +2日 |
これは労働基準法39条1項・2項が定めた通常の労働者の最低日数です。会社の規模・業種や、正社員・契約社員・管理監督者といった名称を問いません。会社が「うちには有給はない」と言っても、条件を満たせば法律上当然に発生します。
もらえる条件は2つ ― 6か月の継続勤務と、出勤率8割
労働基準法39条1項は「その雇入れの日から起算して六箇月間継続勤務し全労働日の八割以上出勤した労働者に対して、継続し、又は分割した十労働日の有給休暇を与えなければならない」と定めています。条件はこの2つだけで、雇用形態も申請も関係ありません。
| 条件 | 意味 | 間違えやすい点 |
|---|---|---|
| ① 6か月の継続勤務 | 雇入れの日から数えて6か月、在籍していること | 在籍していればよく、勤務の中断は問いません。契約更新をはさんでも、実態として継続していれば通算します |
| ② 全労働日の8割以上の出勤 | その6か月(2回目以降は直前の1年)の出勤率が8割以上であること | 分母は「全労働日」であって暦日ではありません。所定休日は最初から数に入りません |
正社員だけの制度ではありません。厚生労働省の解説資料も、対象労働者に管理監督者や有期雇用労働者も含まれると明記しています。パート・アルバイトにも、要件を満たせば有給は発生します。所定労働日数が少ない人の日数は、比例付与の節にまとめました。
「全労働日の8割」の数え方(休んでも出勤扱いになる4つ)
出勤率は 出勤した日 ÷ 全労働日 で計算します。ここでつまずくのは、「休んだのに出勤とみなす日」があることです。労働基準法39条10項は、次の期間を出勤したものとみなすと定めています。
- 業務上のケガ・病気で療養のために休業した期間(労災による休業)
- 育児休業をした期間
- 介護休業をした期間
- 産前産後の休業(65条による休業)期間
つまり、産休・育休で1年まるごと休んだ人でも、その休業期間は出勤扱いなので、休業中に基準日を迎えれば復帰を待たず、その基準日に有給が付与されます。「休んでいたから今年は付与なし」としてしまうのは、よくある誤りです。なお有給休暇を取得した日も出勤扱いです(有給を使うほど翌年の有給が減る、ということは起きません)。
次の日は、全労働日(分母)から除外します。
- 会社都合の休業日
- 不可抗力による休業日
- ロックアウト期間
- 正当な争議行為で労務提供がなかった日
- 所定休日に働いた日
分母に残したまま「欠勤」として扱うと、会社都合で休ませたせいで労働者の出勤率が下がる、という不合理が起きるためです。
無効な解雇など、正当な理由なく就労を拒まれた日は扱いが別で、全労働日と出勤日数の両方に算入します。自己都合の欠勤は、欠勤日だけが出勤しなかった日になります。遅刻・早退した日は、出勤した日として数えます。
8割未満だった年の翌年は「10日に戻る」ではない
ここが本題です。出勤率が8割に届かなかった年は、その次の1年について有給を付与しなくてよいとされています(39条2項ただし書)。問題はその翌年です。
条文をそのまま読みます。39条2項ただし書はこう書いてあります ―「…出勤した日数が全労働日の八割未満である者に対しては、当該初日以後の一年間においては有給休暇を与えることを要しない」。書いてあるのはこれだけです。「継続勤務年数の起算日を変える」とも「振り出しに戻す」とも、条文はひとことも言っていません。
継続勤務年数は雇入れの日から数える(39条1項・2項)ので、8割未満の年があっても時計は進み続けます。したがって、翌年に出勤率8割を回復したときに付与されるのは、そのときの勤続年数に対応する日数です。
上の例では、勤続4年6か月の時点で「直前1年の出勤率が8割未満」だったため、その年は付与ゼロ。しかし翌年(勤続5年6か月)に8割以上を回復すれば、18日が付与されます。10日でも16日でもありません。勤続年数は止まっていないからです。
パート・アルバイトの比例付与
所定労働日数が少ない人には、日数を比例させた「比例付与」が適用されます(39条3項、労働基準法施行規則24条の3)。対象は、次の両方に当たる人です。
- 週の所定労働時間が30時間未満
- 週の所定労働日数が4日以下(週以外の期間で日数を定めている場合は、年間の所定労働日数が216日以下)
週4日勤務でも、週30時間以上働いていれば比例付与ではなく、上の通常の表(10日スタート)が適用されます。付与の条件(6か月の継続勤務と出勤率8割)は通常の労働者と同じです。
| 週の所定 労働日数 | 1年間の所定 労働日数 | 6か月 | 1年 6か月 | 2年 6か月 | 3年 6か月 | 4年 6か月 | 5年 6か月 | 6年6か月 以上 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 4日 | 169日〜216日 | 7日 | 8日 | 9日 | 10日 | 12日 | 13日 | 15日 |
| 3日 | 121日〜168日 | 5日 | 6日 | 6日 | 8日 | 9日 | 10日 | 11日 |
| 2日 | 73日〜120日 | 3日 | 4日 | 4日 | 5日 | 6日 | 6日 | 7日 |
| 1日 | 48日〜72日 | 1日 | 2日 | 2日 | 2日 | 3日 | 3日 | 3日 |
太字にした「10日」に注目してください。年5日の取得義務(39条7項)は「付与日数が10日以上の人」が対象です。そのため比例付与の人でも、週4日勤務は勤続3年6か月から、週3日勤務は勤続5年6か月から、会社が5日取らせる義務を負います。「パートだから年5日義務は関係ない」という思い込みは、ここで破れます。詳しくはパート・アルバイトの有給休暇と年5日の取得義務で解説しています。
基準日を全社で統一している場合(前倒し付与)
入社日がばらばらだと基準日(付与日)も人ごとにばらばらになるため、全社で4月1日などに統一している会社は多いです。これは法定より前倒しで付与するぶんには適法です(労働者に有利なため)。ただし、前倒しすると年5日取得義務の「1年」の起算も前倒しになります。
厚生労働省の解説資料は、4月1日入社と同時に10日以上を付与した場合、法定基準日(10月1日)からではなく、付与した4月1日から1年以内に5日取得させる義務が生じると明示しています。「うちは4月1日に前倒しで配っているが、5日取らせるカウントは10月から1年」と考えていると、義務期間を半年ずらして数えていることになります。
入社年の基準日と、2年目以降の全社統一の基準日が違うと、5日取得義務のかかる1年間どうしが重複します。4/1入社・4/1に10日付与で、次の付与を翌年の4/1ではなく1/1に寄せる場合などです。
この場合は、前の期間の始期から後の期間の終期までを通した期間の長さに応じて按分した日数を、その通期で取得させる扱いが認められています。たとえば通期が1年6か月なら「5日 × 18/12 = 7.5日」となり、その1年6か月の間に次の日数を取得させます。
- 労働者が半日単位の取得を希望し、使用者が応じた場合:7.5日以上
- それ以外:8日以上
時効は2年 ― 賃金は3年に延びたのに、有給は2年のまま
有給休暇の請求権は2年で時効消滅します。つまり、法定どおり毎年20日を付与し、法定の時効だけを適用する場合、繰り越せるのは翌年度までの1回きりで、通常の最大保有日数は20日 + 20日 = 40日です。会社が法定を上回る日数・有効期間や積立休暇制度を設けている場合は、40日を超えることがあります。
ここで「賃金の時効は3年に延びたのに、なぜ有給は2年のままなのか」を、条文の構造で説明します。労働基準法115条は、請求権を2種類に分けています。
| 請求権の種類 | 115条の本則 | 附則143条3項の読み替え(当分の間) | 結論 |
|---|---|---|---|
| 賃金の請求権 | 5年 | 3年に読み替え(退職手当は5年のまま) | 3年 |
| 災害補償その他の請求権 (賃金の請求権を除く) | 2年 | 読み替えの対象外 | 2年 |
2020年4月施行の改正で延びたのは「賃金の請求権」だけです。年次有給休暇の請求権は「賃金の請求権」ではなく「その他の請求権」に当たるため、115条本則の2年がそのまま残っています。附則143条3項が読み替えているのは、115条のうち「賃金の請求権はこれを行使することができる時から五年間」という一節だけで、「その他の請求権…二年間」の部分には手を触れていません ― これが、有給だけ2年に取り残されている理由です。
- 通常の労働者の付与日数は 6か月で10日 → 11日 → 12日 → 14日 → 16日 → 18日 → 6年6か月以降は20日(各期間の出勤率8割以上が条件)
- 所定労働日数が少ない人は、比例付与の別表の日数
- 条件は 6か月の継続勤務 と 全労働日の8割以上の出勤 の2つだけ
- 産休・育休・労災休業・介護休業は「出勤扱い」。休んだから付与なし、は誤り
- 8割未満で付与ゼロの年があっても、勤続年数はリセットされない(翌年は10日に戻らない)
- 比例付与でも10日に達した時点で年5日の取得義務が発生する(週4日勤務なら勤続3年6か月)
- 時効は2年(賃金だけが3年に延びた。有給は据え置き)
よくある質問
有給休暇は入社から何か月で何日もらえますか?
通常の労働者は、入社から6か月で10日です。条件は、6か月の継続勤務と、その期間の全労働日の8割以上の出勤です。その後も直前1年の出勤率が8割以上なら、1年ごとに11日・12日・14日・16日・18日・20日と増え、勤続6年6か月以降は毎年20日です(労働基準法39条1項・2項)。所定労働日数が少ない人は、比例付与の日数になります。
出勤率が8割に届かず付与ゼロになりました。翌年は10日からやり直しですか?
いいえ。継続勤務年数はリセットされません。労働基準法39条2項ただし書が定めているのは「その1年間は付与しなくてよい」ということだけで、勤続年数の起算日は雇入れの日のままです。翌年に8割以上を回復すれば、そのときの勤続年数に対応する日数(通常の労働者の例では勤続5年6か月なら18日)が付与されます。
産休・育休で1年休みました。復帰後に有給はもらえますか?
もらえます。労働基準法39条10項は、産前産後の休業・育児休業・介護休業・業務上のケガや病気による療養のための休業の期間を出勤したものとみなすと定めています。法定の産休・育休だけで1年休んだ場合はその休業によって出勤率が8割を下回ることはなく、休業中でも基準日に、その勤続年数と所定労働時間・日数に対応する有給が付与されます(休業以外の欠勤がある場合は、それを含めて出勤率を判定します)。
パート・アルバイトにも有給はありますか?
あります。週の所定労働時間が30時間未満で、かつ週の所定労働日数が4日以下(または年間216日以下)の人は、日数を比例させた「比例付与」になります。週4日勤務なら6か月で7日、週3日勤務なら5日です。週4日でも週30時間以上働いていれば、通常どおり10日からのスタートです。
有給の繰り越しは何年分できますか?
法定の年次有給休暇は2年(=翌年度への1回だけ)です。労働基準法115条により、年次有給休暇の請求権は行使できるときから2年で時効消滅します。法定どおり毎年20日を付与する場合、通常は40日(当年20日+前年からの繰越20日)ですが、会社の上乗せ付与・長い有効期間・積立休暇制度があれば40日を超えることがあります。2020年の改正で3年に延びたのは「賃金の請求権」だけで、有給休暇は2年のまま据え置かれています。
前倒しで入社日に10日付与しました。年5日取得義務の1年はいつから数えますか?
実際に10日以上を付与した日から1年です。4月1日入社と同時に10日付与したなら、法定基準日である10月1日からではなく、4月1日から翌年3月31日までの1年間に5日取得させる義務が生じます(厚生労働省の解説資料に明記)。前倒しは適法ですが、義務の起算も前倒しになる点に注意してください。
出典
労働基準法39条・同法施行規則24条の3の条文(e-Gov法令検索)および厚生労働省の解説資料に基づいて作成。
- 労働基準法 第39条(年次有給休暇)1項・2項・3項・7項・10項 — e-Gov法令検索(法令ID 322AC0000000049)
- 労働基準法 第115条(時効)および附則第143条第3項 — e-Gov法令検索。賃金の請求権のみ「当分の間3年」と読み替える構造
- 労働基準法施行規則 第24条の3 — e-Gov法令検索(法令ID 322M40000100023)。比例付与の日数表、週30時間、通常の労働者の週所定労働日数5.2日
- 厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署「年5日の年次有給休暇の確実な取得 わかりやすい解説」— 原則となる付与日数、比例付与の対象、前倒し付与した場合の履行期間、基準日が2つある場合の按分
本記事は一般的な情報提供を目的としたものです。個別の判断は労働基準監督署・社会保険労務士にご確認ください。