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扶養控除等申告書の書き方|独身・扶養なしは本人情報だけでOK

結論から言うと、「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」は扶養家族がいなくても、給与をもらう人はほぼ全員が出します。そして独身・扶養なしなら、氏名・住所・マイナンバーなどの本人情報だけ書いて、あとは全部空欄でかまいません

ここが多くの人の誤解です。この申告書を出す本当の理由は「扶養控除を受けるため」ではありません。毎月の給与から引かれる所得税を「甲欄」で計算してもらうためです。出さないと「乙欄」になり、毎月の所得税が数倍に跳ね上がります(しかも年末調整もしてもらえません)。

そしてもう一つ、令和8年分にかぎって、この申告書には他の年にない“罠”があります令和8年度税制改正で扶養親族の所得要件が引き上げられたのに、国税庁が配っている令和8年分の様式の裏面には、改正前の数字(58万円・123万円・160万円・165万円)が印刷されたままだからです。国税庁自身が「様式裏面の注意事項等が改正前の内容となっている場合がありますのでご注意ください」と注意喚起しています。用紙の数字を信じて空欄にすると、受けられるはずの控除を落とします。

この記事では、どの欄を空欄にしてよいかを国税庁の様式に沿って示したうえで、「用紙に書いてある数字」と「年末調整で実際に使う数字」の対比表まで示します。

扶養家族がいなくても、全員が出す

国税庁は、この申告書についてこう書いています。

国税庁「A2-1 給与所得者の扶養控除等の(異動)申告」備考 国内において給与の支給を受ける居住者は、源泉控除対象配偶者や扶養親族の有無にかかわらず原則としてこの申告を行わなければなりません。この申告を行わない場合は、月々(日々)の源泉徴収の際に受けることのできる諸控除が受けられず、また年末調整も行われないことになります

「扶養親族の有無にかかわらず」と明記されています。独身でも、扶養家族がゼロでも、出します。

令和8年分の様式そのものにも、本人情報欄のすぐ下にこう印刷されています。

以下の各欄に記載する親族がなく、かつ、あなた自身が障害者、寡婦、ひとり親又は勤労学生のいずれにも該当しない場合には、上記の各欄を記載して給与の支払者に提出してください。

「上記の各欄」=用紙のいちばん上にある、あなた自身の情報だけということです。A〜D欄は書かなくてよい、と様式が言っています。

なお、例外はごくわずかです。日額表の丙欄が適用される人は提出不要です(日雇賃金を受ける人や、雇用契約の期間があらかじめ2か月以内と決められているパート・アルバイト)。また2か所以上から給与をもらう人は、そのうち1か所にしか提出できません(メインの勤務先に出します)。

出さないとどうなるか(甲欄と乙欄の実数)

毎月の給与から引かれる所得税は、「給与所得の源泉徴収税額表(月額表)」という表を引いて決めます。この表には甲欄と乙欄という2本の列があり、どちらを使うかは、扶養控除等申告書を出したかどうかだけで決まります(国税庁 No.2511)。

甲欄乙欄
使う人扶養控除等申告書を提出した提出していない
扶養親族の数人数に応じて税額が下がる考慮されない
年末調整してもらえるしてもらえない(自分で確定申告)

では、いくら違うのか。月給30万円・扶養親族0人(東京都・協会けんぽ・35歳)で実際に令和8年分の月額表を引いてみます。社会保険料の本人負担42,570円(健康保険14,775円+子ども・子育て支援金345円+厚生年金27,450円)を引いた257,430円に表をあてます。

月給30万円・扶養親族0人(東京都・協会けんぽ・35歳/令和8年分の月額表) 社会保険料 42,570円 を引いた 257,430円 に税額表をあてる 申告書を出した = 甲欄 毎月の所得税 6,430円 出さなかった = 乙欄 毎月の所得税 38,600円 差 32,170円/月 = 年間 386,040円 乙欄は甲欄の約6.0倍。1枚出すか出さないかだけで、毎月の手取りがこれだけ変わる ※ 乙欄でも年末に確定申告をすれば取り戻せるが、その手間と1年間の資金負担は自分持ち
同じ月給30万円でも、扶養控除等申告書を出した人(甲欄)と出さなかった人(乙欄)で、毎月引かれる所得税は6,430円と38,600円年間で386,040円の差になる。扶養家族が1人もいなくても、この差は生じる。

給与水準を変えても、差は同じ方向に開きます。いずれも扶養親族0人・東京都・35歳の場合です。

月給甲欄(出した)乙欄(出さない)差(月)
20万円3,340円11,500円8,160円
25万円4,840円24,100円19,260円
30万円6,430円38,600円32,170円
40万円11,000円66,800円55,800円
50万円18,100円105,800円87,700円

※ 税額表にあてはめる金額は「社会保険料等を控除した後の金額」です(雇用保険料もここに含まれます。上表は健康保険・厚生年金・子ども・子育て支援金のみで計算しているため、実際の税額はもう少し下がります)。甲欄と乙欄の差の大きさは変わりません。

無料ツール:源泉徴収税額 計算機 令和8年分の月額表に対応。甲欄・乙欄・扶養親族の人数を選ぶだけで、毎月の所得税を自動計算します。「申告書を出した場合/出さない場合」の差も、その場で確かめられます。

独身・扶養なしの人が書く欄/空欄でよい欄

「何か書かなきゃいけない気がする」——これが間違いのもとです。独身・扶養家族なし・障害者や勤労学生にも該当しないなら、書くのは次の欄だけです。

本人情報(勤務先名・氏名・マイナンバー・住所・生年月日) → 給与をもらう人は全員が書く。ここだけで提出できる ※ マイナンバーは会社が帳簿を備えていれば省略できることがある 全員 A 源泉控除対象配偶者 本人の所得900万円以下 かつ 配偶者の所得95万円以下(給与収入169万円以下) 空欄 B 源泉控除対象親族(16歳以上) 16歳以上の扶養親族。19〜23歳は「特定扶養親族」または「特定親族」に印 → 16歳未満はここには書かない(いちばん下の住民税欄へ) 空欄 C 障害者、寡婦、ひとり親又は勤労学生 本人または家族が該当するときだけ。1つにつき扶養親族等の数が1人増える 空欄 D 他の所得者が控除を受ける扶養親族等 共働きで、子を配偶者の扶養にするとき。空欄のことが多い 空欄 住民税に関する事項(16歳未満の扶養親族) 所得税の控除はないが、住民税の非課税判定に人数が効く 要注意 16歳未満の子が いれば必ず書く
独身・扶養なしの人は、いちばん上の本人情報だけ書けば提出できる。A〜D欄はすべて空欄でよい。ただし16歳未満の子がいる人は、いちばん下の「住民税に関する事項」を必ず書く(後述)。
前年から何も変わっていないなら「簡易な申告書」でもよい(令和8年分) 前年に出した内容から異動がなければ、氏名・住所・マイナンバーだけ書いて、余白に「前年から異動なし」と記載して出す方法が認められています(国税庁の記載例そのものが、この3項目+「前年から異動なし」の一言だけの記入例です)。ただし勤務先の指示に基づいて使うものなので、勝手に簡略化せず、会社の案内に従ってください。

年末に「2枚」配られるのはなぜか

毎年11〜12月になると、扶養控除等申告書が2枚配られて混乱する人が続出します。これは年分が違う2枚です。

翌年分(例: 令和9年分)本年分(例: 令和8年分)
何のため来年の毎月の源泉徴収を甲欄にするため今年の年末調整のため
いつまでその年の最初の給与日の前日まで年末調整の書類とあわせて
何を書く来年の見込みで書く今年出したものから変わった点を直す
変更がなければ本人情報のみ(簡易な申告書)でも可そのままでよい(訂正不要)

ポイントは、本年分の1枚は「異動(変更)の届け出」だということです。今年の初めに出したあとで結婚・出産・離婚した、子がアルバイトで稼ぎすぎて扶養から外れた、親を扶養に入れた——こうした変化があれば、その申告書の該当項目を異動後の内容に直します(様式裏面「⑶」)。

なぜ年末に直すのか 扶養親族に当たるかどうかは、その年の12月31日現在の状況で判定するからです(国税庁 No.1180)。年初に出した申告書は「今年はこうなる見込み」で書いたもの。年末に事実が確定した時点で、ズレていたら直す——それが本年分の1枚の役割です。

A〜D欄の書き方(誰が書き、誰は空欄か)

A 源泉控除対象配偶者

本人の所得が900万円以下で、かつ配偶者の所得が95万円以下(給与収入だけなら169万円以下)のときに書きます。書けば、毎月の「扶養親族等の数」が1人増え、源泉徴収税額が下がります。

共働きで配偶者に一定以上の収入があるなら、この欄は空欄です。配偶者の給与収入が169万円を超えるなら、A欄には書けません(年末調整で配偶者特別控除を受けられる可能性は残るので、その場合は年末の「給与所得者の配偶者控除等申告書」で申告します)。

用紙の裏面には「160万円以下」と書いてあります(それは古い数字です) 所得95万円以下という要件自体は令和8年度改正でも変わっていません。変わったのは給与収入への換算です。給与所得控除の最低保障が65万円→74万円に上がったため、所得95万円に対応する給与収入は 95万 + 74万 = 169万円。令和8年分の様式裏面に印刷された「160万円以下」は、改正前(95万 + 65万)の数字です。配偶者の給与収入が160万円超169万円以下なら、用紙の裏面は「対象外」と言いますが、年末調整では源泉控除対象配偶者に該当します。
夫婦の両方がお互いをA欄に書くことはできません 様式の注記に明記されています。共働きで両方の所得が900万円以下・95万円以下という状況は事実上ありませんが、思い込みで両方が書いてしまう事故は起こります。
「税の扶養」と「社会保険の扶養」は別物です(混同注意) この申告書で判定するのは税法上の扶養で、令和8年分の境界は所得62万円(給与収入136万円)源泉控除対象配偶者の169万円です。一方、健康保険の被扶養者になれるかどうかは年収130万円未満(60歳以上・障害者は180万円未満)という別の基準で決まり、この申告書とは関係ありません。「扶養に入る/外れる」という言葉が両方に使われるため、毎年ここで取り違えが起きます。→ 社会保険の扶養に入る条件

B 源泉控除対象親族(16歳以上)

16歳以上の扶養親族を書きます。16歳未満はここには書きません(いちばん下の住民税欄へ)。所得税の扶養控除は、平成23年に16歳未満が対象外になっているためです。

19歳以上23歳未満(令和8年分なら平成16年1月2日〜平成20年1月1日生まれ)の子は、控除額が大きいので取りこぼさないでください。

区分年齢扶養控除額
一般の控除対象扶養親族16歳以上(下記以外)38万円
特定扶養親族19歳以上23歳未満63万円
老人扶養親族(同居老親等以外)70歳以上48万円
老人扶養親族(同居老親等)70歳以上・直系尊属と同居58万円

大学生の子がいる家庭は、ここが63万円です。書き忘れの損害がいちばん大きい欄です。

C 障害者、寡婦、ひとり親又は勤労学生

本人や家族が該当するときだけチェックします。該当が1つあるごとに、毎月の「扶養親族等の数」が1人加算されます(=毎月の所得税が下がります)。年末調整だけの話ではなく、毎月の手取りに効く点に注意してください。

D 他の所得者が控除を受ける扶養親族等

共働きで、子や親を「配偶者のほうの扶養」にする場合に書く欄です。同じ人を夫婦の両方が同時に扶養にすることはできないため、「この人は配偶者が扶養にしています」と申告して重複を防ぎます。

ここは空欄のことが多い欄です。書かなくても自分の税額は変わりません(自分が控除を受けるわけではないため)。会社が家族全体の扶養関係を把握するための欄と考えてください。

16歳未満の子は「住民税に関する事項」へ

ここがこの申告書でいちばん実害の出やすい欄です。

16歳未満の子には所得税の扶養控除がありません。だから「書いても意味がない」と思って空欄にする人がいます。これが損をします。

この欄は、地方税法45条の3の2・317条の3の2に基づく個人住民税の「給与所得者の扶養親族申告書」を兼ねています(総務省)。そして住民税の非課税判定には、16歳未満の子も人数に入るのです。

東京23区の場合(所得割・均等割とも非課税になる基準) ・同一生計配偶者・扶養親族がいる場合 … 35万円 ×(本人+同一生計配偶者+扶養親族の人数)+ 31万円 以下
・同一生計配偶者・扶養親族がいない場合 … 45万円 以下
そして東京都主税局は、この「扶養親族」について「年齢16歳未満の者及び控除対象扶養親族に限る」と明記しています。16歳未満の子も、しっかり人数に入ります。

具体的に、どれだけ違うか。16歳未満の子が2人いる人で比べます。

住民税欄に書いた空欄にした
判定に使う人数3人(本人+子2人)1人(本人のみ)
非課税になる合計所得35万×3+31万=136万円以下45万円以下
給与収入でいうと(令和8年分の所得)年収210万円まで非課税年収119万円を超えると課税

つまり、パートや時短勤務でこの年収帯にいる人が住民税欄を空欄にすると、本来なら非課税だったはずの住民税が課税されます。所得税は1円も変わらないので、誰も気づかないまま翌年度の住民税が上がる——これがこの欄の怖さです。

※ 非課税限度額は市区町村の条例で定めるため、金額は自治体によって異なります(上表は東京23区の場合。地方税法施行令47条の3は「基本額35万円 ×(本人+同一生計配偶者+扶養親族の数)+ 10万円 + 加算額21万円」を基準としています)。※ 給与収入への換算は令和8年分の給与所得控除(最低保障74万円)によります。令和8・9年分は給与収入74万1,000円以上219万1,000円未満なら「給与所得=収入金額 − 74万円」と定められているため(租税特別措置法29条の4第2項)、上の2つの境界はいずれもこの範囲内でちょうどの金額になります。令和7年分の所得(=令和8年度分の住民税)で見るなら、最低保障は65万円なので約110万円/約205万円です。※ 16歳未満の扶養親族欄には、その子のマイナンバーの記載が必要です。

【令和8年分の最重要】用紙の数字は「もう古い」

まず、様式そのものの変更点から。令和7年度税制改正(基礎控除・給与所得控除の見直し、特定親族特別控除の新設)を受けて、令和8年分の様式は令和7年分から作り替えられました。国税庁の記載例も、冒頭でわざわざこう注意しています。

国税庁「令和8年分 給与所得者の扶養控除等申告書」記載例の冒頭 令和8年分の扶養控除等申告書においては、記載事項が「控除対象扶養親族」から「源泉控除対象親族」に改正されていますので、記載漏れがないようご注意ください。
様式の変更点令和7年分令和8年分
B欄の名称控除対象扶養親族(16歳以上)源泉控除対象親族(16歳以上)
B欄のチェック特定扶養親族特定扶養親族・特定親族
住民税欄退職手当等を有する配偶者・扶養親族…配偶者・扶養親族・特定親族

ところが、その用紙の裏面に印刷された金額は、すでに古い

ここからが本題です。令和8年度税制改正(令和8年12月1日施行・令和8年分以後の所得税に適用)で、基礎控除・給与所得控除・扶養親族等の所得要件がまた引き上げられました。ところが国税庁が配布している令和8年分の様式は改正前に印刷されたもので、裏面の「扶養親族等の範囲」には改正前の金額(58万円・123万円・160万円・165万円・150万円)がそのまま載っています

国税庁「令和8年度税制改正(所得税の基礎控除の引上げ等関係)Q&A」Q2-1(令和8年5月) 令和8年分の扶養控除等申告書の様式裏面の注意事項等が改正前の内容となっている場合がありますのでご注意ください

なぜこんなことが起きるのか。改正の施行日が「令和8年12月1日」だからです。国税庁はこう整理しています ——

国税庁「令和8年4月 源泉所得税の改正のあらまし」【令和8年の給与等の源泉徴収事務における留意事項】 令和8年11月までの給与等の源泉徴収事務に変更は生じません。
令和8年分の給与等の源泉徴収事務においては、令和8年12月に行う年末調整の際に、引上げ後の基礎控除額および改正後の「年末調整等のための給与所得控除後の給与等の金額の表」に基づいて1年間の税額を計算し、改正前の「源泉徴収税額表」によって計算した源泉徴収税額との精算を行います。

つまり、令和8年には「2つの数字」が同時に生きています

この対比表が、この記事の核です。どのサイトも「令和8年分は58万円・123万円」と書いていますが、それは11月までしか正しくありません

区分用紙の裏面に印刷された額
(=令和8年11月までの月次源泉徴収に使う)
令和8年12月の年末調整で実際に使う額
(=令和8年分の所得税の正解)
扶養親族・同一生計配偶者の所得要件58万円以下
(給与収入 123万円以下)
62万円以下
(給与収入 136万円以下)
特定親族(19歳以上23歳未満)58万円超 123万円以下
(給与収入 123万円超 188万円以下)
62万円超 123万円以下
(給与収入 136万円超 197万円以下
配偶者特別控除の対象配偶者58万円超 133万円以下
(給与収入 123万円超 201万5,999円以下)
62万円超 133万円以下
(給与収入 136万円超 207万円以下
源泉控除対象配偶者(A欄)所得95万円以下
(給与収入 160万円以下)
所得95万円以下
(給与収入 169万円以下)
源泉控除対象親族(B欄・19〜23歳)所得100万円以下
(給与収入 165万円以下)
所得100万円以下
(給与収入 174万円以下)
勤労学生(C欄)85万円以下
(給与収入 150万円以下)
89万円以下
(給与収入 163万円以下)
給与所得控除の最低保障65万円74万円
基礎控除(合計所得132万円以下)95万円99万円
所得税がかかり始める給与収入160万円173万円

※ 「所得95万円以下」「所得100万円以下」という所得の要件そのものは変わっていません。変わったのは給与収入への換算です(給与所得控除の最低保障が65万円→74万円になったため、同じ所得に対応する給与収入が9万円ずつ上がりました)。※ 令和8・9年分は、給与収入74万1,000円以上219万1,000円未満なら「給与所得=収入金額 − 74万円」と法律で定められているため(租税特別措置法29条の4第2項)、上表の給与収入は目安ではなく、ちょうどの金額です。

令和8年 1月 〜 11月 毎月の源泉徴収 改正前の額(58万円 / 給与123万円)… 用紙の裏面どおり 令和8年12月1日 施行 12月 年末調整 改正後の額(62万円 / 給与136万円) 12月の年末調整で、1年分を改正後の額で計算し直して精算する あなたがやること 給与収入が 123万円超 〜 136万円以下 の家族がいるなら、その人は今回の改正で 「初めて」扶養親族に該当する。→ 扶養控除等(異動)申告書を出し直す 「異動月日及び事由」欄に「令和8年12月1日 改正」と記載(国税庁 Q&A Q2−1)
令和8年は、11月までの毎月の源泉徴収は「改正前の額」12月の年末調整は「改正後の額」で行う。用紙の裏面に印刷された58万円・123万円は、11月までの月次計算用の数字であって、1年分の所得税の正解ではない。
いちばん重要な行動:給与収入123万円超〜136万円以下の家族がいる人は、申告書を出し直す 改正で所得要件が58万円 → 62万円(給与収入 123万円 → 136万円)に上がりました。ということは——給与収入が123万円超〜136万円以下の親族は、令和8年分から「初めて」扶養親族に該当します。去年までは扶養から外れていた人です。
国税庁は、この人たちについてこう明記しています。
この改正により新たに扶養親族等の要件を満たすこととなった親族等に係る扶養控除等の適用を受けるために、「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」等の提出が必要となります。(「令和8年4月 源泉所得税の改正のあらまし」) 会社が勝手にやってくれるものではありません。本人が申告書を出し直さないと、その家族は年末調整でも扶養親族として扱われず、控除38万円(特定扶養親族なら63万円)を丸ごと落とします。
書き方も国税庁が指定しています —— 扶養控除等申告書の「異動月日及び事由」欄に「令和8年12月1日 改正」などと記載してください(Q&A Q2-1)。提出期限は原則として令和8年12月1日以後最初に給与の支払を受ける日の前日までですが、年末調整を行う時までに出せば、それに基づいて年末調整してもらえます
該当しやすいのは、給与収入130万円前後で働くパート・アルバイトの配偶者や親、学生でない子です。「130万円の壁(社会保険)」を意識して働いた結果、ちょうどこの帯(123万円超〜136万円以下)に入っている人が大量にいます
注意:11月までの毎月の源泉徴収では、この人を「扶養親族等の数」に入れてはいけません 国税庁 Q&A Q2-1の(注)が、はっきり書いています —— 「令和8年11月30日以前に支払う給与については、『源泉徴収税額表』を使用する際の『扶養親族等の数』に、この改正により新たに扶養控除等の対象となる扶養親族等を含めないようご注意ください」
改正の効き始めは12月1日以後に支払う給与からです。先取りして11月までの月次計算に入れると、毎月の源泉徴収が過少になります(年末調整でまとめて徴収されるので損得はありませんが、給与担当者の処理としては誤りです)。「申告書は早めに出す/月次には反映しない」——この2つを分けて理解してください。

「特定親族」とは(令和7年度改正で新設された枠)

19歳以上23歳未満で、所得62万円超123万円以下(給与収入136万円超197万円以下)の親族です(令和8年分。改正前は58万円超・給与123万円超188万円以下)。アルバイトで稼ぎすぎて扶養から外れた大学生の子が、ここに入ります。従来はこの子について何の控除もありませんでしたが、特定親族特別控除(最大63万円・所得税法84条の2)が新設され、控除が受けられるようになりました。

踏み込んだ一段:大学生の子のバイト代の「3つの境界」は、令和8年分で9万円ずつ動く 子の給与収入で、扱いが3段階に分かれます。ここを取り違えると申告書の書き方を間違えます。括弧内は用紙の裏面(=改正前)の数字です。
136万円以下(用紙:123万円以下/所得62万円以下)… 特定扶養親族。B欄に書き「特定扶養親族」に印。扶養控除63万円
136万円超〜174万円以下(用紙:123万円超165万円以下/所得62万円超100万円以下)… 特定親族かつ源泉控除対象親族。B欄に書き「特定親族」に印。毎月の「扶養親族等の数」に1人入る
174万円超〜197万円以下(用紙:165万円超188万円以下/所得100万円超123万円以下)… 特定親族だが源泉控除対象親族ではないB欄には書きません。年末調整のときに「給与所得者の特定親族特別控除申告書」を出して控除を受けます

つまり174万円が、毎月の源泉徴収に反映されるかどうかの分かれ目です(給与収入174万円=所得100万円)。ここを知らずにB欄に書いてしまうと、毎月の源泉徴収が過少になり、年末調整で不足分をまとめて徴収されます。
そしてもう一つ。バイト収入が123万円超〜136万円以下の大学生の子は、令和8年分で「特定親族 → 特定扶養親族」に格上げされます。国税庁 Q&A Q2-4も、この場合は「異動があった旨を記載した扶養控除等申告書を提出する必要がある」としています。控除額は特定親族特別控除の63万円と同額ですが、申告する書類が変わる(特定親族特別控除申告書 → 扶養控除等申告書のB欄)ので、放置すると宙に浮きます。
同じ子でも「健康保険の扶養」の境界は150万円(税とは別) 19歳以上23歳未満の子は、健康保険の被扶養者の年収要件が令和7年10月1日以降130万円未満 → 150万円未満に変わりました(日本年金機構)。税の境界(136万・174万・197万)とはどれとも一致しません。
・バイト年収130万円の大学生 … 健康保険の扶養には入ったまま(150万円未満)。税は令和8年分から特定扶養親族(136万円以下)。ただし用紙の裏面(123万円)を見ると「特定親族」に分類してしまう——まさに今回の改正で扱いが変わる帯です
・バイト年収140万円の大学生 … 健康保険の扶養には入ったままですが、税は特定扶養親族を外れて特定親族(136万円超)。控除は扶養控除ではなく特定親族特別控除で受けます

「扶養から外れた/外れていない」は、税と社会保険で答えが違ううえ、税のほうは年分によっても答えが変わる——これが令和8年分のややこしさです。

提出先・保存・マイナンバー

税務署には提出しません

よくある誤解です。提出先は勤務先(給与の支払者)です。国税庁はこう説明しています。

この申告書は、本来、給与の支払者を経由して税務署長及び市区町村長へ提出することになっていますが、給与の支払者は、税務署長及び市区町村長から特に提出を求められた場合以外は、提出する必要はありません(給与の支払者が保管しておくことになっています)。

会社は、この申告書を提出期限の属する年の翌年1月10日の翌日から7年間保存します(国税庁 No.2503)。税務調査で求められたときに出す、という建て付けです。

マイナンバーは省略できることがある

会社が従業員本人・源泉控除対象配偶者・源泉控除対象親族などの氏名・住所・マイナンバーを記載した帳簿を備えている場合、その人のマイナンバーは申告書への記載を省略できます

ただし、これは会社側が判断することです。従業員が勝手に空欄にしてよいという意味ではありません。様式の裏面にも「一定の要件の下、マイナンバーの記載を要しない場合がありますので、給与の支払者に確認してください」と書かれています。会社の指示に従ってください。

まとめ
  • 扶養家族がいなくても全員出す。出す理由は「毎月の源泉徴収を甲欄にしてもらうため」
  • 出さないと乙欄。月給30万円なら所得税が6,430円 → 38,600円(年間386,040円の差)。しかも年末調整なし
  • 独身・扶養なしは本人情報だけ書けばよい。A〜D欄は全部空欄でOK
  • 16歳未満の子は住民税欄へ。所得税の控除はないが、住民税の非課税判定に人数が効く(空欄にすると実損)
  • 令和8年分はB欄が「源泉控除対象親族」に改称。特定親族(19〜23歳)の枠が加わった
  • 【令和8年分の最重要】用紙の裏面の数字(58万・123万・160万・165万)は、11月までの月次源泉徴収用。12月の年末調整で実際に使うのは改正後(62万・136万・169万・174万)
  • 給与収入123万円超〜136万円以下の家族は、今回の改正で「初めて」扶養親族になる。控除を受けるには扶養控除等(異動)申告書の提出が必要(国税庁が明記)。出さないと控除38万円(特定扶養親族なら63万円)を落とす

よくある質問

Q. 扶養家族が1人もいません。それでも出す必要がありますか?

A. 必要です。国税庁は「源泉控除対象配偶者や扶養親族の有無にかかわらず原則としてこの申告を行わなければならない」としています。出さないと源泉徴収が乙欄になり、毎月の所得税が大幅に高くなるうえ、年末調整も受けられません。氏名・住所・マイナンバーなどの本人情報だけ書いて提出すれば足ります。

Q. 提出を忘れました。どうなりますか?

A. その月の給与は乙欄で源泉徴収されます。ただし、その年の年末調整までに提出すれば、年末調整で精算されて払いすぎた分は戻ってきます。年末調整にも間に合わなかった場合は、自分で確定申告をすれば取り戻せます。気づいた時点ですぐ勤務先に提出してください。

Q. アルバイトを2か所でしています。両方に出せますか?

A. 出せません。扶養控除等申告書は1か所にしか提出できません。メインの勤務先(主たる給与)に出し、そちらが甲欄になります。もう一方は乙欄で源泉徴収され、2か所分を合算する年末調整はできないため、原則として確定申告が必要です。

Q. 16歳未満の子を書く欄が見つかりません。B欄でいいですか?

A. B欄ではありません。16歳未満の子は、用紙のいちばん下にある「住民税に関する事項」の「16歳未満の扶養親族」欄に書きます。所得税の扶養控除はありませんが、住民税の非課税判定に人数が使われるため、書かないと住民税が高くなることがあります。必ず記入してください。

Q. 年末調整のときに2枚渡されました。両方書くのですか?

A. 年分が違う2枚です。「翌年分」は来年の毎月の源泉徴収を甲欄にするためのもので、来年の最初の給与日の前日までに提出します。「本年分」は今年の年末調整用で、今年出した内容に変更(結婚・出産・離婚・子の就職など)があった場合に直すためのものです。変更がなければ本年分はそのままで構いません。

Q. 配偶者が働いています。A欄に書けますか?

A. 本人の所得が900万円以下で、かつ配偶者の所得が95万円以下のときだけ書けます。給与収入に直すと、令和8年分は169万円以下です(用紙の裏面には改正前の「160万円以下」と印刷されていますが、令和8年12月の年末調整では169万円以下で判定します)。配偶者の給与収入がこれを超えるならA欄は空欄です。なお夫婦がお互いを源泉控除対象配偶者として書くことはできません。

Q. 用紙の裏面には「58万円以下」と書いてありますが、136万円というのは何ですか?

A. 令和8年度税制改正で、扶養親族の所得要件が58万円以下から62万円以下に引き上げられたためです。給与所得控除の最低保障も65万円から74万円に上がったので、給与収入でいうと123万円以下 → 136万円以下になります。改正の施行日が令和8年12月1日で、国税庁が配布した様式はそれより前に印刷されているため、裏面には改正前の数字が残っています(国税庁自身が「様式裏面の注意事項等が改正前の内容となっている場合があります」と注意喚起しています)。令和8年11月までの毎月の源泉徴収は裏面の数字(改正前)、12月の年末調整は改正後の数字を使います。

Q. パートの妻の給与収入が130万円です。何かする必要はありますか?

A. あります。扶養控除等(異動)申告書を出し直してください。給与収入130万円は改正前の基準(123万円以下)では扶養親族に該当しませんが、令和8年分からは136万円以下なので、同一生計配偶者に該当します(本人の所得が1,000万円以下なら配偶者控除の対象)。国税庁は「この改正により新たに扶養親族等の要件を満たすこととなった親族等に係る扶養控除等の適用を受けるために、扶養控除等(異動)申告書等の提出が必要となります」と明記しています。会社が自動でやってくれるものではありません。申告書の「異動月日及び事由」欄に「令和8年12月1日 改正」などと記載して提出します。

出典

本記事は一般的な情報提供を目的としたものです。個別の判断は勤務先の給与担当者・税務署・税理士にご確認ください。