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生前贈与シミュレーター(暦年贈与 vs 相続時精算課税)

暦年贈与は、年110万円以下でも相続開始前7年以内の分が相続税に戻ります(7年への延長は経過措置で段階的)。相続時精算課税の年110万円の基礎控除は戻りません。そのため毎年110万円以下の小口贈与なら精算課税が有利になりやすい一方、一度選ぶと暦年課税に戻れません(選び方)。毎年の贈与額・人数・年数を入れると、①何もしない ②暦年課税で贈与 ③相続時精算課税で贈与 の3通りで「生前の贈与税+相続時の相続税−還付」(実質の総負担)を比べます。令和8年の制度で計算します。

この比較の前提 60歳以上の父母・祖父母から、相続人になる子へ、毎年同じ額の現金を贈与する形で比べます。孫への贈与・不動産や株式・非課税特例などは対象外です(財産の分け方も含めて前提と限界)。
預金・不動産・株式などの評価額の合計。例: 10000 なら1億円
全員相続人
1年以上で入力します(同じ年の贈与は対象外)

相続開始までの年数は、1年と8年(7年加算の圏外)の両方で試すと結果の動きが分かります。

上のシミュレーターで、生前贈与の計画ごとに「暦年贈与・相続時精算課税・何もしない」の実質負担を比較できます。以下では、令和6年に大きく変わった7年加算と相続時精算課税の年110万円基礎控除を中心に、その計算のしくみを解説します(一般的な計算方法の説明であり、個別の税務相談ではありません)。

暦年贈与は「7年分」相続税に戻る — 生前贈与加算

相続や遺贈で財産を取得した人が、亡くなった人(被相続人)から相続開始前7年以内に暦年課税の贈与を受けていた場合、その贈与財産は贈与時の価額で相続税の課税価格に加算されます(相続税法19条・生前贈与加算)。つまり「毎年コツコツ贈与して財産を減らしたつもりでも、直近7年分は相続税の計算に戻ってくる」ということです。

加算のルール(相続税法19条1項)

・相続開始前3年以内の贈与 …… 全額を加算
・相続開始前3年超7年以内の贈与 …… その合計額から100万円を控除した残額を加算
・加算された贈与に対応する贈与税は相続税から控除(ただし引き切れなくても還付はない)

年110万円以下の贈与も、加算される

生前贈与加算は、贈与税がかかったかどうかとは無関係です。基礎控除額110万円以下の贈与財産や、死亡した年に贈与された財産も加算されます(No.4161)。

「毎年110万円以下に抑えれば相続税に戻らない」は誤りです — 戻らないのは、贈与から相続開始まで7年を超えて生きた場合だけです。

100万円の控除は「4年分の合計から1回」

3年超7年以内(延長された4年間)の贈与に認められる100万円の控除は、年100万円ずつではなく、その4年分の贈与の合計額から1回だけです(受贈者ごと)。たとえば毎年110万円×4年分(440万円)がこの帯に入る場合、加算されるのは 440万円 − 100万円 = 340万円です。

毎年の贈与は、相続開始からさかのぼって何年前かで扱いが変わる(相続税法19条) 3年以内 全額 加算 3年超 7年以内 合計 −100万円 を加算 7年より前 加算されない 相続開始 3年前 7年前 例: 毎年110万円を10年間(最後の贈与は相続開始の3年前) … ← 全額加算(110万円) ↑ この4年分 440万円 − 100万円 = 340万円を加算 ○ = 7年より前の贈与(加算されない)。この例では加算は 110万+340万 = 450万円 贈与をやめてから7年を超えて相続が開始すれば、加算はゼロになる(=「早く始めて早くやめる」ほど効く)。
生前贈与加算のしくみ(相続税法19条)。相続開始前3年以内の贈与は全額、3年超7年以内は合計から100万円を控除した残額が相続税の課税価格に戻ります。7年より前の贈与は戻りません。
「7年」への延長は段階的(経過措置)

7年加算の対象になるのは令和6年1月1日以後の贈与だけです(令和5年法律3号附則19条)。相続開始日ごとの加算対象期間は次のとおりで、相続開始が令和8年12月31日までの場合は従来どおり「3年」で計算します。完全に7年分が加算されるのは令和13年1月1日以後の相続からです。本シミュレーターは「これから始める贈与の設計用」として7年ルールの完成形で計算しています(2023年以前の過去の贈与を含む検討には使えません)。

相続開始日加算対象期間
〜令和8年12月31日相続開始前3年以内
令和9年1月1日〜令和12年12月31日令和6年1月1日以後の贈与(3年超〜7年未満に段階的に延長)
令和13年1月1日〜相続開始前7年以内(完成形)

相続時精算課税 — 年110万円は戻らない(令和6年改正)

相続時精算課税は、60歳以上の父母・祖父母から18歳以上の子・孫への贈与で選べる、もう1つの課税方式です(相続税法21条の9)。「相続時精算」の名のとおり、この制度で受けた贈与は相続時に贈与時の価額で相続財産に加算して相続税で精算します — ただし令和6年1月1日からは、ここに年110万円の基礎控除が加わり、性格が大きく変わりました。

相続時精算課税のしくみ(令和6年1月1日以後)

・毎年の贈与から基礎控除 年110万円を控除(措法70条の3の2)— この部分は相続時に加算されない
・110万円を超えた部分は累計2,500万円の特別控除(相法21条の12・期限内申告が要件)
・特別控除も超えた部分に一律20%で贈与税(相法21条の13)
・相続時は基礎控除後の残額を全額(何年前でも)加算し、納めた贈与税は相続税から控除。引き切れなければ還付(相法33条の2)

ポイントは、同じ「毎年110万円」でも扱いが正反対になることです。暦年課税の110万円は「贈与税がかからないだけ」で相続開始前7年以内なら相続税に戻るのに対し、精算課税の110万円は相続税にも戻りません(相法21条の15が「基礎控除をした残額」だけを加算すると定めているためです)。

ただし、一度選ぶと戻れない

相続時精算課税は「相続時精算課税選択届出書」を提出して選びます。この届出は撤回できず(相法21条の9第6項)、その贈与者からの贈与はその年分以降すべて精算課税になり、二度と暦年課税に戻れません。父からの贈与は精算課税・母からの贈与は暦年課税、のように贈与者ごとに別々に選ぶことはできます。特別控除2,500万円は期限内申告書に記載した場合だけ使えます(申告を忘れると20%課税)。

同じ「毎年110万円×10年」でも、これだけ変わる(計算例)

財産1億円・配偶者と子2人の家族で、子2人に毎年110万円ずつ10年間贈与し、最後の贈与から3年後に相続が開始したとします(本シミュレーターの初期値)。贈与税はどの方式でも0円です — それでも実質負担はこれだけ違います。

何もしない暦年課税で贈与相続時精算課税で贈与
生前に払う贈与税—0円0円
相続税に戻る加算額—1人450万円
3年前の110万円+4〜7年前の440万円−100万円
0円
年110万円は基礎控除以下
相続税(子2人の合計)315万円241万3,600円162万5,000円
実質の総負担315万円241万3,600円162万5,000円
何もしない場合との差—−73万6,400円−152万5,000円

この例では、同じ贈与でも精算課税を選ぶだけで、暦年課税よりさらに約79万円軽くなります。暦年課税は直近7年分(うち4年分は100万円控除後)の450万円×2人が課税価格に戻るのに対し、精算課税は年110万円の基礎控除以下なので1円も戻らないからです。これが令和6年改正後に「毎年110万円の小口贈与なら精算課税」と言われる理由です。

※ 表の金額は本シミュレーターと同じ計算(残った財産は法定相続分どおり・配偶者は税額軽減で0円・各人の課税価格は千円未満切り捨て・税額は百円未満切り捨て)によります。

どちらを選ぶかの考え方

シミュレーターをいくつかの想定で回すと、だいたい次の構図が見えてきます。

孫への贈与は、そもそも加算されない(原則)

生前贈与加算の対象は「相続又は遺贈により財産を取得した者」への贈与だけです(相法19条1項)。相続人でない孫は相続で財産を取得しないため、孫への暦年贈与は7年以内でも加算されません。

ただし、次のどれかに当たる孫は加算の対象になります。

  • 代襲相続人になった(親である子が先に亡くなった)
  • 遺言で財産を受け取った(受遺者)
  • 生命保険金の受取人になった(みなし相続財産の取得)
  • 相続時精算課税を選んでいた
相続税そのものの試算は相続税 計算機で。本ツールの相続税部分も同じ計算です(基礎控除3,000万円+600万円×法定相続人・法定相続分で按分・配偶者の税額軽減)。家族構成だけ変えた目安もそちらで確認できます。

このシミュレーターの前提と限界

金額が大きい判断です。実行前には税理士に相談してください。このツールは「どの方式がどのくらい違いそうか」の当たりを付けるためのものです。

よくある質問

生前贈与は年間いくらまで非課税ですか?

贈与税は年110万円(基礎控除)まで非課税です。ただし「贈与税がかからない」と「相続税に戻らない」は別で、相続や遺贈で財産を取得する人(子など)への贈与は、110万円以下でも相続開始前7年以内の分は相続税の課税価格に加算されます。贈与税と相続税の両方で残らないのは、贈与から7年を超えて相続が開始した分だけです(国税庁No.4161)。

毎年110万円以下に抑えれば、相続税にも戻りませんか?

戻ります。生前贈与加算は贈与税がかかったかどうかと無関係で、基礎控除額110万円以下の贈与財産も加算されます(国税庁No.4161)。一方、相続時精算課税を選んだ場合の年110万円(精算課税の基礎控除)は相続時に加算されません。ここが令和6年改正後の2方式の最大の違いです。

生前贈与加算の「7年」はいつの贈与から適用されますか?

令和6年1月1日以後の贈与からです(令和5年法律3号附則19条)。相続開始が令和8年12月31日までなら従来どおり3年、令和9年〜令和12年は令和6年1月1日以後の贈与だけが対象(実質3〜7年に段階的に延長)、完全に7年分が加算されるのは令和13年1月1日以後に開始した相続からです。

孫への贈与も7年加算の対象ですか?

原則、対象外です。加算されるのは相続や遺贈で財産を取得した人への贈与だけなので、相続人でない孫への贈与には加算の期間制限が働きません。ただし、代襲相続人になった孫・遺言で財産を受け取った孫・生命保険金の受取人になった孫・相続時精算課税を選んでいた孫は加算の対象になります(相続税法19条1項)。

相続時精算課税を選ぶと、暦年課税の110万円非課税はどうなりますか?

その贈与者(特定贈与者)からの贈与については暦年課税に戻れなくなり、代わりに精算課税の基礎控除(年110万円・相続時に加算されない)を使います。別の贈与者(たとえば母や祖父母)からの贈与は引き続き暦年課税で受けられ、暦年課税の基礎控除110万円も別に使えます。なお同じ年に2人以上の特定贈与者から贈与を受けた場合、精算課税の110万円は贈与額であん分します(国税庁No.4103)。

精算課税で年110万円以下なら、申告は不要ですか?

贈与税の申告は不要です(基礎控除以下のため)。ただし最初に精算課税を選ぶ年は、贈与を受けた年の翌年2月1日〜3月15日に「相続時精算課税選択届出書」の提出が必要です。また特別控除2,500万円は期限内申告書に記載した場合しか使えないので、110万円を超える年は申告を忘れないでください(国税庁No.4103)。

結局、暦年贈与と相続時精算課税はどちらが得ですか?

一概には言えません。毎年110万円以下の小口贈与なら精算課税(加算ゼロ)が有利になりやすく、大きな額を若いうちから動かすなら暦年課税×時間(最後の贈与から7年を超えれば加算ゼロ)が効きます。相続開始が近い時期の大口暦年贈与は、ほぼ全額が戻るうえ贈与税だけ残るため「何もしない」より損になることもあります。上のシミュレーターで、贈与額・年数・相続までの年数を変えて実額で比べてください。

出典

この記事は令和8年時点の法令にもとづく一般的な情報であり、個別の事案に対する助言ではありません。生前贈与の設計は財産の種類・評価・家族の事情によって最適解が変わります。実行前に税理士へご相談ください。

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