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就業規則とは — 常時10人以上で作成・届出義務。10人未満でも、作れば労働契約の内容になる

結論から言うと、就業規則の作成と届出を義務づけているのは労働基準法89条で、対象は「常時十人以上の労働者を使用する使用者」です。10人未満なら、この義務はありません。届け出る先は所轄の労働基準監督署長です。

ただし、ここで多くの会社が取り違えるのは、「作る義務があるかどうか」と「作ったものに効力があるかどうか」は、まったく別の話だということです。効力について定めているのは労働基準法ではなく労働契約法7条で、そこが要求しているのは届出ではなく周知です。しかも7条には人数の要件がありません。つまり10人未満の会社が任意に作った就業規則でも、周知していれば労働契約の内容になり、会社自身がそれに拘束されます。逆に、10人以上でまじめに届け出ていても、金庫にしまったままなら効力は生じません。

この記事では、記載しなければならない11項目、手続の3ステップ(意見を聴く・届け出る・周知する)、意見書は同意書ではないという条文の書き方、変更するときの制限、そして減給の制裁に置かれた二重の上限までを、条文の文言そのもので確認していきます。

作成義務があるのは「常時10人以上」の事業場

労働基準法89条の柱書は、次のように書かれています。

常時十人以上の労働者を使用する使用者は、次に掲げる事項について就業規則を作成し、行政官庁に届け出なければならない。次に掲げる事項を変更した場合においても、同様とする。

数え方で注意したいのが、この10人は会社全体ではなく事業場ごとに数えるという点です。条文だけを読むと主語は「使用者」ですが、意見聴取を定めた90条1項は「当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においては……」と事業場を単位にしており、届出先も労働基準法施行規則49条1項が「所轄労働基準監督署長」としています。厚生労働省も「モデル就業規則について」のページで「各事業場の実情に応じた就業規則を作成・届出してください」と書いています。

したがって、たとえば本社8人・支店12人の会社(全社で20人)なら、作成と届出の義務が生じるのは支店だけです。逆に、全社で30人いても各事業場が9人ずつなら、89条の義務は生じません。多店舗の小売業や、少人数のクリニックを複数抱える法人では、この数え方で結論が変わります。

また、条文が「常時」十人以上と書いているとおり、判断するのは通常の状態です。加えて施行規則49条1項は「常時十人以上の労働者を使用するに至つた場合においては、遅滞なく……届出をしなければならない」と定めており、10人に達した時点で速やかに動くことを求めています。9人で運営していた事業場が採用で10人になった時が、その時点です。

数えるのは「労働者」であって正社員ではない89条は「労働者」としか書いておらず、雇用形態で区別していません。パートタイマーやアルバイトも労働基準法上の労働者ですから、10人の数に含めて判断することになります。正社員だけで数えて「まだ9人だから大丈夫」と考えていると、実際にはとうに義務が生じていた、ということが起こります。

記載事項は11項目 — 絶対的3つと相対的8つ

89条が列挙している事項は、全部で11あります。区分の名前は条文には出てきませんが、書き方が2種類に分かれているのが読み取れます。1号から3号までは無条件に「〜に関する事項」と書かれているのに対し、3号の2以下は「〜の定めをする場合においては」という条件付きになっています。前者が絶対的必要記載事項、後者が相対的必要記載事項と呼ばれるものです。

記載する事項区分
1号始業・終業の時刻、休憩時間、休日、休暇、交替制の場合の就業時転換絶対
2号賃金の決定・計算・支払の方法、賃金の締切りと支払の時期、昇給絶対
3号退職に関する事項(解雇の事由を含む絶対
3号の2退職手当(適用される労働者の範囲・決定・計算・支払方法・支払時期)相対
4号臨時の賃金等(退職手当を除く)および最低賃金額相対
5号労働者に食費・作業用品その他の負担をさせる定め相対
6号安全および衛生に関する定め相対
7号職業訓練に関する定め相対
8号災害補償および業務外の傷病扶助に関する定め相対
9号表彰および制裁の定め(その種類および程度)相対
10号そのほか、当該事業場の労働者のすべてに適用される定め相対
「相対的」は「書かなくてよい」という意味ではない誤解が多いところです。条文は「〜の定めをする場合においては、これに関する事項」と書いています。つまりその制度を設けるなら、就業規則に書かなければならないという意味です。退職金制度が現に運用されているのに就業規則に一言も書いていなければ、3号の2に違反しています。制度を持たない会社が書かなくてよい、というだけのことです。

実務上とくに見落とされやすいのが9号の「表彰及び制裁」です。減給や出勤停止といった懲戒処分は、就業規則に種類と程度を書いていなければ根拠がありません。あとで触れる減給の上限(91条)も、そもそも就業規則に定めがあることを前提にした条文になっています。

手続は3つ — 意見を聴く・届け出る・周知する

就業規則をめぐる手続は、条文の上では3つに分かれています。それぞれ根拠条文が別で、果たすべき相手も違います。

  1. 意見を聴く(90条1項) — その事業場に労働者の過半数で組織する労働組合があればその労働組合、なければ労働者の過半数を代表する者の意見を聴く。
  2. 届け出る(89条・施行規則49条) — 所轄労働基準監督署長へ届け出る。このとき90条2項により「意見を記した書面」を添付し、施行規則49条2項によりその書面には労働者を代表する者の氏名が記載されていなければならない。
  3. 周知する(106条1項・施行規則52条の2) — 労働者に周知させる。方法は施行規則52条の2が3つ挙げている。
就業規則 — 手続の層(労働基準法)と効力の層(労働契約法)は別物 ① 手続の層:労働基準法(守らないと罰則) ① 意見を聴く 労基法90条1項 過半数組合/過半数代表者 ② 届け出る 労基法89条・労基則49条 意見書を添えて所轄署長へ ③ 周知する 労基法106条・労基則52条の2 掲示/書面交付/電子+機器 ①②③を怠ると 労基法120条1号 → 30万円以下の罰金(ただし②の意見書添付=90条2項は、この号に挙げられていない) ② 効力の層:労働契約法(労働契約の中身が決まる) 労契法 7条 … 合理的な労働条件 + 周知 → その内容が労働契約の内容になる 労契法12条 … 就業規則を下回る労働契約は、その部分が無効(=就業規則は最低基準) 労契法10条 … 不利益変更は 周知 + 合理性(5要素)ではじめて有効になりうる 効力を決めているのは届出ではなく周知。届け出ても周知していなければ労働契約の内容にならない。 労契法7条・12条に人数の要件は無い。10人未満で任意に作った就業規則にも、この層はそのまま効く。
労働基準法が定める手続(罰則付き)と、労働契約法が定める効力は別の層にある。届出は前者、効力は後者で決まる。

意見書は同意書ではない

ここは条文を読むと、はっきり書き分けられています。90条1項が使用者に求めているのは「意見を聴かなければならない」であって、同意を得ることでも、協議して合意することでもありません。2項も「前項の意見を記した書面を添付しなければならない」とあるだけです。

添付する書面に何が要るのかを定めた施行規則49条2項も、「労働者を代表する者の氏名を記載したものでなければならない」とだけ書いています。賛成であることも、押印があることも要件になっていません。

したがって、意見書に「この変更には反対する」と書かれていても、意見を聴いて、その意見を記した書面を添えて届け出たのであれば、手続としては要件を満たしています。労働者代表が署名を拒むといった場合は別の問題が生じますが、少なくとも「反対されたから届出できない」わけではありません。

36協定とはここが違う同じ労使の書面でも、時間外労働の36協定は36条1項が「厚生労働省令で定めるところによりこれを行政官庁に届け出た場合においては」と書いており、届出そのものが効力の条件になっています。就業規則にはこの書き方がありません。届出は89条の義務(怠れば罰則)ではあるものの、効力を左右するのは次に見る周知のほうです。

周知していない就業規則は効力を持たない

労働契約法7条は次のように定めています。

労働者及び使用者が労働契約を締結する場合において、使用者が合理的な労働条件が定められている就業規則を労働者に周知させていた場合には、労働契約の内容は、その就業規則で定める労働条件によるものとする。

条件は「合理的な労働条件が定められている」ことと「周知させていた」ことの2つで、届け出たかどうかは書かれていません。就業規則を作り、監督署に届け出て、しかし社長の机の引き出しにしまったままにしている——という状態は、労働基準法106条違反(罰則の対象)であると同時に、その就業規則で定めた労働条件が労働契約の内容になっていない可能性がある、ということです。会社にとっては、懲戒処分の根拠や配置転換の根拠を失うことを意味します。

周知の方法は施行規則52条の2が3つ挙げています。

  1. 常時各作業場の見やすい場所へ掲示し、または備え付けること
  2. 書面を労働者に交付すること
  3. 使用者の電子計算機に備えられたファイル等に記録し、かつ、各作業場に労働者が当該記録の内容を常時確認できる機器を設置すること

3号の書き方に注意してください。ファイルに記録するだけでは足りず、「常時確認できる機器を設置すること」までが要件です。共有サーバーにPDFを置いたが、現場にはパソコンが1台もない、という運用は3号を満たしていません。

10人未満でも、作れば労働契約の内容になる

この記事でいちばんお伝えしたいのがここです。労働契約法7条にも12条にも、労働者数の要件がありません。

労働基準法89条の義務は「常時十人以上」に限定されています。ですから9人の会社に作成義務も届出義務もありません。ところが、その会社が任意に就業規則を作り、合理的な内容で、労働者に周知していれば、労働契約法7条によってその内容は労働契約の内容になります。さらに12条により、就業規則の基準に達しない個別の労働契約は、その部分が無効になり、就業規則の基準に置き換わります。

つまり「うちは10人未満だから就業規則は関係ない」という理解は、前半(義務)だけを見て後半(効力)を見落としています。作った以上は会社自身が拘束されるので、雛形をそのまま流用して、実際には運用していない手当や休暇の規定を残しておくと、そちらが労働契約の内容として効いてしまいます。

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変更するとき — 不利益変更は原則できない

変更の手続は作成と同じです。89条の柱書が「次に掲げる事項を変更した場合においても、同様とする」と書いており、労働契約法11条も「就業規則の変更の手続に関しては、労働基準法第八十九条及び第九十条の定めるところによる」と明示しています。つまり変更のたびに、意見を聴いて、意見書を添えて届け出る必要があります。

問題は中身のほうです。労働契約法9条は、こう定めています。

使用者は、労働者と合意することなく、就業規則を変更することにより、労働者の不利益に労働契約の内容である労働条件を変更することはできない。ただし、次条の場合は、この限りでない。

原則は「できない」で、例外が10条です。そして10条は、有効になるための条件を①変更後の就業規則を労働者に周知させること②変更が合理的であることの2つとしたうえで、合理性を判断する要素を条文の中に列挙しています。

労働契約法10条が挙げる考慮要素実務で見られる点
労働者の受ける不利益の程度減額幅、影響を受ける人数、代償措置の有無
労働条件の変更の必要性経営上の必要性、制度の統一の必要
変更後の就業規則の内容の相当性水準が同業他社と比べて妥当か、経過措置があるか
労働組合等との交渉の状況説明会の実施、協議の回数と内容
その他の就業規則の変更に係る事情上記に収まらない個別事情

ここでも周知が条件に入っていることに注目してください。7条(締結時)と10条(変更時)の両方で周知が要求されており、周知は2回効く要件です。なお10条にはただし書があり、「就業規則の変更によっては変更されない労働条件」として労使が個別に合意していた部分は、12条に該当する場合を除いて変更されません。

効力の順位と「最低基準効」

就業規則は、単独で存在しているわけではありません。上には法令と労働協約があり、下に個々の労働契約があります。

順位根拠条文内容
法令労基法92条1項就業規則は法令に反してはならない
労働協約労基法92条1項就業規則は当該事業場に適用される労働協約に反してはならない
就業規則労契法12条これに達しない労働契約は、その部分が無効になり就業規則の基準による
労働契約労契法7条ただし書就業規則と異なる合意をした部分は、12条に該当する場合を除き、その合意による

労働契約法12条が定めているのが、いわゆる最低基準効です。「就業規則で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分については、無効とする。この場合において、無効となった部分は、就業規則で定める基準による。」——ここで無効になるのは「達しない」場合だけであり、就業規則を上回る個別の合意は有効に残ります。この片面性が、7条ただし書と組み合わさって「就業規則は下限を決めるもの」という構造をつくっています。

また、就業規則が法令や労働協約に反していた場合について、労働契約法13条が「当該反する部分については、第七条、第十条及び前条の規定は……適用しない」と定めています。つまり法令違反の条項は、周知していても労働契約の内容にならないということです。労働基準法92条2項は、行政官庁が変更を命じられるとも定めており、その命令は施行規則50条により様式第17号の文書で行われます。

減給の制裁には二重の上限がある

就業規則で懲戒としての減給を定める場合、労働基準法91条が上限を置いています。条文はこの一文だけです。

就業規則で、労働者に対して減給の制裁を定める場合においては、その減給は、一回の額が平均賃金の一日分の半額を超え、総額が一賃金支払期における賃金の総額の十分の一を超えてはならない。

上限が2つあることに注意してください。1回あたりの上限と、その賃金支払期の合計の上限です。平均賃金は労働基準法12条1項が定義しており、「算定すべき事由の発生した日以前三箇月間に支払われた賃金の総額を、その期間の総日数で除した金額」です。除するのは労働日数ではなく暦の総日数である点が間違えやすいところです。

計算例:直前の賃金締切日から遡る3か月が5月1日〜7月31日(総日数92日)、その間に支払われた賃金の総額が920,000円だったとします。

  • 平均賃金 = 920,000円 ÷ 92日 = 10,000円
  • 1回あたりの上限 = 10,000円 ÷ 2 = 5,000円
  • その月の賃金総額が300,000円なら、総額の上限 = 300,000円 ÷ 10 = 30,000円
  • したがって5,000円の減給はその月に6回まで(5,000円×6=30,000円)。7回目は35,000円となり、条文の上限を超えるのでその月には引けません。
遅刻・早退で働かなかった分を引くのは「減給の制裁」ではない91条が制限しているのは制裁としての減給です。遅刻して30分働かなかった分の賃金を差し引くのは、その時間の労働に対する賃金が発生していないという話であって、制裁ではありません。両者を混ぜて「遅刻控除も平均賃金の半額まで」と考える必要はない一方、遅刻1回につき一律5,000円のように実際の不就労時間と対応しない金額を引く定めは制裁の性格を帯びるため、91条の枠内かどうかを確認することになります。

なお、制裁を行うには前提として89条9号(表彰及び制裁の定めをする場合の種類および程度)を就業規則に記載していることが必要です。規定のない懲戒はできません。

罰則は30万円以下の罰金 — 拘禁刑は付いていない

就業規則まわりの違反は、労働基準法120条1号にまとめて置かれています。同号が挙げているのは89条・90条1項・91条・106条で、法定刑は30万円以下の罰金です。

ここで条文を隣と比べると、書き分けが見えてきます。労働時間の32条、休憩の34条、休日の35条、割増賃金の37条といった違反は119条1号にあり、そちらの法定刑は6か月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金です。つまり就業規則に関する義務の違反には拘禁刑が用意されておらず、罰金のみという扱いになっています。

90条は「1項」だけが挙げられている120条1号を読むと、列挙されているのは「第九十条第一項」です。意見を記した書面の添付を定めた90条2項は、この号に出てきません。意見を聴かなかった場合と、意見書を添えなかった場合とで、条文上の位置づけが違うということです。もっとも、添付書類を欠いた届出は89条の届出として不備であるため、実務上は指導の対象になります。

このほか、92条2項の変更命令に違反した場合は120条3号が受けており、こちらも30万円以下の罰金です。

よくある質問

Q. 従業員が10人未満なら就業規則は作らなくてよいですか?

A. 労働基準法89条の作成・届出義務は生じません。同条が対象としているのは「常時十人以上の労働者を使用する使用者」だからです。ただし義務がないことと、作った就業規則に効力がないことは別です。労働契約法7条には労働者数の要件がなく、合理的な労働条件が定められた就業規則を周知していれば、その内容が労働契約の内容になります。12条の最低基準効も同じく人数を問いません。つまり10人未満の会社が任意に作った就業規則にも拘束力があり、実際には運用していない手当や休暇の規定を雛形のまま残しておくと、その規定が労働契約の内容として効いてしまいます。作らない判断も、作ったうえで実態に合わせる判断も可能ですが、作ったものを放置するのがいちばん危険です。

Q. 10人はパートやアルバイトも数えますか?

A. 数えます。89条は「常時十人以上の労働者を使用する使用者」と書いているだけで、雇用形態による区別をしていないためです。パートタイマーやアルバイトも労働基準法上の労働者ですから、正社員だけで数えて9人だから対象外、という判断はできません。また数える単位は会社全体ではなく事業場ごとです。90条1項が「当該事業場に」と書き、施行規則49条1項が「所轄」労働基準監督署長への届出を求めていること、厚生労働省が「各事業場の実情に応じた就業規則を作成・届出してください」としていることから、事業場を単位に判断することになります。本社8人・支店12人なら、義務が生じるのは支店だけです。

Q. 意見書に反対意見が書かれていても届け出られますか?

A. 届け出られます。90条1項が求めているのは「意見を聴かなければならない」ことであって、同意を得ることでも合意することでもありません。2項も「意見を記した書面を添付しなければならない」とだけ定めており、賛成であることを要件にしていません。添付書類の内容を定めた労働基準法施行規則49条2項も「労働者を代表する者の氏名を記載したものでなければならない」としているだけです。したがって「この変更には反対である」と記載された意見書を添えて届け出ても、手続の要件は満たします。反対意見が出たという事実は、後日その変更の合理性が争われたときに労働契約法10条の「労働組合等との交渉の状況」として評価される場面はありますが、届出の可否とは別の問題です。

Q. 届け出さえすれば就業規則の効力は生じますか?

A. 届出は効力の条件になっていません。労働契約法7条が効力の条件としているのは「合理的な労働条件が定められている」ことと「労働者に周知させていた」ことの2つで、届出には触れていません。時間外労働の36協定が労働基準法36条1項で「これを行政官庁に届け出た場合においては」と届出を効力の条件にしているのとは、条文の書き方が違います。届出は89条が課す義務であり、怠れば120条1号の罰則の対象になりますが、効力を左右するのは周知のほうです。逆に言えば、きちんと届け出ていても社内で誰も見られない状態にしていれば、その就業規則で定めた条件が労働契約の内容になっていない可能性があります。

Q. 就業規則をサーバーに置いておけば周知したことになりますか?

A. 置いただけでは足りません。労働基準法施行規則52条の2は周知の方法を3つ定めており、電子的な方法は第3号ですが、その要件は「使用者の使用に係る電子計算機に備えられたファイル……に記録し、かつ、各作業場に労働者が当該記録の内容を常時確認できる機器を設置すること」です。記録することと、確認できる機器を置くことの両方が要件になっています。共有フォルダにPDFを保存しているが現場に端末がない、という状態は3号を満たしません。ほかの方法は、第1号の「常時各作業場の見やすい場所へ掲示し、又は備え付けること」と、第2号の「書面を労働者に交付すること」です。いずれか1つを確実に満たしているかを確認してください。

Q. 就業規則を変更して手当を減らすことはできますか?

A. 労働契約法9条が原則として「労働者と合意することなく……労働者の不利益に労働契約の内容である労働条件を変更することはできない」と定めています。例外が10条で、変更後の就業規則を周知させ、かつ変更が合理的であるときに限って、変更後の内容が労働条件になります。合理性の考慮要素は10条自身が列挙しており、労働者の受ける不利益の程度、労働条件の変更の必要性、変更後の就業規則の内容の相当性、労働組合等との交渉の状況、その他の事情の5つです。手当の廃止は不利益の程度が大きくなりやすいため、経過措置や代償措置、説明と協議の記録が実際上の分かれ目になります。なお変更の手続そのものは作成時と同じで、意見を聴き、意見書を添えて届け出る必要があります。

Q. 就業規則と雇用契約書の内容が違う場合はどちらが優先しますか?

A. 労働条件が就業規則を下回っている部分については、労働契約法12条により契約のその部分が無効となり、就業規則の基準に置き換わります。条文が無効としているのは「就業規則で定める基準に達しない」場合だけなので、逆に就業規則を上回る個別の合意は有効に残ります。労働契約法7条ただし書も、就業規則と異なる労働条件を合意していた部分については12条に該当する場合を除きその合意によるとしています。つまり就業規則は下限を定めるものだ、という整理です。ただし就業規則そのものが法令や労働協約に反している部分については、13条により7条・10条・12条が適用されないため、この順序の外に置かれます。

Q. 遅刻3回で5,000円の減給という規定は作れますか?

A. 制裁としての減給には労働基準法91条が二重の上限を置いています。1回の額が平均賃金の1日分の半額を超えてはならず、かつ総額がその賃金支払期の賃金総額の10分の1を超えてはなりません。直前3か月の賃金総額が920,000円、その期間の総日数が92日なら平均賃金は10,000円ですから、1回あたりの上限は5,000円です。その月の賃金総額が300,000円なら総額の上限は30,000円となり、5,000円の減給は6回までとなります。したがって5,000円という額自体はこの例の範囲内ですが、前提として89条9号により制裁の種類と程度を就業規則に定めている必要があります。なお遅刻した時間分の賃金を差し引くことは制裁ではなく、91条の枠の話ではありません。

出典

この記事は一般的な情報提供であり、個別の事案についての助言ではありません。本記事で確認したのは労働基準法・同法施行規則・労働契約法の条文と、厚生労働省が公表している資料の記載までです。ある場所が労働基準法上の一つの事業場にあたるかどうかの判定、ある労働者が「常時使用する労働者」に含まれるかどうかの評価、就業規則の個別の条項が労働契約法7条の「合理的な労働条件」や10条の合理性を満たすかどうかの判断、ある処分が減給の制裁にあたるかどうかの評価までは含みません。実際の取扱いは事業場の実態と定めの内容により異なります。個別の判断については、事業場を管轄する労働基準監督署または社会保険労務士にご確認ください。

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