ここからは、計算のしかたと入力するときの注意点を、国税庁の資料にもとづいて解説します(一般的な説明であり、個別の税務相談ではありません)。
減価償却費はどう計算する? — 定額法と定率法
建物・機械・車両などの減価償却資産は、取得した年に全額を必要経費にするのではなく、使用可能期間(耐用年数)にわたって分けて必要経費にします。これが減価償却です。平成19年4月1日以後に取得した資産の一般的な方法は定額法と定率法の2つです。少額な資産には別の取扱いがあります(10万円・20万円・40万円未満の少額な資産)。
定額法 = 取得価額 × 定額法の償却率(毎年ほぼ同額)。定率法 = 期首の未償却残高 × 定率法の償却率(初めの年ほど多く、だんだん減る)。
100万円・10年・通年供用の有形資産の例では、定額法は1~9年目10万円、10年目99,999円で、200%定率法は初年20万円・翌年16万円等となります。どちらも最後は帳簿価額に1円だけ残します。
個人事業主は定額法が法定(税務署へ届け出れば定率法も選べます)、法人は定率法が法定です。ただし、次の資産は定率法を選べず、定額法で償却します。
- 建物(平成19年4月1日以後に取得したもの)
- 建物附属設備・構築物のうち、平成28年4月1日以後に取得したもの
- 無形固定資産(ソフトウエアなど)と生物(所得税法施行令120条の2第1項4号)
鉱業用の資産・鉱業権・リース資産には、別の償却方法の定めがあります(所得税法施行令120条の2第1項3号・5号・6号)。
定額法と定率法の違い(毎年の額のイメージ)
同じ資産でも、定額法は毎年ほぼ同額、定率法は初めの年ほど大きく後半は小さくなります。合計(=取得価額−1円)は同じで、経費にできる時期が前に寄るか、ならされるかの違いです。
取得時期で償却率表が変わる(200%と250%)
定率法の償却率は、取得した時期で使う表が違います。同じ耐用年数でも取得時期で毎年の額が変わるので、取得年月を正しく入れることが大切です。
- 平成24年4月1日以後に取得 … 200%定率法(耐用年数省令 別表第十の率)
- 平成19年4月1日〜平成24年3月31日に取得 … 250%定率法(別表第九の率)。200%より初めの償却が大きくなります
- 平成19年3月31日以前に取得 … 旧定率法(このツールの対象外)
平成24年中に取得した資産などには経過措置があります(国税庁 No.2106 の注)。平成19年3月31日以前に取得した資産は、旧定額法・旧定率法で計算します。残存価額・5%均等償却があり計算が異なるため、このツールの対象外です。
定額法の償却率(別表第八)は平成19年4月1日以後は一律で、取得時期による違いはありません。上の計算機は取得年月から自動で正しい表を選びます。
定率法の「償却保証額」で毎年同額に切り替わる
定率法は「期首の未償却残高 × 償却率」で計算するので、放っておくと毎年少しずつになっていつまでも償却が終わりません。そこで、その年の償却額(調整前償却額)が償却保証額(取得価額 × 保証率)を初めて下回った年から、計算方法が切り替わります。
調整前償却額 < 償却保証額 になった年からは、「改定取得価額(その年の期首帳簿価額)× 改定償却率」で毎年同額を償却します。
国税庁No.2106の100万円・10年・200%定率法の例では、次のようになります。
- 切替の判定:7年目の調整前償却額52,429円が、償却保証額65,520円を下回ります。
- 切替後の年額:改定取得価額262,144円 × 改定償却率0.250 = 65,536円です。
- 償却の終わり:通年供用の有形資産のこの設例では、10年目に1円まで償却します。
初年度は月割
個人事業主が年の途中で事業に使い始めた資産は、初年度の償却費を年額 × 使った月数 ÷ 12で計算します。個人事業主(会計期間=1〜12月)なら、使い始めた月から12月までの月数です。たとえば4月に使い始めたなら9か月分です。
月割をした場合に償却がいつ終わるかは、償却方法・償却率・残高によって変わります。上の計算機のスケジュール表で確認できます。
1円を残す資産・残さない資産(償却の限度額)
「最後に備忘価額1円を残す」は有形固定資産の話で、すべての資産に当てはまるわけではありません。平成19年4月1日以後に取得した資産の償却の限度額は、資産の区分に応じて次の3つに分かれます(所得税法施行令134条1項2号)。上の計算機の「資産の種類」で切り替わります。
| 区分 | 資産 | 償却の限度額(帳簿に残る額) |
|---|---|---|
| イ | 建物・建物附属設備・構築物・機械装置・船舶・航空機・車両運搬具・工具器具備品・生物(坑道とハを除く) | 取得価額から1円を控除した金額(=1円が残る) |
| ロ | 坑道および無形固定資産(ソフトウエア・特許権・営業権・水道施設利用権など) | その取得価額に相当する金額(=1円を残さず0円まで) |
| ハ | 所有権移転外リースのリース資産(借主側) | 令和9年3月31日以前契約分は取得価額から残価保証額を控除 ※ この区分は当ツールでは計算できません |
つまりソフトウエアなどの無形固定資産は、1円を残さず取得価額の全額を償却しきります。会計ソフトが有形資産と同じように1円を残していると、その1円はいつまでも帳簿から消えません。坑道の償却限度額も取得価額の全額です。資産ごとに選べる償却方法は定額法と定率法の節にまとめました。
中古資産は「簡便法」で耐用年数を短くできる
中古で買った資産は、法定耐用年数ではなく事業に使い始めてからの使用可能期間として見積もった年数で償却できます。ただし使用可能期間を見積もるのは実際には難しいので、見積りが困難な場合は「簡便法」で計算した年数を使えます(耐用年数省令3条1項2号)。上の計算機で計算できます。
- 法定耐用年数の全部を経過した資産 … 法定耐用年数 × 20%
- 法定耐用年数の一部を経過した資産 … (法定耐用年数 − 経過年数)+ 経過年数 × 20%
出た年数に1年未満の端数があるときは切り捨て、2年に満たないときは2年とします。経過年数は「暦に従つて計算」するので(耐令3条5項)、築年数は月まで数えます。
たとえば法定耐用年数22年の木造アパートを築10年3か月で買った場合は、(264か月−123か月) + 123か月×20% = 165.6か月 = 13.8年 → 13年です。年だけで「築10年」と丸めると14年になり、1年ずれます。
資本的支出が中古資産の取得価額の50%を超えると、簡便法は使えません(耐令3条1項ただし書)。この場合は使用可能期間を見積もる方法によります。さらに資本的支出が再取得価額(同じ新品を買う場合の価額)の50%も超えるときは、法定耐用年数によります(国税庁 No.5404 注)。
中古資産の耐用年数の見積りは事業に使い始めた年にしかできません。その年にしなかった場合、翌年以後に見積もり直すことはできません。
10万円・20万円・40万円未満の少額な資産
取得価額が少額なら、耐用年数にわたる減価償却をせずに経費にできる別の取扱いがあります。経費にするのは、買った年ではなく事業に使い始めた年です。
- 10万円未満 … 使い始めた年に全額を必要経費に算入します。使用可能期間が1年未満の資産も同じです(所得税法施行令138条)。
- 20万円未満 … 一括償却資産として、使い始めた年から3年で均等に(毎年3分の1ずつ)必要経費に算入できます(同139条)。
- 40万円未満 … 青色申告の中小事業者などは、少額減価償却資産の特例で、使い始めた年に全額を算入できます。合計で年300万円までです。
この特例の上限が40万円未満になったのは令和8年4月1日以後に取得したものからです(それ以前に取得したものは30万円未満)。取得・供用の期限は令和11年3月31日までです。
使う前に確かめる条件
- 対象外の資産:主要な業務でない貸付けに使う資産は、10万円未満・20万円未満・40万円未満の3つの取扱いとも対象外です。使用可能期間が1年未満の資産には、この貸付けの除外はありません。
- リース資産:10万円未満と一括償却資産の取扱いは、所定のリース資産も対象外です。
- 一括償却資産の手続き:対象額を書いた書類と明細書を確定申告書に添付し、計算の書類を保存します。
- 少額特例の従業員数:令和8年4月1日以後の取得分は400人以下、同日前の取得分は500人以下です。特定法人は改正前後とも300人以下です。
- 少額特例の年300万円:1年未満の事業年度と、開業・廃業の年は月割です。確定申告書への明細書の添付も必要です。
- 法人の場合:使い始めた事業年度に全額を損金経理します。資格・対象除外の要件もあります。
よくある質問
減価償却費はどうやって計算しますか?
平成19年4月1日以後に取得した資産は、定額法なら「取得価額×定額法の償却率」で毎年ほぼ同額、定率法なら「期首の未償却残高×定率法の償却率」で初めの年ほど多く計算します。償却率は耐用年数ごとに国税庁の表(別表第八〜第十)で決まっています。取得価額100万円・耐用年数10年・通年供用の有形資産なら、定額法は1〜9年目が10万円で、定率法200%は1年目20万円・2年目16万円…と減り、後半は約6.5万円で一定になります。
定額法と定率法はどちらを選べますか?
個人事業主は定額法が法定で、税務署へ届け出れば定率法も選べます。法人は定率法が法定です。ただし建物は定率法を選べず定額法だけで、建物附属設備・構築物も平成28年4月1日以後に取得したものは定額法だけです。ソフトウエア等の無形固定資産と生物も定額法だけです。
ソフトウエアも最後に1円を残しますか?
残しません。備忘価額1円を残すのは有形固定資産と生物で、ソフトウエアなどの無形固定資産と坑道は取得価額の全額を償却しきります(所得税法施行令134条1項2号ロ「その取得価額に相当する金額」)。つまり無形固定資産の帳簿価額は最後に0円になります。有形固定資産で1円を残すのは、その資産をまだ持っていることを帳簿に残すためです。上の計算機の「資産の種類」で切り替わります。
中古で買った資産の耐用年数はどうなりますか?
事業に使い始めてからの使用可能期間として見積もった年数で償却でき、見積りが困難なときは簡便法が使えます。法定耐用年数の全部を経過していれば法定耐用年数×20%、一部を経過していれば(法定耐用年数−経過年数)+経過年数×20%です。1年未満の端数は切り捨て、2年未満なら2年とします。簡便法が使えない場合は、上の中古資産の節で確認してください。
耐用年数はどこで調べますか?
国税庁の「耐用年数表(減価償却資産の耐用年数等に関する省令の別表)」で資産の種類ごとに決まっています。サーバー用以外のパソコンは4年、一般用の総排気量0.66リットル以下の軽乗用車は4年、普通乗用車は6年、木造事務所は24年です。中古資産を買ったときは「簡便法」で見積もった年数を使うこともあります。このツールは耐用年数2〜50年に対応しています。
年の途中で買った資産の初年度はどう計算しますか?
個人の初年度は年額×業務供用月数÷12で月割します。個人事業主(会計期間1〜12月)なら、使い始めた月から12月までの月数を使います。たとえば4月に使い始めたら9か月分、10月なら3か月分です。月割がある場合の償却終了時期は方法・率・残高により異なります。翌年は原則年額ですが、定率法は保証額を下回った年から改定取得価額×改定償却率に切り替え、最終年は残高で調整します。
定率法の「償却保証額」「改定償却率」とは何ですか?
定率法は残高×償却率で計算すると額がどんどん小さくなり償却が終わらないため、一定額を下回らないようにする仕組みです。償却保証額=取得価額×保証率で、その年の償却額(調整前償却額)が償却保証額を初めて下回った年から、「改定取得価額(その年の期首帳簿価額)×改定償却率」で毎年同額を償却します。取得価額100万円・耐用年数10年・通年供用の有形資産の例では、10年目に1円まで償却します。保証率・改定償却率は耐用年数ごとに国税庁の表で決まっています。
10万円・20万円・40万円未満の少額な資産はどうなりますか?
耐用年数にわたる償却ではなく、別の取扱いで経費にできます。10万円未満は使い始めた年に全額を、20万円未満は一括償却資産として3年で均等に算入できます。青色申告の中小事業者などは、少額減価償却資産の特例で、令和8年4月1日以後に取得した40万円未満の資産を年300万円まで全額算入できます(同日前に取得したものは30万円未満)。対象外の資産や手続きの条件は、上の使う前に確かめる条件で確認してください。
償却率一覧表(定額法・定率法200%)
耐用年数ごとの償却率です(読み込み中…)。定率法の列は200%(平成24年4月1日以後の取得)の率です。平成19年4月1日〜平成24年3月31日に取得した資産は250%定率法(償却率が高め)で、上の計算機が取得年月から自動選択します。
| 耐用年数 | 定額法 償却率 | 定率法200% 償却率 | 改定償却率 | 保証率 |
|---|---|---|---|---|
| 読み込み中… | ||||
※ 償却率は耐用年数省令の別表第八・第九・第十の値を用います。丸め済みの定額法の率を2倍・2.5倍しても定率法の表の値とは一致しない場合があります。
出典
- 国税庁 タックスアンサー No.2106「定額法と定率法による減価償却(平成19年4月1日以後に取得する場合)」 — 定額法・定率法の計算式、償却保証額・改定取得価額・改定償却率の考え方、取得価額100万円・耐用年数10年の計算例(本ツールの外部検算に使用)
- 国税庁 タックスアンサー No.2100「減価償却のあらまし」添付「減価償却資産の償却率等表」 — 定額法の償却率(別表第八)、平成19年4月1日〜平成24年3月31日取得の定率法(250%・別表第九)の償却率・改定償却率・保証率
- 国税庁「法人の減価償却制度の改正に関するQ&A(平成24年2月)」 — 平成24年4月1日以後取得の定率法(200%・耐用年数省令別表第十)の償却率・改定償却率・保証率、200%定率法の計算例
- 国税庁 タックスアンサー No.2105「旧定額法と旧定率法による減価償却(平成19年3月31日以前に取得した場合)」 — 本ツールの対象外(旧法)の範囲
- 所得税法施行令134条1項2号:イは坑道等を除く有形資産・生物の取得価額−1円、ロは坑道・無形資産の取得価額全額、ハは借主側の所定リース資産で令和9年3月31日以前契約分の取得価額−残価保証額。所得税法施行令6条8号は無形資産の範囲、120条の2第1項4号は同項5号の鉱業権等・6号のリース資産を除く無形資産及び生物の定額法を規定
- 減価償却資産の耐用年数等に関する省令3条(中古資産の耐用年数等)— 1項2号イ(全部経過=法定耐用年数の100分の20)・ロ(一部経過=法定耐用年数−経過年数+経過年数の100分の20)・「二年に満たないときは、これを二年とする」、1項ただし書(資本的支出が取得価額の100分の50を超える場合は2号を適用しない)、5項「暦に従つて計算し、一年に満たない端数を生じたときは、これを切り捨てる」 https://laws.e-gov.go.jp/law/340M50000040015
- 国税庁 タックスアンサー No.5404「中古資産の耐用年数」 — 簡便法の算定方法と計算例(法定耐用年数30年・経過年数10年→22年。本ツールの外部検算に使用)、資本的支出が再取得価額の50%を超える場合は法定耐用年数による旨の注
- 所得税法施行令138条(少額の減価償却資産=10万円未満)・139条(一括償却資産=20万円未満・3年) https://laws.e-gov.go.jp/law/340CO0000000096
- 租税特別措置法28条の2(個人)・67条の5(法人) — 中小企業者等の少額減価償却資産の特例。取得価額40万円未満・年間合計300万円・令和11年3月31日までの取得。40万円未満への拡充は令和8年法律12号 附則35条・65条により「施行日(令和8年4月1日)以後に取得」したものから https://laws.e-gov.go.jp/law/332AC0000000026
- 租税特別措置法施行令18条の5第1項(個人=常時使用する従業員400人以下)・39条の28第1項(法人=400人以下、特定法人は300人以下) https://laws.e-gov.go.jp/law/332CO0000000043
この記事は国税庁の資料にもとづく一般的な情報であり、個別の事案に対する助言ではありません。実際の申告では、資産の種類ごとの耐用年数の判定、中古資産の見積り、事業供用の時期、償却方法の届出の有無などにより結果が異なる場合があります。1円未満の端数は切り捨てで計算しています(切り上げも認められます)。正確な取扱いは国税庁のタックスアンサー、または税理士・税務署でご確認ください。