法定相続情報一覧図は何枚でも無料でもらえる — ただし続柄を「子」と書いた1枚は、相続税の申告に使えない
結論から言うと、法定相続情報一覧図の写しは法務局が無料で交付し、必要な枚数を一度に受け取れます。戸籍と除籍の謄本の束を何セットも取り直す必要がなくなるので、相続手続の実務では最初に取りに行く紙です。平成29年5月に創設された制度で、費用は交付枚数にかかわらずかかりません。
ただし作り方を1か所間違えると、相続登記には使えるのに相続税の申告には使えない紙になります。分かれ目は2つあり、どちらも一覧図を書き始める前に決めてしまうものです。ひとつは続柄を「長男」「養子」と戸籍どおりに書くか、「子」とまとめて書くか。もうひとつは関係を図で描くか、列挙形式で並べるかです。法務局はどちらも選べる様式を配っており、案内には「相続税の申告等、これを利用することができない手続があります」とだけ書かれています。
なぜ使えないのかは、法務局側ではなく税法側に書いてあります。相続税法施行規則16条3項1号ロが、申告書に添付できる一覧図の写しを「被相続人と相続人との関係を系統的に図示したものであつて当該被相続人の子が実子又は養子のいずれであるかの別が記載されたもの」に限っているからです。この条文を読むと、続柄「子」が落ちる理由も、列挙形式が落ちる理由も、同じ一文から出てくることが分かります。以下、条文で順に確認します。
制度の骨格 — 戸籍の束を1枚に置き換える
制度の根拠は法律ではなく法務省令です。不動産登記規則247条1項が、申出ができる場面と申出先を定めています。
表題部所有者、登記名義人又はその他の者について相続が開始した場合において、当該相続に起因する登記その他の手続のために必要があるときは、その相続人(第三項第二号に掲げる書面の記載により確認することができる者に限る。以下本条において同じ。)又は当該相続人の地位を相続により承継した者は、被相続人の本籍地若しくは最後の住所地、申出人の住所地又は被相続人を表題部所有者若しくは所有権の登記名義人とする不動産の所在地を管轄する登記所の登記官に対し、法定相続情報(次の各号に掲げる情報をいう。以下同じ。)を記載した書面(以下「法定相続情報一覧図」という。)の保管及び法定相続情報一覧図の写しの交付の申出をすることができる。
この一文に、実務でよく聞かれることが3つまとめて入っています。
申出先は4つのうちどこでもよい。被相続人の本籍地、被相続人の最後の住所地、申出人の住所地、被相続人名義の不動産の所在地——このいずれかを管轄する登記所を選べます。相続人が遠方に住んでいる場合、自分の住所地の法務局で完結できるということです。不動産を持っていない被相続人でも、本籍地・最後の住所地・申出人の住所地の3つが残るので、制度は使えます。
申し出られるのは相続人か、その地位を承継した者だけ。括弧書きが「第三項第二号に掲げる書面の記載により確認することができる者に限る」と絞っており、3項2号は被相続人の出生からの戸籍を指します。つまり戸籍で相続人だと確認できる人に限られます。相続人の地位を相続により承継した者、いわゆる数次相続の相続人も申出人になれます。
「法定相続情報」の中身は条文が2つの号で決めている。1号と2号です。
被相続人の氏名、生年月日、最後の住所及び死亡の年月日
相続開始の時における同順位の相続人の氏名、生年月日及び被相続人との続柄
ここに「被相続人との続柄」が出てきます。あとで問題になるのはこの1語です。条文は「続柄」としか書いておらず、「長男」と書けとも「子」と書いてよいとも定めていません。だから書き方に幅が生まれ、その幅を税法側が別のところで狭めている、という構造になっています。
登記官は提出された戸籍と一覧図を突き合わせ、内容が合っていることを確認したうえで写しを交付します。
登記官は、第三項第二号から第四号までに掲げる書面によって法定相続情報の内容を確認し、かつ、その内容と法定相続情報一覧図に記載された法定相続情報の内容とが合致していることを確認したときは、法定相続情報一覧図の写しを交付するものとする。
この「認証文を付した上で、作成の年月日及び職氏名を記載し、職印を押印する」が、一覧図の写しに証明力を与えている部分です。自分で作った図がそのまま証明書になるのではなく、登記官の確認と認証を通って初めて戸籍の束の代わりになります。
続柄を「子」と書くと相続税の申告に使えない
法務局の「主な法定相続情報一覧図の様式及び記載例」のページには、次の注記があります。一覧図に記載する被相続人との続柄については、戸籍に記載される続柄のほか、申出人の選択により続柄を「子」と記載することも可能であり、ただし続柄を「子」と記載した場合は相続税の申告等、これを利用することができない手続があるので留意してほしい、という趣旨の案内です。
案内はここで止まります。「相続税の申告等」の「等」が何かも、なぜ使えないのかも書かれていません。答えは相続税法施行規則16条3項1号ロにあります。相続税の申告書に添付すべき書類として、次のものを挙げています。
不動産登記規則(平成十七年法務省令第十八号)第二百四十七条第五項(法定相続情報一覧図)の規定により交付を受けた同条第一項に規定する法定相続情報一覧図の写しのうち、被相続人と相続人との関係を系統的に図示したものであつて当該被相続人の子が実子又は養子のいずれであるかの別が記載されたもの(被相続人に養子がある場合には、当該写し及び当該養子の戸籍の謄本又は抄本)
この号が一覧図の写しに課している条件は2つです。
| 条文の要求 | 満たさなくなる書き方 |
|---|---|
| 被相続人と相続人との関係を系統的に図示したもの | 列挙形式で作った一覧図 |
| 被相続人の子が実子又は養子のいずれであるかの別が記載されたもの | 続柄を「子」とまとめて書いた一覧図 |
続柄を「子」と書くと、その子が実子なのか養子なのかが読み取れません。だから2つ目の条件を落とします。相続税では実子か養子かで結論が変わる場面があるため、税法側がここを要求しているわけです。相続税法15条2項は、基礎控除の計算に算入する養子の数を、実子がいる場合は1人、実子がいない場合は2人までに制限しています。実子と養子の別が読めない紙では、この判定ができません。
同じ号の末尾に「(被相続人に養子がある場合には、当該写し及び当該養子の戸籍の謄本又は抄本)」という括弧書きがあります。養子がいる相続では、続柄を戸籍どおりに書いた図形式の一覧図を用意しても、それに加えて養子の戸籍の謄本または抄本が必要です。一覧図があれば戸籍は一切要らない、とはならない場面がここにあります。
なお、一覧図を使わずに戸籍謄本を添付するルートも残っています。同じ3項1号のイです。
相続の開始の日から十日を経過した日以後に作成された戸籍の謄本で被相続人の全ての相続人を明らかにするもの
「相続の開始の日から十日を経過した日以後に作成された」という限定が付いている点に注意してください。亡くなった直後に取った戸籍謄本では、死亡の記載が反映されていないことがあるためです。イとロは選択関係にあるので、条件を満たす一覧図の写しがあればイの戸籍謄本は不要になります。
列挙形式も相続税の申告には使えない
法務局は一覧図の様式として、配偶者と子、子のみ、配偶者と親、配偶者と兄弟姉妹、代襲相続、旧民法下の家督相続、養子を含む場合——といった図形式の記載例に加えて、「列挙形式」の様式も配布しています。相続人が多く、図に描くと収まらない場合などに使われる形式です。
ところが相続税法施行規則16条3項1号ロは「被相続人と相続人との関係を系統的に図示したもの」と書いています。列挙形式は、関係を系統的に図示したものではありません。したがって、法務局が正規の様式として配っている列挙形式の一覧図は、そのままでは相続税の申告書に添付できないことになります。
続柄は戸籍どおり(長男・長女・養子など)、形式は図形式。この組み合わせだけが、相続登記・預金の払戻し・相続税の申告のすべてで通ります。「子」と書く選択も列挙形式も、相続税の申告を捨てる代わりに何かを得る取引にはなっていないので、申告の可能性が残っているうちは戸籍どおり・図形式で作るのが安全です。作り直しには、また戸籍一式を揃えて申出をやり直す手間がかかります。
住所を書くか — 書けば住民票が要らなくなる。ただし後から直せない
相続人の住所を一覧図に書くかどうかは任意です。条文はその旨を直接には書いておらず、書いた場合の追加負担という形で示しています。
前項第一号の法定相続情報一覧図に相続人の住所を記載したときは、第二項の申出書には、その住所を証する書面を添付しなければならない。
「住所を記載したときは……添付しなければならない」という条件付きの義務なので、裏を返せば書かなければ住所を証する書面は要りません。つまり住所を書くと、申出の段階で相続人全員分の住民票の写しなどを集める手間が増えます。
ではなぜ書くのか。書いておくと、後の相続登記で効いてきます。不動産登記規則37条の3第2項です。
表題部所有者の相続人が所有権の保存の登記の申請をする場合又は登記名義人の相続人が相続による権利の移転の登記の申請をする場合において、当該相続人の住所が記載された法定相続情報一覧図の写し又は法定相続情報番号(法定相続情報一覧図に当該相続人の住所が記載されている場合に限る。以下この項において同じ。)を提供したときは、当該法定相続情報一覧図の写し又は当該法定相続情報番号の提供をもって、登記名義人となる者の住所を証する市町村長その他の公務員が職務上作成した情報の提供に代えることができる。
相続人の住所が記載された一覧図の写しを出せば、登記名義人となる者の住所を証する情報——実務でいう住民票の写し——の提供に代えられるということです。申出のときに1回集めておけば、登記のときに集め直さなくてよくなります。法務局の案内も、遺言書情報証明書の交付の請求などでも同様に住民票の写しが不要になる場合があるとしています。
法務局は、一覧図の写しの交付を受けた後は住所が変わったことによる再申出を行うことはできないと明記しています。引っ越しが見込まれる相続人がいる場合、住所を書いた一覧図は将来の登記でそのまま使えなくなる可能性があります。逆に、相続登記を近いうちに済ませる予定なら、住所を書いておくほうが手数は減ります。「書けば得」でも「書かなければ得」でもなく、登記までの時間の長さで決まる選択です。
法定相続情報番号(11桁)は不動産登記でしか使えない
令和6年4月1日から、一覧図の写しそのものを添付する代わりに、番号を書けば済むようになりました。番号の定義は不動産登記規則37条の3第1項の括弧書きにあります。
法定相続情報番号(十一桁の番号であって、当該法定相続情報一覧図を識別するために登記官が付したものをいう。以下この条及び第百五十八条の二十において同じ。)
この11桁の番号は、交付された一覧図の写しの右肩部分に印字されています。登記申請書の添付情報欄にこの番号を記載すると、証明書の原本の添付を省略できます。同項のただし書きが「登記官が法定相続情報を確認することができるときに限る」と条件を付けているので、登記所に保管されている一覧図が保存期間内に残っていることが前提です。
番号は相続人申告登記でも使えます。不動産登記規則158条の20第1項が、相続人申出において一覧図の写しまたは法定相続情報番号を提供したときは、相続人であることを証する情報の提供に代えることができると定めています。同条2項は住所側についても同じ扱いを置いています。
法務局は「不動産登記以外の手続では、法定相続情報番号はお使いいただけません」と明記しています。相続税の申告、預金の払戻し、年金の手続では、番号ではなく認証文の付いた写しの現物が要ります。番号の運用が始まったからといって、交付を受ける枚数を減らしてよいわけではありません。提出先ごとに現物が要る手続がいくつあるかを数えてから、申出書の「交付を求める通数」を決めてください。
申出の手続 — どこへ、何を、誰が
申出書に書く事項は不動産登記規則247条2項が7号にわたって定めており、添付書面は3項が同じく7号を挙げています。実務で押さえるところを整理すると次のとおりです(各号の要約であり、逐語の引用ではありません)。
| 号 | 3項が求める添付書面(要約) | 交付時に返ってくるか |
|---|---|---|
| 1号 | 作成した法定相続情報一覧図そのもの | 返らない(登記所に保管される) |
| 2号 | 被相続人の出生時からの戸籍・除籍の謄本等 | 返る |
| 3号 | 被相続人の最後の住所を証する書面 | 返る |
| 4号 | 相続人の戸籍の謄本・抄本等 | 返る |
| 5号 | 申出人が相続人の地位を承継した者であることを証する書面 | 返る |
| 6号 | 申出人の氏名・住所が記載された公的な証明書 | 返らない |
| 7号 | 代理人によるときは代理権限を証する書面 | 返らない |
| 4項 | 一覧図に住所を書いたときは、その住所を証する書面 | 返る |
1号の一覧図には、記載事項のほかに作成の年月日と申出人の記名が求められています。
法定相続情報一覧図(第一項各号に掲げる情報及び作成の年月日を記載し、申出人が記名するとともに、その作成をした申出人又はその代理人が記名したものに限る。)
条文が求めているのは「記名」であって「押印」ではありません。申出人が記名し、実際に作成した者(申出人本人または代理人)も記名する、という二重の記名が条件です。
代理人を立てられる範囲も条文が絞っています。247条2項2号です。
代理人(申出人の法定代理人又はその委任による代理人にあってはその親族若しくは戸籍法(昭和二十二年法律第二百二十四号)第十条の二第三項に掲げる者に限る。以下本条において同じ。)によって申出をするときは、当該代理人の氏名又は名称、住所及び連絡先並びに代理人が法人であるときはその代表者の氏名
委任による代理人は「その親族若しくは戸籍法……第十条の二第三項に掲げる者」に限られます。この戸籍法10条の2第3項が挙げているのが、いわゆる8士業です。
弁護士(弁護士法人及び弁護士・外国法事務弁護士共同法人を含む。次項において同じ。)、司法書士(司法書士法人を含む。次項において同じ。)、土地家屋調査士(土地家屋調査士法人を含む。次項において同じ。)、税理士(税理士法人を含む。次項において同じ。)、社会保険労務士(社会保険労務士法人を含む。次項において同じ。)、弁理士(弁理士法人を含む。次項において同じ。)、海事代理士又は行政書士(行政書士法人を含む。)
弁護士・司法書士・土地家屋調査士・税理士・社会保険労務士・弁理士・海事代理士・行政書士の8つ。親族でも、この8士業でもない第三者には委任できません。相続税の申告を頼んでいる税理士に一覧図の申出まで任せられるのは、この条文の連鎖によるものです。
申出も交付も、窓口のほか郵送で行えます。不動産登記規則248条1項が、写しの交付と書面の返却を送付の方法によりすることができると定めており、同条2項は送付費用を郵便切手等の提出により納付するとしています。窓口で受け取る場合は、申出書の「申出人の表示」欄に書いた住所・氏名と同一のものが記載された公的書類を持参します。
法務局は、登記官が不備の補正を求めたにもかかわらず必要な書類や正しい一覧図が提出されない場合は預かっていた書類一切を返戻し、返戻に応じてもらえないときは申出日から3か月経過した後に廃棄するとしています。集めた戸籍が失われるので、補正の連絡には必ず応じてください。
返ってくる書類と、返ってこない書類
戸籍の束が返ってくることは、この制度の実務上の要です。根拠は247条6項です。
登記官は、法定相続情報一覧図の写しを交付するときは、第三項第二号から第五号まで及び第四項に規定する書面を返却するものとする。
返却されるのは「第三項第二号から第五号まで及び第四項」に限られています。裏返すと、3項1号の一覧図そのもの、3項6号の申出人の本人確認書面、3項7号の代理権限を証する書面は返ってきません。法務局の案内も、提出した申出人の氏名・住所を確認することができる公的書類は戸除籍謄本と異なり登記所から返却しないと明記しており、条文の建付けと一致します。
一覧図そのものが返らないのは、登記所が保管するからです。保管の器は不動産登記規則27条の9が定めています。
法定相続情報一覧図つづり込み帳には、法定相続情報一覧図及びその保管の申出に関する書類をつづり込むものとする。
この「法定相続情報一覧図つづり込み帳」の保存期間は、不動産登記規則28条の2第6号が作成の年の翌年から5年間と定めています。法務局の案内も、一覧図は5年間(申出日の翌年から起算)保存されるとしています。
再交付を受けられるのは当初の申出人だけ・保存は5年
写しが足りなくなったときは再交付を受けられます。247条7項です。
前各項の規定(第三項第一号から第五号まで及び第四項を除く。)は、第一項の申出をした者がその申出に係る登記所の登記官に対し法定相続情報一覧図の写しの再交付の申出をする場合について準用する。
ここで実務上いちばん問題になるのが「第一項の申出をした者が」という主語です。再交付を申し出られるのは、当初の申出において申出書に申出人として氏名を記載した人だけで、申出人にならなかった他の相続人は再交付を受けられません。法務局の案内も同じ趣旨を明記しています。相続人が複数いて、それぞれが別々に金融機関の手続を進める見込みがあるなら、最初の申出のときに申出人を誰にするかを決めておくか、必要枚数を多めに請求しておくのが確実です。
準用の範囲にも意味があります。7項が準用から除いているのは「第三項第一号から第五号まで及び第四項」で、これは一覧図そのもの・戸籍一式・住所証明書です。再交付では戸籍を集め直す必要がありません。一方、3項6号の申出人の本人確認書面は除外されていないので、再交付でも本人確認書面は必要です。再交付の申出先は、当初の申出をした登記所——つまり一覧図が保管されている登記所に限られます。
枚数と申出人の決め方:交付は無料なので、提出先の数を数えて多めに請求するのが基本です。目安として、金融機関の口座数、証券会社の数、相続登記の管轄法務局の数、相続税の申告書、年金・保険の手続をそれぞれ1枚と数えます。ただし相続登記では番号での省略が使えるため、その分は現物が要りません。保存期間の5年を過ぎると再交付は受けられなくなります。
一覧図が答えていないこと
一覧図は戸除籍謄本等の記載に基づく法定相続人を明らかにする書面です。誰が何を相続したかは書かれていません。法務局の案内も、相続放棄や遺産分割協議の結果によって実際には相続人とならない方がいる場合も一覧図にはその方の氏名等が記載される、としています。
| 事情 | 一覧図への反映 | 別に要る書面 |
|---|---|---|
| 相続放棄をした相続人がいる | 相続人として記載される | 相続放棄申述受理証明書など |
| 遺産分割協議で取得者を決めた | 結果は反映されない | 遺産分割協議書と印鑑証明書 |
| 推定相続人から廃除された者がいる | 相続権がないため記載されない | — |
| 被相続人や相続人が日本国籍を有しない | 戸除籍謄抄本を提出できないため、制度そのものを利用できない | |
相続放棄と廃除で扱いが逆になるのは、記載の基礎が戸籍だからです。廃除は戸籍に記録されるので一覧図に反映されますが、相続放棄は家庭裁判所への申述であって戸籍には現れないため、一覧図の上では相続人のままになります。「一覧図に名前があるから相続する」という読み方はできません。
したがって、遺産をどう分けるかを示す書面は別に必要です。誰が何を取得したかは遺産分割協議書が担い、一覧図は「誰が相続人か」だけを担う——役割が分かれていると理解してください。遺産分割協議書には法律上の期限がありませんが、相続税の申告期限や相続登記の期限が外から時計を回すため、実務上は10か月を目標にすることになります。
相続税がいくらかかるかを試算する(基礎控除・配偶者の税額軽減に対応)よくある質問
Q. 法定相続情報一覧図の交付に費用はかかりますか?
A. かかりません。法務局は、登記官が一覧図の内容を確認したうえで認証文を付した写しを無料で交付する制度であると案内しています。交付を受ける枚数によって費用が変わることもないため、提出先の数を数えて必要な枚数をまとめて請求するのが実務上は効率的です。申出書には「交付を求める通数」を記載する欄があります。ただし郵送で受け取る場合の送付費用は申出人の負担で、不動産登記規則248条2項により郵便切手等を提出する方法で納付します。
Q. 続柄を「子」と書いた一覧図は、どの手続で使えないのですか?
A. 相続税の申告に使えません。相続税法施行規則16条3項1号ロが、申告書に添付できる一覧図の写しを、被相続人と相続人との関係を系統的に図示したものであって被相続人の子が実子か養子かの別が記載されたものに限っているためです。続柄を「子」とまとめて書くと実子と養子の区別が読み取れないので、この条件を満たしません。相続登記では使えますが、相続税の申告が視野にあるなら戸籍どおりの続柄で作るのが安全です。
Q. 列挙形式の一覧図でも相続税の申告に使えますか?
A. 使えません。相続税法施行規則16条3項1号ロは「被相続人と相続人との関係を系統的に図示したもの」と定めており、列挙形式は関係を図示したものに当たらないためです。法務局は列挙形式の様式も配布していますが、それは登記等の手続を想定したもので、税法側の要件を満たすことまでは保証していません。相続人が多くて1枚に収まらない場合には、法務局が用意している「子が多数であり、法定相続情報一覧図が複数枚にわたる場合」の図形式の様式を使う方法があります。
Q. 養子がいる場合、一覧図があれば戸籍は不要になりますか?
A. なりません。相続税法施行規則16条3項1号ロの括弧書きが、被相続人に養子がある場合には一覧図の写しに加えて当該養子の戸籍の謄本または抄本が必要であると定めています。相続税では基礎控除の計算に算入できる養子の数が相続税法15条2項により制限されており、実子がいる場合は1人、実子がいない場合は2人までとされているため、養子について戸籍で確かめる必要があるためです。
Q. 一覧図に相続人の住所は書いたほうがよいですか?
A. 相続登記を近いうちに行う予定があるなら書いたほうが手数は減ります。不動産登記規則37条の3第2項により、相続人の住所が記載された一覧図の写しを提供すれば、登記名義人となる者の住所を証する情報の提供に代えられるためです。ただし住所を書くと不動産登記規則247条4項によりその住所を証する書面の添付が申出時に必要になり、さらに法務局は交付を受けた後に住所が変わったことによる再申出はできないと明記しています。登記までの時間が長く見込まれる場合は、書かない選択も合理的です。
Q. 法定相続情報番号を書けば、写しの添付を全部省略できますか?
A. 不動産登記の手続に限られます。法定相続情報番号は不動産登記規則37条の3第1項の括弧書きで定義された11桁の番号で、令和6年4月1日から登記申請書の添付情報欄に記載することで写しの添付を省略できるようになりました。ただし法務局は、不動産登記以外の手続では法定相続情報番号は使えないと明記しています。相続税の申告、預金の払戻し、年金の手続では認証文の付いた写しの現物が必要です。また同項ただし書きにより、登記官が法定相続情報を確認できるときに限られます。
Q. 相続人のうち私だけが申出人になりました。兄弟も再交付を受けられますか?
A. 受けられません。不動産登記規則247条7項が再交付の申出をできる者を「第一項の申出をした者」と定めており、法務局も、再交付を受けることができるのは当初の申出において申出書に申出人として氏名を記載した方であり、申出人とならなかった他の相続人は再交付を受けることができないと明記しています。兄弟がそれぞれ手続を進める見込みがあるなら、最初の申出で必要枚数を多めに請求しておくか、申出人を誰にするかを相談しておくのが確実です。
Q. 一覧図は登記所にいつまで保管されますか?
A. 不動産登記規則28条の2第6号により、法定相続情報一覧図つづり込み帳の保存期間は作成の年の翌年から5年間です。法務局も、一覧図は5年間(申出日の翌年から起算)保存されるので、この間であれば再交付を受けることができると案内しています。5年を過ぎると再交付は受けられず、戸籍一式を集め直して新たに申出をすることになります。相続手続が長期化しそうな場合は、この期間を意識しておいてください。
Q. 相続放棄をした相続人も一覧図に載りますか?
A. 載ります。法務局は、相続放棄や遺産分割協議の結果によって実際には相続人とならない方がいる場合も、その方の氏名等が一覧図に記載されると案内しています。一覧図は戸除籍謄本等の記載に基づく法定相続人を明らかにする書面であり、相続放棄は家庭裁判所への申述であって戸籍には現れないためです。一方、推定相続人から廃除された方は相続権が失われているため一覧図には記載されません。放棄を証明するには相続放棄申述受理証明書などを別に用意します。
出典
- e-Gov 法令検索「不動産登記規則(平成十七年法務省令第十八号)」27条の9、28条の2、37条の3、55条、158条の19、158条の20、247条、248条(法令API v2 で令和8年5月21日施行のリビジョンを取得)
- e-Gov 法令検索「相続税法施行規則(昭和二十五年大蔵省令第十七号)」16条(法令API v2 で令和8年4月1日施行のリビジョンを取得)
- e-Gov 法令検索「戸籍法(昭和二十二年法律第二百二十四号)」10条の2(法令API v2 で令和8年6月24日施行のリビジョンを取得)
- e-Gov 法令検索「相続税法(昭和二十五年法律第七十三号)」15条(法令API v2 で令和8年4月1日施行のリビジョンを取得)
- 法務局「『法定相続情報証明制度』について」(更新日 2024年4月1日)
- 法務局「法定相続情報証明制度の具体的な手続について」(更新日 2024年4月1日)
- 法務局「主な法定相続情報一覧図の様式及び記載例」(更新日 2024年4月1日)
この記事は一般的な情報提供であり、個別の税務・法務相談ではありません。実際の申告・登記の判断は、税理士・司法書士など有資格者にご確認ください。