社会保険料は入社月・退職月にいつ引く?翌月控除と月末退職
健康保険料・厚生年金保険料は日割りではなく月単位です。入社月・退職月の扱いは次のとおりです。
- 入社した月は月途中でも1か月分が発生します。翌月控除の会社では、4月入社の4月分を原則として5月支給給与から引きます。
- 月途中退職なら、原則として退職月分は発生しません。
- 月末退職なら退職月分まで発生し、最終給与から2か月分を引く場合があります。
「何月分が発生するか」と「どの給与から引くか」は別に決まります。給与明細だけを見て「二重徴収」と判断しないことが重要です。
入社した月に退職した場合は同月得喪で説明します。雇用保険料は扱いが違い、支払う賃金ごとに引きます。
社会保険料を計算 標準報酬月額から健康保険・厚生年金等の本人負担額を確認できます。「何月分が発生するか」と「いつ引くか」は別
まず資格取得日・資格喪失日から保険料の帰属月を確定し、その後で会社の給与締日・支給日と控除方式に当てはめます。この順序を逆にすると、入社月や退職月で誤りが起きます。
| 論点 | 決めるもの | 例 |
|---|---|---|
| 保険料の発生 | 資格取得月から資格喪失月の前月まで | 4月15日取得なら4月分が発生 |
| 給与からの控除 | 法令の範囲と会社の給与計算 | 翌月控除なら4月分を原則5月給与から |
| 会社から国への納付 | 保険料の納期限 | 4月分を5月末までに納付 |
厚生年金保険法19条は被保険者期間を月で計算し、資格取得月から資格喪失月の前月までを算入します。81条は保険料額、83条は納期限、84条は給与からの控除を定めています。健康保険も基本的な月の考え方は同様です。
入社月:1日入社でも月途中入社でも1か月分
4月1日入社でも4月30日入社でも、資格取得日が4月中なら4月分から発生します。日割りはしません。
たとえば標準報酬月額30万円で本人負担の厚生年金保険料が27,450円なら、4月30日入社でも4月分は27,450円であり、1日分へ按分しません(厚生年金保険料率18.3%を労使折半した例)。健康保険料等も加わるため、実際の総控除額は加入先・都道府県・年齢等で変わります。
| 会社の方式 | 4月入社の4月分を引く給与 | 初回給与の注意 |
|---|---|---|
| 翌月控除 | 原則5月支給給与 | 4月支給給与ではまだ引かない |
| 当月控除 | 4月支給給与 | 法定(前月分)より早い控除のため、労使協定(労基法24条)が前提。締日後入社で給与が少ない場合も要確認 |
例外として、4月中に退職して4月支給が最終給与になる場合は、翌月控除の会社でも4月分をその最終給与から控除できます。
「翌月控除」は法律上、前月分を当月給与から控除できる仕組みに沿う扱いです。健康保険料・厚生年金保険料の法定の給与控除は、原則として前月分です。当月分を当月給与から控除する場合は、労基法24条の賃金控除に関する書面の労使協定も確認し、就業規則・給与規程・明細で方式をそろえます。
退職月:月途中は前月分まで、月末は当月分まで
資格喪失日は原則として退職日の翌日です。保険料は資格喪失日が属する月の前月まで発生するため、1日の違いで最終月が変わります。
| 退職日 | 資格喪失日 | 発生する最終月 | 翌月控除の最終給与 |
|---|---|---|---|
| 4月29日 | 4月30日 | 3月分まで | 4月給与から3月分を控除 |
| 4月30日(月末) | 5月1日 | 4月分まで | 4月給与から3月分と4月分の2か月分を控除する場合あり |
月末退職で2か月分控除できるのは、厚生年金保険法84条が、退職した場合は前月分に加えて退職月分も報酬から控除できると定めており、月末退職では退職月分の保険料が発生するためです。給与の締日と支給日の関係で最終給与から控除しきれないときは、会社と本人の間で不足額の精算方法を確認します。
月途中退職で退職月分が発生しなくても、退職後は国民健康保険・国民年金、家族の被扶養者、または転職先の社会保険など別制度の資格が始まります。「退職月分が会社で0円=その月の社会保険負担が一切ない」とは限りません。
入社した月に退職した「同月得喪」
厚生年金の資格を取得した月に同じ資格を喪失した場合、原則としてその月の厚生年金保険料が必要です。たとえば4月5日入社・4月20日退職なら、取得月と喪失月がともに4月となる同月得喪です。
ただし日本年金機構は、その月にさらに別の厚生年金保険または国民年金の資格を取得した場合、先に喪失した厚生年金保険料は不要となり、年金事務所から会社へ還付のお知らせを送ると案内しています。会社へ還付された本人負担分は、会社から本人へ返します。
この還付は厚生年金についての取扱いです。健康保険料は同じ結論になるとは限らないため、加入していた健康保険者へ別途確認します。
雇用保険料は「支払う賃金ごと」に引く
雇用保険料の本人負担は、健康保険料・厚生年金保険料と控除の単位が違います。労働保険徴収法施行規則60条1項は、事業主が雇用保険の被保険者に賃金を支払う都度、その賃金に応じて計算した本人負担額をその賃金から控除できると定めています。
そのため雇用保険料には、健康保険・厚生年金のように「前月分の保険料」を当月の給与から引く仕組みも、入社月を1か月分とする扱いもありません。
たとえば20日締め・当月25日支給の会社で、雇用保険の被保険者が4月15日に入社した場合は、4月15日〜4月20日の勤務に対して4月25日に支払う賃金の額に応じた雇用保険料を、その4月25日支給の給与から控除できます。
料率と端数処理は雇用保険料率の解説、入社月の給与そのものの日割りは月途中入社・退職の給与の日割りで確認できます。
| 項目 | 健康保険・厚生年金 | 雇用保険 |
|---|---|---|
| 保険料の基になる額 | 標準報酬月額(月単位。賞与は標準賞与額) | その回に支払う賃金の額 |
| どの給与から引くか | 前月分の保険料を、当月に支払う報酬から 退職時の最終給与:前月分と退職月分のうち、発生している分 賞与の保険料:その賞与から |
賃金を支払う都度、その賃金から |
| 控除額の知らせ | 保険料の控除に関する計算書を作り、本人に通知 | 労働保険料控除に関する計算書を作り、本人に知らせる |
| 会社が備える帳簿 | (この表の対象外) | 一般保険料控除計算簿を事業場ごとに備える |
雇用保険料を賃金から控除した事業主は、労働保険料控除に関する計算書を作成し、その控除額を本人に知らせなければなりません(労働保険徴収法32条1項)。健康保険料・厚生年金保険料を控除したときも、事業主は保険料の控除に関する計算書を作成して控除額を本人に通知します(健康保険法167条3項・厚生年金保険法84条3項)。
日雇労働被保険者からは、一般保険料の本人負担に加えて、印紙保険料の額の2分の1(1円未満の端数は切り捨て)も賃金から控除できます(労働保険徴収法31条2項・同法施行規則60条1項かっこ書)。
入社時の標準報酬月額の決め方(資格取得時決定)
入社した人にはまだ給与の支払実績がないため、資格を取得したときの標準報酬月額は、次の4つの方法で出した額を報酬月額として決めます(健康保険法42条1項・厚生年金保険法22条1項。1号〜4号は両法で同じ内容)。
日本年金機構は、事業主が就業規則や労働契約等の内容に基づき、この方法に沿って報酬月額を届け出ると案内しています。
| 報酬の決まり方 | 報酬月額の出し方 |
|---|---|
| 月・週その他一定期間で決まる | 資格取得日現在の報酬の額を、その期間の総日数で割り、30倍した額 |
| 日・時間・出来高・請負で決まる | 資格取得月の前1か月間に、同じ事業所で同様の業務に従事し同様の報酬を受ける人が受けた報酬の平均額 |
| 上の2つの方法では算定が困難 | 資格取得月の前1か月間に、その地方で同様の業務に従事し同様の報酬を受ける人が受けた報酬の額 |
| 上の3つのうち2つ以上に当たる報酬を受ける | それぞれの方法で出した額の合算額 |
ここでいう「報酬」は、賃金・給料・俸給・手当など名称を問わず労働の対償として受ける全てのものです。臨時に受けるものと3か月を超える期間ごとに受けるものは除きます(健康保険法3条5項・厚生年金保険法3条1項3号)。基本給だけで報酬月額を出さず、手当も含めて計算します。
こうして決めた標準報酬月額を使う月は、資格を取得した日によって次の表のとおり決まります(健康保険法42条2項・厚生年金保険法22条2項)。
| 資格取得日 | 入社時の標準報酬月額を使う月 | 翌月控除の会社で引く給与(例) |
|---|---|---|
| 1月1日〜5月31日に資格取得 | 取得月分からその年の8月分まで | 4月15日取得なら4月分〜8月分を、5月〜9月支給の給与から |
| 6月1日〜12月31日に資格取得 | 取得月分から翌年の8月分まで | 10月1日取得なら10月分〜翌年8月分を、11月〜翌年9月支給の給与から |
ただし、この期間の途中でも、随時改定で標準報酬月額が改定されることがあります。継続した3か月間に受けた報酬の平均が、標準報酬月額の基礎となった報酬月額と比べて著しく高低を生じたときなどです(健康保険法43条1項・厚生年金保険法23条1項)。この継続した3か月の各月には、報酬支払の基礎となった日数の要件があります。
随時改定の要件は随時改定の解説、毎年の見直しは定時決定の解説で確認できます。
給与計算での確認手順
- 資格取得日・資格喪失日を資格取得届、資格喪失届で確定する
- 資格取得月から資格喪失月の前月まで、帰属月を並べる
- 会社が翌月控除か当月控除かを規程と過去明細で確認する
- 標準報酬月額と適用月の料率から本人負担分を計算する
- 給与明細に「何月分」か分かる記録を残し、会社負担分と合わせて納付する
標準報酬月額表の等級を確認し、具体的な計算は社会保険料の計算方法で照合できます。料率改定時は「給与の支給月」だけでなく、どの保険料月分へ新料率が適用されるかを確認します。
| よくある誤り | 防止策 |
|---|---|
| 入社初月を日割りする | 資格取得月は1か月分として計算 |
| 退職日を資格喪失日とする | 原則、退職日の翌日で判定 |
| 月末退職なのに退職月分を落とす | 翌月1日喪失なので退職月分まで発生 |
| 2か月控除を一律に二重徴収と扱う | 各控除の帰属月を照合 |
- 入社月は月途中でも1か月分、日割りなし
- 退職日の翌日が資格喪失日
- 月途中退職は原則退職月分なし、月末退職は退職月分あり
- 翌月控除の月末退職では最終給与から2か月分控除する場合がある
よくある質問
4月30日入社でも4月分を引かれますか?
資格取得日が4月30日なら、4月分が1か月分発生します。日割りにはなりません。翌月控除の会社なら原則として5月支給給与から控除します。
4月30日退職と4月29日退職で違いますか?
違います。4月30日退職は5月1日資格喪失なので4月分まで発生します。4月29日退職は4月30日資格喪失なので3月分までです。
最終給与から社会保険料が2か月分引かれました。
翌月控除の会社で月末退職なら、前月分と退職月分の2か月分を最終給与から控除する場合があります。まず明細や会社に、各金額が何月分かを確認します。
入社月と退職月が同じなら保険料は0円ですか?
原則0円ではありません。同月得喪でも厚生年金保険料が必要です。ただし同じ月に別の厚生年金または国民年金の資格を取得した場合は、先に喪失した厚生年金保険料が還付対象になります。
出典
厚生年金保険法・健康保険法・労働保険徴収法とその施行規則・日本年金機構の案内に基づいて作成。
- e-Gov法令検索「厚生年金保険法」3条・19条・22条・23条・81条・83条・84条(法令ID 329AC0000000115)
- e-Gov法令検索「健康保険法」3条・42条・43条・167条(法令ID 211AC0000000070)
- e-Gov法令検索「労働保険の保険料の徴収等に関する法律」31条・32条(法令ID 344AC0000000084)
- e-Gov法令検索「労働保険の保険料の徴収等に関する法律施行規則」60条(法令ID 347M50002000008)
- 日本年金機構「資格取得時の決定」
- 日本年金機構「月の途中で入社したときや、退職したときは、厚生年金保険の保険料はどのようになりますか。」(2025年9月1日更新)
- 日本年金機構「退職した従業員の保険料の徴収」
本記事は一般的な情報提供を目的としたものです。個別の判断は年金事務所・加入する健康保険者・社会保険労務士にご確認ください。