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出産育児一時金50万円|48.8万円になる人と、22週と28週の境目

結論から言うと、出産育児一時金は1児につき50万円です。双子なら2倍の100万円になります(協会けんぽ「多胎児を出産したときは、胎児数分だけ支給されます」)。

ただし、この「50万円」という数字は、法令のどこにも書かれていません。健康保険法施行令36条が定める額は48万8千円で、残りの1万2千円は「産科医療補償制度の掛金分」として上乗せされているものです。だから、その上乗せが付かない出産では48万8千円になります

そして、上乗せが付く境目(在胎22週)と、その掛金が買っている補償の対象になる境目(在胎28週)は、同じではありません。この記事では、金額の内わけ・もらえる人(任意継続や退職後も含む)・受け取り方を、条文と一次資料で確認しながら整理します。

いくらもらえるか — 50万円と48.8万円の分かれ目

協会けんぽが公表している支給額は、次のとおりです(2023年4月1日以降の出産)。

区分支給額(1児につき)
産科医療補償制度に加入している医療機関で、在胎週数22週以降に出産した場合50万円
産科医療補償制度に加入している医療機関で、在胎週数22週に達しなかった出産48万8千円
産科医療補償制度に加入していない医療機関での出産48万8千円

差は1万2千円です。加入している医療機関はほとんどですが、在胎22週未満の出産は、加入機関で産んでも48万8千円になります。

「出産」には、死産・流産・人工妊娠中絶も含まれる

協会けんぽは、出産育児一時金の対象となる「出産」を妊娠85日(4か月)以降の生産(早産)・死産(流産)人工妊娠中絶としています。生きて生まれたかどうかは要件ではありません。妊娠85日以降であれば、死産でも支給されます。悲しい出来事のあとに申請できることを知らないまま、請求しない人がいます。

「50万円」は法令に書いていない — 政令は48万8千円

健康保険法101条は、金額を自分では決めていません。

(出産育児一時金)第百一条 被保険者が出産したときは、出産育児一時金として、政令で定める金額を支給する。

その「政令」が健康保険法施行令36条です。ここに書かれている額が48万8千円で、50万円ではありません。

(出産育児一時金の金額)第三十六条 法第百一条の政令で定める金額は、四十八万八千円とする。ただし、病院、診療所、助産所その他の者であって、次の各号に掲げる要件のいずれにも該当するものによる医学的管理の下における出産であると保険者が認めるときは、四十八万八千円に、第一号に規定する保険契約に関し被保険者が追加的に必要となる費用の額を基準として、三万円を超えない範囲内で保険者が定める金額を加算した金額とする。

つまり法令の構造はこうなっています。

出産育児一時金 50万円の内わけ 48万8千円 健康保険法施行令36条が定める額 1万2千円 加算 = 50万円 政令が許す加算の枠は「3万円を超えない範囲」 = 上限まで使えば51万8千円まで有りうる 加算の中身=産科医療補償制度の掛金(1分娩あたり1万2千円・分娩機関が支払う) 掛金は過去に変わっている(2009〜2014年は3万円/2015〜2021年は1万6千円)
「50万円」は、政令の48万8千円に、産科医療補償制度の掛金分1万2千円を加算した結果の数字。政令が定めているのは48万8千円と「3万円以内の加算」までで、50万円という数字そのものは法令に存在しない。

加算額が1万2千円なのは、産科医療補償制度の掛金が1分娩あたり1万2千円だからです(2022年以降に出生した場合。運営する日本医療機能評価機構が公表しています)。掛金を払うのは分娩機関ですが、その分だけ分娩費用が上がるため、出産育児一時金の側で上乗せして帳尻を合わせている、という仕組みです。

掛金は固定ではありません。2009〜2014年は3万円、2015〜2021年は1万6千円でした。政令の「3万円を超えない範囲内」という枠は、制度が始まった当時の掛金3万円に合わせた枠が、そのまま残っているものです。

★22週と28週 — 上乗せの境目と、補償の境目がずれている

ここが、この制度でいちばん誤解されている点です。1万2千円が上乗せされる境目は在胎22週ですが、その掛金が買っている補償の対象になる境目は在胎28週です。6週ずれています。

産科医療補償制度の運営組織(日本医療機能評価機構)が、両方をはっきり書いています。

本制度では、妊産婦の意向を問わず22週以降の分娩を制度の対象としています。(中略)[掛金は]分娩機関が支払います。これに伴い、本制度加入分娩機関における分娩費用の上昇が見込まれることから、2009年1月1日以降、加入分娩機関における在胎週数22週以降の分娩(死産を含みます)について、出産育児一時金等の引上げが行われています。

一方、実際に補償金(重度の脳性麻痺に対する総額3,000万円)を受け取れる要件は、2022年1月1日以降に出生した子について次の3つをすべて満たす場合です。

この「28週」は、健康保険法施行規則86条の2が定める基準そのものです。「令第三十六条第一号の厚生労働省令で定める基準は、出生した時点における在胎週数が二十八週以上であることとする。」——つまり加算の根拠になっている政令36条1号の「特定出産事故」の範囲を、省令が28週以上に絞っているのです。

妊娠週数と、3つの別々の境目 85日 妊娠4か月 22週 28週 出産 ① ここから「出産」=一時金48.8万円の対象(死産・流産・中絶も含む) ② ここから掛金1.2万円が上乗せ = 50万円になる ③ ここから補償の対象(3,000万円) ★22週〜27週で出産した場合は、②は付くが③には入らない
妊娠85日・在胎22週・在胎28週は、それぞれ別の意味を持つ境目。22週から27週の間に出産した場合、掛金1万2千円分が上乗せされた50万円は受け取れるが、その掛金が支えている補償(重度脳性麻痺に対する総額3,000万円)の対象にはならない。

整理すると、在胎22週から27週の間に出産した場合、出産育児一時金は50万円(=掛金1万2千円分が上乗せされた額)を受け取りますが、その掛金が支えている補償の対象には入りません。制度の対象範囲(22週以降の分娩)と、補償が下りる範囲(28週以上)が、もともと別に設計されているためです。

なお補償対象基準は2022年1月1日以降の出生から28週以上に一本化されました。それ以前は「出生体重1,400g以上かつ在胎32週以上、または在胎28週以上で所定の要件」(2015〜2021年)というように、体重の要件がありました。古い記事は「32週」「1,400g」と書いていることがありますので、出生年で確認してください。

誰がもらえるか — 任意継続でも出る(出産手当金は出ないのに)

健康保険から出る出産まわりの給付は3つありますが、任意継続被保険者の扱いが割れます

給付性格任意継続被保険者は?根拠
出産育児一時金出産費用の補助(定額)受け取れる健保法101条(除外のかっこ書きが無い
出産手当金産休中の所得補償(給料の約2/3)受け取れない健保法102条1項→99条1項のかっこ書き
傷病手当金病気・けがの所得補償受け取れない健保法99条1項のかっこ書き

条文を並べると、違いが1か所だけなのがはっきりします。

第百一条 被保険者が出産したときは、出産育児一時金として、政令で定める金額を支給する。

第九十九条 被保険者(任意継続被保険者を除く。第百二条第一項において同じ。)が療養のため労務に服することができないときは……

99条1項には「任意継続被保険者を除く。」というかっこ書きがあり、しかも「第百二条第一項において同じ。」と書いてあるので、出産手当金(102条)にもこの除外が及びます。ところが101条には、このかっこ書きがありません。だから任意継続被保険者でも出産育児一時金は受け取れます。

協会けんぽも、任意継続について「原則、在職中と同様の給付を受けることができます」としたうえで、「任意継続被保険者期間中に発生した病気・ケガによる傷病手当金及び出産手当金は支給されません」と、この2つだけを名指しで除いています。条文の読みと一致します。

被扶養者(配偶者など)が出産したときは「家族出産育児一時金」

健康保険法114条が「被保険者の被扶養者が出産したときは、家族出産育児一時金として、被保険者に対し、第百一条の政令で定める金額を支給する」と定めています。金額は同じ(1児につき50万円)です。夫の扶養に入っている妻が出産した場合は、こちらになります。

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退職後6か月以内の出産ももらえる — ただし任意継続の期間は数えない

会社を辞めたあとに出産した場合でも、健康保険法106条により、退職前に入っていた健康保険から出産育児一時金を受け取れます。

(資格喪失後の出産育児一時金の給付)第百六条 一年以上被保険者であった者が被保険者の資格を喪失した日後六月以内に出産したときは、被保険者として受けることができるはずであった出産育児一時金の支給を最後の保険者から受けることができる。

要件は2つだけに見えます。①1年以上被保険者であったこと ②資格喪失後6か月以内の出産であること。しかし——

★106条だけを読んでも、任意継続の期間が数えられないことは分からない

106条にある「一年以上被保険者であった者」は、106条では定義されていません。定義しているのは、ひとつ前の104条です。104条は「引き続き一年以上被保険者(任意継続被保険者又は共済組合の組合員である被保険者を除く。)であった者(第百六条において「一年以上被保険者であった者」という。)」と書いており、この定義が106条に飛んでいきます。つまり任意継続の期間は、この1年に算入されません。106条を単独で読んで「任意継続の1年でもいいはずだ」と考えると、間違えます。

協会けんぽの説明も、この読みと一致します。「資格喪失日の前日(退職日等)までに被保険者期間(任意継続被保険者期間は除く)が継続して1年以上あること」。条文の遠隔定義が、そのまま運用に出ています。

ただし、任意継続に入っている期間中に出産した場合は、そもそも106条の出番ではありません。その人は現に「被保険者」なので、101条がまっすぐ適用されます(前の章のとおりです)。106条が問題になるのは、任意継続にも入らず(あるいはやめて)、国民健康保険や家族の扶養に移った人です。

2か所からもらうことはできない — どちらか一方を選ぶ

退職して夫の扶養に入った妻が6か月以内に出産すると、①自分の元の健康保険(106条)と、②夫の健康保険(家族出産育児一時金)の両方に受給資格が生じることがあります。協会けんぽは「同じ出産に対して出産育児一時金の支給は1回のみです。(中略)支給を受けることができる保険者が複数になる場合もありますが、重複して支給を受けることはできません」と明示しています。どちらかを選ぶことになります。

なお、退職後に「家族」が出産した場合は出ません。協会けんぽは「被保険者の資格喪失後に被扶養者だったご家族が出産した場合は、家族出産育児一時金は支給されません」としています。本人の出産は6か月以内なら出るのに、家族の出産は出ない——106条が「被保険者であった者」の出産だけを対象にしているためで、ここは非対称です。

受け取り方 — 直接支払制度・受取代理制度・差額の申請

50万円を自分で立て替えて、あとから受け取る必要はありません。受け取り方は3つあります。

方法やり方使える条件
直接支払制度健保から医療機関へ直接支払われる。退院までに合意文書に同意するほとんどの医療機関。原則こちら
受取代理制度医療機関が本人に代わって受け取る。事前に健保へ申請書を出す出産予定日まで2か月以内の人だけ。厚生労働省へ届出をした一部の医療機関のみ
自分で請求出産費用を全額窓口で払い、あとから健保に請求する直接支払制度を使いたくない場合

実務でいちばん取りこぼしが多いのは、差額の請求です。

出産費用が50万円より安かったら、差額は自分で申請して受け取る

直接支払制度を使い、出産費用が40万円だった場合、差額の10万円は受け取れます。ただし自動で振り込まれるわけではなく、申請が必要です。協会けんぽの場合は「出産後概ね3か月後に、申請に必要な書類(出産育児一時金差額申請書)を協会けんぽより被保険者あてに送付します」——つまり案内は向こうから届きますが、返送しなければ受け取れません。出産直後の3か月後に届く書類なので、埋もれやすいものです。逆に費用が55万円なら、超えた5万円を窓口で支払います。

お金が出産前に必要な場合には、出産費貸付制度があります。出産育児一時金の8割相当額を限度に、無利子で貸し付ける制度で、対象は「出産予定日まで1か月以内の人」または「妊娠4か月以上で医療機関等に一時的な支払いを要する人」です。

なお帝王切開などの異常分娩は健康保険が適用されます(正常分娩は保険適用外です)。医療費が高額になれば高額療養費の対象にもなります。出産育児一時金は、これとは別に受け取れます。

まとめ
  • 出産育児一時金は1児につき50万円。双子なら100万円(胎児数分)
  • ただし法令が定める額は48万8千円。50万円になるのは、産科医療補償制度に加入した医療機関で在胎22週以降に出産した場合だけ
  • 上乗せの境目は22週、補償の境目は28週。22〜27週の出産は、50万円は出るが補償の対象には入らない
  • 任意継続でも受け取れる(101条に除外のかっこ書きが無い)。出産手当金・傷病手当金は受け取れない
  • 退職後6か月以内の出産も対象(106条)。ただしこの「1年以上」に任意継続の期間は入らない(104条の定義)
  • 妊娠85日以降なら、死産・流産・人工妊娠中絶でも支給される
  • 費用が50万円未満なら差額は申請して受け取る(自動では振り込まれない)

よくある質問

Q. 出産育児一時金は、結局いくらもらえますか?

A. 1児につき50万円です。産科医療補償制度に加入している医療機関で、在胎週数22週以降に出産した場合の金額で、ほとんどの出産がこれに当たります。双子など多胎児の場合は胎児数分だけ支給されるので、双子なら100万円です。ただし、産科医療補償制度に加入していない医療機関で出産した場合や、在胎週数22週に達しない出産の場合は、48万8千円になります。差は1万2千円で、これは産科医療補償制度の掛金に相当する上乗せ分です。

Q. なぜ「50万円」なのに、法令には48万8千円と書いてあるのですか?

A. 健康保険法101条は金額を「政令で定める金額」とし、その政令である健康保険法施行令36条が48万8千円と定めています。同条のただし書が、産科医療補償制度に加入した医療機関での出産について「3万円を超えない範囲内で保険者が定める金額」を加算できるとしており、現在この加算額が1万2千円になっているため、合計で50万円になります。加算の中身は産科医療補償制度の掛金(1分娩あたり1万2千円)です。掛金は2009〜2014年は3万円、2015〜2021年は1万6千円で、過去に変わっています。50万円という数字そのものは、法令には存在しません。

Q. 任意継続被保険者ですが、出産育児一時金はもらえますか?

A. もらえます。健康保険法101条は「被保険者が出産したときは」と書いているだけで、任意継続被保険者を除くかっこ書きがないためです。一方、傷病手当金の99条1項には「被保険者(任意継続被保険者を除く。第百二条第一項において同じ。)」というかっこ書きがあり、この除外が出産手当金(102条1項)にも及びます。つまり任意継続では、出産育児一時金は受け取れますが、出産手当金と傷病手当金は受け取れません。協会けんぽも任意継続について「原則、在職中と同様の給付を受けることができます」としたうえで、傷病手当金と出産手当金だけを名指しで除いています。

Q. 退職してから出産しました。前の会社の健康保険からもらえますか?

A. 退職前に継続して1年以上被保険者であり、かつ資格喪失後6か月以内の出産であれば、退職前に入っていた健康保険から受け取れます(健康保険法106条)。注意点は、この「1年以上」に任意継続被保険者だった期間は算入されないことです。106条の「一年以上被保険者であった者」という言葉は104条で定義されており、そこに「任意継続被保険者又は共済組合の組合員である被保険者を除く」と書かれているためです。協会けんぽも「被保険者期間(任意継続被保険者期間は除く)が継続して1年以上あること」と説明しています。

Q. 退職して夫の扶養に入りました。夫の健康保険と、自分の元の健康保険の両方からもらえますか?

A. もらえません。同じ出産に対する出産育児一時金の支給は1回だけです。協会けんぽは「資格喪失後6か月以内の出産に対しても支給されるため、支給を受けることができる保険者が複数になる場合もありますが、重複して支給を受けることはできません」と明示しています。自分の元の健康保険(健康保険法106条)と、夫の健康保険の家族出産育児一時金のどちらかを選ぶことになります。なお、被保険者本人が退職したあとに被扶養者だった家族が出産した場合は、家族出産育児一時金は支給されません。

Q. 在胎22週で出産した場合、産科医療補償制度の補償は受けられますか?

A. 受けられません。産科医療補償制度が補償の対象とするのは、2022年1月1日以降に出生した子については在胎週数28週以上であることが要件です(ほかに、先天性や新生児期等の要因によらない脳性麻痺であること、身体障害者手帳1・2級相当であることが必要です)。一方、出産育児一時金が50万円に上乗せされる境目は在胎22週です。つまり在胎22週から27週の間に出産した場合は、掛金1万2千円分が上乗せされた50万円は受け取れますが、その掛金が支えている補償の対象にはなりません。制度の対象範囲(22週以降の分娩)と補償の範囲(28週以上)が、別に設計されているためです。

Q. 死産・流産でも出産育児一時金はもらえますか?

A. もらえます。協会けんぽは、対象となる「出産」を妊娠85日(4か月)以降の生産(早産)、死産(流産)、人工妊娠中絶としています。生きて生まれたことは要件ではありません。妊娠85日以降であれば、死産や流産、人工妊娠中絶でも支給されます。なお産科医療補償制度の側でも、掛金の対象となる分娩には在胎22週以降の死産が含まれています。悲しい出来事のあとで手続きの話をされないまま、申請しないでいる人がいます。

Q. 出産費用が40万円で済みました。残りの10万円はどうなりますか?

A. 差額の10万円を受け取れますが、申請が必要です。直接支払制度を使った場合、協会けんぽは出産後おおむね3か月後に、出産育児一時金差額申請書を被保険者あてに送ってきます。この書類を返送しなければ受け取れません。案内は届きますが、自動で振り込まれるわけではない点に注意してください。逆に出産費用が50万円を超えた場合は、超えた分を医療機関の窓口で支払うことになります。

出典

この記事は令和8年(2026年)7月時点の法令・公表資料に基づく一般的な解説です。金額は2023年4月1日以降の出産に適用されるもので、出産育児一時金の額(政令で定める額と加算額)や産科医療補償制度の掛金・補償対象基準は改定されることがあります。健康保険組合によっては、法定の額に上乗せした付加給付を行っている場合があります。国民健康保険の出産育児一時金は市区町村の条例で定められます(国民健康保険法58条1項)。個別の取り扱いは、加入している健康保険組合・協会けんぽ支部、お住まいの市区町村、または社会保険労務士にご確認ください。