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事業所税とは — 指定都市等だけが課す税。1,000㎡・100人は「控除」ではなく崖

結論から言うと、事業所税は全国どこでもかかる税ではありません。地方税法701条の30は「指定都市等は、都市環境の整備及び改善に関する事業に要する費用に充てるため、事業所税を課するものとする」と定めていて、課税できる自治体が条文で限定されています。自社の事業所がその区域にあるかどうかが、まず最初の分岐です。

かかる場合の中身は2本立てです。資産割が事業所床面積に対して1平方メートルにつき600円従業者割が従業者給与総額に対して100分の0.25(0.25%)。税率は地方税法701条の42が定めていて、全国一律です。そして免税点が床面積1,000平方メートル・従業者100人です。

実務で誤解が集中するのは、この免税点の性格です。これは基礎控除ではありません。701条の43は「合計面積が千平方メートル以下である場合には資産割を……課することができない」という書き方をしていて、超えた場合に1,000平方メートルを差し引く規定はどこにもありません。1,000平方メートルちょうどなら0円、1,001平方メートルなら600,600円です。さらに判定は事業所ごとではなく同じ市の区域内にある事業所の合計で行い、東京23区は23区全体で1つの区域として扱われます。以下、条文から確認できることと、確認範囲を超えるため断定を避けたことを分けて示します。

どこが課税するのか — 「指定都市等」の4つの入口

事業所税を課すことができるのは「指定都市等」だけです。この語の定義は地方税法701条の31第1項第1号にあり、イ・ロ・ハの3類型が並んでいます。これに東京23区の特例を加えると、入口は4つになります。

区分条文中身
701条の31第1項第1号イ地方自治法252条の19第1項の市(政令指定都市
同号ロイ以外の市で、首都圏整備法2条3項の既成市街地または近畿圏整備法2条3項の既成都市区域を有するもの
同号ハイ・ロ以外の市で人口30万以上のうち政令で指定するもの
東京23区735条1項・737条3項東京都が課税する。特別区の存する区域を「指定都市等の区域」とみなす

イの政令指定都市は20市です。「地方自治法第二百五十二条の十九第一項の指定都市の指定に関する政令」(昭和三十一年政令第二百五十四号)が、大阪市・名古屋市・京都市・横浜市・神戸市・北九州市・札幌市・川崎市・福岡市・広島市・仙台市・千葉市・さいたま市・静岡市・堺市・新潟市・浜松市・岡山市・相模原市・熊本市を指定しています。

ハの「人口30万以上で政令で指定するもの」は、地方税法施行令56条の15が46市を名指ししています。ここは見落とされやすいところです。政令指定都市でなくても課税団体になります。

地方税法施行令56条の15が指定する46市(原文どおりの順)

旭川市、郡山市、いわき市、宇都宮市、前橋市、高崎市、川越市、所沢市、越谷市、市川市、船橋市、松戸市、柏市、八王子市、町田市、横須賀市、藤沢市、富山市、金沢市、長野市、岐阜市、豊橋市、岡崎市、一宮市、春日井市、豊田市、四日市市、大津市、豊中市、吹田市、高槻市、枚方市、姫路市、明石市、奈良市、和歌山市、倉敷市、福山市、高松市、松山市、高知市、長崎市、大分市、宮崎市、鹿児島市及び那覇市

ロの「既成市街地・既成都市区域を有する市」については、首都圏整備法2条3項・近畿圏整備法2条3項がいずれも「政令で定めるもの」と区域の指定を政令に委ねており、本記事ではその政令を取得していません。したがってロに当たる市の具体名は挙げていません。イ・ハ・東京23区のいずれにも見当たらない市に事業所がある場合は、その市の税務担当課に確認してください。

なお、あとから課税団体になった場合には猶予があります。地方税法施行令56条の83第1項は、指定都市等でなかった市が新たに指定都市等となった場合、その日の翌日から6月を経過する日の属する月の初日(同項が「適用日」と呼ぶ日)以後に終了する事業年度分から適用する、としています。指定された瞬間に進行中の事業年度へ遡ってかかるわけではありません。

事業所がある市区町村は? 指定都市等か(政令指定都市20市/既成市街地を有する市/ 施行令56条の15の46市/東京23区) いいえ 事業所税はかからない はい その市の区域内にある自社の全事業所を 合算する(701条の43第1項) 合計床面積 1,000㎡ 超 → 資産割 合計従業者 100人 超 → 従業者割 ※ 資産割と従業者割は 別々に判定する ※ 片方だけ課税される ことがある
図1: 事業所税がかかるかどうかの判定。まず市区町村、次に市内合算、最後に資産割・従業者割を別々に判定する(地方税法701条の30・701条の31・701条の43)

何にかかるのか — 資産割と従業者割

701条の32第1項は、事業所税を「資産割額及び従業者割額の合算額によつて課する」としています。2つの税を別々に納めるのではなく、1つの税を2つの計算で出して足す形です。

課税標準税率(701条の42)
資産割課税標準の算定期間の末日現在における事業所床面積1平方メートルにつき600円
従業者割課税標準の算定期間中に支払われた従業者給与総額100分の0.25(0.25%)

ここで注意したいのは2つの課税標準が「時点」と「期間」で性格が違うことです。資産割は701条の40第1項のとおり末日現在の床面積という一時点の数字ですが、従業者割は算定期間中に支払われた給与の累計です。期末に人が減っていても、期中に支払った給与は従業者割の課税標準に残ります。

算定期間は、法人なら事業年度(701条の31第1項第7号が法72条の13の事業年度を指しています)、個人なら原則としてその年の1月1日から12月31日まで(同項第8号)です。

計算例:東京23区内に2つの事業所がある法人

事業年度は4月1日から3月31日。港区の事業所が床面積700㎡、新宿区の事業所が床面積400㎡、23区内で支払った従業者給与総額が5億円だったとします。

合計床面積は 700 + 400 = 1,100㎡ で1,000㎡を超えるため、資産割が課税されます。
資産割 = 1,100㎡ × 600円 = 660,000円(1,000㎡を差し引かない点に注意)

従業者割 = 5億円 × 0.25% = 1,250,000円

事業所税額 = 660,000 + 1,250,000 = 1,910,000円

免税点1,000㎡・100人は「崖」であって控除ではない

ここが最も間違えられるところです。免税点を超えた分だけに課税されるのではありません。

701条の43第1項の書き方を見てください。「事業所床面積……の合計面積が千平方メートル以下である場合には資産割を、当該各事業所等の従業者……の数の合計数が百人以下である場合には従業者割を課することができない」。つまり1,000平方メートル以下なら課税できない、という書き方であって、1,000平方メートルを控除するとは書いていません。

実際に、事業所税の節(701条の30〜701条の74)の全条文を通して「千平方メートル」という語が現れるのはこの701条の43だけです。課税標準を定める701条の40にも、課税標準の特例を定める701条の41にも、床面積から1,000平方メートルを控除する規定はありません。701条の41は協同組合等の施設や公害防止施設など特定の施設について2分の1・4分の3を控除するものであって、すべての事業者に一律に効く基礎控除ではありません。

1平方メートルの差で税額がいくら変わるか

床面積 1,000㎡ ちょうど → 免税点以下なので 資産割 0円
床面積 1,001㎡1,001 × 600 = 600,600円

1平方メートル増えただけで、税額は0円から600,600円になります。増えた1平方メートルぶんの600円ではありません。

900㎡ 1,000㎡ 1,200㎡ 市内の全事業所の合計床面積 資産割 の額 0円(免税点以下) 1,001㎡ → 600,600円 1㎡ 増えるだけで 600,600円 の段差 ※ 模式図(横軸は1,000㎡付近を拡大している)。1,000㎡を控除する規定は条文に無いため、超えた瞬間に全床面積へ600円/㎡がかかる
図2: 免税点は「基礎控除」ではなく段差。1,000㎡ちょうどは0円、1,001㎡は600,600円(地方税法701条の42・701条の43)

判定の時点も条文が決めています。701条の43第3項は、1,000平方メートル以下かどうか・100人以下かどうかの判定は課税標準の算定期間の末日の現況によるとしています。期中に一時的に超えていても、末日に下回っていれば免税点以下です。

ただし従業者数には例外があります。同条第4項は、算定期間中を通じて従業者の数に著しい変動がある事業所等(政令で定めるもの。期中に廃止された事業所等を除く)については、各月の末日現在の従業者数を合計して算定期間の月数で除した数を末日現在の従業者数とみなす、としています。季節変動の大きい事業で、期末だけ人を減らして免税点を下回らせるという形にはならないようになっています。

判定は事業所ごとではない — 市内合算と東京23区

701条の43第1項は「同一の者が当該指定都市等の区域内において行う事業に係る各事業所等」の「合計面積」「合計数」で判定すると書いています。事業所を分けても、同じ市の中にある限り合算されます。

そして東京23区です。地方税法737条3項は「事業所税に関する規定の都に対する準用については、特別区の存する区域は、指定都市等の区域とみなす」と定めています。735条1項が、都が特別区の存する区域において事業所税を課すことができるとし、この場合に都を指定都市等とみなすとしています。

つまり23区は、23個の区ではなく「1つの指定都市等の区域」です。港区の事業所と新宿区の事業所は合算されます。同じ床面積でも、それが横浜市と川崎市に分かれていれば別々の指定都市等なので合算されません。

東京23区(1つの区域とみなす) 港区 700㎡ 新宿区 400㎡ 合計 1,100㎡ > 1,000㎡ 資産割 660,000円 横浜市と川崎市(別々の区域) 横浜市 700㎡ 川崎市 400㎡ 700㎡ ≦ 1,000㎡ 400㎡ ≦ 1,000㎡ どちらも資産割 0円
図3: 同じ床面積でも、23区内に分けると合算されて課税、別々の市に分けると合算されず免税点以下(地方税法701条の43第1項・737条3項)

もうひとつ、合算に関わる規定があります。701条の32第2項は、特殊関係者(親族その他の特殊の関係のある個人または同族会社等で政令で定めるもの)を有する者について、その特殊関係者が行う事業に政令で定める特別の事情があるときは、その事業を共同事業とみなすとしています。会社を分けても、条文上まとめて見られる場合があるということです。具体的にどのような場合が「政令で定める特別の事情」に当たるかは政令に委ねられており、本記事ではその政令を確認していません。

逆に、1つの事業所が指定都市等の区域とそれ以外の市町村の区域にまたがっている場合の按分も決まっています。地方税法施行令56条の50は、その場合の事業所床面積は指定都市等の区域内にある部分の床面積とし、従業者給与総額はその床面積の割合を乗じて得た額とするとしています。免税点の判定についても施行令56条の74が同じ按分を定めていて、従業者の数も床面積比で按分します。

従業者の数から外れる人 — 65歳以上と障害者

従業者割の計算でも免税点の判定でも「従業者」という語を使いますが、この語には条文上の定義があり、全員が入るわけではありません。

701条の31第1項第5号は、従業者給与総額を定義するなかで従業者を次のように括弧書きしています。「役員を含むものとし、政令で定める障害者……及び年齢六十五歳以上の者(役員を除く。)を除く。」

そして、この括弧書きの末尾には「以下この号及び第七百一条の四十三において同じ。」と書かれています。701条の43は免税点の条文です。つまりこの定義は、給与総額の計算だけでなく免税点の100人判定にも及びます

読み取れること(条文の文言から)
  • 役員は従業者に含まれる — 「役員を含むものとし」と明記されています。
  • 65歳以上の人は除かれる。ただし役員は除かれない — 「年齢六十五歳以上の者(役員を除く。)を除く」という二重の括弧です。65歳以上でも役員なら従業者として数えます。
  • 政令で定める障害者も除かれる(具体的な範囲は政令に委ねられており、本記事では確認していません)。
  • 55歳以上65歳未満の「雇用改善助成対象者」(雇用保険法その他の法令に基づく国の雇用に関する助成に係る者で政令で定めるもの)については、給与等の額の2分の1に相当する額を除くとされています。これは金額の話であって、人数から除くとは書かれていません。
  • 事業専従者がいる場合は、地方税法313条5項の事業専従者控除額を給与総額に含めるとされています。
計算例:頭数は110人でも免税点以下になりうる

ある市の区域内の事業所で働く人が合計110人。このうち65歳以上で役員でない人が12人いたとします。

701条の43の判定に用いる従業者の数 = 110 − 12 = 98人 ≦ 100人
従業者割は課することができない

一方で床面積が1,000㎡を超えていれば、資産割だけは課税されます。701条の43は資産割と従業者割を別々の条件で書いているためです。

なお、障害者・65歳以上・雇用改善助成対象者に当たるかどうかの判定時点も条文にあります。701条の31第2項は「その者に対して給与等が支払われる時の現況による」としています。期末時点ではありません。

法人税の計算機で、租税公課を含めた税負担を試算する

期の途中で開いた・閉じたとき — 月割の起算が非対称

701条の40第2項は、算定期間の途中で事業所等を新設または廃止した場合の資産割の課税標準を定めています。ここで新設と廃止の起算が揃っていません。

ケース条文月割の分子(月数)
期中に新設701条の40第2項1号新設の日の属する月の翌月から、算定期間の末日の属する月まで
期中に廃止同項2号算定期間の開始の日の属する月から、廃止の日の属する月まで
期中に新設し期中に廃止同項3号新設の日の属する月の翌月から、廃止の日の属する月まで

新設は「翌月から」なのに、廃止は「その月まで」です。新設した月は数えず、廃止した月は数えます。

計算例:9月15日に新設した事業所(事業年度4月1日〜3月31日)

新設の日の属する月は9月、その翌月は10月。算定期間の末日は3月31日で、その属する月は3月。
→ 分子の月数は 10月・11月・12月・1月・2月・3月 = 6か月

期末(3月31日)の床面積が2,400㎡なら
課税標準 = 2,400㎡ × 6 ÷ 12 = 1,200㎡
資産割 = 1,200㎡ × 600円 = 720,000円

免税点の判定は701条の43第3項により末日の現況(2,400㎡)で行うため、月割後の1,200㎡ではなく2,400㎡で1,000㎡超かどうかを見ます。

月数の数え方も条文が決めています。701条の40第3項は「暦に従つて計算し、一月に満たない端数を生じたときは、これを一月とする」としています。切り捨てではなく切り上げです。同じ規定が免税点の月数についても701条の43第5項に置かれています。

また、算定期間そのものが12か月に満たない場合(設立初年度や決算期変更の年など)は、701条の40第1項の括弧書きにより、床面積を12で除して算定期間の月数を乗じた面積が課税標準になります。

申告と納付 — 税額ゼロでも申告を求められることがある

事業所税は申告納付です(701条の45)。自治体から納付書が送られてくるのを待つ税ではなく、自分で計算して申告し、納めます。

期限条文
法人各事業年度終了の日から2月以内701条の46第1項
個人その年の翌年3月15日まで701条の47第1項
個人(年の途中で事業を廃止)廃止の日から1月以内同項括弧書き
個人(廃止が納税義務者の死亡による)4月以内同上

提出先は「当該事業所等所在の指定都市等の長」で、様式は総務省令で定めるものとされています。法人税の申告書とは別に、事業所のある市(東京23区なら都)へ出します。

そして見落とされやすいのが、税額がなくても申告を求められる場合があることです。701条の46第3項は「指定都市等の長は、事業所等において事業を行う法人で各事業年度について納付すべき事業所税額がないものに、当該指定都市等の条例の定めるところにより、第一項の規定に準じて申告書を提出させることができる」としています。個人についても701条の47第3項に同じ規定があります。免税点以下だから何もしなくてよい、とは条文が言っていません。実際に求められるかどうかは、その自治体の条例によります。

さらに、事業所税の納税義務者でなくても課される申告義務が2つあります。701条の52です。

701条の52の申告義務(条例の定めるところによる)
  • 第1項:指定都市等の区域内において事業所等を新設し、または廃止した者は、その旨その他必要な事項を申告しなければならない。
  • 第2項:事業所税の納税義務者に事業所用家屋を貸し付けている者は、当該事業所用家屋の床面積その他必要な事項を申告しなければならない。

第2項は貸している側(オーナー・貸主)の義務です。自分が事業所税を納めるわけではなくても、テナントに事業所用家屋を貸していれば、その床面積を申告する立場になります。

期限までに申告しなかった場合の規定も一通り置かれています。期限後申告と修正申告(701条の49)、不申告に関する過料(701条の49の2)、過少申告加算金・不申告加算金(701条の61)、重加算金(701条の62)、納期限後の延滞金(701条の60)です。

条文まで下りて分かる落とし穴

ここまでに出てきたものを含め、条文を読まないと気づきにくい点をまとめます。

よくある理解条文はどうなっているか
1,000㎡を超えた分に課税される誤り。超えたら全体に課税される。1,000㎡を控除する規定は事業所税の節に存在しない(「千平方メートル」の語は701条の43にしか現れない)
事業所ごとに1,000㎡で判定する誤り。同一の者が同じ指定都市等の区域内で行う事業に係る各事業所等の合計で判定する(701条の43第1項)
23区は区ごとに判定する誤り。特別区の存する区域を1つの指定都市等の区域とみなす(737条3項)
従業者は在籍者の頭数不正確。役員は含み、政令で定める障害者と65歳以上の者(役員を除く)は除く。この定義は免税点の判定にも及ぶ(701条の31第1項第5号)
免税点以下なら何もしなくてよい不正確。条例により、税額がなくても申告書の提出を求められることがある(701条の46第3項・701条の47第3項)
借りている側だけが関係する不正確。事業所用家屋を貸し付けている者にも床面積の申告義務がある(701条の52第2項)
新設も廃止も同じように月割する不正確。新設は翌月から、廃止はその月まで数える(701条の40第2項)
法人税の申告期限を延長すれば事業所税も延びる本記事では確認していない。701条の46第1項は「2月以内」と定めるのみで、法人税法75条の2のような延長規定を同条には見つけられなかった。所轄の自治体に確認が必要

なお、事業所税は目的税なので使い道が法定されています。701条の73は、納付された事業所税額から徴収に要する費用を控除した額を、道路・都市高速鉄道・駐車場などの交通施設の整備事業、公園・緑地、水道・下水道・廃棄物処理施設、河川、学校・図書館、病院・保育所などの医療施設または社会福祉施設、公害防止、防災、その他政令で定める都市環境の整備改善に必要な事業の費用に充てなければならないとしています。

非課税の範囲も広く定められています(701条の34)。国・非課税独立行政法人・法人税法2条5号の公共法人には課税できず、公益法人等や人格のない社団等については収益事業以外の事業に課税できません。さらに同条3項は施設単位の非課税を列挙していて、博物館その他政令で定める教育文化施設、政令で定める公衆浴場、と畜場、水道施設、医療法1条の5の病院・診療所、保護施設、小規模保育事業の施設、児童福祉施設、認定こども園、老人福祉施設、障害者支援施設、農林漁業者が直接生産の用に供する施設、卸売市場などが含まれます。自社の事業所にこれらが含まれる場合は、その部分の床面積・従業者は免税点の判定からも外れます(701条の43が「第七百一条の三十四の規定の適用を受けるものを除く」としているため)。

国税庁の案内に今も残る、23年前に廃止された税

最後に、条文を数えていて見つけたことを1つ。

減価償却資産の取得価額について、国税庁のタックスアンサーNo.5400「減価償却資産の取得価額に含めないことができる付随費用」は、取得価額に算入しないことができる租税公課等として次の3つを挙げています。

国税庁 No.5400 の該当箇所(2026年8月16日に取得した本文より)

(1) 不動産取得税または自動車取得税
(2) 新増設に係る事業所税
(3) 登録免許税その他登記または登録のために要する費用

ところが、「新増設に係る事業所税」という税は、現在の地方税法の本則に存在しません。地方税法の全文(本則と附則の合計約235万字)を機械的に数えると、「新増設に係る事業所税」は本則に0回、附則に117回現れます。本則にはもう無く、経過措置の中にだけ残っているということです。

廃止したのは平成15年3月31日法律第9号で、その附則第1条は「この法律は、平成十五年四月一日から施行する」としています。同附則は、施行日前に行われた事業所用家屋の新築または増築に対して課する新増設に係る事業所税については「なお従前の例による」と定めていて、これが117回の正体です。

つまり2003年4月1日以後に新築・増築をしても、新増設に係る事業所税は生じません。いま事業所税と呼ばれているものは、この記事で扱ってきた資産割と従業者割(かつて「事業に係る事業所税」と呼ばれていたもの)だけです。

これは国税庁の記載が誤りだという意味ではありません。同ページは法人税基本通達の列挙をそのまま引き継いだ体裁になっており、廃止された税目の記述が残っているにすぎません(通達側の文言については本記事では確認していません)。ただ、この行に該当する支出が現在は発生しないことは、地方税法の本則を見れば確かめられます。公的機関の資料であっても、基準日と現行条文は別に確かめる必要があるという一例として挙げました。

よくある質問

Q. 事業所税は全国どこの市町村でもかかりますか?

A. いいえ。地方税法701条の30は「指定都市等は……事業所税を課するものとする」と定めており、課税団体が限定されています。指定都市等とは、701条の31第1項第1号のイ・ロ・ハに掲げる市、すなわちイ=地方自治法252条の19第1項の市(政令指定都市。昭和三十一年政令第二百五十四号により大阪市・名古屋市・京都市・横浜市・神戸市・北九州市・札幌市・川崎市・福岡市・広島市・仙台市・千葉市・さいたま市・静岡市・堺市・新潟市・浜松市・岡山市・相模原市・熊本市の20市)、ロ=首都圏整備法2条3項の既成市街地または近畿圏整備法2条3項の既成都市区域を有する市、ハ=人口30万以上で政令が指定する市(地方税法施行令56条の15が旭川市から那覇市まで46市を列挙)です。これに加えて、東京都は735条1項および737条3項により特別区の存する区域を指定都市等の区域とみなして課税します。ロに当たる市の具体名は、区域の指定が政令に委ねられており本記事では確認していないため挙げていません。

Q. 床面積が1,200㎡です。1,000㎡を超えた200㎡分に課税されるのですか?

A. いいえ、1,200㎡全体に課税されます。地方税法701条の43第1項は「合計面積が千平方メートル以下である場合には資産割を……課することができない」という書き方をしており、超えた場合に1,000平方メートルを控除するとは定めていません。実際、事業所税の節(701条の30〜701条の74)を通して「千平方メートル」の語が現れるのはこの701条の43だけで、課税標準を定める701条の40にも課税標準の特例を定める701条の41にも一律の控除規定はありません。したがってこの例では1,200㎡×600円=720,000円が資産割となります。1,000㎡ちょうどなら0円、1,001㎡なら600,600円という段差が生じます。

Q. 事業所を複数の区に分ければ、免税点を下回りませんか?

A. 同じ指定都市等の区域内であれば分けても合算されます。701条の43第1項が「同一の者が当該指定都市等の区域内において行う事業に係る各事業所等」の合計面積・合計数で判定するとしているためです。とくに東京23区は、737条3項が特別区の存する区域を1つの指定都市等の区域とみなすため、港区700㎡と新宿区400㎡なら合計1,100㎡として資産割が課されます。一方、横浜市700㎡と川崎市400㎡のように別々の指定都市等に分かれている場合は、それぞれの市で判定するのでどちらも1,000㎡以下となります。なお701条の32第2項は、特殊関係者が行う事業に政令で定める特別の事情があるときはこれを共同事業とみなすとしており、法人を分けた場合にもまとめて見られることがあります。

Q. 従業者が110人います。従業者割は必ずかかりますか?

A. 必ずしもかかりません。701条の31第1項第5号は従業者について「役員を含むものとし、政令で定める障害者……及び年齢六十五歳以上の者(役員を除く。)を除く」と定義し、その括弧書きの末尾で「以下この号及び第七百一条の四十三において同じ」としています。701条の43は免税点の条文ですから、この定義は免税点の100人判定にも及びます。したがって110人のうち65歳以上で役員でない人が12人いれば、判定に用いる数は98人となり、従業者割を課することができません。ただし床面積が1,000㎡を超えていれば資産割は課税されます。701条の43は資産割と従業者割を別々の条件で定めているためです。

Q. 免税点以下なら、何も提出しなくてよいですか?

A. 条文はそうは言っていません。701条の46第3項は、指定都市等の長は納付すべき事業所税額がない法人に対し、条例の定めるところにより第1項に準じて申告書を提出させることができるとしています。個人についても701条の47第3項に同じ規定があります。また701条の52第1項は、区域内で事業所等を新設または廃止した者に条例の定めるところによる申告義務を課しており、同条第2項は事業所税の納税義務者に事業所用家屋を貸し付けている者にも床面積等の申告義務を課しています。実際に何を提出する必要があるかは各自治体の条例によりますので、事業所のある市(東京23区なら東京都)の担当課に確認してください。

Q. 事業年度の途中で事業所を開設しました。初年度はどう計算しますか?

A. 701条の40第2項1号により、期末の事業所床面積に「新設の日の属する月の翌月から算定期間の末日の属する月までの月数」を算定期間の月数で除した割合を乗じます。新設した月は数えない点に注意してください。たとえば事業年度が4月1日から3月31日で9月15日に新設した場合、10月から3月までの6か月となり、期末床面積が2,400㎡なら課税標準は2,400×6÷12=1,200㎡、資産割は720,000円です。なお廃止の場合は同項2号により「算定期間の開始の日の属する月から廃止の日の属する月まで」を数えるため、廃止した月は含まれます。月数は701条の40第3項により暦に従って計算し、1月に満たない端数は1月とします(切り上げ)。免税点の判定自体は701条の43第3項により算定期間の末日の現況で行うため、月割前の2,400㎡で判定します。

Q. 申告と納付の期限はいつですか?

A. 法人は各事業年度終了の日から2月以内(701条の46第1項)、個人はその年の翌年3月15日まで(701条の47第1項)です。個人が年の途中で事業を廃止した場合は廃止の日から1月以内、廃止が納税義務者の死亡によるときは4月以内とされています。提出先は事業所等が所在する指定都市等の長で、様式は総務省令で定めるものです。申告納付ですので、納付書が届くのを待つ性質の税ではありません。期限後申告・修正申告は701条の49、不申告に関する過料は701条の49の2、過少申告加算金・不申告加算金は701条の61、重加算金は701条の62、納期限後の延滞金は701条の60に定めがあります。なお法人税の申告期限の延長が事業所税に及ぶかどうかについては、701条の46に延長規定を見つけられなかったため本記事では判断していません。

Q. 事業所税の使い道は決まっているのですか?

A. 決まっています。事業所税は目的税で、701条の73が使途を列挙しています。指定都市等は、納付された事業所税額に相当する額から徴収に要する費用として総務省令で定める額を控除した額を、道路・都市高速鉄道・駐車場その他の交通施設の整備事業、公園・緑地その他の公共空地の整備事業、水道・下水道・廃棄物処理施設その他の供給施設または処理施設の整備事業、河川その他の水路の整備事業、学校・図書館その他の教育文化施設の整備事業、病院・保育所その他の医療施設または社会福祉施設の整備事業、公害防止に関する事業、防災に関する事業、およびこれら以外で市街地開発事業その他の都市環境の整備改善に必要な事業で政令で定めるものに要する費用に充てなければならないとされています。

出典

本記事は一般的な情報提供であり、個別の税務相談ではありません。記載は2026年8月16日時点で確認した法令に基づいています。事業所税は各指定都市等の条例による部分があり、実際の処理にあたっては顧問税理士または事業所の所在する市(東京23区の場合は東京都)の担当課へご確認ください。

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