再就職手当はいくらもらえる?計算方法と支給条件【令和7年度】
結論から言うと、再就職手当の額は次の式だけで決まります。
再就職手当 = 基本手当日額 × 支給残日数 × 60%
(就職日の前日の支給残日数が、所定給付日数の3分の2以上残っていれば 70%)
たとえば35歳・月給30万円・勤続12年で自己都合退職した人の基本手当日額は6,207円、所定給付日数は120日です。給付制限の間に就職が決まって120日まるごと残っていれば、6,207円 × 120日 × 70% = 521,388円が一時金で入ります。失業保険を最後までもらった場合の総額744,840円と比べると7割ですが、手当をもらいながら失業していた7か月分の給料が、まるまる上乗せで手に入ることになります。
ただし、この式には競合記事があまり書かない落とし穴が3つあります。①計算に使う基本手当日額には6,570円という別の上限があり、給料が高い人ほど削られること。②3分の2の境目に53,381円の崖があり、就職を1日遅らせると差引47,174円損すること。③2025年4月に制度が2つ変わったのに、古い解説(就業手当・定着手当40%)がまだ大量に残っていることです。順に見ていきます。
計算式と、実際の金額の例
雇用保険法56条の3第3項1号は、再就職手当の額をこう定めています。
基本手当日額に支給残日数に相当する日数に十分の六(その職業に就いた日の前日における基本手当の支給残日数が当該受給資格に基づく所定給付日数の三分の二以上である者にあつては、十分の七)を乗じて得た数を乗じて得た額
— 雇用保険法56条の3第3項1号
「十分の六」「十分の七」が、そのまま60%・70%です。式に必要なのは次の3つだけで、①と③は失業保険の計算とまったく同じものです。
| ①基本手当日額 | 失業保険として1日あたりもらえる額。賃金日額(退職前6か月の給与÷180)から計算する |
|---|---|
| ②支給残日数 | 就職日の前日の時点で、まだ受け取っていない日数 |
| ③所定給付日数 | 年齢・勤続年数・離職理由で決まる、もらえる日数の総枠(②÷③で率が決まる) |
35歳・月給30万円・勤続12年・自己都合(所定給付日数120日、基本手当日額6,207円)の人で、残日数ごとの金額を並べるとこうなります。1円未満の端数は切り捨てです。
| 支給残日数 | 所定給付日数(120日)との比 | 支給率 | 再就職手当の額 |
|---|---|---|---|
| 120日(1日も受け取っていない) | 3分の2以上 | 70% | 521,388円 |
| 80日 | 3分の2ちょうど | 70% | 347,592円 |
| 79日 | 3分の2を下回る | 60% | 294,211円 |
| 40日 | 3分の1ちょうど | 60% | 148,968円 |
| 39日 | 3分の1を下回る | — | 1円も出ない |
いちばん下の行が最初の分かれ目です。支給残日数が所定給付日数の3分の1を切ると、再就職手当は1円も出ません(雇用保険法56条の3第1項1号が「三分の一以上であるもの」と要件にしているため)。失業保険を長くもらってから就職すると、その分だけ手当が減るのではなく、ある日を境にゼロになるという作りです。
失業保険(基本手当)計算機で、あなたの基本手当日額と所定給付日数を出す →支給条件(条文で確認した8つ)
額の前に、そもそも受け取れるかどうかです。ハローワークの公式リーフレット「再就職手当のご案内」が挙げる8つの条件と、その根拠条文を並べます。1つでも欠けると支給されません。
| 条件 | 根拠 |
|---|---|
| ①受給手続き後、7日間の待期期間が満了したあとに就職・事業開始したこと | 規則82条1項2号(待期は法21条) |
| ②就職日の前日までの失業認定を受けたうえで、支給残日数が所定給付日数の3分の1以上あること | 法56条の3第1項1号 |
| ③離職した前の事業主に再び就職したものでないこと。また、前の事業主と資本・資金・人事・取引面で密接な関わり合いがない事業主に就職したこと | 規則82条1項1号 |
| ④給付制限がある人は、待期満了後1か月の期間内はハローワークまたは職業紹介事業者の紹介による就職であること | 規則82条1項3号 |
| ⑤1年を超えて勤務することが確実であること | 規則82条の2 |
| ⑥原則として、雇用保険の被保険者になっていること | リーフレット(省令に明文なし) |
| ⑦過去3年以内の就職について、再就職手当または常用就職支度手当を受けていないこと | 法56条の3第2項・規則82条の4 |
| ⑧受給資格決定(求職申込み)前から採用が内定していた事業主に雇用されたものでないこと | 規則82条1項4号 |
④が自己都合退職の人にとっていちばん危ない
自己都合で辞めると、待期7日のあとに原則1か月の給付制限がつきます。この最初の1か月の間に「自分で求人サイトを見つけて応募し、入社した」場合、再就職手当は出ません。ハローワークか職業紹介事業者(人材紹介会社など)の紹介による就職に限られるからです。転職活動は退職前から進めている人が多いので、入社日を待期満了後1か月より後にずらすだけで受け取れるケースがあります。1か月を過ぎれば、自分で見つけた求人でも対象になります。
教育訓練で給付制限が解除された人も、④の対象から外れない
2025年4月から、自己都合で辞めても教育訓練を受ければ給付制限が解除される仕組みができました。ただしハローワークのリーフレットは、教育訓練を受けたこと等により給付制限が解除された場合も、待期満了後1か月の期間内はハローワーク等の紹介が必要だと明記しています。「給付制限が消えたのだから紹介要件も消えた」と読むと間違えます。
なお、自分で事業を始めた場合(自営・起業)も再就職手当の対象です。規則82条の2が「一年を超えて引き続き雇用されることが確実であると認められる職業に就き、又は事業(当該事業により当該受給資格者が自立することができると公共職業安定所長が認めたものに限る。)を開始した受給資格者」と書いています。ただし給付制限がある人の場合、リーフレットは「自営を開始した場合も、待期期間満了後1か月の期間経過後より対象となります」としています(自営には「紹介」がありえないため)。
落とし穴1:日額の上限6,570円(高い給料ほど削られる)
再就職手当の計算に使う基本手当日額には、失業保険そのものとは別の上限があります。
再就職手当に使う基本手当日額の上限(令和7年8月1日〜令和8年7月31日)
離職時の年齢が60歳未満 …… 6,570円
離職時の年齢が60歳以上65歳未満 …… 5,310円
失業保険の基本手当日額そのものの上限は、45〜59歳なら8,870円です。それなのに再就職手当の計算では6,570円で頭打ちになる。つまり基本手当日額が6,570円を超える人は、超えた分が再就職手当には反映されません。
45歳・月給60万円・勤続20年以上・会社都合(基本手当日額10,000円、所定給付日数150日)の人が、1日も受け取らずに再就職した場合で比べます。
| 計算に使う日額 | 再就職手当(残150日 × 70%) |
|---|---|
| 上限を知らずに10,000円で計算すると | 1,050,000円 |
| 正しくは上限の6,570円で計算する | 689,850円 |
| 差額 360,150円 — 上限を知らないと36万円多く見積もることになる | |
この6,570円という数字はどこから来るのか(competitorが書かないところ)
法56条の3第3項1号の括弧書きは、上限を実額では書かず「12,090円(18条により変更されたときは、その変更された額)に百分の五十(60歳以上65歳未満は百分の四十五)を乗じて得た金額」と定めています。この12,090円は平成27年度を基準にした原型で、法18条の「自動変更対象額」として毎年8月1日に改定されます。令和7年8月1日からの変更後の額は13,140円(60〜64歳は11,800円)なので、
13,140円 × 50% = 6,570円 / 11,800円 × 45% = 5,310円
と、厚生労働省が公表している上限額がそのまま導けます。条文の数字をそのまま使うと全額が間違うので注意してください。
⚠️ ネット上に「6,395円・5,170円」という古い上限が大量に残っています
それは令和6年8月1日〜令和7年7月31日に適用されていた額です。上限は毎年8月1日に改定されるため、更新されていない解説記事をそのまま信じると、金額を約3%少なく見積もります。この記事の6,570円・5,310円は令和8年7月31日までの額で、2026年8月1日にまた変わります。
落とし穴2:3分の2の崖 — 1日遅らせると47,174円損する
支給率が60%と70%で切り替わる「3分の2」の境目には、1日で数万円が動く崖があります。先ほどの35歳・日額6,207円・所定給付日数120日の人で見ます。120日の3分の2は80日です。
就職日を1日遅らせれば、失業保険を1日分(6,207円)多く受け取れます。しかしその1日で支給残日数が80日から79日に減ると、支給率が70%から60%に落ちて、再就職手当が347,592円から294,211円へ53,381円減ります。
6,207円もらうために53,381円を失う=差引47,174円の損。
「あと1日だけ失業手当をもらってから入社しよう」がいちばん高くつくのが、この境目です。
境目は所定給付日数によって動きます(90日なら残60日、150日なら残100日、240日なら残160日)。自分の所定給付日数の3分の2が何日かを先に出しておき、入社日をその手前に置けるかを見てください。
落とし穴3:2025年4月に変わった2つ
令和6年法律第26号(雇用保険法等の一部を改正する法律)により、2025年(令和7年)4月1日から2つの制度が変わりました。改正前に書かれた解説記事がそのまま残っているので、検索して出てきた情報が古い可能性があります。
| 制度 | 2025年3月31日まで | 2025年4月1日から(現行) |
|---|---|---|
| 就業手当 (安定した職業以外の就業に対する手当) | あった(基本手当日額の30%。残日数が所定給付日数の3分の1以上かつ45日以上が要件) | 廃止(条文ごと削除された) |
| 就業促進定着手当の上限 | 基本手当日額 × 支給残日数 × 40%(再就職手当が70%だった人は30%) | 再就職手当の率にかかわらず一律20% |
就業手当の廃止で、パート・短期の仕事には何も出なくなりました。以前は「1年を超える雇用は見込めない働き方」でも就業手当が出ましたが、その受け皿が消えたため、いまは1年超の雇用が確実な「安定した職業」に就くか、何ももらえないかの二択です。「残日数が3分の1未満でも就業手当がもらえる」と書いてある記事は、現行法では誤りです。
就業促進定着手当(賃金が下がったときの追加給付)
再就職手当をもらった人が、再就職先に6か月以上雇用され、その6か月の賃金が前の職場より低かった場合、差額を追加でもらえます。これが就業促進定着手当です(法56条の3第3項1号の括弧書き、規則83条の2・83条の3)。
就業促進定着手当 =(離職前の賃金日額 − 再就職後6か月の賃金日額)× 6か月間の賃金支払基礎日数
上限 = 基本手当日額(上限適用後)× 支給残日数 × 20%
先ほどの45歳・残150日の人なら、上限は 6,570円 × 150日 × 20% = 197,100円です。旧ルール(40%)のつもりでいると394,200円と2倍に見積もることになります。
⚠️「70%の人は30%、60%の人は40%」と書いてある記事は、いまは誤り
その区分は2025年3月31日以前に再就職した人にだけ残る旧ルールです。2025年4月1日以後に再就職した人は、再就職手当が70%だった人も60%だった人も一律20%が上限になります。多くの解説サイトが更新しておらず、いまも40%と書いています。
申請期限は、就職日から6か月目にあたる日の翌日から起算して2か月以内です(規則83条の4)。再就職手当と違って自動では出ないので、期限を過ぎると受け取れません。また起業(事業開始)で再就職手当を受けた場合、就業促進定着手当は受けられません。
まとめ
- 再就職手当 = 基本手当日額 × 支給残日数 × 60%(残日数が所定給付日数の3分の2以上なら70%)
- 残日数が所定給付日数の3分の1を切ると1円も出ない
- 計算に使う日額には6,570円(60歳以上65歳未満は5,310円)の上限がある。毎年8月1日に改定される
- 3分の2の境目に崖がある。1日遅らせると(35歳・日額6,207円・120日の例で)差引47,174円の損
- 自己都合の人は、待期満了後1か月以内はハローワーク等の紹介による就職でないと受け取れない
- 就業手当は2025年4月に廃止。就業促進定着手当の上限は一律20%(旧40%の記事に注意)
よくある質問
Q. 再就職手当はいくらもらえますか?
A. 「基本手当日額 × 支給残日数 × 60%」で計算し、就職日の前日の支給残日数が所定給付日数の3分の2以上残っていれば70%になります。35歳・月給30万円・勤続12年・自己都合(基本手当日額6,207円、所定給付日数120日)の人が1日も受け取らずに再就職した場合、6,207円 × 120日 × 70% = 521,388円です。ただし計算に使う基本手当日額には6,570円(離職時60歳以上65歳未満は5,310円)の上限があるため、基本手当日額がそれを超える人は6,570円で頭打ちになります。
Q. 再就職手当の支給率が70%になる条件は何ですか?
A. 就職日の前日における基本手当の支給残日数が、所定給付日数の3分の2以上あることです(雇用保険法56条の3第3項1号が「十分の七」と定めています)。所定給付日数が120日なら残80日以上、90日なら残60日以上、240日なら残160日以上が境目です。3分の2を下回ると60%に、3分の1を下回ると支給そのものがなくなります。
Q. 自己都合で退職した場合も再就職手当をもらえますか?
A. もらえますが、待期満了後1か月の期間内に就職する場合は、ハローワークまたは職業紹介事業者の紹介による就職に限られます(雇用保険法施行規則82条1項3号)。この期間に自分で求人を見つけて入社すると再就職手当は出ません。1か月を過ぎれば自分で見つけた求人でも対象になります。なお2025年4月から教育訓練を受けることで給付制限が解除される仕組みができましたが、その場合もこの1か月の紹介要件は外れません。
Q. 再就職手当の上限額はいくらですか?
A. 計算に使う基本手当日額の上限が、離職時の年齢が60歳未満なら6,570円、60歳以上65歳未満なら5,310円です(令和7年8月1日から令和8年7月31日まで)。これは毎年8月1日に改定されるため、ネット上に残っている6,395円・5,170円は令和6年度の古い額です。上限に日数と支給率を掛けたものが実際の上限額になります。
Q. 自営業を始めた場合でも再就職手当はもらえますか?
A. もらえます。雇用保険法施行規則82条の2は「事業(当該事業により当該受給資格者が自立することができると公共職業安定所長が認めたものに限る。)を開始した受給資格者」も対象に含めています。ただし給付制限がある人の場合、ハローワークのリーフレットは待期期間満了後1か月の期間を経過してから開始した事業が対象になるとしています。また起業により再就職手当を受けた場合、就業促進定着手当は受けられません。
Q. 就業手当はまだもらえますか?
A. もらえません。就業手当は令和6年法律第26号により2025年(令和7年)4月1日に廃止され、条文ごと削除されました。以前は1年を超える雇用が見込めない働き方でも基本手当日額の30%が支給されていましたが、現在はその受け皿がありません。1年を超えて雇用されることが確実な「安定した職業」に就いた場合の再就職手当だけが残っています。
Q. 過去に再就職手当をもらったことがあると、また受け取れませんか?
A. 前の受給から3年以内の就職については受け取れません。雇用保険法56条の3第2項と同施行規則82条の4が「三年」と定めており、再就職手当だけでなく常用就職支度手当を受けた場合も同じです。事業開始にかかる再就職手当を受けた場合も含まれます。
出典
- e-Gov法令検索「雇用保険法」(昭和四十九年法律第百十六号)56条の3・21条・16条・18条 — 令和8年5月13日施行のリビジョン
- e-Gov法令検索「雇用保険法施行規則」(昭和五十年労働省令第三号)82条・82条の2・82条の4・82条の5・83条の2・83条の3・83条の4 — 令和8年6月14日施行のリビジョン
- ハローワーク「再就職手当のご案内」(LL070801保02・令和7年8月版)
- ハローワーク「就業促進定着手当のご案内」(LL070801保03・令和7年8月版)
- 厚生労働省「雇用保険の基本手当日額の変更 〜8月1日から実施〜」(令和7年7月22日報道発表)別添2
- 厚生労働省「雇用保険法等の一部を改正する法律(令和6年法律第26号)の概要」
この記事は令和7年度(令和7年8月1日〜令和8年7月31日)の額に基づく一般的な情報です。実際の支給の可否・金額はハローワークが個別に判断します。具体的な手続きは管轄のハローワークにご確認ください。