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仮払金と仮受金の違い|仮払消費税・仮受消費税とは別物、控除対象外消費税は60ヶ月で落とす

結論から言うと、「仮払金・仮受金」と「仮払消費税等・仮受消費税等」は、名前が似ているだけで役割がまったく違う科目です。前者は内容や金額が未確定のあいだだけ置いておく一時的な箱で、中身が決まったら本来の科目に振り替えて消えます。後者は税抜経理を採用していれば毎期かならず出てくる恒久的な科目で、消費税の申告と紐づいて期末に精算されます。

実務で問題になりやすいのは後者のほうです。仮払消費税等がまるごと戻ってくるとは限らないからです。控除しきれなかった部分は「資産に係る控除対象外消費税額等」と呼ばれ、金額と状況によってはその期に全額落とせず、60で除して月数を乗じた額ずつ、しかも初年度は2分の1しか落とせません(法人税法施行令139条の4第3項)。60か月と言いながら、実際には6事業年度かかります。

この記事では、4つの科目の切り分けを先に整理したうえで、控除対象外消費税額等が全額落とせる場合とそうでない場合を条文で確認し、実数で6年かかる様子を示します。あわせて、法人は損金経理が要件なのに個人事業は必要経費算入が強制という、条文を並べないと見えない非対称も扱います。

「仮」で始まる4つの科目は、2種類に分かれる

いずれも頭に「仮」が付くので同じ仲間に見えますが、消える理由がまったく違います。仮払金・仮受金は「中身が分かったら消える」科目、仮払消費税等・仮受消費税等は「消費税の申告で相殺されて消える」科目です。前者が決算書に残っているのは基本的に望ましくない状態ですが、後者は期中に残高があって当たり前です。

科目貸借何が未確定かいつ・どうやって消えるか
仮払金資産支出の内容・相手・金額が未確定内容が判明した時点で本来の費用・資産科目へ振替
仮受金負債入金の内容・相手が未確定相手や趣旨が判明した時点で売掛金の入金・前受金等へ振替
仮払消費税等資産未確定ではない(仕組み上の科目期末に仮受消費税等と相殺し、差額を未払(未収)消費税等へ
仮受消費税等負債未確定ではない(仕組み上の科目同上
「仮」の意味が違う仮払金・仮受金の「仮」は内容が確定していないという意味です。仮払消費税等・仮受消費税等の「仮」はまだ国に納めていない・まだ精算していないという意味で、内容は最初から確定しています。この2つを同じ「仮勘定だから決算までに消すもの」として扱うと、税抜経理の会社で毎期出る正常な残高まで異常として追いかけることになります。

仮払金・仮受金|内容が未確定のときの一時置き場

仮払金は、たとえば従業員に出張費を概算で渡したものの、精算書がまだ上がってきていない場面で使います。3万円を渡した時点では交通費なのか宿泊費なのか会議費なのかが分かれていないため、いったん仮払金3万円として資産に計上し、精算書が出てきたときに旅費交通費・宿泊費などへ振り替えます。差額があれば現金で戻すか追加で払います。

仮受金はその裏返しで、通帳に入金があったが誰からの何の入金か分からない場面で使います。振込名義が略称や個人名で、売掛金の入金なのか、前受金なのか、そもそも誤振込なのかが判断できないときに、いったん仮受金として負債に置きます。

どちらも「分からない」を可視化するための科目であって、放置するための科目ではありません。決算日をまたいで残高が残ると、貸借対照表を見た人には中身が説明できない資産・負債として映ります。特に仮払金は、精算されないまま金額が積み上がると、実質的に誰かへの貸付ではないかという見方をされる余地が出ます。実務では、決算までに残高を精算しきることを前提に運用します。

仮払消費税等・仮受消費税等|税抜経理なら毎期出る

ここからが本題です。消費税の経理には、税額を本体価格と分けて記録する方法と、税込みの金額のまま記録する方法があります。分けて記録する場合、支払った消費税を仮払消費税等、預かった消費税を仮受消費税等として積み上げ、期末に両者を相殺して、納める額を未払消費税等(還付なら未収消費税等)に振り替えます。

この「相殺すれば終わり」が崩れるのが、支払った消費税の全額を仕入税額控除できないときです。消費税法30条2項は、その課税期間の課税売上高が5億円を超えるとき、または課税売上割合が100分の95に満たないときは、仕入れ等の税額の合計額をそのまま引くのではなく、個別対応方式または一括比例配分方式で計算した金額とする、と定めています。つまり全額は引けません。

ここで引けなかった分が、以下で扱う控除対象外消費税額等の正体です。したがってその金額の大きさは、どちらの方式を選んだかで変わります。同じ課税仕入れでも、個別対応方式なら課税売上のためだけの支出は全額引ける一方、一括比例配分方式ではその支出まで課税売上割合で按分されるためです。割合そのものの計算式(分母に何が入り、何が入らないか)と2つの方式の選び方は課税売上割合と個別対応方式・一括比例配分方式で扱っています。

引けなかった部分は、仮払消費税等として資産に立てたのに戻ってこない金額です。この金額のうち資産に係るものを、法人税法施行令139条の4第5項は「資産に係る控除対象外消費税額等」と定義しています。ここで見落としやすいのが定義の条件です。同項は、消費税額を「これらに係る取引の対価と区分する経理をしたときにおける」金額と書いており、区分する経理=税抜経理をしていることが前提になっています。

税込経理を採っていれば、この論点は出てこない控除対象外消費税額等は、税抜経理をしている場合の概念です。税込経理なら消費税額は最初から資産の取得価額や費用の額に含まれており、切り離して繰り延べる対象そのものが生じません。「うちは60ヶ月の話をしたことがない」という会社は、そもそも税込経理という可能性があります。どちらの経理方法を採っているかを先に確認してください。

控除対象外消費税額等|全額落とせる場合と落とせない場合

控除対象外消費税額等が出たとしても、いつも繰り延べになるわけではありません。法人税法施行令139条の4は、第1項と第2項でその事業年度に全額を損金にできる場合を先に並べ、第3項でそこから外れたものを繰延べにする、という順序で書かれています。

第1項は、課税売上割合に準ずる割合として財務省令で定めるところにより計算した割合が100分の80以上である事業年度に限り、生じた控除対象外消費税額等の合計額を損金経理すれば全額損金に算入する、としています。第2項はそれ以外の事業年度についての規定で、棚卸資産に係るもの特定課税仕入れに係るもの20万円未満であるものの3つを挙げ、これに当たれば全額損金に算入するとしています。

税抜経理(区分する経理)をしているか いいえ → そもそも生じない 課税売上割合等が80%以上か(1項) はい → その事業年度に全額 棚卸資産・特定課税仕入れ・20万円未満か はい → その事業年度に全額(2項) 繰延消費税額等(3項・4項) 60で除し月数を乗じる/初年度は2分の1
上から順に当てはめる。ひとつでも右へ抜ければ、その事業年度に全額を落とせる。
状況根拠その事業年度の扱い
税込経理を採用している令139条の4第5項の定義控除対象外消費税額等が生じない
課税売上割合等が80%以上令139条の4第1項全額を損金算入(損金経理が要件)
80%未満でも棚卸資産に係るもの令139条の4第2項1号全額を損金算入
80%未満でも特定課税仕入れに係るもの令139条の4第2項2号全額を損金算入
80%未満でも20万円未満令139条の4第2項3号全額を損金算入
上のいずれにも当たらない令139条の4第3項繰延消費税額等として60ヶ月で配分
20万円ちょうどは「20万円未満」に当たらない条文の文言は「二十万円未満である場合」です。控除対象外消費税額等が199,999円なら全額をその事業年度に落とせますが、200,000円ちょうどだと繰延べになり、6事業年度かけて配分することになります。1円の差で処理がまるごと変わる境界なので、判定は端数まで見てください。なお第2項は「資産に係る控除対象外消費税額等が次に掲げる場合に該当する場合」と書いており、判定は資産ごとに行う形になっています。

繰延消費税額等は60ヶ月・初年度は半分|実数で6年

第1項・第2項のどれにも当たらなかった控除対象外消費税額等は、第3項で「繰延消費税額等」と名付けられます。損金に算入できる額は、その事業年度に損金経理した金額のうち、繰延消費税額等を60で除し、これに事業年度の月数を乗じて計算した金額の2分の1に相当する金額に達するまでです。翌事業年度からは第4項が受け持ち、2分の1が外れて60で除し月数を乗じた金額までになります。月数は暦に従って計算し、1か月に満たない端数は1か月に切り上げます(同条11項)。

実数で見ます。課税売上割合が60%(80%未満)の3月決算法人が、税抜5,000,000円・消費税500,000円の資産を取得したとします。一括比例配分方式で控除できるのは 500,000円 × 60% = 300,000円、控除できない 200,000円 が資産に係る控除対象外消費税額等です。棚卸資産でも特定課税仕入れでもなく、20万円未満にも当たらないため、繰延消費税額等になります。

1年目に落とせる上限は 200,000 ÷ 60 × 12 × 1/2 = 20,000円。2年目以降は 200,000 ÷ 60 × 12 = 40,000円です。

事業年度計算損金算入の上限累計残高
1年目200,000÷60×12×1/220,000円20,000円180,000円
2年目200,000÷60×1240,000円60,000円140,000円
3年目同上40,000円100,000円100,000円
4年目同上40,000円140,000円60,000円
5年目同上40,000円180,000円20,000円
6年目残高が上限を下回る20,000円200,000円0円
「60ヶ月」でも終わるのは6事業年度目初年度が2分の1に抑えられる結果、12か月決算の会社では5年ではなく6事業年度かけて配分することになります。減価償却の初年度が月割りで小さくなるのと似た形ですが、こちらは月割りではなく一律に2分の1である点が違います。期首に取得しても期末に取得しても、初年度の上限は変わりません。

なお、法人側の第3項・第4項はいずれも「損金経理をした金額のうち……に達するまでの金額」という書き方です。上限を定めているだけで、その額を必ず落とさなければならないという規定ではありません。損金経理をしなければ、その事業年度は損金に算入されません。

消費税額と端数処理を計算する(税抜・税込の変換つき)

法人は任意・個人は強制|条文の非対称

個人事業にも同じ制度があり、所得税法施行令182条の2が受け持っています。80%以上なら全額、80%未満でも棚卸資産・特定課税仕入れ・20万円未満なら全額、それ以外は60で除して月数を乗じ初年度は2分の1、という骨格は法人とまったく同じです。ところが文末が違います

法人税法施行令139条の4第1項は「その内国法人が当該事業年度において損金経理をしたときは、当該損金経理をした金額は……損金の額に算入する」と書きます。これに対し所得税法施行令182条の2第1項は「その生じた資産に係る控除対象外消費税額等の合計額については、その年の年分の……金額の計算上、必要経費に算入する」とだけ書き、損金経理に相当する要件を置いていません

繰延べの部分も同じ形です。法人の第3項は「損金経理をした金額のうち、……の2分の1に相当する金額に達するまでの金額とする」=上限の規定ですが、個人の第3項は「必要経費に算入する金額は、……の2分の1に相当する金額とする」=金額そのものの規定です。

比較法人(法令139条の4)個人事業(所令182条の2)
全額算入の条件1項・2項(80%以上/棚卸資産・特定課税仕入れ・20万円未満)1項・2項(同じ)
経理要件損金経理をしたときに限る要件なし
繰延分の書き方「達するまでの金額」=上限「相当する金額」=確定額
初年度2分の1(3項)2分の1(3項)
翌年以降の打切り4項(引継ぎ等の規定を併置)4項に残額を超える場合は残額と明記
月数の端数1か月未満は1か月(11項)1か月未満は1か月(7項)

実務上の意味は小さくありません。法人は帳簿に費用として計上して初めて落ちるので、計上を忘れればその期は落ちないのに対し、個人事業は条文が必要経費に算入すると言い切っているため、金額の計算そのものが決まっている形になります。同じ制度を法人と個人で並行して扱うとき、法人側の感覚のまま個人の申告書を作ると噛み合わなくなる箇所です。

よくある質問

Q. 仮払金と前払金(前渡金)はどう違いますか?

A. 未確定なものの中身が違います。仮払金は支出の内容や金額そのものが未確定で、精算書や領収書が出てきて初めて何の費用か決まります。前払金は何に対する支払いかは決まっていて、相手の履行がまだ済んでいない状態です。商品の内金を先に払ったのであれば内容は確定しているので前払金であり、仮払金ではありません。判断に迷ったら「請求の対象が特定できているか」を見ると切り分けやすくなります。

Q. 仮受金が決算日をまたいで残ってしまいました。どうすればよいですか?

A. まず入金の相手と趣旨の特定を優先します。振込名義や金額から売掛金の消込先が判明すれば売掛金の入金として振り替え、取引の前受けであれば前受金へ振り替えます。特定できないまま残る場合は、貸借対照表に内容不明の負債として残ることになるため、通帳の摘要・取引先への照会記録など、調査した経緯を残しておくのが一般的な運用です。個別の事案での表示や税務上の取扱いは、顧問税理士にご確認ください。

Q. 課税売上割合が95%以上なら、控除対象外消費税額等は生じませんか?

A. 課税売上高が5億円以下であることが前提です。消費税法30条2項は「課税期間における課税売上高が5億円を超えるとき、又は当該課税期間における課税売上割合が100分の95に満たないとき」と、2つを「又は」でつないでいます。したがって課税売上割合が100%でも、課税売上高が5億円を超えていれば全額控除にはならず、控除しきれない部分が生じ得ます。売上規模が伸びた期に初めてこの論点が出てくるのは、この条文の作りによるものです。

Q. 繰延消費税額等の判定に使う80%は、課税売上割合そのものですか?

A. 条文は課税売上割合そのものではなく、「課税売上割合に準ずる割合として財務省令で定めるところにより計算した割合」と書いています(法人税法施行令139条の4第1項、所得税法施行令182条の2第1項)。一方、仕入税額控除を全額引けるかどうかの95%は消費税法30条2項の課税売上割合です。80%と95%は別の条文の別の割合なので、同じ数字を2か所に流用しないよう注意してください。

Q. 控除対象外消費税額等のうち、資産に係らないものはどうなりますか?

A. 法人税法施行令139条の4が対象にしているのは、条名のとおり「資産に係る」控除対象外消費税額等です。経費に係るものはこの繰延べの仕組みの対象外で、その事業年度の損金として扱われます。繰延べが必要かどうかを検討する前に、まず控除できなかった消費税額が資産に係るものか経費に係るものかを分ける必要があります。

出典

この記事は一般的な情報提供であり、個別の事案についての助言ではありません。課税売上割合の計算や個別対応方式・一括比例配分方式の選択、控除対象外消費税額等が資産に係るものか経費に係るものかの区分は、取引の内容によって判断が分かれることがあります。申告書の作成にあたっては、顧問税理士にご確認ください。

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