奥行価格補正率とは|付表1の全数値と調べ方・路線価の計算例【令和8年分】
結論から言うと、奥行価格補正率は「路線価図に書かれた地区区分」と「その宅地の奥行距離」の2つだけで決まります。土地の値段でも、相続人の数でも、建物の有無でもありません。この2つを決めれば、財産評価基本通達の付表1「奥行価格補正率表」の交差する1マスに書いてある数字が答えです。
使い方も1行で、一方だけが路線に接する宅地なら路線価 × 奥行価格補正率 × 地積です。路線価は1平方メートルあたりの価額で、路線価図には千円単位で書かれています。「300C」と書かれていれば1平方メートルあたり300,000円、Cは借地権割合70%という意味です。ここを読み違えると、答えが1,000倍ずれます。
注意したいのは、この補正率がいつも1.00未満とは限らないことです。奥行距離が地区区分ごとの標準的な帯に収まっていれば1.00で、評価額は1円も下がりません。普通住宅地区なら10m以上24m未満、ビル街地区なら44m以上92m未満がその帯です。逆に角地や裏面も路線に接する土地では、奥行価格補正のあとに側方路線影響加算・二方路線影響加算が入り、評価額は上がる方向に動きます。この記事では、付表1の全数値、1.00になる範囲、奥行距離の測り方、加算との順序を、通達と国税庁の資料を直接読んで整理します。年分は令和8年分(課税時期が2026年中の相続・贈与)を基準にしました。
奥行価格補正率は地区区分と奥行距離の2つだけで決まる
先に手順を並べます。奥行価格補正率を調べるのに必要なのは、次の4ステップだけです。
- 路線価図でその土地が面する路線を探す。国税庁の「財産評価基準書 路線価図・評価倍率表」で、課税時期の年分を選んで開きます。令和8年分から平成30年分までが並んでいます。
- 地区区分を読む。路線価図の説明部分には、地区および地区と借地権割合の適合範囲を示す記号の一覧が載っており、地図部分の記号の黒塗り・斜線などとあわせて詳細が示されています。地区はビル街地区・高度商業地区・繁華街地区・普通商業・併用住宅地区・普通住宅地区・中小工場地区・大工場地区の7つで、財産評価基本通達14-2が国税局長の定めるものとして列挙しています。
- 奥行距離を出す。正面路線から見た奥行きです。長方形なら実測、そうでなければ地積を間口距離で割ります(後述)。
- 調整率表の付表1を引く。国税庁の「評価明細書・調整率表」のページにある調整率表PDFの1つ目の表が付表1です。
この4つが揃えば率は一意に決まります。逆に言うと、地区区分を確かめずに「奥行10mだから1.00」と決めるのは間違いのもとです。奥行10mが1.00なのは普通住宅地区だけで、繁華街地区と普通商業・併用住宅地区は0.99、高度商業地区は0.98、中小工場地区と大工場地区は0.96、ビル街地区は0.90です。
国税庁の路線価図の説明は、路線価を1平方メートルあたりの価額の千円単位で表示していること、右隣のA〜Gが借地権割合であることを明記しています。借地権割合はA:90%、B:80%、C:70%、D:60%、E:50%、F:40%、G:30%です。同じ説明ページの例では「215D」が1平方メートルあたり215,000円・借地権割合60%と示されています。
路線価方式は「路線価×補正率×地積」の3つでできている
そもそもなぜ補正率を掛けるのか。出発点は相続税法22条です。
この章で特別の定めのあるものを除くほか、相続、遺贈又は贈与により取得した財産の価額は、当該財産の取得の時における時価により、当該財産の価額から控除すべき債務の金額は、その時の現況による。
条文が言っているのは「時価で評価する」だけで、土地の測り方は書いていません。その時価の求め方を定めているのが財産評価基本通達で、同通達1(2)は、時価とは課税時期において不特定多数の当事者間で自由な取引が行われる場合に通常成立すると認められる価額をいい、その価額はこの通達の定めによって評価した価額によるとしています。つまり実務では通達が物差しになります。
宅地の評価方式は同通達11が2つに分けています。市街地的形態を形成する地域にある宅地は路線価方式、それ以外は倍率方式です。路線価方式の中身は同通達13が定めていて、その宅地の面する路線に付された路線価を基とし、15(奥行価格補正)から20-7(容積率の異なる2以上の地域にわたる宅地の評価)までの定めにより計算した金額によって評価する方式とされています。奥行価格補正は、路線価方式の一番最初に来る調整です。
その15が、この記事の主題そのものです。
一方のみが路線に接する宅地の価額は、路線価にその宅地の奥行距離に応じて奥行価格補正率を乗じて求めた価額にその宅地の地積を乗じて計算した価額によって評価する。
読むと分かるとおり、掛け算の順序まで書いてあります。まず路線価に補正率を掛けて1平方メートルあたりの価額を出し、そのあとで地積を掛ける。先に路線価×地積を計算してから補正率を掛けても答えは同じですが、評価明細書の様式が前者の順で並んでいるので、実務ではこの順で書きます。
なぜ「奥行」だけが最初に来るのかは、同通達14の(注)を読むと分かります。路線価そのものの定義に、奥行価格補正率が顔を出しているからです。
(4)の「標準的な間口距離及び奥行距離」には、それぞれ付表1「奥行価格補正率表」に定める補正率(以下「奥行価格補正率」という。)及び付表6「間口狭小補正率表」に定める補正率(以下「間口狭小補正率」という。)がいずれも1.00であり、かつ、付表7「奥行長大補正率表」に定める補正率(以下「奥行長大補正率」という。)の適用を要しないものが該当する。
つまり路線価は、奥行価格補正率が1.00になる標準的な宅地の値段として付けられています。だから実際の土地が標準より浅い、または深いときに、その差を戻すのが奥行価格補正だという建て付けです。地積は同通達8により課税時期における実際の面積によるので、登記簿の地積と実測が違うときは実測が優先します。
相続税そのものの金額感を先に掴みたい場合は、遺産総額と相続人から税額を出す計算機が使えます。土地の評価額が固まったら、そこに入れて全体の税額を見てください。
相続税の総額を計算する(遺産総額と相続人から自動計算)付表1「奥行価格補正率表」の全数値(7地区・29区分)
国税庁が配布している「土地及び土地の上に存する権利の評価についての調整率表(平成31年1月分以降用)」のPDFから、付表1をそのまま書き出したものが次の表です。奥行距離は4m未満から100m以上まで29の区分に分かれ、地区区分は7つあります。
国税庁のPDFでは、率が変わらない帯は空欄になっています。たとえば普通商業・併用住宅地区は12m以上14m未満の欄に1.00と書かれ、そこから28m以上32m未満の手前まで空欄です。空欄は「率が無い」ではなく「1.00のまま」という意味で、国税庁自身の計算例が奥行20mについて1.00を使っていることからも確かめられます。下の表は、その空欄を埋めて全マスに数字を入れてあります。
| 奥行距離 | ビル街 | 高度商業 | 繁華街 | 普通商業・併用住宅 | 普通住宅 | 中小工場 | 大工場 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 4m未満 | 0.80 | 0.90 | 0.90 | 0.90 | 0.90 | 0.85 | 0.85 |
| 4m以上6m未満 | 0.80 | 0.92 | 0.92 | 0.92 | 0.92 | 0.90 | 0.90 |
| 6m以上8m未満 | 0.84 | 0.94 | 0.95 | 0.95 | 0.95 | 0.93 | 0.93 |
| 8m以上10m未満 | 0.88 | 0.96 | 0.97 | 0.97 | 0.97 | 0.95 | 0.95 |
| 10m以上12m未満 | 0.90 | 0.98 | 0.99 | 0.99 | 1.00 | 0.96 | 0.96 |
| 12m以上14m未満 | 0.91 | 0.99 | 1.00 | 1.00 | 1.00 | 0.97 | 0.97 |
| 14m以上16m未満 | 0.92 | 1.00 | 1.00 | 1.00 | 1.00 | 0.98 | 0.98 |
| 16m以上20m未満 | 0.93 | 1.00 | 1.00 | 1.00 | 1.00 | 0.99 | 0.99 |
| 20m以上24m未満 | 0.94 | 1.00 | 1.00 | 1.00 | 1.00 | 1.00 | 1.00 |
| 24m以上28m未満 | 0.95 | 1.00 | 1.00 | 1.00 | 0.97 | 1.00 | 1.00 |
| 28m以上32m未満 | 0.96 | 1.00 | 0.98 | 1.00 | 0.95 | 1.00 | 1.00 |
| 32m以上36m未満 | 0.97 | 1.00 | 0.96 | 0.97 | 0.93 | 1.00 | 1.00 |
| 36m以上40m未満 | 0.98 | 1.00 | 0.94 | 0.95 | 0.92 | 1.00 | 1.00 |
| 40m以上44m未満 | 0.99 | 1.00 | 0.92 | 0.93 | 0.91 | 1.00 | 1.00 |
| 44m以上48m未満 | 1.00 | 1.00 | 0.90 | 0.91 | 0.90 | 1.00 | 1.00 |
| 48m以上52m未満 | 1.00 | 0.99 | 0.88 | 0.89 | 0.89 | 1.00 | 1.00 |
| 52m以上56m未満 | 1.00 | 0.98 | 0.87 | 0.88 | 0.88 | 1.00 | 1.00 |
| 56m以上60m未満 | 1.00 | 0.97 | 0.86 | 0.87 | 0.87 | 1.00 | 1.00 |
| 60m以上64m未満 | 1.00 | 0.96 | 0.85 | 0.86 | 0.86 | 0.99 | 1.00 |
| 64m以上68m未満 | 1.00 | 0.95 | 0.84 | 0.85 | 0.85 | 0.98 | 1.00 |
| 68m以上72m未満 | 1.00 | 0.94 | 0.83 | 0.84 | 0.84 | 0.97 | 1.00 |
| 72m以上76m未満 | 1.00 | 0.93 | 0.82 | 0.83 | 0.83 | 0.96 | 1.00 |
| 76m以上80m未満 | 1.00 | 0.92 | 0.81 | 0.82 | 0.83 | 0.96 | 1.00 |
| 80m以上84m未満 | 1.00 | 0.90 | 0.80 | 0.81 | 0.82 | 0.93 | 1.00 |
| 84m以上88m未満 | 1.00 | 0.88 | 0.80 | 0.80 | 0.82 | 0.93 | 1.00 |
| 88m以上92m未満 | 1.00 | 0.86 | 0.80 | 0.80 | 0.81 | 0.90 | 1.00 |
| 92m以上96m未満 | 0.99 | 0.84 | 0.80 | 0.80 | 0.81 | 0.90 | 1.00 |
| 96m以上100m未満 | 0.97 | 0.82 | 0.80 | 0.80 | 0.81 | 0.90 | 1.00 |
| 100m以上 | 0.95 | 0.80 | 0.80 | 0.80 | 0.80 | 0.90 | 1.00 |
表の読み方で1つ注意があるのは境界です。「10m以上12m未満」なので、奥行きちょうど12.0mは次の「12m以上14m未満」の帯に入ります。実測が11.98mなのか12.02mなのかで率が変わる地区区分があるので、境界に近い土地は測量図の数字をそのまま使い、四捨五入しないでください。
もう1つ、この表には0.80より小さい率が1つも無いという性質があります。どれだけ奥行きが深くても、奥行価格補正だけで評価額が2割を超えて下がることはありません。細長い土地がそれ以上に減るのは、奥行長大補正率(付表7)や不整形地補正率(付表5)が別に掛かるからです。
同じ奥行35mでも地区区分が違えば評価額は1,470万円動く
地区区分を確かめる意味を、実数で見ておきます。国税庁の路線価図の説明ページに載っている計算例と同じ土地――路線価300,000円(路線価図の表記は「300C」)、地積700平方メートル、奥行距離35m――で、地区区分だけを7通りに変えてみます。奥行35mは表の「32m以上36m未満」の帯です。
| 地区区分 | 奥行価格補正率 | 1平方メートルあたりの価額 | 自用地の評価額(700平方メートル) |
|---|---|---|---|
| ビル街地区 | 0.97 | 291,000円 | 203,700,000円 |
| 高度商業地区 | 1.00 | 300,000円 | 210,000,000円 |
| 繁華街地区 | 0.96 | 288,000円 | 201,600,000円 |
| 普通商業・併用住宅地区 | 0.97 | 291,000円 | 203,700,000円 |
| 普通住宅地区 | 0.93 | 279,000円 | 195,300,000円 |
| 中小工場地区 | 1.00 | 300,000円 | 210,000,000円 |
| 大工場地区 | 1.00 | 300,000円 | 210,000,000円 |
いちばん高い高度商業地区の2億1,000万円と、いちばん低い普通住宅地区の1億9,530万円で、差は1,470万円です。土地の形も面積も路線価も同じで、路線価図に書かれた地区区分の記号だけが違います。
この表の普通商業・併用住宅地区の行――補正率0.97、1平方メートルあたり291,000円、評価額203,700,000円――は、国税庁の路線価図の説明ページに載っている計算例の数字と1円まで一致します。表の読み取りが合っていることの外側からの確認になります。
なぜ地区で違うのかは、地区ごとに「標準的な土地」の姿が違うからです。ビル街地区は44m以上92m未満が1.00で、35mは浅すぎるので0.97に下がります。普通住宅地区は10m以上24m未満が1.00で、35mは深すぎるので0.93に下がります。同じ0.9台でも、下がっている理由が正反対です。
補正率が1.00になる範囲は地区区分ごとに違う
付表1から1.00の帯だけを抜き出すと次のとおりです。この帯に入っていれば、奥行価格補正では評価額は変わりません。
| 地区区分 | 補正率が1.00になる奥行距離 | 帯の幅 | 帯から浅い側に外れたとき | 帯から深い側に外れたとき |
|---|---|---|---|---|
| ビル街地区 | 44m以上92m未満 | 48m | 40m台前半で0.99、4m未満で0.80 | 92m以上96m未満で0.99、100m以上で0.95 |
| 高度商業地区 | 14m以上48m未満 | 34m | 12m台で0.99、4m未満で0.90 | 48m以上52m未満で0.99、100m以上で0.80 |
| 繁華街地区 | 12m以上28m未満 | 16m | 10m台前半で0.99、4m未満で0.90 | 28m以上32m未満で0.98、80m以上で0.80 |
| 普通商業・併用住宅地区 | 12m以上32m未満 | 20m | 10m台前半で0.99、4m未満で0.90 | 32m以上36m未満で0.97、84m以上で0.80 |
| 普通住宅地区 | 10m以上24m未満 | 14m | 8m台で0.97、4m未満で0.90 | 24m以上28m未満で0.97、100m以上で0.80 |
| 中小工場地区 | 20m以上60m未満 | 40m | 16m台で0.99、4m未満で0.85 | 60m以上64m未満で0.99、88m以上で0.90 |
| 大工場地区 | 20m以上(上限なし) | — | 16m台で0.99、4m未満で0.85 | 深い側に外れる帯が無い |
住宅地の土地でいちばん多いのは普通住宅地区で、1.00の帯は10m以上24m未満の14mぶんしかありません。一般的な戸建て用地はこの中に収まることが多く、その場合の奥行価格補正率は1.00です。「路線価に何かの率を掛ければ必ず下がる」と思って探すと、掛ける先が見つからずに手が止まります。1.00と書くのが正解で、評価明細書の奥行価格補正率の欄にも1.00と記入します。
大工場地区だけは深い側の上限がありません。20m以上はどれだけ深くても1.00で、100m以上でも1.00のままです。大きな敷地を前提にした地区区分なので、奥行きが深いことが減価にならないという整理です。
奥行距離は「地積÷間口距離」で求め、想定整形地が上限になる
長方形の土地なら奥行距離は測るだけですが、実際の土地は台形や旗竿地で、どこを測るかが決まりません。国税庁の質疑応答事例「不整形地の奥行距離の求め方」が、この点を明示しています。
奥行距離が一様でないものは平均的な奥行距離によります。具体的には、不整形地にかかる想定整形地の奥行距離を限度として、その不整形地の面積をその間口距離で除して得た数値とします。
式にすると奥行距離 = 地積 ÷ 間口距離で、上限が想定整形地の奥行距離です。想定整形地とは、財産評価基本通達20(2)の(注)が定義しています。
ただし、計算上の奥行距離は、不整形地の全域を囲む、正面路線に面するく形又は正方形の土地(以下「想定整形地」という。)の奥行距離を限度とする。
同じ質疑応答事例に載っている実数は、地積600平方メートル・間口35mの不整形地で、600÷35=17.1mとなり、想定整形地の奥行距離20mより小さいので17.1mを採るというものです。逆に別の質疑応答事例「正面路線の判定(2)」では、地積500平方メートルの土地をB路線から見ると500÷10=50mになりますが、想定整形地の奥行距離30mが上限なので30mを採ります。割り算の答えがそのまま使えるとは限らないのがここです。
屈折路(曲がった道)に面していて想定整形地の取り方が一通りに決まらないときは、質疑応答事例「屈折路に面する不整形地の想定整形地のとり方」が、いずれかの路線からの垂線によって又は路線に接する両端を結ぶ直線によって、評価しようとする宅地の全域を囲むく形又は正方形のうち最も面積の小さいものを想定整形地とすると答えています。候補を複数描いて、いちばん小さいものを選ぶという手順です。
宅地が2つ以上の地区にまたがっている場合は、質疑応答事例「宅地が2以上の地区にまたがる場合の画地調整」が、原則としてその宅地の面積によりいずれか一の地区を判定し、判定した地区にかかる画地調整率を用いて評価するとしています。同じ事例の(注)でも、奥行距離が一定でない宅地の奥行距離は地積を間口距離で除して求め、想定整形地の奥行距離を限度とすることが繰り返されています。
側方路線影響加算・二方路線影響加算との順序は明細書のA〜Mが決めている
角地や、表と裏の両方が道路に接している土地では、奥行価格補正のあとに加算が入ります。順序は財産評価基本通達13が「15から20-7までの定めにより」と並び順で示していますが、実務でいちばん確実なのは「土地及び土地の上に存する権利の評価明細書」第1表の欄の並びを見ることです。この様式は、計算の順序をそのまま欄の順序にしてあります。
| 欄 | 項目 | 計算 | 根拠 |
|---|---|---|---|
| A | 一路線に面する宅地 | 正面路線価 × 奥行価格補正率 | 評基通15 |
| B | 二路線に面する宅地 | A +(側方・裏面路線価 × 奥行価格補正率 × 側方・二方路線影響加算率) | 評基通16・17 |
| C | 三路線に面する宅地 | B +(同上) | 評基通18 |
| D | 四路線に面する宅地 | C +(同上) | 評基通18 |
| E | 間口が狭小な宅地等 | A〜Dのうち該当するもの ×(間口狭小補正率 × 奥行長大補正率) | 評基通20-4 |
| F | 不整形地 | A〜Dのうち該当するもの × 不整形地補正率 | 評基通20 |
| G | 地積規模の大きな宅地 | A〜Fのうち該当するもの × 規模格差補正率 | 評基通20-2 |
| H | 無道路地 | F・Gのうち該当するもの ×(1 − 割合) | 評基通20-3 |
| I・J | がけ地等・土砂災害特別警戒区域 | A〜Hのうち該当するもの × がけ地補正率・特別警戒区域補正率 | 評基通20-5・20-6 |
| K | 容積率の異なる2以上の地域にわたる宅地 | A〜Jのうち該当するもの ×(1 − 控除割合) | 評基通20-7 |
| L | 私道 | A〜Kのうち該当するもの × 0.3 | 評基通24 |
| M | 自用地の評価額 | (A〜Lのうち該当する記号の価額)× 地積 | 評基通15ほか |
この並びから読み取れることが3つあります。
- 奥行価格補正はいちばん最初で、しかも2回出てくる。A欄の正面路線に1回、B欄以降の側方・裏面路線にもう1回です。財産評価基本通達16は、側方路線の路線価を正面路線の路線価とみなし、その路線価に基づき計算した価額に付表2の加算率を乗じると定めているので、側方路線の側にも奥行価格補正が入ります。掛け忘れが起きやすいのはここです。
- 1平方メートルあたりの価額で計算し、地積を掛けるのは最後のM欄だけ。途中で地積を掛けてしまうと、以降の補正率が単価ではなく総額に掛かることになり、桁を追えなくなります。
- E欄(間口狭小)とF欄(不整形地)は重複して適用できない。様式の(注)1がそう明記しています。不整形地の場合は、間口狭小補正率をF欄の不整形地補正率の計算の中で使います。
計算例3つ — 一路線・角地・不整形地
実際の数字で追います。いずれも令和8年分・自用地(貸していない自分の土地)としての計算です。
例1 一方だけが路線に接する長方形の宅地
普通住宅地区、路線価180,000円(路線価図の表記は「180D」)、間口14m・奥行25mの長方形で地積350平方メートル。
- 奥行25mは付表1の「24m以上28m未満」で、普通住宅地区は0.97。
- 1平方メートルあたり 180,000円 × 0.97 = 174,600円(A欄)。
- 間口14mの間口狭小補正率(付表6)は1.00、奥行25m ÷ 間口14m = 1.78で付表7の「2以上」に届かないので奥行長大補正率の適用もありません。E欄は飛ばします。
- 自用地の評価額 174,600円 × 350平方メートル = 61,110,000円(M欄)。
補正を掛けなければ63,000,000円なので、差は1,890,000円です。この土地の奥行きがあと1.1m浅くて23.9mなら、帯が「10m以上24m未満」に入って補正率は1.00となり、評価額は63,000,000円に戻ります。境界の1m前後で189万円動くので、測量図の数字を四捨五入せずにそのまま使う理由がここにあります。
例2 角地(二路線に面する宅地)
普通住宅地区の角地。a路線に間口16mで接し、そこからの奥行きが30mの長方形で地積480平方メートル。a路線の路線価は250,000円、長辺側に接するb路線の路線価は180,000円です。b路線から見た奥行距離は16mになります。
まず正面路線を決めます。財産評価基本通達16(1)は正面路線を「原則として、前項の定めにより計算した1平方メートル当たりの価額の高い方の路線」としており、路線価そのものではなく奥行価格補正率を掛けたあとの金額で比べます。
| 路線 | 路線価 | その路線から見た奥行距離 | 奥行価格補正率 | 補正後の1平方メートルあたり |
|---|---|---|---|---|
| a路線 | 250,000円 | 30m | 0.95 | 237,500円 |
| b路線 | 180,000円 | 16m | 1.00 | 180,000円 |
- a路線の237,500円が高いので、a路線が正面路線、b路線が側方路線です。
- 側方路線影響加算率は付表2で、普通住宅地区の角地は0.03(準角地は0.02)。
- 1平方メートルあたり 237,500円 +(180,000円 × 1.00 × 0.03 = 5,400円)= 242,900円(B欄)。
- 間口16mの間口狭小補正率は1.00、奥行30m ÷ 間口16m = 1.87で奥行長大補正率の適用はなし。E欄は飛ばします。
- 自用地の評価額 242,900円 × 480平方メートル = 116,592,000円(M欄)。
側方路線の側の奥行価格補正率1.00を落として計算しても、この例では答えが変わりません。落としても気づけないので、1.00でも欄に書く習慣が要ります。なお、地区の異なる2つの路線に接している場合は、質疑応答事例のとおり正面路線の地区区分の奥行価格補正率と加算率を、側方路線影響加算額の計算にも使います。側方路線の側の地区区分に引きずられないでください。
例3 不整形地
普通住宅地区、路線価200,000円、地積352平方メートル、間口10m。全域を囲む想定整形地は間口16m・奥行25mで400平方メートル、はみ出したかげ地は間口側の6m × 8m = 48平方メートルとします。
- 計算上の奥行距離は 352 ÷ 10 = 35.2m。ただし想定整形地の奥行距離25mが上限なので、25mを採ります。
- 奥行25mは「24m以上28m未満」で、普通住宅地区は0.97。200,000円 × 0.97 = 194,000円(A欄)。
- かげ地割合は(400 − 352)÷ 400 = 12%で、付表5の10%の行(10%以上15%未満)。地積352平方メートルは付表4で普通住宅地区のA(500平方メートル未満)。交差する不整形地補正率表の補正率は0.98。
- 間口10mの間口狭小補正率(付表6・普通住宅地区)は1.00、奥行長大補正率(付表7)は25 ÷ 10 = 2.5で「2以上3未満」の0.98。明細書の計算どおり、0.98 × 1.00 = 0.98 と 0.98 × 1.00 = 0.98 の低い方を採って不整形地補正率は0.98。
- 194,000円 × 0.98 = 190,120円(F欄)。190,120円 × 352平方メートル = 66,922,240円(M欄)。
もし上限で頭打ちにするのを忘れて、奥行距離を35.2mのまま進めるとどうなるか。奥行価格補正率は「32m以上36m未満」の0.93になり、奥行長大補正率も 35.2 ÷ 10 = 3.52で「3以上4未満」の0.96に変わります。不整形地補正率は 0.98 × 1.00 = 0.98 と 0.96 × 1.00 = 0.96 の低い方で0.96。評価額は 200,000円 × 0.93 × 0.96 × 352平方メートル = 62,853,120円で、正しい66,922,240円より4,069,120円低く出ます。頭打ちを1回忘れるだけでA欄とF欄の両方が動き、評価額が過少になります。
宅地の一部が居住用や事業用に使われていた場合は、この評価額から小規模宅地等の特例で減額できることがあります。減額の限度面積と割合は別のツールで確かめてください。
小規模宅地等の特例で評価額がいくら下がるか計算する間違えやすい4点
1. 年分を合わせるのは路線価図・評価倍率表のほう。路線価と評価倍率は毎年改定されるので、課税時期(相続なら死亡の日、贈与なら贈与を受けた日)の属する年分の路線価図・評価倍率表を使います。国税庁のサイトは年分を選ぶ作りで、令和8年分から平成30年分までが並んでいます。一方、奥行価格補正率表(付表1)を含む調整率表は年分ごとに配り直されるものではありません。「評価明細書・調整率表」のページに掲示されているのは「土地及び土地の上に存する権利の評価についての調整率表(平成31年1月分以降用)」の1本だけで、令和8年分の評価でもこの表を引きます。これとは別に、地域と時期を限った特例の表が用意されていることがあり、令和6年能登半島地震・令和2年7月豪雨・令和元年台風第19号・平成30年7月豪雨の調整率表と、令和2年分の路線価等の10〜12月分に係る地価変動補正率表が国税庁のサイトに載っています。年分は路線価図で合わせる、奥行価格補正率は平成31年1月分以降用の表で引く、特例の表に当たるかは別に確かめる——この3つを混ぜないでください。
2. 路線価は千円単位の表示。路線価図の「300C」は300円でも300万円でもなく、1平方メートルあたり300,000円です。ここを取り違えると評価額が1,000倍または1,000分の1になります。金額そのものではなく単位の話なので、検算では桁を数えるのが早いです。
3. 地積は実際の面積。財産評価基本通達8は、地積は課税時期における実際の面積によると定めています。登記簿の地積と実測が違う土地では実測が優先します。地積は最後に掛ける数なので、ここが違うと補正率をどれだけ正確に引いても評価額はずれます。
4. 端数処理は評価額の段では出てこない。1平方メートルあたりの価額も評価額も、円単位でそのまま持ちます。切り捨てが効くのは、相続税の申告書で課税価格と税額を出す段です。国税通則法118条1項は「国税(印紙税及び附帯税を除く。以下この条において同じ。)の課税標準(その税率の適用上課税標準から控除する金額があるときは、これを控除した金額。以下この条において同じ。)を計算する場合において、その額に千円未満の端数があるとき、又はその全額が千円未満であるときは、その端数金額又はその全額を切り捨てる。」と定め、同119条1項が確定金額の100円未満を切り捨てます。土地の評価額を1,000円単位に丸めてから合計するのは、順序が違います。合計してから丸めます。
この記事の要点
- 奥行価格補正率は、路線価図の地区区分(7つ)と奥行距離(29区分)の交差する1マスで決まる。
- 一方だけが路線に接する宅地の計算は「路線価 × 奥行価格補正率 × 地積」(財産評価基本通達15)。
- 1.00になる帯は地区区分ごとに違う。普通住宅地区は10m以上24m未満、ビル街地区は44m以上92m未満。
- 奥行距離は実測または「地積 ÷ 間口距離」で、想定整形地の奥行距離が上限。
- 側方路線・裏面路線の加算額の計算にも奥行価格補正率が要る。地区区分は正面路線のものを使う。
- 年分を合わせるのは路線価図・評価倍率表。奥行価格補正率表は「平成31年1月分以降用」の1本。地積を掛けるのは最後の1回だけ。
よくある質問
Q. 奥行価格補正率はどこで調べますか?
A. 国税庁の「財産評価基準書 路線価図・評価倍率表」の中の「評価明細書・調整率表」のページに、調整率表のPDFがあります。その1つ目の表が付表1「奥行価格補正率表」です。表を引く前に、路線価図でその路線の地区区分を確かめてください。地区区分が違うと同じ奥行距離でも率が変わります。
Q. 補正率表の空欄は何を意味しますか?
A. その欄は上の行と同じ率が続くという意味で、率が無いということではありません。普通商業・併用住宅地区は12m以上14m未満の欄に1.00と書かれ、そこから28m以上32m未満まで空欄が続きます。国税庁の計算例が奥行20mについて1.00を使っているとおり、空欄の帯も1.00です。
Q. 奥行距離はどこからどこまでを測りますか?
A. 正面路線から見た宅地の奥行きです。長方形なら実測した奥行きをそのまま使い、奥行きが一様でない土地は国税庁の質疑応答事例のとおり地積を間口距離で割った平均的な奥行距離を使います。ただし想定整形地の奥行距離が上限で、それを超えたときは想定整形地の奥行距離を採ります。
Q. 角地の側方路線にも奥行価格補正率を掛けますか?
A. 掛けます。財産評価基本通達16は、側方路線の路線価を正面路線の路線価とみなして計算した価額に側方路線影響加算率を乗じると定めており、その計算にも奥行価格補正が入ります。側方路線から見た奥行距離で表を引き、地区区分は正面路線の地区区分をそのまま使います。
Q. 補正率が1.00なら計算を省いてよいですか?
A. 評価額は同じになりますが、土地及び土地の上に存する権利の評価明細書には1.00と記入します。1.00の帯は地区区分ごとに違い、普通住宅地区は10m以上24m未満、ビル街地区は44m以上92m未満です。書かずに省くと、地区区分を取り違えたのか1.00なのかが後から区別できません。
Q. 何年分の補正率表を使えばよいですか?
A. 年分を合わせるのは路線価図・評価倍率表のほうで、相続や贈与があった年分、つまり課税時期の属する年分のものを使います。国税庁のサイトは年分を選ぶ作りになっており、令和8年分から平成30年分までが並んでいます。奥行価格補正率表を含む調整率表は年分ごとに配り直されるものではなく、掲示されているのは平成31年1月分以降用の1本です。地域と時期を限った災害の調整率表や地価変動補正率表が別に公開されているので、対象になるかどうかは別に確かめてください。
Q. 路線価が定められていない土地はどう評価しますか?
A. 倍率方式で評価します。財産評価基本通達11は宅地の評価を、市街地的形態を形成する地域は路線価方式、それ以外は倍率方式と分けています。倍率方式は固定資産税評価額に評価倍率表の倍率を乗じるだけなので、奥行価格補正率は使いません。土地の形状は固定資産税評価額の側で織り込まれているためです。
出典
- e-Gov法令検索「相続税法」22条(評価の原則)。API v2のリビジョン 325AC0000000073_20260401_506AC0000000008 で条文を確認。確認日:2026年9月8日。
- e-Gov法令検索「国税通則法」118条1項(国税の課税標準の端数計算等)、119条1項(国税の確定金額の端数計算等)。API v2のリビジョン 337AC0000000066_20260624_508AC0000000046 で条文を確認。
- 国税庁 法令解釈通達「財産評価」の第1章 総則。1(評価の原則)(2)時価の意義。
- 国税庁 法令解釈通達「財産評価」の第2章第1節 通則。7-2(評価単位)、8(地積は課税時期における実際の面積による)。
- 国税庁 法令解釈通達「財産評価」の第2章第2節 宅地及び宅地の上に存する権利。11(評価の方式)、13(路線価方式)、14(路線価と付表1の(注))、14-2(地区は7区分)、14-3(特定路線価)、15(奥行価格補正)、16(側方路線影響加算)、17(二方路線影響加算)、18(三方又は四方路線影響加算)。
- 国税庁 法令解釈通達「財産評価」の第2章第3節(不整形地の評価ほか)。20(想定整形地と計算上の奥行距離の限度)、20-2(地積規模の大きな宅地)、20-3(無道路地)、20-4(間口が狭小な宅地等)、20-5(がけ地等)、20-6(土砂災害特別警戒区域)、20-7(容積率の異なる2以上の地域)。
- 国税庁「土地及び土地の上に存する権利の評価についての調整率表(平成31年1月分以降用)」(PDF)。付表1 奥行価格補正率表の全数値、付表2 側方路線影響加算率表(普通住宅・中小工場の角地0.03・準角地0.02、普通商業・併用住宅の角地0.08・0.04)、付表3 二方路線影響加算率表、付表4 地積区分表、付表5 不整形地補正率表、付表6 間口狭小補正率表、付表7 奥行長大補正率表を pdfplumber で座標ごとに読み取り。確認日:2026年9月8日。
- 国税庁「路線価図の説明」。路線価が1平方メートルあたりの千円単位の表示であること、借地権割合A〜Gの適合範囲、普通商業・併用住宅地区・路線価300,000円・奥行35m・700平方メートルの計算例(0.97/291,000円/203,700,000円)と二路線の計算例(側方200,000円×1.00×0.08/307,000円/214,900,000円)。
- 国税庁「評価明細書・調整率表」および「土地及び土地の上に存する権利の評価明細書(平成31年1月分から令和5年分用)」(PDF)。第1表の欄A〜Mの順序、5-1と5-2は重複適用できない旨の(注)1。令和6年分以降用の様式でも欄A〜Gの並びが同じであることを確認。
- 国税庁「財産評価基準書 路線価図・評価倍率表」。令和8年分(最新)から平成30年分までの年分の選択、令和6年能登半島地震・令和2年7月豪雨・令和元年台風第19号・平成30年7月豪雨の調整率表の公開。確認日:2026年9月8日。
- 国税庁 質疑応答事例(財産評価)「不整形地の奥行距離の求め方」(600平方メートル÷35m=17.1m<20m)、「正面路線の判定(2)」(500平方メートル÷10m=50m>30m)、「正面路線の判定(1)」、「屈折路に面する不整形地の想定整形地のとり方」、「地区の異なる2以上の路線に接する宅地の評価」、「宅地が2以上の地区にまたがる場合の画地調整」。いずれも令和7年8月1日現在の法令・通達等に基づく旨の注記あり。
- 国税庁タックスアンサー「No.4604 路線価方式による宅地の評価」「No.4602 土地家屋の評価」「No.4606 倍率方式による土地の評価」。いずれも令和8年4月1日現在法令等。正面路線の判定方法、地区の異なる路線に接する場合は正面路線の地区の率を適用すること、倍率方式の対象。
本記事は一般的な情報提供を目的としたものです。個別の判断は税務署・税理士にご確認ください。