賞与の源泉所得税|前月給与がない・扶養人数が変わった場合
結論から言うと、通常の賞与の源泉所得税は、前月の社会保険料等控除後給与と賞与支給時点の扶養親族等の数で算出率を引き、賞与の社会保険料等控除後額×算出率で求めます。令和8年中に支払う賞与には、令和8年分の表を使います。
ただし、前月給与がない、前月給与が社会保険料等以下、または賞与の社会保険料等控除後額が前月給与の社会保険料等控除後額の10倍を超える場合は、賞与算出率表を使いません。月額表による例外計算へ切り替わります。
賞与手取り計算 額面賞与から社会保険料と源泉所得税を含む手取りの目安を計算。通常の計算は「前月給与で率、賞与で税額」
- 前月給与から前月給与に対応する社会保険料等を引く
- 扶養控除等申告書の提出有無と、扶養親族等の数を確認する
- 令和8年分「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表」で率を引く
- 賞与から賞与に対応する社会保険料等を引き、その残額に率を掛ける
算出率には復興特別所得税相当額が含まれます。たとえば表から2.042%と判定され、賞与50万円、賞与の社会保険料等が7万円なら、課税対象43万円×2.042%=8,780円です(1円未満切捨て)。率を賞与の額だけから決めない点が給与の月額表との大きな違いです。
前月給与がない場合は賞与を6で割って月額表へ
入社直後などで前月中に給与等の金額がない場合、または前月給与が前月の社会保険料等以下の場合は、次の順で計算します。
- 賞与から賞与の社会保険料等を控除する
- その金額を6で割る
- 月額表で、その月額相当額に対する税額を求める
- 月額表の税額を6倍する
賞与の計算期間が6か月を超えることが明らかな場合は、6の代わりに12で割り、月額表の税額を12倍します。単に「夏賞与だから6」と名称だけで決めず、賞与の計算期間を確認します。
例として、社会保険料等控除後の賞与が60万円で計算期間が6か月なら、60万円÷6=10万円を令和8年分月額表に当て、そこで求めた税額を6倍します。10万円へ賞与算出率を直接掛ける計算ではありません。
賞与が前月給与の10倍を超える場合
前月給与があっても、社会保険料等控除後の賞与が、前月の社会保険料等控除後給与の10倍を超えると通常表は使えません。この場合は賞与を給与期間へ配分し、月額表で給与と合算した税額から前月給与分の税額を差し引く方法で求めます。
- 賞与の社会保険料等控除後額を6(計算期間が6か月超なら12)で割る
- その額を前月の社会保険料等控除後給与へ加える
- 合計額を月額表に当てた税額から、前月給与だけを月額表に当てた税額を引く
- 差額を6倍(または12倍)する
境界は「10倍を超える」です。ちょうど10倍ならこの例外要件には該当せず、通常の算出率表を使います。比較する双方を社会保険料等控除後でそろえることも重要です。
扶養人数が変わった場合は賞与支給時の申告内容を見る
算出率表の甲欄で使う「扶養親族等の数」は、前月給与を計算したときの古い人数を固定するものではありません。賞与の支払時までに扶養控除等申告書の異動申告が提出されていれば、更新後の扶養親族等の数で表を引きます。前月給与の金額は前月実績、扶養人数は支払時点の申告内容という組合せです。
| 確認項目 | 参照する時点 |
|---|---|
| 前月の社会保険料等控除後給与 | 賞与支払月の前月中 |
| 扶養控除等申告書の提出有無 | 賞与支払時 |
| 扶養親族等の数 | 賞与支払時に有効な申告内容 |
| 賞与から引く社会保険料等 | 今回の賞与に対応する額 |
さらに、本人が障害者、寡婦、ひとり親または勤労学生に該当する旨の記載があるときは、該当一つにつき1人を加算します。同一生計配偶者や扶養親族が障害者・同居特別障害者に該当する場合にも表の注記に従って加算します。「家族の実人数」と表で使う人数が一致しないことがあります。
扶養控除等申告書の提出がない人は乙欄です。扶養家族がいても申告書未提出のまま甲欄の人数列を使うことはできません。
間違えやすい点
| 誤り | 正しい確認 |
|---|---|
| 額面賞与に率を掛ける | 賞与から社会保険料等を引いた残額に掛ける |
| 今月給与を基準にする | 原則は前月中の社会保険料等控除後給与 |
| 前月給与なしでも0%とする | 月額表による6倍・12倍計算へ切り替える |
| 扶養人数を前月給与明細からコピー | 賞与支給時に有効な申告書と異動を確認 |
| 令和7年分の表を流用 | 2026年支給は令和8年分を使う |
賞与の社会保険料を先に確定しないと所得税の課税対象額も確定しません。また、賞与の所得税と住民税は仕組みが異なり、通常、賞与から住民税を別建てで計算して控除するものではありません。
- 前月の社保控除後給与と扶養人数で率を決める
- 税額は賞与の社保控除後額に率を掛ける
- 前月給与なし・前月給与以下・10倍超は月額表計算
- 扶養異動は賞与支払時の有効な申告内容を反映
隔月給与は「前月給与なし」と即断しない
給与の支給期が2か月ごとなど月の整数倍の期間ごとと定められている場合、賞与直前に支払を受けた、または受けるべき給与とその社会保険料等を、その月数で割った金額を前月給与・前月社会保険料等とみなす特則があります。前月に振込みがなかったという事実だけで、前月給与なしの6倍計算へ切り替えないようにします。
名称ではなく支給の性質を確認する
国税庁 No.2523 は、純益を基準に支給するもの、あらかじめ支給額や支給基準の定めがないもの、支給期ごとの支給額が異なるものなど、賞与の性質がある給与を賞与として扱う場合を示しています。「特別手当」という名称でも実質が賞与なら賞与表を使い、毎月固定の手当を都合よく賞与扱いにはしません。
計算後は、賞与支払日、総支給額、社会保険料等、前月給与、扶養人数、甲欄・乙欄、使用した算出率と源泉税額を賃金台帳へ残します。前月給与なしや10倍超で月額表へ切り替えた場合は、その判定と6倍・12倍のどちらを使ったかも記録します。後日の年末調整で年税額との差を精算しますが、賞与支払時の源泉徴収を省略できるわけではありません。
よくある質問
Q. 前月は休職で給与0円でした。算出率は0%ですか?
A. 0%とは限りません。前月給与がない場合に該当するため、賞与の社会保険料等控除後額を6(一定の場合は12)で割り、令和8年分月額表で求めた税額を6倍(または12倍)します。
Q. 賞与支給月に子どもが生まれました。
A. 扶養控除等申告書の異動申告が賞与支払時までに反映され、その子が表上の扶養親族等に該当するなら、更新後の人数で算出率を引きます。年齢だけで所得控除の対象外でも、源泉徴収上の人数に含む場合があるため表の注記を確認します。
Q. 税額の最終調整はいつですか?
A. 賞与時の源泉徴収は概算の前払いです。年末調整の対象者は、その年の給与・賞与を合計して年税額を計算し、源泉徴収済み額との差を年末調整します。
出典
本記事は一般的な情報提供を目的としたものです。個別の判断は税務署・税理士にご確認ください。