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未払費用と未払金と買掛金の違い|仕訳と一年基準、長期未払費用が存在しない理由

結論から言うと、3つを分けているのは「まだ払っていない」かどうかではなく、「何に対する未払いか」です。商品の仕入れのような営業上の取引なら買掛金、家賃や利息のように一定の契約で継続して受けている役務の経過分なら未払費用、それ以外の確定した債務なら未払金になります。財務諸表等規則49条1項は、この3つを二号・五号・六号という別々の号で掲記するよう定めています。

そのうえで、解説されることが少ないのに実務で効く一点があります。3つのうち未払費用だけが一年基準(ワン・イヤー・ルール)の外にいます。未払金は一年内に払うかどうかで流動負債か固定負債かが変わりますが、48条は「未払費用及び前受収益は、流動負債に属するものとする」と条件を付けずに定めています。その結果、支払期日が2年半先でも未払費用は流動負債に並びます。

以下、条文で分かれ方を確認したうえで、損金になる時期を決める債務確定基準(法人税法22条3項2号)まで、仕訳と金額つきで整理します。

3つの科目はどこで分かれるか

判定は「営業上の取引か」「継続的な役務の経過分か」の2つで、ほぼ決まります。

まだ支払っていない債務がある 商品・製品の仕入れなど、営業上の取引か? はい 買掛金(47条2号・49条1項2号) いいえ 一定の契約で継続して受けている役務の うち、すでに提供を受けた部分か? はい 未払費用(48条・49条1項6号) 期日を問わず流動負債 いいえ 未払金(49条1項5号) 一年内に支払うと認められるか? はい 流動負債(47条5号・6号) いいえ 固定負債(51条・52条1項10号「その他」)
財務諸表等規則の条文に沿って整理した判定の流れ。未払費用だけが最後の一年基準の判定を通らない。

表にすると、次のようになります。

買掛金未払費用未払金
対象商品・材料の仕入れなど営業上の取引一定の契約による継続的な役務の経過分それ以外の確定した債務
典型例商品仕入、外注加工費家賃、借入金利息、水道光熱費、給与の締後分固定資産の購入代金、広告制作費、保険料以外の単発の役務
掲記の根拠49条1項2号49条1項6号49条1項5号
流動負債になる根拠47条2号48条(無条件)47条5号・6号
一年基準実質かからない(営業循環基準が先に働く)かからない(48条が無条件)かかる
「長期〜」の科目存在しない52条1項10号「その他」で処理

買掛金は法令上「営業上の未払金」

「買掛金と未払金はどう違うのか」は最もよく検索される論点ですが、答えは条文そのものに書かれています。財務諸表等規則47条2号は、買掛金を次のように定義しています。

財務諸表等規則47条2号(流動負債の範囲)

二 買掛金(通常の取引に基づいて発生した営業上の未払金をいう。以下同じ。)

つまり買掛金は、法令上は未払金の一種です。別々のものが2つあるのではなく、未払金という枠のうち「営業上のもの」を切り出した名前が買掛金です。「違い」を探すより、営業上かどうかで切れていると捉えるほうが境界で迷いません。

「通常の取引」は、その会社の事業目的のために反復して行われる取引を指します。小売業が商品を仕入れれば買掛金ですが、同じ小売業が営業車を買えば未払金です。逆に自動車販売業が販売用の車を仕入れたなら買掛金になります。同じ「車の購入」でも、その会社にとって営業上かどうかで科目が変わります。

営業循環基準が先に働く

買掛金は、支払いが一年を超えても流動負債にとどまります。営業サイクルの中で発生した債務は期間の長短を問わず流動負債とする考え方が先に適用されるためです。財務諸表等規則47条が、一号から五号で営業上の項目を個別に挙げたうえで、六号に「その他の負債で一年内に支払又は返済されると認められるもの」を置いている構造がこれを表しています。

未払費用だけが一年基準の外にいる

ここがこの記事の核心です。財務諸表等規則は、未払費用について一年内かどうかを一切問うていません。

財務諸表等規則48条

第四十八条 未払費用及び前受収益は、流動負債に属するものとする。

条文はこれだけで、「一年内に支払われるもの」という限定がありません。資産側と比べると、この書き分けが意図的であることがはっきりします。

財務諸表等規則16条(資産側)

第十六条 前払費用で一年内に費用となるべきもの及び未収収益は、流動資産に属するものとする。

資産側の16条には「で一年内に費用となるべきもの」という限定が付いています。だからこそ、そこから漏れた前払費用の受け皿として長期前払費用(32条1項11号)が用意されています。負債側の48条には限定が無く、受け皿も用意されていません。財務諸表等規則52条1項が定める固定負債の区分表示を並べると、次のとおりです。

科目
社債
長期借入金
関係会社長期借入金
リース負債
長期未払法人税等
繰延税金負債
引当金
資産除去債務
公共施設等運営権に係る負債
その他

「長期未払法人税等」はありますが、「長期未払費用」はありません。規則の全文を通しても、この語は一度も出てきません。資産側に長期前払費用が明示されているのと対照的で、未払費用が固定負債に行く経路は、そもそも規則上に用意されていないということになります。

支払いが2年半先でも流動負債になる例

これは理屈だけの話ではなく、金額の付く場面があります。利息を満期に一括して後払いする借入れがその典型です。

前提

12月決算の法人が、2026年7月1日に1,000万円を借り入れた。期間3年(満期2029年6月30日)、年利2.4%、利息は元本とともに満期に一括後払い

2026年12月31日の決算では、7月から12月までの6か月分の利息が時の経過によって発生しています。月割で計算すると次のとおりです。

1,000万円 × 2.4% × 6か月 ÷ 12か月 = 120,000円

この12万円はまだ支払っていませんが、資金を借りるという役務をすでに6か月分受けているので未払費用です。そして実際に支払うのは2029年6月30日、決算日から912日先(約2.5年後)です。それでも48条により、この12万円は流動負債として掲記されます。

同じ「2年半先の支払い」でも未払金なら固定負債

仮にこれが利息ではなく、設備を購入して代金1,000万円を2029年6月に一括払いする約束だったとします。この場合は未払金なので47条6号の「一年内に支払又は返済されると認められるもの」に当たらず、51条により固定負債(52条1項10号「その他」)になります。支払期日は同じでも、未払費用か未払金かで貸借対照表上の位置が変わります。

流動比率や運転資本を見る側からすると、この扱いは流動負債を実質より厚く見せる方向に働きます。数字を読むときは、未払費用に長期の支払いが混ざっている可能性を意識しておくと安全です。

税務:損金になるのは債務が確定したものだけ

貸借対照表の区分とは別に、税務では「その未払いが当期の損金になるか」が問題になります。基準は法人税法22条3項2号です。

法人税法22条3項2号

二 前号に掲げるもののほか、当該事業年度の販売費、一般管理費その他の費用(償却費以外の費用で当該事業年度終了の日までに債務の確定しないものを除く。)の額

この「債務の確定」の中身を定めているのが、法人税基本通達2-2-12です。3つの要件をすべて満たす必要があります。

法人税基本通達2-2-12(債務の確定の判定)

(1) 当該事業年度終了の日までに当該費用に係る債務が成立していること。

(2) 当該事業年度終了の日までに当該債務に基づいて具体的な給付をすべき原因となる事実が発生していること。

(3) 当該事業年度終了の日までにその金額を合理的に算定することができるものであること。

未払費用はこの3要件を満たしやすい科目です。契約があるので(1)が成立し、役務をすでに受けているので(2)が発生し、契約で単価が決まっているので(3)も算定できます。先ほどの借入金利息12万円が当期の損金になるのは、3要件を通っているからです。

落としやすいのは(2)です。来期に行う予定の修繕について見積書を取って金額が分かっていても、まだ工事を受けていない以上「具体的な給付をすべき原因となる事実」が発生していないので、当期に未払計上しても損金にはなりません。金額が分かっていることと、債務が確定していることは別です。

法人税の簡易計算で、損金額を変えたときの税額を試算する

「短期未払費用」の特例が無い理由

前払費用には、法人税基本通達2-2-14(短期の前払費用)という特例があります。支払った日から1年以内に提供を受ける役務なら、継続適用を条件に支払時の損金にできる、という取扱いです。

ではその裏返しの「短期未払費用」はあるのかというと、ありません。必要がないからです。

前払費用に特例が要るのは、原則では損金にならないからです。まだ役務の提供を受けていない前払分は当期の費用ではなく、原則どおりだと落とせません。そこを条件付きで緩めたのが2-2-14です。これに対し未払費用はすでに役務の提供を受けた部分なので、債務確定基準(22条3項2号・通達2-2-12)を素直に通り、原則のまま当期の損金になります。緩める必要がないので特例が置かれていません。

同じ非対称が会計側にも現れている

この「未払側は原則どおりで通る」という構造は、財務諸表等規則の書き分けと同じ形をしています。前払費用は16条で一年内かどうかを問われ、長期前払費用という別科目が要ります。未払費用は48条で無条件に流動負債とされ、別科目が要りません。税務でも会計でも、扱いが軽いのは「すでに受けた」側です。前払側の詳細は前払費用と短期前払費用の記事で扱っています。

金額が確定していなくても未払金にできる例外

債務確定基準の3要件のうち(3)は「金額を合理的に算定することができる」ですが、金額が確定していない段階でも未払計上が認められる場面が通達に明示されています。損害賠償金です。

法人税基本通達2-2-13(損害賠償金・要旨)

業務の遂行に関連して他の者に与えた損害について賠償をする場合、事業年度終了の日までに賠償すべき額が確定していないときであっても、同日までにその額として相手方に申し出た金額(保険金等で補塡されることが明らかな部分を除く)を当該事業年度の未払金に計上したときは、これを認める。

通達が「未払費用」ではなく「未払金」と書いている点に注意してください。損害賠償は継続的な役務の対価ではないので未払費用ではありません。科目の選択は、金額が確定しているかどうかではなく、あくまで「何に対する未払いか」で決まります。なお、この取扱いは相手方への申出が前提で、社内で見積もっただけの金額は対象になりません。

消費税はいつ控除できるか

消費税の仕入税額控除の時期は、支払った日ではなく、課税仕入れを行った日です。消費税法基本通達11-3-1が定めています。

消費税法基本通達11-3-1(課税仕入れを行った日の意義・要旨)

「課税仕入れを行った日」とは、課税仕入れに該当することとされる資産の譲受け若しくは借受けをした日又は役務の提供を受けた日をいう。

したがって、未払費用・未払金・買掛金のいずれで計上した課税仕入れでも、役務の提供を受けた日(資産なら引渡しを受けた日)の属する課税期間で控除します。期末に未払いであることは控除の時期に影響しません。

前払側は対照的です。前払費用は役務の提供を受けていないので原則として控除できず、短期前払費用の適用を受けている場合に限り、消費税法基本通達11-3-8により支出した日の課税期間で控除できます。未払側は原則のままで通り、前払側は特例に乗って初めて早まる、という形はここでも同じです。

借入金利息は課税仕入れではない

この記事で例に使った借入金利息は、消費税では非課税(利子を対価とする貸付金)なので、そもそも仕入税額控除の対象になりません。未払費用のすべてが課税仕入れというわけではないので、科目ではなく取引の内容で判断します。

仕訳例

3月決算の法人で、決算日(2027年3月31日)に次の未払いがあるとします。いずれも当期中に役務または資産の引渡しを受けているものです。

内容金額科目理由
商品仕入(3月納品・4月末払い)2,000,000円買掛金営業上の取引(47条2号)
事務所家賃 3月分(4月末払い)300,000円未払費用賃貸借契約による継続的な役務の経過分
借入金利息(1〜3月経過分)60,000円未払費用時の経過で発生(1,000万円 × 2.4% × 3か月 ÷ 12か月)
広告制作費(3月納品・4月末払い)500,000円未払金単発の役務。継続的な契約ではない

決算整理仕訳は次のようになります。

借方金額貸方金額
仕入2,000,000円買掛金2,000,000円
地代家賃300,000円未払費用300,000円
支払利息60,000円未払費用60,000円
広告宣伝費500,000円未払金500,000円

貸借対照表の流動負債には、買掛金2,000,000円・未払費用360,000円・未払金500,000円と、3つの科目に分けて掲記します(49条1項2号・5号・6号)。合計2,860,000円をひとまとめに「未払金」とする処理は、規則の区分表示に沿いません。

翌期の処理

未払費用として計上した家賃や利息は、翌期の支払時に未払費用を取り崩します(借方:未払費用/貸方:現金預金)。翌期首に再振替仕訳で洗い替える方法もあります。どちらでも構いませんが、継続して同じ方法をとることが前提です。

よくある質問

Q. 買掛金と未払金の違いは何ですか?

A. 営業上の取引かどうかで分かれます。財務諸表等規則47条2号は買掛金を「通常の取引に基づいて発生した営業上の未払金」と定義しており、法令上は買掛金も未払金の一種です。商品や材料の仕入れなど、その会社の事業目的のために反復して行う取引から生じたものが買掛金で、営業車の購入代金のようにそれ以外のものが未払金になります。

Q. 未払費用と未払金はどう使い分けますか?

A. 一定の契約にもとづいて継続して受けている役務のうち、すでに提供を受けた部分が未払費用です。家賃・借入金利息・水道光熱費などが典型で、時の経過とともに発生します。これに対し、単発の取引から生じた確定債務が未払金です。財務諸表等規則49条1項も、五号に未払金、六号に未払費用と別の号に分けて掲げています。

Q. 支払いが1年より先の未払費用は固定負債にしますか?

A. 財務諸表等規則48条は「未払費用及び前受収益は、流動負債に属するものとする」と定めており、一年内かどうかの限定を置いていません。固定負債の区分表示を定めた52条1項にも「長期未払費用」という科目はなく、規則の全文を通しても同じ語は現れません。一年内に費用となるものだけを流動資産とする前払費用(16条)とは、書き分けが異なります。

Q. 決算日までに請求書が届いていない費用も未払計上できますか?

A. 請求書の到達は要件ではありません。法人税基本通達2-2-12は、事業年度終了の日までに債務が成立し、給付をすべき原因となる事実が発生し、金額を合理的に算定できることの3つを求めています。契約や検収の記録から金額を合理的に算定できるなら、請求書が翌期に届いても当期の損金として扱うのが一般的です。

Q. 未払費用にも短期前払費用のような特例はありますか?

A. 未払費用について同様の特例は置かれていません。前払費用は原則として当期の費用にならないため法人税基本通達2-2-14で例外を設けていますが、未払費用はすでに役務の提供を受けた部分なので、法人税法22条3項2号の債務確定基準を原則どおり満たし、特例を要さずに当期の損金となります。

出典

この記事は一般的な情報提供であり、個別の事案についての助言ではありません。科目の選択や未払計上の可否は契約内容や取引の実態によって判断が分かれることがあります。計上の可否・金額の算定・申告書への記載にあたっては、顧問税理士にご確認ください。

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