雇用保険の加入条件【令和8年】週20時間・31日と学生・掛け持ちの例外
結論から言うと、雇用保険に加入するかどうかは、次の2つだけで決まります。
- 1週間の所定労働時間が20時間以上であること
- 同じ事業主に継続して31日以上雇用される見込みがあること
この2つを満たせば、パートでもアルバイトでも、契約社員でも、本人が加入を望まなくても、会社が「うちは入れない」と言っても、法律上当然に被保険者になります(雇用保険法4条1項)。加入は選べるものではありません。
ただし、ここには条文の読み方の落とし穴があります。雇用保険法には「加入条件」を定めた条文が存在しません。あるのは6条の「適用除外」——つまり入らない人のリストだけです。上の2つは、そのリストに当たらないことを裏返して言い直したものにすぎません。
この違いは言葉遊びではありません。「20時間ちょうど」の人、契約が31日に満たない人、学生、掛け持ちで働く人の結論は、すべて「除外リストの書き方」から出てきます。順に見ていきます。
上の2つで判定を終えてよいのは、日雇い・30日以内の短期雇用に当たらない場合だけです。6条の除外リストは6号あり、1号・2号のかっこ書きは日雇労働被保険者に当たる人を除外の対象から外しています。日々雇い入れる形や、1か月未満の期間を定めて人を雇っているときは、20時間・31日の判定を通り抜けます。
2つの条件を、条文の書き方どおりに読む
雇用保険法4条1項は、被保険者を「適用事業に雇用される労働者であつて、第六条各号に掲げる者以外のもの」と定義します。つまり「6条に当たらない人が、全員入る」という建て付けです。その6条1号と2号が、次のように書かれています。
第六条 次に掲げる者については、この法律は、適用しない。
一 一週間の所定労働時間が二十時間未満である者(…略…)
二 同一の事業主の適用事業に継続して三十一日以上雇用されることが見込まれない者(前二月の各月において十八日以上同一の事業主の適用事業に雇用された者…を除く。)
ここから3つのことが読み取れます。
「20時間ちょうど」は加入する
除外されるのは20時間「未満」の人です。20時間を「超える」ことは求められていないので、週20時間ちょうどの契約なら加入します。境目にいる人はここを間違えやすいところです。
見るのは「所定」労働時間であって、実際に働いた時間ではない
条文は「一週間の所定労働時間」と書きます。所定労働時間とは、雇用契約書や就業規則であらかじめ定められた時間のことです。したがって、
- 契約が週15時間の人が、繁忙期に残業して実際に週25時間働いた月があっても、加入しません
- 契約が週20時間の人が、閑散期にシフトを削られて実働が週16時間になっても、加入は続きます
ただし「実際の勤務時間は一切見ない」わけではありません。雇用保険業務取扱要領20303は、雇用契約書等で所定労働時間が定まっていない場合や、シフト制などで直前にならないと勤務時間が判明しない場合は、勤務実績に基づいて平均の所定労働時間を算定するとしています。さらに、契約書の所定労働時間と実際の勤務時間に常態的な乖離があり、その乖離に合理的な理由がない場合は、原則として実際の勤務時間で判断します。つまり、契約書に週15時間と書いてありさえすれば加入を免れる、ということにはなりません。
31日は「見込み」であって、契約書の日数ではない
2号が除外するのは「31日以上雇用されることが見込まれない者」です。つまり契約期間が31日未満でも、更新の可能性があれば「見込みあり」として加入します。契約書に更新規定があるとき、あるいは同様の契約で31日以上雇用された人が過去にいるときは、たとえ最初の契約が2週間でも被保険者になります。
さらに2号のかっこ書きは、「前2か月の各月に18日以上雇用された者」を除外リストから外しています。短期の契約を繰り返しているうちに、実績のほうから加入要件を満たしてしまう場合があるということです。
逆に、更新規定や31日以上の雇用実績があっても、その契約を更新しないことが明示され、31日以上は雇用が継続しないと労使双方が合意していることが確認できる場合は、見込みなしとして加入しません(雇用保険業務取扱要領20303)。
除外リストは6号ある — 季節・漁船・公務員
ここまで見た「週20時間未満」(1号)と「31日以上の見込みなし」(2号)は、6条の先頭2つにすぎません。6条は6号まであります。残りの4つを飛ばすと、季節労働・漁船の船員・公務員の結論を落とします。
先に、6号を通して読んで分かることを書きます。単純な条件で切っているのは1号と2号だけで、3号から6号は、まず対象を挙げたうえで「そのうち一定のものだけ」に絞る二段構えになっています。「季節雇用だから除外」「公務員だから除外」ではありません。
まだ引いていない3号・5号・6号を、条文のまま並べます。
三 季節的に雇用される者であつて、第三十八条第一項各号のいずれかに該当するもの
4号は学生の除外で、後述します。その次の5号・6号は、続けてこう書かれています。
五 船員法(昭和二十二年法律第百号)第一条に規定する船員(…略…)であつて、漁船(政令で定めるものに限る。)に乗り組むため雇用される者(一年を通じて船員として適用事業に雇用される場合を除く。)
六 国、都道府県、市町村その他これらに準ずるものの事業に雇用される者のうち、離職した場合に、他の法令、条例、規則等に基づいて支給を受けるべき諸給与の内容が、求職者給付及び就職促進給付の内容を超えると認められる者であつて、厚生労働省令で定めるもの
| 号 | 除外される人 | 二段目の条件 |
|---|---|---|
| 1号 | 1週間の所定労働時間が20時間未満の者 | (マルチジョブホルダー・日雇労働被保険者に当たる人は除く) |
| 2号 | 同一の事業主に継続31日以上雇用される見込みがない者 | (前2月に各18日以上雇用された人・日雇労働被保険者に当たる人は除く) |
| 3号 | 季節的に雇用される者 | 38条1項各号のいずれかに該当するものだけ |
| 4号 | 学校教育法1条・124条・134条1項の学校の学生・生徒 | 前3号に準ずるものとして厚生労働省令で定める者だけ(後述) |
| 5号 | 漁船に乗り組むため雇用される船員 | 政令で定める漁船に限る。1年を通じて船員として雇用される場合は除く |
| 6号 | 国・都道府県・市町村等の事業に雇用される者 | 離職時の諸給与が求職者給付・就職促進給付を超えると認められる者であって省令で定めるものだけ |
季節雇用(3号)— 除外されなければ「短期雇用特例被保険者」として加入する
3号は、季節的に雇用される者のうち38条1項各号のいずれかに該当するものを除外します。その38条1項各号は、一 4箇月以内の期間を定めて雇用される者/二 1週間の所定労働時間が20時間以上であつて厚生労働大臣の定める時間数未満である者です。
裏返すと、季節的に雇用されていても、この2つのどちらにも当たらなければ加入します。そのとき被保険者の種類は短期雇用特例被保険者になり、失業したときは基本手当ではなく特例一時金が支給されます(38条1項)。「季節労働だから雇用保険には入れない」という説明は、条文の書き方と逆です。
漁船の船員(5号)— 除外されるのは「政令で定める漁船」で、通年雇用は除外されない
5号は船員一般を除外していません。除外されるのは漁船(政令で定めるものに限る)に乗り組むため雇用される者で、しかも「一年を通じて船員として適用事業に雇用される場合を除く」と括弧書きが付いています。通年で雇われる船員は、この号では除外されません。
公務員等(6号)— 「公務員だから」ではなく、給付水準の比較で決まる
6号が除外するのは、国・都道府県・市町村等に雇用される者のうち、離職した場合に他の法令・条例・規則等に基づいて支給を受けるべき諸給与の内容が、求職者給付及び就職促進給付の内容を超えると認められる者であつて、厚生労働省令で定めるものです。身分ではなく、離職したときにもらえるものの比較で線が引かれています。だから、公的機関に雇用されていれば当然に対象外、とは条文からは読めません。
加入は本人の希望でも、会社の裁量でもない
「うちは雇用保険に入れないから」と会社に言われた、あるいは「手取りが減るから入りたくない」と自分で断った——どちらも、法律上は意味がありません。
雇用保険法5条1項は、「労働者が雇用される事業を適用事業とする」としか書いていません。業種も、規模も、法人か個人事業主かも問いません。労働者を1人でも雇えば、その事業は適用事業です。
例外は1つだけです。法附則2条と施行令附則2条により、個人経営で、常時5人未満の労働者を雇用する農林水産の事業だけが、当分の間「任意適用事業」とされています。それ以外に「小さい会社だから入らなくていい」という逃げ道はありません。
届出をしない事業主には罰則がある。7条は事業主に届出を義務づけ、83条1号は、7条に違反して届出をせず、または偽りの届出をした事業主を「6月以下の拘禁刑又は30万円以下の罰金」に処すると定めます。(「拘禁刑」は令和7年6月1日に施行された刑法改正後の呼び方です。それ以前の条文は「懲役」でした。今も「6か月以下の懲役」と書いている解説は、改正前のままです。)
そして労働者の側には、会社を通さずに使える手段があります。8条は「被保険者又は被保険者であつた者は、いつでも、次条の規定による確認を請求することができる」と定めています。会社が手続きをしてくれないときは、本人がハローワークに直接「確認請求」ができるということです。
9条の「確認」は、被保険者になるための条件ではありません。要件を満たした日に法律上当然に被保険者になっていて、確認はそれを後から確かめる手続きにすぎません。だから、会社が届出を怠っていた期間も、さかのぼって被保険者だったことになります(遡れる範囲には限りがあります。後述)。
学生の例外 — 条文は「学生だから除外」とは書いていない
「学生はアルバイトをどれだけしても雇用保険に入らない」とよく言われます。半分は正しいのですが、条文の書き方はもっと限定的です。6条4号を読みます。
先に結論を書きます。除外されるのは「昼間学生」だけで、それにも4つの例外があります。夜間学部の学生・定時制の生徒は、そもそも除外されません。
四 学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号)第一条、第百二十四条又は第百三十四条第一項の学校の学生又は生徒であつて、前三号に掲げる者に準ずるものとして厚生労働省令で定める者
除外されるのは「学生」ではなく、「学生であって、かつ厚生労働省令で定める者」です。では省令は誰を定めているのか。施行規則3条の2は、次のように書きます。
第三条の二 法第六条第四号に規定する厚生労働省令で定める者は、次の各号に掲げる者以外の者とする。
一 卒業を予定している者であつて、適用事業に雇用され、卒業した後も引き続き当該事業に雇用されることとなつているもの
二 休学中の者
三 定時制の課程に在学する者
四 前三号に準ずる者として職業安定局長が定めるもの
「以外の者」——ここが二重否定になっています。省令が挙げる4つの類型は、除外される側ではなく、除外から外れる側です。
ただし、この省令だけを読んでも第4号(「職業安定局長が定めるもの」)の中身は分かりません。それを開いているのが、厚生労働省の雇用保険業務取扱要領(適用関係)20303です。要領はまず、除外されるのは「昼間学生」だけだと言います。
学校教育法第1条に規定する学校…の学生又は生徒(法第6条第4号)であっても、大学の夜間学部及び高等学校の夜間等の定時制の課程の者等以外のもの(以下「昼間学生」という)は、被保険者とはならない。…ただし、昼間学生であっても、次に掲げる者は、被保険者となる。
(イ) 卒業見込証明書を有する者であって、卒業前に就職し、卒業後も引き続き当該事業に勤務する予定のもの
(ロ) 休学中の者
(ハ) 事業主との雇用関係を存続した上で、事業主の命により又は事業主の承認を受け、大学院等に在学する者(社会人大学院生など)
(ニ) その他一定の出席日数を課程終了の要件としない学校に在学する者であって、当該事業において同種の業務に従事する他の労働者と同様に勤務し得ると認められるもの
つまり、雇用保険に加入する学生は2層になっています。整理するとこうなります。
| 学生の状況 | 週20時間以上・31日以上の見込みがあるとき |
|---|---|
| 大学の夜間学部・高校の定時制など(そもそも「昼間学生」でない) | 加入する |
| 卒業見込証明書を持ち、卒業前に就職し、卒業後も続けて働く | 加入する |
| 休学中である | 加入する |
| 社会人大学院生(雇用関係を続けたまま、会社の命令・承認で大学院に在学) | 加入する |
| 通信制など、一定の出席日数を修了の要件としない学校に在学している | 加入する |
| 上のどれにも当たらない昼間学生(昼間の大学に通う学生など) | 加入しない |
間違えやすいのは夜間学部・定時制です。これは「例外として救われる」のではなく、そもそも「昼間学生」ではないので、最初から除外の対象ですらありません。
また、卒業を控えた学生が内定先で在学中からアルバイトを始め、卒業後もそのまま雇われるなら、在学中から被保険者です。「学生のうちは入らない」と思い込んで手続きをしないと、その期間が被保険者期間から丸ごと落ちます。
逆に、昼間の大学に通う学生が週30時間アルバイトをしても、上のどれにも当たらなければ加入しません。時間の長さでは覆りません。
健康保険・厚生年金とは基準が違う。健康保険法3条1項9号ハ・厚生年金保険法12条5号ハにも学生の規定はありますが、それは「通常の労働者の4分の3未満」の短時間労働者を拾うルート(いわゆる106万円の壁)の除外要件としてだけ出てきます。4分の3以上働く学生は、学生であっても健康保険・厚生年金に加入します。雇用保険のように「昼間学生は原則として対象外」という作りではありません。週30時間働く昼間学生が「雇用保険には入らないのに、健康保険・厚生年金には入る」ことは普通に起こります(→社会保険の加入条件)。
掛け持ちは合算しない(65歳以上だけ例外)
6条1号の「一週間の所定労働時間」は、事業所ごとに見ます。会社をまたいで足し算はしません。
したがって、A社で週12時間・B社で週10時間働いている人は、合計すれば週22時間ですが、どちらの会社でも20時間未満なので、どちらでも加入しません。合計22時間という数字は、どこにも登場しないのです。
反対に、2社とも週20時間以上で働いていても、二重には加入しません。雇用保険業務取扱要領20352は、同時に2以上の雇用関係にある労働者について「一の雇用関係(原則として、その者が生計を維持するに必要な主たる賃金を受ける雇用関係)についてのみ被保険者となる」と定めています。加入するのは主たる賃金を受ける1社だけです。
なお、この「合算しない」という扱いは雇用保険に固有のものです。同じ掛け持ちでも、労働時間は労働基準法38条1項で通算し、健康保険・厚生年金保険は報酬月額を合算します(健康保険法44条3項・厚生年金保険法24条2項)。制度ごとに答えが違うため、副業・ダブルワークの「通算」で3つの制度を並べて整理しています。
この原則の例外が、雇用保険マルチジョブホルダー制度(37条の5、令和4年1月1日から)です。要件は3つあります。
- 2以上の事業主に雇用される65歳以上の労働者であること
- 2つの事業所(1つの事業所の週所定労働時間が5時間以上20時間未満)を合計して、週の所定労働時間が20時間以上であること
- 2つの事業所のそれぞれで31日以上の雇用見込みがあること
「5時間以上」は条文に書かれていません。37条の5第1項3号が「厚生労働省令で定める時間数以上」とだけ書き、施行規則65条の7が「五時間とする」と定めています。
この制度だけは、労働者本人が申し出ないと始まりません。37条の5は「厚生労働大臣に申し出て、当該申出を行つた日から高年齢被保険者となることができる」と書きます。通常の雇用保険は事業主が届け出て自動的に加入しますが、マルチジョブホルダーは本人が住居所を管轄するハローワークに申し出た日から被保険者になります。さかのぼりません。申し出が遅れた分は、そのまま被保険者期間になりません。
加入すると、離職したときに高年齢求職者給付金(被保険者であった期間に応じて30日分または50日分の一時金)を受け取れます。一方の事業所だけを離職した場合でも受給できます。
失業保険(基本手当)計算機で、加入していたらいくらもらえるか計算する →加入したあと、4つの類型のどれになるか
6条の除外に当たらなければ被保険者になりますが、被保険者は1種類ではありません。どの類型になるかで、失業したときに出るものが変わります。実務書が「被保険者の4類型」と呼ぶのは次の4つです。
| 類型 | 条文 | 誰が | 失業したときに出るもの |
|---|---|---|---|
| 一般被保険者 | 60条の2第1項1号かっこ書き | 下の3つ以外の被保険者 | 基本手当 |
| 高年齢被保険者 | 37条の2 | 65歳以上の被保険者(短期雇用特例・日雇労働を除く) | 高年齢求職者給付金 |
| 短期雇用特例被保険者 | 38条1項 | 季節的に雇用される被保険者のうち、38条1項各号のいずれにも該当しない者(日雇労働被保険者を除く) | 特例一時金 |
| 日雇労働被保険者 | 43条1項 | 被保険者である日雇労働者で、43条1項各号のいずれかに該当する者 | 日雇労働求職者給付金 |
「一般被保険者」の定義は、定義規定の中にありません。雇用保険法4条1項は「被保険者」を定義しますが、そこに一般被保険者は出てきません。法律の中でこの語を定義しているのは60条の2(教育訓練給付金)第1項1号のかっこ書きただ1か所で、そこにはこう書かれています——「被保険者のうち、高年齢被保険者、短期雇用特例被保険者及び日雇労働被保険者以外の者をいう」。法律は3つに名前を付け、4つ目は「残り」として扱っているということです。「4類型」を条文の並びから探しても見つからないのは、そのためです。
日雇労働者だけは、20時間・31日の判定を通り抜ける
ここは冒頭の2条件の例外なので、順に書きます。42条は日雇労働者を、日々雇用される者(1号)と30日以内の期間を定めて雇用される者(2号)と定義します(前2月に各18日以上雇用された者と、継続31日以上雇用された者は除かれます)。
この人たちは、週20時間未満でも、31日以上の見込みがなくても、除外されません。6条1号・2号のかっこ書きが、「日雇労働被保険者に該当することとなる者を除く」と、除外の対象から外しているからです。
つまり「週20時間・31日」で判定して終わりにできるのは、日雇い・30日以内の短期に当たらない場合だけです。日々雇い入れる形や、1か月未満の期間を定めて人を雇っているときは、20時間・31日に届かないことを理由に「対象外」と判断せず、日雇労働被保険者に当たらないかをハローワークに確認してください。同じ向きの例外がもう1つあり、それが前述のマルチジョブホルダー(6条1号かっこ書き・37条の5)です。
加入の手続き — 会社が、翌月10日までに、ハローワークへ
条件を満たしたら、届け出るのは会社(事業主)です。本人が出す書類はありません。7条が「事業主は……届け出なければならない」と義務の主語を事業主に置いているためで、前述のとおり本人の希望や会社の裁量が入る余地はありません。
提出先は事業所を管轄するハローワークです。届出の種類と期限は次のとおりです。
| 届出を要するとき | 出すもの | 提出期限 |
|---|---|---|
| 労働者を初めて雇い入れた(事業所として初回) | 雇用保険適用事業所設置届 | 保険関係が成立した日の翌日から10日以内 |
| 労働者を雇用した(加入させる) | 雇用保険被保険者資格取得届 | 被保険者となった日の属する月の翌月10日まで |
| 被保険者が離職・死亡した | 雇用保険被保険者資格喪失届(離職票が必要なら離職証明書も) | その事実があった日の翌日から起算して10日以内 |
| 同一法人内で転勤した | 雇用保険被保険者転勤届 | 事実のあった日の翌日から10日以内 |
期限の数え方が、加入のときだけ違います。喪失届・転勤届が「事実のあった日の翌日から10日以内」なのに対し、資格取得届だけは「翌月10日まで」です。4月1日入社なら5月10日まで、4月28日入社でも5月10日までで、入社日が月末に寄るほど猶予は短くなります。同じ「10日」でも数える起点が別なので、喪失届と同じ感覚で10日を数えると期限を過ぎます。
資格取得届に添えて確認を求められる書類は、賃金台帳・労働者名簿・出勤簿(タイムカード)・他の社会保険の資格取得関係書類・雇用期間を確認できる資料(雇用契約書等)です。週の所定労働時間と雇用見込みが2つの条件を満たすことを、これらの書類で確かめられます。設置届のときは、これに加えて源泉徴収簿と、法人なら登記簿謄(抄)本等が要ります。
届け出ると、ハローワークから雇用保険被保険者証が交付されます。厚生労働省は、これを事業主から本人に渡すこととしています。被保険者証は転職先での手続きや、退職後に基本手当を受けるときに使うので、受け取ったら自分で保管してください。会社に預けたままにしておく書類ではありません。
期限を過ぎても、届出そのものは受け付けられます。ただし遅れた分がそのまま被保険者期間から消えるわけではない点と、どこまでさかのぼれるかには限りがある点は別の話です。次でその範囲を見ます。
雇用保険に入っているかを確認する方法
加入条件を満たしていることと、会社が資格取得届を出し終えていることは別です。契約上は対象なのに、手続きだけ漏れていることがあります。給与明細で雇用保険料が控除されていても、資格取得届まで完了した証明にはなりません。
雇用保険被保険者証が手元にないことだけで、未加入とは判断できません。被保険者証と資格取得等確認通知書の違い、届かない場合の確認先は雇用保険被保険者証の記事で扱っています。
- ハローワークへ確認照会する:本人または代理人が、来所か郵送で「雇用保険被保険者資格取得届出確認照会票」を提出します。
- マイナポータルで加入記録を見る:マイナンバーカードがあり、マイナンバーがハローワークへ届け出られていれば、加入事業所名・資格取得日・資格喪失日などを確認できます。
加入記録がなく、条件を満たした時点までさかのぼる必要がある場合は、次の「入っていなかったとき」で確認請求と遡及の範囲を見てください。
入っていなかったとき — 遡れるのは原則2年
会社が届出を怠っていた、あるいは学生の例外を知らずに手続きをしていなかった。あとから確認請求をして被保険者だったと確認されたとき、どこまでさかのぼれるのか。
14条2項2号が原則を定めます。被保険者期間に算入されないのは「第九条の規定による被保険者となつたことの確認があつた日の二年前の日」より前の期間です。つまり原則として2年までしか遡れません。
ところが、この2号にはかっこ書きがあり、22条5項がその読み替えを定めています。次の2つを両方満たす人は、「2年前の日」が「雇用保険料が賃金から控除されていたことが明らかである、いちばん古い時期」に読み替えられます。
- その人について7条の届出がされていなかったこと
- 厚生労働省令で定める書類(給与明細など)に基づき、確認があった日の2年前の日より前に、被保険者の負担すべき額が賃金から控除されていたことが明らかである時期があること
給与明細に雇用保険料が引かれていた記録が残っていれば、2年を超えてさかのぼれるということです。天引きされていたのに届出がされていなかった、という状況を救うための規定です。
ただし条文には、見落としやすい但し書きがあります。22条5項は、この読み替えの対象から「第一号に規定する事実を知つていた者を除く」としています。1号の事実とは「届出がされていなかったこと」です。つまり、届出がされていないと知りながら黙っていた人は、2年を超えた遡及を受けられません。気づいた時点で動くこと、そして給与明細を捨てないことが、そのまま自分の受給額を守ります。
2028年10月、週20時間が週10時間になる
いま週10〜19時間で働いていて対象外の人は、2028年(令和10年)10月1日から被保険者になります。雇用保険法等の一部を改正する法律(令和6年法律第26号)による適用拡大です。
e-Gov法令検索の未施行リビジョン(令和10年10月1日施行)を現行の条文と機械的に突き合わせると、6条1号の「一週間の所定労働時間が二十時間未満である者」が「十時間未満である者」に置き換わっていることが確認できます。同時に、37条の5(マルチジョブホルダー)の20時間も、すべて10時間に変わります。
週20時間を基準に組み立てられていた数値は、いっせいに半分になります。
| 基準 | 現在 | 2028年10月1日から |
|---|---|---|
| 被保険者となる週の所定労働時間 | 20時間以上 | 10時間以上 |
| 被保険者期間を1か月と数える賃金支払基礎日数 | 11日以上 | 6日以上 |
| 同上(労働時間で数える場合) | 80時間以上 | 40時間以上 |
| 法定の賃金日額の下限額 | 2,460円 | 1,230円 |
受給資格そのもの(離職日から2年間に被保険者期間12か月以上、会社都合などは1年間に6か月以上)は変わりません。変わるのは、その「1か月」を数えるハードルのほうです。
なお、表の賃金日額の下限額は法律に書かれた原型の額であり、実際に適用される額ではありません。雇用保険法18条により毎年8月1日に改定されるためです(現在の実際の下限額は、令和8年8月1日改定後の額です)。改定の仕組みは失業保険はいくらもらえる?で扱っています。
まとめ
- 加入条件は週20時間以上と31日以上の雇用見込みの2つ。条文にあるのは「加入条件」ではなく適用除外のリストなので、20時間ちょうどは加入する
- 見るのは所定労働時間。実際に働いた時間ではない
- 除外リストは6号ある。3号〜6号は、対象を挙げたうえでそのうち一定のものだけに絞る二段構えで、季節雇用・漁船船員・公務員も「その身分だから除外」ではない。季節雇用で除外に当たらなければ短期雇用特例被保険者として加入し、特例一時金の対象になる
- 被保険者は4類型(一般/高年齢/短期雇用特例/日雇労働)。「一般被保険者」を定義しているのは60条の2第1項1号のかっこ書きだけで、法律は3つに名前を付け4つ目を「残り」として扱っている
- 日雇い・30日以内の短期雇用は、20時間・31日の判定を通り抜ける。6条1号・2号のかっこ書きが日雇労働被保険者に当たる人を除外の対象から外しているため(42条・43条)
- 加入は選べない。1人でも雇えば適用事業(5条1項)で、届出をしない事業主には6月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金(83条1号)。会社が動かないときは本人がいつでも確認請求できる(8条)
- 学生の除外は「学生だから」ではない。除外されるのは昼間学生だけで、夜間学部・定時制はそもそも除外されない。昼間学生でも卒業見込み・休学中・社会人大学院生・通信制などは加入する(施行規則3条の2・業務取扱要領20303)
- 掛け持ちの時間は合算しない。2社とも20時間以上でも主たる賃金を受ける1社だけが被保険者。65歳以上のマルチジョブホルダー制度だけが合算の例外で、本人の申出が要る(さかのぼらない)
- 遡及は原則2年。給与明細で天引きが証明できれば2年超も遡れるが、届出がされていないと知っていた人は対象外(22条5項)
- 2028年10月1日から週10時間以上に拡大。被保険者期間の日数も11日から6日へ半減する
加入したあとに受けられる給付は複数あります。介護休業給付金、高年齢雇用継続給付金、退職時に必要な離職票の扱いも、いずれも雇用保険の被保険者であることが前提です。
よくある質問
Q. パートやアルバイトでも雇用保険に加入しますか?
A. 加入します。雇用保険法6条は、1週間の所定労働時間が20時間未満の人と、同じ事業主に継続して31日以上雇用される見込みがない人を適用除外としているだけで、雇用形態や呼び名では区別していません。週の所定労働時間が20時間以上で、31日以上の雇用見込みがあれば、パートでもアルバイトでも契約社員でも被保険者になります。
Q. 会社に「うちは雇用保険に入れない」と言われました。断れるものなのですか?
A. 断れません。要件を満たせば法律上当然に被保険者になり(4条1項)、事業主には届出義務があります(7条)。届出をしなかったり偽りの届出をした事業主は、6月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金の対象です(83条1号)。会社が手続きをしない場合、本人はハローワークに対していつでも確認請求ができます(8条)。
Q. 週20時間ちょうどのときは加入しますか?
A. 加入します。条文が適用除外としているのは「一週間の所定労働時間が二十時間未満である者」であり、20時間ちょうどは「未満」に当たらないためです。20時間を超えることは求められていません。
Q. 学生はアルバイトで雇用保険に入れないのですか?
A. 適用除外になるのは「昼間学生」だけです。大学の夜間学部や高校の定時制の課程に通う人は、そもそも昼間学生に当たらないので、週20時間以上・31日以上の雇用見込みがあれば加入します。さらに昼間学生であっても、卒業見込証明書を持ち卒業前に就職して卒業後も引き続き勤務する人、休学中の人、会社の命令や承認を受けて大学院等に在学する社会人大学院生、通信制など一定の出席日数を修了の要件としない学校に在学する人は、適用除外から外れて被保険者になります(施行規則3条の2・雇用保険業務取扱要領20303)。
Q. 季節雇用(スキー場や農繁期など)でも雇用保険に加入しますか?
A. 除外に当たらなければ加入します。雇用保険法6条3号が適用除外としているのは、季節的に雇用される人のうち38条1項各号のいずれかに該当する人、つまり4か月以内の期間を定めて雇用される人と、1週間の所定労働時間が20時間以上であって厚生労働大臣の定める時間数未満である人だけです。このどちらにも当たらない場合は被保険者になり、種類は短期雇用特例被保険者になります。失業したときに支給されるのは基本手当ではなく特例一時金です。
Q. 日雇いや1か月未満の短期で雇う人は、週20時間未満なら対象外ですか?
A. 対象外とは限りません。6条1号と2号のかっこ書きは、日雇労働被保険者に該当することとなる人を除外の対象から外しています。42条は日雇労働者を、日々雇用される人と30日以内の期間を定めて雇用される人と定義しており、この人たちが43条1項各号のいずれか(適用区域内に居住して適用事業に雇用されるなど)に当たれば日雇労働被保険者になります。週20時間未満であることや31日以上の見込みがないことだけを理由に対象外と判断せず、ハローワークに確認してください。
Q. 雇用保険の被保険者に種類はありますか?
A. 4つあります。一般被保険者、高年齢被保険者(65歳以上・37条の2)、短期雇用特例被保険者(季節的に雇用される人・38条1項)、日雇労働被保険者(43条1項)で、失業したときに支給されるものがそれぞれ基本手当、高年齢求職者給付金、特例一時金、日雇労働求職者給付金と異なります。なお法律が名前を付けて定義しているのは後ろの3つで、一般被保険者を定義しているのは60条の2第1項1号のかっこ書き(被保険者のうち、高年齢被保険者、短期雇用特例被保険者及び日雇労働被保険者以外の者をいう)だけです。
Q. 2つの会社の労働時間を合算して加入できますか?
A. 65歳以上の人だけができます。雇用保険マルチジョブホルダー制度(37条の5)では、2つの事業所(それぞれ週5時間以上20時間未満)の所定労働時間を合計して週20時間以上あり、それぞれで31日以上の雇用見込みがあれば加入できます。ただし本人がハローワークに申し出る必要があり、被保険者になるのは申し出た日からで、さかのぼりません。64歳以下の人は合算できません。
Q. 加入の手続きは自分でするのですか?いつまでに何を出しますか?
A. 本人ではなく会社が手続きします。事業所を管轄するハローワークに「雇用保険被保険者資格取得届」を提出し、期限は被保険者となった日の属する月の翌月10日までです。賃金台帳・労働者名簿・出勤簿・雇用契約書等の確認を求められます。届出後にハローワークから交付される雇用保険被保険者証は、事業主から本人に渡すこととされています。本人が自分で申し出るのは、65歳以上のマルチジョブホルダー制度を使う場合だけです。
Q. 過去に加入し損ねた分は、さかのぼって加入できますか?
A. 原則として、確認があった日から2年前までです(14条2項2号)。ただし給与から雇用保険料が控除されていたことが給与明細などで明らかな場合は、その最も古い時期まで2年を超えて遡れます(22条5項)。この救済は、届出がされていなかった事実を知っていた人には適用されません。
出典
- e-Gov法令検索「雇用保険法」(昭和四十九年法律第百十六号)4条・5条・6条・7条・8条・9条・13条・14条・22条・37条の2・37条の5・38条・42条・43条・60条の2・83条・附則2条 — 令和8年5月13日施行のリビジョン(law_revision_id: 349AC0000000116_20260513_507AC0000000032)。適用除外の6号は6条を、被保険者の4類型は37条の2・38条1項・42条・43条1項および60条の2第1項1号かっこ書きを、それぞれ e-Gov法令API v2 で全文取得して確認した
- e-Gov法令検索「雇用保険法」令和10年10月1日施行のリビジョン(未施行)— 6条1号・37条の5・14条
- e-Gov法令検索「雇用保険法施行規則」(昭和五十年労働省令第三号)3条の2・65条の7 — 令和8年6月14日施行のリビジョン
- e-Gov法令検索「雇用保険法施行令」(昭和五十年政令第二十五号)附則2条 — 令和8年4月8日施行のリビジョン
- 厚生労働省「雇用保険に関する業務取扱要領(適用関係)令和8年4月1日以降」20303(適用除外・昼間学生の取扱い)・20352(同時に2以上の雇用関係にある者)
- e-Gov法令検索「健康保険法」3条1項9号ハ・「厚生年金保険法」12条5号ハ(短時間労働者としての適用除外に学生が挙がっていること)
- 厚生労働省「手続き一覧表」(雇用保険制度)— (1)被保険者に関する手続一覧・(2)事業所に関する手続一覧(資格取得届・資格喪失届・転勤届・適用事業所設置届の提出期限と提出・確認書類)
- 厚生労働省「事業主の行う雇用保険の手続き」— 提出先は事業所を管轄するハローワーク、雇用保険被保険者証は事業主から本人に交付すること
- 厚生労働省「雇用保険の加入手続はきちんとなされていますか!」・「労働者の皆様へ(雇用保険給付について)」— 本人による確認照会の方法と、マイナポータルで確認できる加入記録
- 厚生労働省・都道府県労働局・ハローワーク「雇用保険マルチジョブホルダー制度の申請パンフレット」(PL031001保01)
- 厚生労働省職業安定局雇用保険課「令和6年雇用保険制度改正(令和10年10月1日施行分)について」(令和7年8月20日・労働政策審議会職業安定分科会雇用保険部会 第205回 資料1)
この記事は令和8年7月時点の条文に基づく一般的な情報です。個別の事案で被保険者に当たるかどうかは、ハローワーク(公共職業安定所)が判断します。具体的な手続きは管轄のハローワークにご確認ください。