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加給年金とは — 2028年4月に配偶者と子で要件が分かれ、子は120月で付くようになる

結論から言うと、加給年金は「厚生年金の被保険者期間が240月以上ある人が老齢厚生年金を受け取るとき、生計を維持している65歳未満の配偶者や高校生までの子がいれば上乗せされる加算」です。家族手当の年金版だと思えば、おおよそ合っています。

ただしこの説明が正しいのは2028年3月31日までです。2028年4月1日から、配偶者と子は別々の制度に分かれます。配偶者は240月のまま据え置かれる一方、子については必要な被保険者期間が120月(10年)へ半分になり、単価も組み替わります。子は一人につき74,900円が269,600円へ上がり、「2人目までは224,700円」という区別は消えて全員一律になります。逆に配偶者は224,700円から202,200円へ下がります。

つまり加給年金の重心は、配偶者から子へ移ります。この記事では、いま何がもらえるのか、2028年4月に何がどう変わるのか、そしていつ止まるのかを、厚生年金保険法44条と46条の条文で確かめて整理します。金額はすべて法律が定める額(法定額)で、実際に振り込まれる額はこれに毎年度の改定率を掛けたものになります。

いまの加給年金 — 240月と65歳未満がふたつの鍵

加給年金額を定めているのは厚生年金保険法44条1項です。現行の条文はこう始まります。

老齢厚生年金(その年金額の計算の基礎となる被保険者期間の月数が二百四十以上であるものに限る。)の額は、受給権者がその権利を取得した当時(その権利を取得した当時、当該老齢厚生年金の額の計算の基礎となる被保険者期間の月数が二百四十未満であつたときは、第四十三条第二項又は第三項の規定により当該月数が二百四十以上となるに至つた当時。第三項において同じ。)その者によつて生計を維持していたその者の六十五歳未満の配偶者又は子(十八歳に達する日以後の最初の三月三十一日までの間にある子及び二十歳未満で第四十七条第二項に規定する障害等級(以下この条において単に「障害等級」という。)の一級若しくは二級に該当する障害の状態にある子に限る。)があるときは、第四十三条の規定にかかわらず、同条に定める額に加給年金額を加算した額とする。

長い一文ですが、要件は3つに分解できます。

要件中身
被保険者期間240月(20年)以上。配偶者にも子にも同じ240月がかかる
対象になる家族65歳未満の配偶者、または18歳到達年度の末日までの子(障害等級1級・2級なら20歳未満まで)
生計維持受給権を取得した当時、その人によって生計を維持していたこと
240月に足りないまま受給権を取っても、後から付くことがある

条文の括弧の中に「その権利を取得した当時、当該老齢厚生年金の額の計算の基礎となる被保険者期間の月数が二百四十未満であつたときは、第四十三条第二項又は第三項の規定により当該月数が二百四十以上となるに至つた当時」と書かれています。受給権を取った時点では240月に届いていなくても、その後も働いて240月に達すれば、そこで改めて生計維持を見るという意味です。43条2項は在職中の年金額の改定(在職定時改定)、3項は退職したときの改定を指します。「20年に足りなかったからもう関係ない」と早合点しないところです。

もうひとつ見落とされやすいのが、生計維持を判定する時点です。条文は「受給権者がその権利を取得した当時」と書いています。いま扶養しているかではなく、受給権が発生した時点で生計を維持していたかが入口になります。

なお、配偶者への加算は老齢厚生年金だけのものではありません。障害厚生年金の1級・2級にも、同じ224,700円を法定額とする配偶者の加給年金額が付きます(厚生年金保険法50条の2)。ただし条件が違い、50条の2には240月という被保険者期間の縛りがありません。生計を維持している65歳未満の配偶者がいれば、加入して間もなくても加算されます。障害厚生年金は額の計算でも被保険者期間が300月に満たないときは300月とみなす扱いになっており、加入期間の短さで不利にならないよう作られている点が老齢厚生年金と対照的です。詳しくは障害年金はいくら受け取れるか【令和8年度】で扱っています。

いくら加算されるのか

金額は44条2項が定めています。現行はこうです。

対象法定額(これに改定率を掛ける)
配偶者224,700円
子(1人目・2人目)それぞれ 224,700円
子(3人目以降)一人につき 74,900円

3人目から単価が3分の1になるのが現行の形です。条文は「同項に規定する子については一人につき七万四千九百円に改定率を乗じて得た額(そのうち二人までについては、それぞれ二十二万四千七百円に改定率を乗じて得た額とし……)」という書き方をしており、原則が74,900円で、2人までを例外的に引き上げるという組み立てになっています。

ここに書いた金額は「法定額」であって、振り込まれる額そのものではない

44条2項の額には、国民年金法27条の改定率が掛かります。改定率は年度ごとに変わるので、実際の年額はその年度の値で決まります。また端数についても条文が「その額に五十円未満の端数が生じたときは、これを切り捨て、五十円以上百円未満の端数が生じたときは、これを百円に切り上げる」と定めています。その年度に実際にいくら加算されるかは、日本年金機構の最新の案内で確認してください。本記事は改正で何がどう動くかを条文で示すことに絞っており、年度ごとの実額は扱いません。

2028年4月1日の組み替え — 配偶者と子が別々になる

ここがこの記事の本題です。2028年4月1日から、44条1項は配偶者と子を別々の条件で書き分けます。現行は「配偶者又は子」とひとまとめにして240月を掛けていましたが、改正後は配偶者は240月、子は120月と、必要な被保険者期間が分かれます。

老齢厚生年金の額は、受給権者がその権利を取得した当時(……)その者によつて生計を維持していたその者の六十五歳未満の配偶者があるとき(当該月数が二百四十以上であるときに限る。)又は受給権者がその権利を取得した当時(その権利を取得した当時、当該月数が百二十未満であつたときは、同条第二項又は第三項の規定により当該月数が百二十以上となるに至つた当時。第三項において同じ。)その者によつて生計を維持していたその者の子(……)があるとき(当該月数が百二十以上であるときに限る。)は、第四十三条の規定にかかわらず、同条に定める額に加給年金額を加算した額とする。

冒頭の「(その年金額の計算の基礎となる被保険者期間の月数が二百四十以上であるものに限る。)」という入口の絞りが消えていることに注目してください。現行はこの括弧で、そもそも240月未満の老齢厚生年金を条文の対象から外していました。改正後はそれをやめ、配偶者について「二百四十以上であるときに限る」、子について「百二十以上であるときに限る」と、対象ごとに個別の条件として書き直しています。

金額も入れ替わります。新旧を並べます。

項目2028年3月31日まで2028年4月1日から
配偶者に必要な被保険者期間240月240月(変わらず)
子に必要な被保険者期間240月120月
配偶者の法定額224,700円202,200円
子の法定額(1人目・2人目)それぞれ 224,700円一律 269,600円
子の法定額(3人目以降)一人につき 74,900円一律 269,600円
国内に住所のない子条文に定めなし支給停止(留学等は除く)

読み方は3つあります。

ひとつ目。子は「20年働いた人」から「10年働いた人」へ広がります。240月から120月への半減は、加入期間の短い人にも子の加算を届かせる変更です。転職や離職で厚生年金の期間が細切れになった人、就職が遅かった人ほど効きます。

ふたつ目。子の単価は一本化され、3人目以降がいちばん大きく動きます。74,900円から269,600円へ、約3.6倍です。1人目・2人目も224,700円から269,600円へ上がります。現行にあった「2人までは手厚く、3人目からは3分の1」という段差は、改正後の条文には出てきません。

みっつ目。配偶者は下がります。224,700円から202,200円へ、法定額で22,500円の減額です。加給年金の総額を増やす改正ではなく、配偶者から子へ重心を移す改正だと読むのが実態に近いはずです。

2028年3月31日まで 配偶者 224,700円 子1・2人目 224,700円 74,900円 ← 3人目以降 必要な被保険者期間は 配偶者も子も 240月 2028年4月1日から 配偶者 202,200円 下がる 子 一律 269,600円 3人目以降も同額(約3.6倍) 配偶者 240月/ 子は 120月へ半減
加給年金の法定額の組み替え。金額はいずれも厚生年金保険法44条2項の法定額で、実際の加算額はこれに年度ごとの改定率を掛けた額になる。

新しく入る「国内に住所がない子は対象外」

改正後の44条1項には、現行にはなかったただし書が付きます。

ただし、当該子が日本国内に住所を有しないとき(当該子が外国において留学をする学生その他の日本国内に住所を有しないが渡航目的その他の事情を考慮して日本国内に生活の基礎があると認められる者として厚生労働省令で定める者であるときを除く。)は、その間、当該子について加算する額に相当する部分の支給を停止する。

子が日本国内に住所を持たない期間は、その子の分だけ加算が止まります。全部が止まるのではなく「当該子について加算する額に相当する部分」だけです。

ただし留学は除かれます。括弧の中で、外国に留学している学生や、渡航目的その他の事情から日本国内に生活の基礎があると認められる人は対象外だと書かれています。具体的にどこまでが「生活の基礎がある」と認められるかは厚生労働省令に委ねられており、その省令はこれから定まります。留学以外のケース(親の海外赴任に同行しているなど)がどう扱われるかは、省令が出るまで確定しません。

なお、この「国内に住所があること」を要件に加える書き方は、児童手当や健康保険の被扶養者ですでに使われているものと同じ発想です。加給年金にも同じ線が引かれた、と読むのが素直です。

同じ子に二重で加算しないための調整

子への加算は、厚生年金だけの制度ではありません。国民年金の障害基礎年金にも子の加算があり(国民年金法33条の2)、遺族厚生年金にも子への加算があります。同じ子について、複数の年金から同時に加算が出てしまうことを防ぐ規定が、現行にも改正後にも置かれています。

現行は44条1項のただし書がその役割を担っています。

ただし、国民年金法第三十三条の二第一項の規定により加算が行われている子があるとき(当該子について加算する額に相当する部分の全額につき支給を停止されているときを除く。)は、その間、当該子について加算する額に相当する部分の支給を停止する。

障害基礎年金の子の加算が出ているなら、厚生年金側の子の加算は止める、という調整です。括弧の中に「全額につき支給を停止されているときを除く」とあるのが要点で、相手側の加算が名目上あっても全額止まっているなら、こちらは止めません。どちらからも出ない状態を作らないための書き方です。

2028年4月からは、この調整が46条に新しい7項・8項として独立して置かれます。条文の項数を数えると、46条は現行の6項から8項へ増えます。

第四十四条第一項の規定により子についてその額が加算された老齢厚生年金については、政令で定めるところにより、受給権者の配偶者その他政令で定める者(以下この条において「配偶者等」という。)が次の各号のいずれにも該当するときは、その該当する期間、同項の規定により当該子について加算する額(配偶者等に支給する第一号に規定する加算の額に限る。)に相当する部分の支給を停止する。

新しい7項が見ているのは「配偶者等」、つまり受給権者の配偶者や政令で定める人です。その配偶者等が①同じ子について加算を受けていて、かつ②その子を主として生計維持している、という両方に当たるときに、こちら側の子の加算を止めます。8項は、この「主として生計を維持している」の認定方法を政令に委ねています。

なぜ調整の相手が「配偶者」に変わるのか

子の加算に必要な期間が240月から120月へ下がると、夫婦の両方が子の加算の要件を満たす場面が増えます。現行は240月という高いハードルがあったので、夫婦がそろって該当することは相対的に少なく、調整も障害基礎年金との間で足りていました。要件を緩める以上、夫婦間の二重取りをどう捌くかを書かなければならなくなった——新設された7項・8項は、120月への緩和とセットの規定だと読めます。

いつ止まるか — 条文が挙げる10個の事由

加給年金は、いったん付けば一生続くものではありません。44条4項が、加算をやめる事由を10個挙げています(現行・改正後とも10個で、数は変わりません)。該当した月の翌月から年金額を改定する、という書き方です。

事由対象
死亡したとき配偶者・子
受給権者による生計維持の状態がやんだとき配偶者・子
離婚または婚姻の取消しをしたとき配偶者
65歳に達したとき配偶者
養子縁組によって受給権者の配偶者以外の者の養子となったとき
養子縁組による子が離縁をしたとき
婚姻をしたとき
18歳に達した日以後の最初の3月31日が終了したとき(障害等級1級・2級の子を除く)
障害等級1級・2級に該当する状態がやんだとき
20歳に達したとき

実務で圧倒的に多いのは四号(配偶者が65歳になった)八号(子が高校を出る年度末を過ぎた)です。どちらもあらかじめ日付が分かっているので、家計の見通しを立てるときは織り込んでおけます。配偶者が65歳になれば、その人自身の老齢基礎年金が始まるため、加給年金はそこで役割を終える——という設計です。

2028年4月から、三号と五号の括弧が変わる

改正後の三号は「離婚又は婚姻(届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にある場合を含む。以下この章において同じ。)の取消しをしたとき」となり、五号にも養子縁組について「届出をしていないが、事実上養子縁組関係と同様の事情にある者を含む」が入ります。事実婚・事実上の養子縁組を条文に取り込む変更です。届出の有無で結論が変わらなくなる、という点で影響のある人がいます。

なお、加給年金は在職老齢年金で年金が止まっているときの扱いも気になるところです。46条は支給停止の計算にあたって、老齢厚生年金の額から「第四十四条第一項に規定する加給年金額」を除くと定めています。加給年金額は、支給停止額を計算する土台には入りません。ただし本体部分が全額停止になれば加給年金も出ません。在職中の年金の止まり方そのものは、在職老齢年金の計算機で確かめられます。

年金の受給見込みを試算する

よくある質問

Q. 加給年金は自分で請求しないともらえませんか?

A. 老齢厚生年金の請求とあわせて、生計維持している配偶者や子がいることを届け出る必要があります。厚生年金保険法44条5項は、生計を維持していたことの認定に関し必要な事項は政令で定めると規定しており、実際の手続では生計維持を確認できる書類の提出を求められます。年金の請求書に配偶者や子を記載していれば、そこで一緒に判定されるのが通常の流れです。受給権を取った当時に240月に届いていなくても、その後の在職定時改定や退職改定で240月に達したときに改めて判定される仕組みがあるため、後から要件を満たした場合は年金事務所に確認してください。

Q. 配偶者が自分の厚生年金を受け取っていても、加給年金はもらえますか?

A. 条文が定める加算の要件は、被保険者期間が240月以上あることと、受給権を取得した当時に65歳未満の配偶者を生計維持していたことです。そのうえで、配偶者自身が一定の年金を受けられる場合には支給を停止する調整が置かれています。加給年金は配偶者が65歳になるまでのつなぎとして設計されているため、配偶者側に十分な年金があるときには重ねて出さないという考え方です。具体的にどの年金でどこまで止まるかは政令で定められているので、個別のケースは年金事務所で確認してください。厚生年金保険法44条4項四号により、配偶者が65歳に達した月の翌月からは、いずれにせよ加算は終わります。

Q. 2028年4月の改正で、いま加給年金をもらっている人の額は下がりますか?

A. 配偶者の法定額は224,700円から202,200円へ下がり、子の法定額は一律269,600円へ上がります。すでに受給している人にどう適用されるかは、改正法の附則にある経過措置で決まります。改正法である令和7年法律第74号は施行日が複数に分かれており、加給年金に関する部分は2028年4月1日施行です。施行日をまたぐ既裁定者の扱いを確定させるには附則と関係政令を確認する必要があるため、この記事では新旧の条文が定める額そのものを示すにとどめます。実際にご自身の年金額がどうなるかは、施行が近づいてからの日本年金機構の案内と年金事務所での確認によってください。

Q. 子が大学生になったら加給年金は続きますか?

A. 続きません。厚生年金保険法44条4項八号が、18歳に達した日以後の最初の3月31日が終了したときに加算をやめると定めているため、高校を卒業する年度の末日で終わるのが原則です。例外は障害等級の1級または2級に該当する障害の状態にある子で、この場合は20歳に達するまで続きます(同項十号)。大学に進学したかどうかは条文の要件に入っていないため、進学しても在学中であっても、18歳到達年度の末日を過ぎれば加算は終わります。学費がかかる時期と加算が切れる時期が重なる点は、家計の見通しを立てるうえで意識しておくところです。

Q. 子が海外に住んでいると、加給年金はどうなりますか?

A. 2028年3月31日までの条文には子の住所に関する定めがないため、国内に住所があるかどうかで加算の可否は分かれません。2028年4月1日からは44条1項にただし書が入り、子が日本国内に住所を有しないときは、その子について加算する額に相当する部分の支給が停止されます。ただし外国に留学している学生は除かれ、そのほか渡航目的その他の事情を考慮して日本国内に生活の基礎があると認められる者も、厚生労働省令で定めるところにより除かれます。どこまでが生活の基礎があると認められるかはその省令に委ねられており、まだ定まっていません。

Q. 夫婦がふたりとも加給年金の要件を満たしたら、両方もらえますか?

A. 子については、2028年4月1日から新設される厚生年金保険法46条7項により調整されます。受給権者の配偶者その他政令で定める者が、同じ子について加算を受けていて、かつその子を主として生計を維持しているときは、その期間、こちら側の子の加算に相当する部分の支給が停止されます。主として生計を維持していることの認定に必要な事項は同条8項で政令に委ねられています。子の加算に必要な被保険者期間が240月から120月へ下がることで夫婦の双方が要件を満たす場面が増えるため、それに合わせて置かれた規定だと読めます。

出典

本記事は一般的な情報提供を目的としたものです。金額は厚生年金保険法が定める法定額であり、実際に加算される額は年度ごとの改定率によって変わります。個別の年金額・請求手続については、日本年金機構(年金事務所)および社会保険労務士にご確認ください。

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