債券の利回り:表面・直接・最終利回りを同じ価格と残存期間で検算
債券を償還まで保有する利回りは、利子だけでなく、購入価格と償還額の差も含めて計算します。表面利率は額面に対する年利息の割合なので、額面と違う価格で買った場合の収益率とは一致しません。
以下は円建て固定利付債の架空例です。単利の最終利回りと、受取時点を反映する複利IRRを分けて検算します。実在商品の順位や将来の市場金利を示す表ではありません。
表面利率・直接利回り・最終利回りの違い
下表は、所定の利子が支払われ額面償還される円建て固定利付債の税引前・費用なしの定義です。最終利回りは償還まで保有する場合を示します。
| 表示 | 計算の考え方 | 含めないもの |
|---|---|---|
| 表面利率 | 年利息 ÷ 額面金額 | 購入価格との差 |
| 直接利回り | 年利息 ÷ 購入価格 | 償還差損益 |
| 最終利回り・単利 | 年利息に償還差損益の年平均を足し、購入価格で割る | 受取時点による現在価値の違い |
固定利付債を償還まで保有する税引前単利の最終利回りは、「{年利息+(償還価格−購入価格)÷残存年数}÷購入価格」で求めます。残存年数は購入から償還までの期間です。百分率表示では、この比率を百分率に換算します。
算式の出典は日本取引所グループ「最終利回り」、直接利回りの定義は同「直接利回り」です。債券の価格表示が額面当たりの単価なら、利息・償還額も同じ額面の単位にそろえます。
同じ債券の価格から検算する
税引前の架空例です。円建て固定利付債を額面1,000,000円、購入980,000円、残存2年、年利息20,000円、年1回の利払いとします。利払直後に購入し、経過利子・費用はなし。所定の利子が支払われ、額面で償還されるまで保有する前提です。率は途中を丸めず、小数第4位で四捨五入した年率です。
| 検算する率 | 代入と途中値 | 年率 |
|---|---|---|
| 表面利率 | 20,000 ÷ 1,000,000 | 2.000% |
| 直接利回り | 20,000 ÷ 980,000 | 2.041% |
| 最終利回り・単利 | {20,000+(1,000,000−980,000)÷2}÷980,000 | 3.061% |
| 額面購入に変更・単利と年次複利IRR | 購入価格のみ1,000,000円に変更、償還差損益なし | 2.000% |
| 最終利回り・年次複利IRR | 980,000=20,000÷(1+r)+1,020,000÷(1+r)² を解く | 3.046% |
購入価格が額面より低い設例では、額面との差を満期に受け取るため、直接利回りより単利の最終利回りが高くなります。単利式は償還差益を年平均にしますが、IRRは実際に受け取る時点に割り引いて計算します。
複利IRRは、将来の受取額を現在価値に直した合計が購入時の支出と等しくなる割引率です。利子を受け取った後に、同じ率で再投資できることを保証するものではありません。
税引後と購入時費用をそろえる
費用の影響は、同じ価格と利払条件のまま購入時の支出を変えて比べます。次の税引後例は前表の額面購入の行と価格・残存期間・利払回数をそろえ、償還差損益の課税計算を混ぜていません。
国内特定公社債の課税利子を受け取る居住者個人が2026年末に購入し、2027年末・2028年末の年1回、利子の住民税込み合計税率20.315%で受け取る架空例です。額面・購入価格とも1,000,000円、残存2年、年1回の税引前利子20,000円とし、最後の利払いと同時に額面で償還されます。経過利子なし、税の端数処理を省いた比較概算で、年次IRRは小数第4位で四捨五入します。費用欄は税込みの支払総額です。
| 項目 | 費用なし | 購入時費用2,000円 |
|---|---|---|
| 購入時の総支出 | 1,000,000円 | 1,002,000円 |
| 各年の税引後利子 | 15,937円 | 15,937円 |
| 最終年の元本と利子 | 1,015,937円 | 1,015,937円 |
| 税引後の年次複利IRR | 1.594% | 1.491% |
税引後例の利子は「税引前利子×(税率を控除した割合)」、IRRは「総支出=税引後利子÷(1+r)+(元本+税引後利子)÷(1+r)²」で計算します。費用は支出に加えていますが、税務上の必要経費への算入や損益通算は計算していません。
この税引後例は、非課税制度、法人・非居住者、外国源泉税、償還差損益の課税、確定申告による精算を対象外とします。利子の源泉徴収と申告の扱いは国税庁「No.1310 利息を受け取ったとき」で確認できます。
表示利回りと合わないときの確認表
まず、単利と複利、税引前と税引後、価格と総支出のどれが違うかを確認します。年率という表示だけでは計算条件はそろいません。
| 確認するもの | 見る箇所 |
|---|---|
| 購入価格 | 額面ではなく実際の買付単価。価格の基準時点もそろえる |
| 残存期間 | 発行からの期間ではなく、受渡しから償還までの期間 |
| 利払回数と日付 | 年利息と利払ごとの金額を区別し、受取時点をそろえる |
| 経過利子 | 利払途中に買ったときの精算額を購入時の支出に含める |
| 費用と税 | 買付代金以外の支出、源泉徴収、償還時の税を分ける |
| 丸め | 日数計算、税の端数処理、表示桁数を確認する |
表の例は年単位で利払いと償還がそろう場合に限定しています。実際の受渡日が利払日の途中なら、経過利子や日数の扱いを発行条件・取引明細と合わせる必要があります。半年ごとの利払いを、年末にまとめて受け取る式へ置き換えるとIRRが変わります。
また、外貨建て債券の外貨ベースの利回りを、そのまま円での収益率にはできません。変動利付債、期限前償還、利払停止や債務不履行がある場合も、この固定条件の表では再現できません。購入前に表示される利回りは、履行が保証された実績値ではありません。
公表される国債の購入価格と最終利回りの関係は財務省「国債の利回りはどのように決まるのでしょうか」で確認できます。個人向け国債の募集金利と初回利息は募集回号別の解説に分けています。
毎月の積立を想定年率から試算する場合は、次のツールで計算できます。債券の買付価格からIRRを求める機能ではありません。
積立額と想定年率による試算を見るまとめ
債券の利回りを検算するときは、年利息・購入価格・償還額・残存期間をそろえます。複利IRRでは受取時点を、税引後では税と費用の発生時点を分けて確認します。
よくある質問
表面利率と最終利回りは同じですか?
同じとは限りません。表面利率は額面に対する年利息の割合で、償還まで保有する最終利回りは購入価格と償還額の差も反映します。額面と異なる価格で買うと、その差が効きます。
直接利回りだけで償還までの収益が分かりますか?
分かりません。直接利回りは年利息を購入価格で割った率で、償還差損益を含みません。償還まで保有する場合は、償還額との差も計算する必要があります。
単利の最終利回りに税引後の割合を掛ければよいですか?
その方法では税引後の収益を再現できない場合があります。この記事の計算でも、購入時費用は利子への課税とは別の支出になるためです。税引後の各受取額と購入時の総支出を分けて計算します。
複利IRRは実際の再投資利回りですか?
実際の再投資利回りではありません。仮定した将来の受取額の現在価値と購入時支出が一致する割引率です。受け取った利子を同じ率で運用できる保証はありません。
関連する解説
出典
- 財務省「国債の利回りはどのように決まるのでしょうか」:価格・表面利率・償還期間と税引前単利の式。
- 日本取引所グループ「最終利回り」:償還まで保有する場合の定義と単利式。
- 日本取引所グループ「直接利回り」:年利息と購入価格の関係。
- Microsoft「IRR 関数」:定期的な支出・受取と現在価値の関係。
- 日本取引所グループ「経過利子」:購入時に精算する利子相当額。
- 国税庁「No.1310 利息を受け取ったとき」とは:課税利子の源泉徴収と申告。
制度・定義の確認日: 2026年10月24日。表は架空条件を固定した算術例で、複利IRRは記載した受取額から求めています。一次資料の変更時と年次に税率・対象範囲を確認します。
この記事は一般的な情報提供であり、個別の税務相談への回答ではありません。特定の金融商品の取得・売買を勧めるものではありません。実際の申告や取扱いは税務署・税理士・取扱金融機関にご確認ください。