計算のしくみ — 端数処理が2回あり、それぞれに下限が付く
相続登記の登録免許税は「評価額×0.4%」で終わりではありません。課税標準と税額で端数の切り捨てが2回あり、そのそれぞれに別の条文で下限が乗っています。ここを飛ばすと、評価額の小さい不動産で答えがずれます。
2つの免税措置(令和9年3月31日まで)
租税特別措置法84条の2の2は、相続による土地の登記について2つの免税措置を定めています。どちらも適用期限は令和9年3月31日です。
| 免税措置 | 対象 | 内容 |
|---|---|---|
| ① 登記を受ける前に死亡した場合 措法84条の2の2第1項 |
土地のみ | 相続(相続人に対する遺贈を含む)で土地を取得した個人が、移転登記の前に死亡した場合の、その死亡した個人を名義人とする登記が免税。今の相続人への2次相続の移転登記は対象外です。 |
| ② 少額の土地 措法84条の2の2第2項 |
土地のみ | 土地の価額が100万円以下のとき、相続による所有権の移転登記と、表題部所有者の相続人が受ける所有権の保存登記が免税。判定は1筆ごとで、申請全体の合計ではありません。 |
免税の根拠を申請書に記載する
免税を受けるには、登記申請書に根拠となる法令の条項を記載します。計算結果が免税でも、申請書に記載がなければ免税措置は受けられません。
- 登記前に死亡した人を名義人とする土地の登記の免税では、租税特別措置法第84条の2の2第1項により非課税と記載します。
- 少額の土地の免税では、租税特別措置法第84条の2の2第2項により非課税と記載します。
相続登記の申請義務(令和6年4月1日から)と過料
令和6年4月1日から、相続登記の申請が義務になりました(不動産登記法76条の2)。期限は知った日から3年以内です。令和6年4月1日より前の相続と、遺産分割をしたときの数え方は次のとおりです。
- 原則: 自己のために相続の開始があったことを知り、かつその所有権を取得したことを知った日から3年以内に移転登記を申請する(76条の2第1項)。相続人に対する遺贈で取得した人も同じです。
- 怠った場合: 正当な理由がないのに申請を怠ると10万円以下の過料(164条1項)。なお氏名・住所の変更登記(76条の5)を怠った場合は5万円以下の過料(164条2項)で、額が違います。
- 法定相続分で登記した後に遺産分割した場合: その相続分を超えて所有権を取得した人が、分割の日から3年以内に移転登記を申請します(76条の2第2項)。
- 令和6年4月1日より前に開始した相続: これも義務の対象です。3年は、知った日と施行日(第二号施行日)のうち遅い日から数えます。施行日後に知った場合は、その知った日からです。法定相続分で登記した後の遺産分割も、分割の日と施行日のうち遅い日から3年以内です(令和3年法律24号附則5条6項)。
- 相続人申告登記: 3年の期間内に申し出ると、申請義務を履行したものとみなされます。申出の前に遺産分割で取得した分は除きます(76条の3第1項・2項)。
- 申出の後に遺産分割で所有権を取得したときは、分割の日から3年以内に申請します。ほかの人の申請などで登記済みのときは不要です(76条の3第4項・5項)。
- 法定相続分で登記した後の分割は、上の76条の2第2項の義務になります。
よくある間違い
- 課税明細書の「課税標準額」を使ってしまう。住宅用地の特例で評価額の6分の1などに下がっているため、税額を大幅に少なく計算します。使うのは価格(評価額)です。
- 持分だけを相続したのに全体の評価額で計算する。課税標準は評価額×持分割合です(登録免許税法10条2項)。持分2分の1なら端数処理前の価額は半分ですが、端数処理や最低税額により税額は必ずしも半分になりません。
- 免税(100万円以下)を申請全体の合計で判定する。判定は1筆ごとです。90万円の土地が3筆あれば、合計270万円でも3筆とも免税になります。
- 100万円以下の建物も免税だと思う。免税措置の対象は土地だけです。
- 最低税額1,000円を忘れる。税率を適用した金額が1,000円未満のときは、税額は1,000円です(登録免許税法19条)。評価額20万円の建物なら計算上は800円ですが、納めるのは1,000円です。
- 期限を相続開始の日から数える。3年は相続開始と所有権取得を「知った日」から数えます。令和6年4月1日より前の相続の数え方は申請義務の節にあります。
このツールで計算できないもの
- 相続以外の移転登記: 贈与・交換等は本則2%ですが、土地売買は令和11年3月31日まで1.5%、共有物分割は0.4%など、税率が異なります。このツールでは扱いません。
- 遺贈を原因とする移転登記は、登記の原因が「相続」と異なり、相続人か相続人以外かで扱いが分かれます。税率は登記所(法務局)に確認してください。なお免税措置①と申請義務については、条文が明文で「相続人に対する遺贈を含む」としています。
- 抵当権の抹消・住所変更などの他の登記、司法書士報酬、戸籍謄本・評価証明書などの実費は含みません。
- 固定資産課税台帳に価格がない不動産(未評価の私道など)は登記官が認定した価額になるため、管轄の登記所に確認が必要です。
よくある質問
相続登記の登録免許税はいくらですか?
不動産の価額(固定資産税評価額)の1000分の4=0.4%です。根拠は登録免許税法 別表第一 第一号(二)イです。土地・建物とも同じ税率です。評価額の合計から1,000円未満を切り捨てて課税標準を出し、0.4%を掛けて100円未満を切り捨てます。計算した額が1,000円未満のときは1,000円です(登録免許税法19条)。たとえば評価額の合計が1,800万円なら72,000円になります。
評価額100万円以下の土地は本当に無料(免税)になりますか?
なります。対象は土地だけで、判定は1筆ごとです。個人が令和9年3月31日までに受ける、価額100万円以下の土地の相続による所有権の移転登記は、登録免許税が課されません(租税特別措置法84条の2の2第2項)。表題部所有者の相続人が受ける所有権の保存登記も同じです。90万円の土地が3筆あれば、合計270万円でも3筆とも免税です。建物には適用がありません。
課税標準に使うのは固定資産税の「評価額」と「課税標準額」のどちらですか?
「価格(評価額)」のほうです。登録免許税の課税標準は「登記の時における不動産の価額」(登録免許税法10条1項)で、実務上は固定資産課税台帳に登録された価格を使います(同法附則7条)。課税標準額は住宅用地の特例で評価額の6分の1などに下がっているため、使うと税額を大幅に少なく計算します。
共有の持分だけを相続した場合はどう計算しますか?
その不動産全体の価額に持分の割合を掛けた金額が課税標準になります(登録免許税法10条2項)。たとえば評価額3,000万円の土地の2分の1を相続したなら、課税標準は1,500万円で税額は60,000円です。全体の評価額のまま計算すると税額が倍になってしまうので注意してください。
相続登記をしないとどうなりますか?
正当な理由なく申請を怠ると、10万円以下の過料の対象です(不動産登記法164条1項)。令和6年4月1日から申請が義務になり、相続開始と所有権取得を知った日から3年以内に申請します(76条の2)。令和6年4月1日より前に開始した相続も対象で、施行日と知った日のいずれか遅い日から3年以内です(令和3年法律24号附則5条6項)。3年以内に相続人申告登記を申し出れば、義務を履行したものとみなされます(申出前の遺産分割で取得した分を除く・76条の3)。
登録免許税のほかに費用はかかりますか?
かかります。この計算機が出すのは国に納める登録免許税だけです。ほかに戸籍謄本・住民票・固定資産評価証明書などの取得実費、登記事項証明書の手数料がかかり、司法書士に依頼する場合はその報酬が別に必要です。自分で申請する場合でも実費は発生します。
計算を誤って登録免許税を多く納め、登記を受けた場合は?
登記機関に申し出て、所轄税務署長への還付通知を求められます。申請書の課税標準・税額の計算誤りによる過納について、この請求ができるのは登記を受けた日から5年を経過する日までです(登録免許税法31条2項)。この請求期限が土日祝日・年末年始の休日に当たる場合は、休日明けまで延びます。
関連ツール
- 相続税の計算機 — 遺産総額と家族構成から相続税額を計算します。
- 生前贈与シミュレーター — 暦年贈与と相続時精算課税のどちらが有利かを比べます。
- 贈与税の計算機 — 贈与を受けた額から贈与税を計算します。
出典
- 法務局「相続登記の登録免許税の免税措置」
- 登録免許税法(9条・10条・15条・19条・31条・別表第一 第一号・附則7条)
- 国税通則法(10条2項・118条1項・119条1項)
- 国税通則法施行令(2条)
- 租税特別措置法(84条の2の2)
- 不動産登記法(76条の2・76条の3・164条)
- 国税庁 No.7191 登録免許税の税額表
- 国税庁「相続による土地の所有権の移転登記等に対する登録免許税の免税措置について」(令和8年4月)