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同一労働同一賃金とは — 8条と9条は別の禁止。令和8年10月から雇入れ時の明示事項が1つ増える

結論から言うと、同一労働同一賃金という名前の法律はありません。実務で根拠になるのはパートタイム・有期雇用労働法(正式名称は「短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律」)の8条と9条、そして派遣労働者については労働者派遣法30条の3と30条の4です。

そして、この8条と9条はまったく別の禁止です。8条は「不合理と認められる相違を設けてはならない」、9条は「差別的取扱いをしてはならない」。9条には「不合理かどうか」の判断が要りません。条件に当てはまる人については、待遇差そのものが禁じられます。この2本を混ぜて「同じ仕事なら同じ賃金にしなければならない」と理解してしまうと、条文のどこにも書いていないルールを守ろうとすることになります。

この記事では、8条と9条の切り分け、条ごとに違う「義務」と「努力義務」、勧告に従わなかったときの公表を定めた18条2項の列挙に、8条が入っていないという条文上の事実、そして令和8年10月1日から雇入れ時の明示事項が4つから5つに増える改正まで、すべて条文で確認していきます。

同一労働同一賃金とは何か — 法律の名前と対象者

同一労働同一賃金は、同じ企業のなかで、正社員(無期雇用フルタイム労働者)と、パートタイム労働者・有期雇用労働者・派遣労働者との間の不合理な待遇差をなくすことを目指す政策の呼び名です。条文上の用語ではありません。

パートタイム・有期雇用労働法2条は、対象者を次のように定義しています。短時間労働者は、1週間の所定労働時間が、同一の事業主に雇用される通常の労働者の1週間の所定労働時間に比べて短い労働者です。有期雇用労働者は、事業主と期間の定めのある労働契約を締結している労働者です。この2つをまとめて短時間・有期雇用労働者と呼びます。

「フルタイムだから対象外」は成り立たない

週40時間のフルタイム勤務でも、契約期間の定めがあれば2条2項の有期雇用労働者に当たり、8条・9条の対象です。逆に、無期契約でも所定労働時間が短ければ短時間労働者に当たります。時間が短いか、期間の定めがあるか、どちらか一方で対象になります。「契約社員は正社員と同じ時間働いているから関係ない」という整理は条文と合いません。

なお、法律には「通常の労働者」の定義が置かれていません。実務上は、その事業所で正社員として扱われている無期雇用フルタイムの労働者が比較対象になりますが、比較の相手が条文で一意に決まっているわけではない点は押さえておく必要があります。

施行の時期も確認しておきます。厚生労働省の同一労働同一賃金特集ページによれば、パートタイム・有期雇用労働法は2020年4月1日に施行され、中小企業への適用は2021年4月1日からで、この日に全面施行となりました。労働者派遣法の改正は2020年4月1日施行です。中小企業の猶予はすでに終わっており、現在の条文に企業規模による例外はありません。

8条と9条は別の禁止。ここを混ぜると話が通じない

8条の見出しは「不合理な待遇の禁止」です。条文は、基本給・賞与その他の待遇のそれぞれについて、通常の労働者の待遇との間に、①職務の内容(業務の内容および当該業務に伴う責任の程度)、②当該職務の内容および配置の変更の範囲、③その他の事情のうち、当該待遇の性質および当該待遇を行う目的に照らして適切と認められるものを考慮して、不合理と認められる相違を設けてはならない、と定めています。

ここで実務上いちばん重要なのは「それぞれについて」という書き方です。賃金の総額をまとめて比べるのではなく、基本給は基本給、通勤手当は通勤手当、賞与は賞与と、待遇ごとに、その待遇の性質と目的に照らして不合理かどうかを見ます。「総額では見劣りしないから問題ない」という説明は、条文の構造とかみ合いません。

9条の見出しは「通常の労働者と同視すべき短時間・有期雇用労働者に対する差別的取扱いの禁止」です。こちらは条件に当てはまる人について、短時間・有期雇用労働者であることを理由として、基本給・賞与その他の待遇のそれぞれについて差別的取扱いをしてはならない、と定めます。

短時間・有期雇用労働者の待遇 — どちらの条文で見るか 職務の内容が 通常の労働者と同一か 雇用関係が終了するまでの 全期間で配置の変更範囲も同一か 9条 差別的取扱いの禁止 不合理かを問わない 8条 不合理な待遇の禁止(待遇のそれぞれについて判断) 職務の内容・配置の変更範囲・その他の事情を考慮 対象は 短時間・有期 雇用労働者の全員 はい はい いいえ いいえ 9条に当たらなくても8条は必ず効く。8条は短時間・有期雇用労働者の全員が対象。 根拠: パートタイム・有期雇用労働法8条・9条
8条と9条の関係。9条は入口が狭いかわりに効き目が強く、8条は全員に及ぶかわりに「不合理か」の判断を経る。

9条が効く人は狭い — 鍵は「全期間」の3文字

9条が適用されるのは、次の2つを両方満たす人だけです。

  1. 職務の内容が通常の労働者と同一であること(この人を条文は「職務内容同一短時間・有期雇用労働者」と呼びます)
  2. 当該事業所における慣行その他の事情からみて、当該事業主との雇用関係が終了するまでの全期間において、その職務の内容および配置が、通常の労働者の職務の内容および配置の変更の範囲と同一の範囲で変更されることが見込まれること

実務でハードルになるのは2つ目です。「全期間において」「見込まれる」という書き方なので、判断は現時点の職務内容だけでは終わりません。たとえば正社員には転勤や職種転換があり、パートには契約上それがない、という運用であれば、いま同じ仕事をしていても2つ目の条件を満たしません。この場合、9条ではなく8条で見ることになります

8条に落ちたからといって、待遇差が自由になるわけではありません。8条は待遇のそれぞれについて、その待遇の性質と目的に照らして不合理かを問うので、「転勤がないこと」で説明がつく待遇(たとえば転勤に伴う手当)と、説明がつきにくい待遇(たとえば通勤手当や、勤務している事業所の食堂の利用)とを、同じ理由でまとめて説明することはできません。

条ごとに義務と努力義務が違う(一覧)

同一労働同一賃金の話は8条・9条に集まりがちですが、実際に労働局から指摘を受けやすいのは、むしろ手続を定めた条文のほうです。条文の文末が「しなければならない」なのか「努めるものとする」なのかで、性質がまったく違います。

条文内容性質及ぶ範囲
6条1項特定事項の文書等による明示義務(違反は過料10万円以下)短時間・有期の全員
6条2項特定事項以外の労働条件の明示努力義務同上
8条不合理な待遇の禁止義務(罰則なし)同上
9条差別的取扱いの禁止義務(罰則なし)通常の労働者と同視すべき者
10条賃金の決定努力義務9条該当者を除く
11条1項職務の遂行に必要な能力を付与する教育訓練義務職務内容同一の者(9条該当者を除く)
11条2項それ以外の教育訓練努力義務短時間・有期の全員
12条福利厚生施設の利用機会義務9条該当者を除く
13条通常の労働者への転換の推進措置義務(3つのうちいずれか)短時間・有期の全員
14条1項雇入れ時の説明義務同上
14条2項求めがあったときの説明義務同上
16条相談のための体制の整備義務同上

この表で見落とされやすいのが12条の福利厚生施設です。条文は「厚生労働省令で定めるもの」としており、同法施行規則5条は給食施設・休憩室・更衣室の3つを挙げています。限定列挙です。したがって、社宅・保養所・企業内クラブなどは12条の「利用の機会を与えなければならない」義務の対象ではありません。ただし、対象外だから差をつけてよいという意味ではなく、8条の不合理性の判断には引き続き乗ります。12条は「議論の余地なく機会を与えること」を定めた条文であって、8条の上限を画すものではありません。

もう1つ、10条の努力義務から外れる賃金も条文を見ないと分かりません。10条は「その賃金(通勤手当その他の厚生労働省令で定めるものを除く。)」と書いており、施行規則3条は、通勤手当・家族手当・住宅手当・別居手当・子女教育手当その他名称のいかんを問わず支払われる賃金と定めています。ただしここには除外の除外があり、職務の内容に密接に関連して支払われるものは除かれません(つまり10条の対象に残ります)。手当の名前ではなく、その手当が職務と結びついているかで扱いが変わります。

最低賃金チェッカーで、いまの時給が都道府県の最低賃金を下回っていないか確かめる

公表の対象条文に8条は入っていない

ここが、この記事でいちばんお伝えしたい条文上の事実です。

18条1項は、厚生労働大臣が事業主に対して報告を求め、または助言・指導・勧告をすることができると定めています。そして18条2項は、勧告を受けた者がこれに従わなかったときにその旨を公表することができるとしています。問題は、2項が対象とする条文を明示的に列挙していることです。

18条2項が列挙している条文

第6条第1項、第9条、第11条第1項、第12条から第14条まで、および第16条 — この7か所に違反している事業主に勧告をし、従わなかったときに公表できる、という構造です。第8条は、この列挙に入っていません(第10条・第11条第2項も同様に入っていません)。

つまり、条文の作りとして均衡待遇(8条)違反は、勧告に従わなかった場合の「公表」という是正手段が用意されていないことになります。一方で、差別的取扱いの禁止(9条)は列挙に入っています。ここでも8条と9条の性質の違いが表れています。

では8条はどう争われるのか。パートタイム・有期雇用労働法は、23条で個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律の4条・5条および12条から19条までの規定を適用しないと定め、24条以下に専用の解決ルートを置いています。24条1項により都道府県労働局長が助言・指導・勧告を行い、それでも解決しないときは調停に委任される仕組みです。加えて、8条は私法上の効力を持つ規定として、裁判で待遇差の是非が争われることになります。

罰則についても確認しておきます。この法律の罰則は31条ただ1本で、内容は「第6条第1項の規定に違反した者は、十万円以下の過料に処する」です。8条にも9条にも罰則はありません。「同一労働同一賃金に違反すると罰金」という説明を見かけることがありますが、条文上、金銭的な制裁が定められているのは雇入れ時の文書明示を怠った場合だけです。

説明義務(14条)と、説明を求めたことによる不利益の禁止

14条は3つの項からできており、それぞれ役割が違います。

1項と2項は説明する中身が違います。1項は「これからこうします」という措置の内容、2項は「あなたと正社員でここが違い、理由はこうです」という個別の説明です。1項をやったから2項が済むわけではありません。

同じ「求めたことによる不利益取扱いの禁止」は、24条2項にも置かれています。こちらは都道府県労働局長に紛争解決の援助を求めたことを理由とする解雇その他の不利益な取扱いを禁じるものです。説明を求める段階(14条3項)と、労働局に持ち込む段階(24条2項)の両方に、報復を封じる規定が置かれているという構造になっています。

令和8年10月1日の改正 — 明示事項が4つから5つへ

2026年(令和8年)4月28日に改正省令・告示が公布され、2026年10月1日から施行・適用されます(令和8年厚生労働省令第87号)。厚生労働省は同一労働同一賃金ガイドラインの改正を含むものと案内しています。

省令の条文を現行版と未施行版で突き合わせたところ、変わるのは施行規則2条1項の「特定事項」でした。6条1項が雇入れ時に文書等で明示するよう求めている事項が、4つから5つに増えます

現行(令和8年9月30日まで)改正後(令和8年10月1日から)
1号昇給の有無昇給の有無
2号退職手当の有無退職手当の有無
3号賞与の有無賞与の有無
4号雇用管理の改善等に関する事項に係る相談窓口法14条2項の規定による説明を求めることができる旨(新設)
5号雇用管理の改善等に関する事項に係る相談窓口(現行4号が繰り下がり)
6条1項の「特定事項」— 令和8年10月1日から1つ増える 現行(〜令和8年9月30日) 昇給の有無 退職手当の有無 賞与の有無 相談窓口 改正後(令和8年10月1日〜) 昇給の有無 退職手当の有無 賞与の有無 説明を求められる旨(新設) 相談窓口 6条1項違反は31条の過料10万円以下の対象。明示は「書けばよい」ではなく罰則つきの義務。 根拠: 同法施行規則2条1項(令和8年厚生労働省令第87号による改正後の条文)
令和8年10月1日から、パート・有期雇用の雇入れ通知書には「待遇差の説明を求めることができる」旨の記載が必要になる。

この改正の実務上の意味は小さくありません。6条1項違反は31条の過料の対象だからです。令和8年10月1日以降にパート・有期雇用労働者を雇い入れるときは、雇入れ通知書やパートタイム労働条件通知書の様式に「法14条2項の規定による説明を求めることができる旨」を追加しておく必要があります。様式を作り置きしている会社は、10月1日をまたぐ前に差し替えを済ませておくことになります。

なお、法律の条文のほうは、この改正で変わりません。本記事で扱った12か条(2条・6条・8条〜14条・16条・18条・31条)について、現行版と令和8年10月1日施行の未施行版を条ごとに突き合わせたところ、すべて一致しました。変わるのは省令と告示(ガイドライン)です。

派遣は別ルート — 30条の3と30条の4

派遣労働者はパートタイム・有期雇用労働法ではなく、労働者派遣法で処理されます。しかも条文の作りが違うので、同じ理解で読むと外します。

30条の3第1項は、派遣元事業主に対し、派遣先に雇用される通常の労働者の待遇との間に不合理と認められる相違を設けてはならないと定めます。比較の相手が自社ではなく派遣先である点が、パートタイム・有期雇用労働法8条との最大の違いです。

30条の3第2項は、職務の内容が派遣先の通常の労働者と同一で、かつ派遣就業が終了するまでの全期間において職務の内容および配置の変更の範囲が同一の範囲で変更されることが見込まれる派遣労働者について、正当な理由がなく、待遇を不利なものとしてはならないと定めます。パートタイム・有期雇用労働法9条が「差別的取扱いをしてはならない」と書くのに対し、派遣法は「正当な理由がなく」という留保を条文に置いている点が異なります。

そして30条の4が、いわゆる労使協定方式です。派遣元事業主が、過半数労働組合(ない場合は過半数代表者)との書面による協定で所定の事項を定めたときは、その範囲に属する派遣労働者の待遇について30条の3を適用しないという構造になっています。協定で定めるべき事項には、対象となる派遣労働者の範囲、賃金の決定方法(同種の業務に従事する一般の労働者の平均的な賃金の額として省令で定めるものと同等以上であること、および就業の実態の向上に応じて改善されること)、公正な評価などが含まれます。

労使協定方式でも外れないものがある

30条の4第1項のかっこ書きは、協定の対象となる「待遇」から40条2項の教育訓練・40条3項の福利厚生施設その他省令で定めるものを除いています。つまりこれらは労使協定方式を選んでも派遣先均等・均衡の枠組みに残ります。また同項ただし書により、協定で定めた事項を遵守していない場合や、公正な評価に取り組んでいない場合は、30条の3の適用除外が働きません。協定を結んだこと自体が免除の根拠になるわけではありません。

間違えやすい点

よくある質問

Q. パートと正社員で時給が違うだけで違法になりますか?

A. 時給の差そのものを禁じる条文はありません。パートタイム・有期雇用労働法8条は、基本給・賞与その他の待遇のそれぞれについて、職務の内容、職務の内容および配置の変更の範囲、その他の事情のうち、当該待遇の性質および当該待遇を行う目的に照らして適切と認められるものを考慮して、不合理と認められる相違を設けてはならないと定めています。つまり問われるのは差の有無ではなく、その差が待遇の性質と目的に照らして不合理かどうかです。責任の重さや配置転換の範囲が実際に異なるのであれば、基本給に差があること自体は不合理と評価されないこともあります。一方で、その説明が実態と合っていない場合や、待遇の目的から見て差の理由になりえない場合には、8条の問題になります。個別の待遇が不合理に当たるかどうかは事案ごとの判断になるため、社会保険労務士や弁護士にご相談ください。

Q. 9条の「通常の労働者と同視すべき」に当たるかは、どう判断しますか?

A. 条文上は2つの条件を両方満たす必要があります。1つ目は職務の内容、すなわち業務の内容および当該業務に伴う責任の程度が通常の労働者と同一であること。2つ目は、当該事業所における慣行その他の事情からみて、当該事業主との雇用関係が終了するまでの全期間において、その職務の内容および配置が通常の労働者の職務の内容および配置の変更の範囲と同一の範囲で変更されることが見込まれることです。実務では2つ目が判断の分かれ目になります。「全期間において」「見込まれる」という書き方なので、現時点で同じ仕事をしているかだけでなく、将来の異動・転勤・職種転換の範囲まで含めて見ることになります。正社員にのみ転勤や職種転換の可能性があるという運用であれば、この条件は満たしません。

Q. 同一労働同一賃金に違反すると罰金がありますか?

A. パートタイム・有期雇用労働法の罰則は31条の1本だけで、内容は「第6条第1項の規定に違反した者は、十万円以下の過料に処する」です。6条1項は、短時間・有期雇用労働者を雇い入れたときに特定事項を文書の交付その他の方法で明示する義務を定めた条文です。したがって、金銭的な制裁が条文上定められているのは雇入れ時の明示を怠った場合であって、8条の不合理な待遇の禁止や9条の差別的取扱いの禁止そのものには罰則がありません。ただし罰則がないことと是正されないことは別です。18条1項により厚生労働大臣が助言・指導・勧告を行うことができ、18条2項に列挙された条文の違反については勧告に従わなかったときに公表することができます。8条についてはこの列挙に含まれていないため、24条以下の紛争解決援助や裁判で争われることになります。

Q. 通勤手当は正社員と同額にしなければなりませんか?

A. 条文が同額を義務づけているわけではありません。ただし8条は待遇のそれぞれについて、その待遇の性質および目的に照らして不合理かを判断すると定めており、通勤手当は通勤に要する費用を補填する目的の手当であるため、その目的に照らすと就業形態による差を説明しにくい類型に当たります。なお、10条が定める賃金決定の努力義務については、施行規則3条が通勤手当・家族手当・住宅手当・別居手当・子女教育手当その他名称のいかんを問わず支払われる賃金を対象から除いています。ただしこの除外には、職務の内容に密接に関連して支払われるものを除くという条件が付いており、職務と結びついた手当であれば10条の対象に残ります。10条の努力義務の枠外であることと、8条の判断の枠外であることは別の話です。

Q. パートから「正社員と何が違うのか説明してほしい」と言われました。応じる義務はありますか?

A. あります。14条2項は、事業主はその雇用する短時間・有期雇用労働者から求めがあったときは、当該短時間・有期雇用労働者と通常の労働者との間の待遇の相違の内容および理由、ならびに6条から13条までの規定により措置を講ずべきこととされている事項に関する決定をするに当たって考慮した事項について説明しなければならないと定めています。さらに14条3項は、この求めをしたことを理由として解雇その他不利益な取扱いをしてはならないと定めています。なお14条は18条2項の公表対象条文に含まれているため、説明を拒み続けて勧告にも従わない場合は、公表されうる立場になります。説明を求められた時点で、比較対象の設定と待遇差の理由を文書で整理しておくのが実務的です。

Q. 令和8年10月の改正で、既に雇っているパートにも何かする必要がありますか?

A. 6条1項は「短時間・有期雇用労働者を雇い入れたときは、速やかに」明示すると定めている条文なので、文言上の義務は雇入れの場面にかかります。したがって、改正後に雇い入れる人については、追加される「法14条2項の規定による説明を求めることができる旨」を含めた5項目を明示することになります。すでに在籍している人に対して遡って明示し直すことを6条1項が求めているわけではありません。ただし、契約更新のたびに労働条件を明示している運用であれば、更新の際に新しい様式を使うことになります。また、説明を求められれば14条2項の義務は在籍者にも及びます。10月1日をまたぐ前に、雇入れ通知書の様式と、契約更新時に使っている書式の両方を確認しておくのが確実です。

Q. 派遣社員の待遇は、派遣元と派遣先のどちらと比べるのですか?

A. 労働者派遣法30条の3第1項は、派遣元事業主が、その雇用する派遣労働者の待遇と、当該待遇に対応する派遣先に雇用される通常の労働者の待遇との間において不合理と認められる相違を設けてはならないと定めています。したがって比較の相手は派遣先の労働者です。ただし30条の4により、派遣元事業主が過半数労働組合または過半数代表者との書面による協定で所定の事項を定めた場合には、その範囲に属する派遣労働者の待遇について30条の3を適用しないという選択肢があります。これが労使協定方式です。この方式でも、40条2項の教育訓練や40条3項の福利厚生施設などは対象から除かれており、また協定で定めた事項を遵守していない場合や公正な評価に取り組んでいない場合には適用除外が働きません。

出典

この記事は一般的な情報提供であり、個別の事案に対する助言ではありません。ある待遇差が8条の「不合理と認められる相違」に当たるかどうかは、職務の内容、配置の変更の範囲、その他の事情と、その待遇の性質・目的に照らして事案ごとに判断されます。自社の待遇制度の適否、比較対象の設定、説明資料の作り方については、社会保険労務士・弁護士または都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)にご確認ください。

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