税金・経理・補助金ツールズ

解雇予告手当 — 30日分の平均賃金。名前は「手当」でも、税金は退職所得になる

結論から言うと、解雇予告手当は「平均賃金 × 30日分以上」です。労働基準法20条1項が根拠で、条文は「少くとも三十日前にその予告をしなければならない。三十日前に予告をしない使用者は、三十日分以上の平均賃金を支払わなければならない」と書いています。3か月の賃金総額が92万円・その期間の総日数が92日なら、平均賃金は1万円、解雇予告手当は30万円です。

実務で誤解が多いのは、これが「30日前の予告」か「30日分の手当」かの二択だと思われていることです。条文はそうなっていません。20条2項が「前項の予告の日数は、一日について平均賃金を支払つた場合においては、その日数を短縮することができる」と定めており、10日分を払えば予告は20日前で足ります。組み合わせられます。

そして、この記事でいちばんお伝えしたい一点。解雇予告手当は、税金の世界では「給与」ではなく「退職所得」です。国税庁タックスアンサー No.2736 が名指しで「退職所得とされる退職手当等に該当します」と書いています。退職所得控除は最低でも80万円あるので、30万円程度の解雇予告手当なら所得税は通常0円です。ところが「退職所得の受給に関する申告書」を出していないと、30万円から20.42%=61,260円が源泉徴収されます。紙1枚の有無で6万円が変わります。

解雇予告手当はいくら? — 結論と計算式

計算式は1本です。

解雇予告手当 = 平均賃金 × (30日 − 予告した日数)

即日解雇なら予告した日数は0日なので、平均賃金 × 30日分になります。

具体例で出します。賃金締切日が月末の月給制で、令和8年8月20日に解雇を告げた場合です。

項目根拠
算定の対象期間令和8年5月1日〜7月31日(92日12条2項=賃金締切日がある場合は直前の締切日から起算
5月の賃金300,000円
6月の賃金320,000円残業が多かった月
7月の賃金300,000円
賃金総額920,000円12条1項
平均賃金920,000円 ÷ 92日 = 10,000円12条1項=総日数で除す
解雇予告手当(即日解雇)10,000円 × 30日 = 300,000円20条1項

「三十日分以上」の「以上」に意味がある20条1項は「三十日分以上の平均賃金」と書いています。30日分は下限であって、上限ではありません。就業規則や個別の合意でこれを上回る額を定めることは自由で、その場合は定めた額が支払われます。休業手当の26条が「百分の六十以上」と書いているのと同じ構造で、労働基準法は最低基準を定める法律だという性格がここに出ています。

平均賃金の出し方 — 分母は「暦日数」

解雇予告手当でいちばん間違えやすいのが、この平均賃金です。12条1項は「これを算定すべき事由の発生した日以前三箇月間にその労働者に対し支払われた賃金の総額を、その期間の総日数で除した金額」と定めています。

分母は「総日数」=暦の日数であって、労働日数ではありません。上の例で、労働日が60日だったからといって 920,000円 ÷ 60日 = 15,333円 とすると、解雇予告手当は 460,000円 近くまで膨らみます。実際に支払うべき額との差は約16万円です。日給・時給制の人については12条1項ただし書に最低保障(労働日数で割った額の60%を下回ってはならない)が置かれていますが、これは下限を底上げする規定であって、原則の分母を労働日数に置き換えるものではありません。

平均賃金そのものの計算(3か月をどこから数えるか、何を賃金総額に入れるか、最低保障の当てはめ)は休業手当の記事で詳しく扱っています。休業手当も同じ12条の平均賃金を使うため、考え方は共通です。

12条3項は、対象期間の中に業務上の傷病による休業、産前産後の休業、使用者の責めに帰すべき事由による休業、育児介護休業、そして試みの使用期間があった場合、その日数とその期間中の賃金を分母・分子の両方から控除すると定めています。これらの期間は賃金が支払われないか低額になるため、控除しなければ平均賃金が不当に押し下げられるからです。

試用期間中に解雇する場合は、控除ではなく算入する

12条3項5号だけを読むと試用期間は常に控除するように見えますが、労働基準法施行規則3条が「試の使用期間中に平均賃金を算定すべき事由が発生した場合においては、法第十二条第三項の規定にかかわらず、その期間中の日数及びその期間中の賃金は……賃金の総額に算入する」と定めて、これを打ち消しています。試用期間中に解雇された人は在籍期間の全部が試用期間なので、控除すると分母も分子も残らず算定できなくなるためです。控除が働くのは、試用期間が終わった後に事由が発生し、算定期間の一部に試用期間が含まれている場合です。詳しくは試用期間の記事で扱っています。

予告と手当は組み合わせられる(20条2項)

20条2項の条文をもう一度置きます。

前項の予告の日数は、一日について平均賃金を支払つた場合においては、その日数を短縮することができる。

払った日数分だけ、予告期間を短くできるという意味です。したがって取り得る形は3つあります。

解雇を告げた日から解雇日まで(平均賃金 10,000円 の場合) 告知日 30日後 A 予告のみ 30日間 働いて在籍(予告期間) 手当 0円 B 即日解雇 30日分の平均賃金 = 300,000円 在籍 0日 C 併用 20日間 在籍(予告期間) 10日分 = 100,000円 20条2項 予告した日数 + 手当を払った日数 = 30日 になっていれば、条文を満たす。
労働基準法20条1項・2項による3つのパターン。予告日数と手当日数の合計が30日に達していればよい(平均賃金10,000円の例)。

Cのように20日前に予告して10日分(100,000円)を支払う形は、条文上まったく問題ありません。引き継ぎに2〜3週間だけ必要というときに実際に使われる形です。

支払いのタイミングは「解雇の日まで」即日解雇の場合、解雇予告手当は解雇の申し渡しと同時に支払うのが原則です。20条は予告に代えて手当を払うという構造なので、解雇の効力が生じる時点で支払われていなければ、予告も手当もない状態=20条違反になります。「後日振り込む」と伝えるだけでは条文を満たしません。

予告も手当も要らない場合 — 21条と「除外認定」

例外は2系統あります。人で外れる場合(21条)と、事情で外れる場合(20条1項ただし書)です。

21条 — 4類型の労働者

21条は次の4つに該当する労働者には20条を適用しないと定めています。ただし、それぞれに「引き続き使用されたら適用される」期間が付いています。ここが本題です。

対象この期間を超えて引き続き使用されたら20条が適用される
1号日日雇い入れられる者1か月
2号2か月以内の期間を定めて使用される者所定の期間
3号季節的業務に4か月以内の期間を定めて使用される者所定の期間
4号試の使用期間中の者14日

「試用期間中だから予告なしで解雇できる」は14日まで試用期間を3か月と定めていても、20条が外れるのは最初の14日だけです。21条ただし書は「第四号に該当する者が十四日を超えて引き続き使用されるに至つた場合においては、この限りでない」と書いています。入社15日目以降は、試用期間中であっても30日前の予告か30日分の平均賃金が必要です。試用期間の長さは関係ありません。

なお、20条が外れることと「自由に解雇できること」は別です。21条は解雇の手続(予告)についての規定であって、解雇そのものの有効性は労働契約法16条の解雇権濫用法理などで別に判断されます。本記事で確認したのは労働基準法の手続部分までです。

20条1項ただし書 — 天災事変・労働者の責に帰すべき事由

20条1項ただし書は「天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となつた場合又は労働者の責に帰すべき事由に基いて解雇する場合においては、この限りでない」と定めています。いわゆる懲戒解雇の場面がここです。

ただし、条文はここで終わっていません。20条3項が置かれています。

前条第二項の規定は、第一項但書の場合にこれを準用する。

「前条第二項」=19条2項は「その事由について行政官庁の認定を受けなければならない」という規定です。つまり、ただし書を使って予告なし・手当なしで解雇するには、労働基準監督署長の認定(解雇予告除外認定)が要ります。会社が自分で「これは労働者の責に帰すべき事由だ」と判断して即日解雇することは、条文が想定していません。

この要件は条文の準用をたどらないと見えない20条の本文にも1項ただし書にも「認定」の2文字は出てきません。20条3項が19条2項を準用するという形で入っているため、20条だけを読むと見落とします。懲戒解雇の場面で解雇予告手当をめぐる争いが起きやすいのは、この構造が理由の一つです。

税金は給与ではなく退職所得 — 申告書1枚で61,260円変わる

ここがこの記事の核心です。解雇予告手当は、名前は「手当」、計算は労働基準法の「平均賃金」、しかし課税は「退職所得」です。3つの層が食い違っているので、給与として源泉徴収してしまう事故が起きます。

国税庁タックスアンサー No.2736 は次のように書いています。

解雇予告手当 労働基準法第20条(解雇の予告)の規定により、使用者が30日前までに予告をしないで労働者を解雇する場合に、その使用者から支払われる予告手当は、退職所得とされる退職手当等に該当します。

退職所得になると、給与とは計算方法が根本から変わります。所得税法30条2項・3項により、収入金額から退職所得控除額を引き、残った額の2分の1が課税対象です。退職所得控除額は勤続年数20年以下なら40万円 × 勤続年数(勤続年数は1年未満切上げ)。さらに所得税法30条6項2号が、計算した金額が80万円に満たない場合は80万円とすると定めています。

勤続年数退職所得控除額解雇予告手当30万円だけの場合の課税退職所得
8か月(→1年に切上げ)40万円 × 1年 = 40万円 → 80万円(最低額)0円
3年40万円 × 3年 = 120万円0円
10年40万円 × 10年 = 400万円0円

解雇予告手当だけを受け取る限り、控除の最低額80万円に届かないので所得税は0円になります。30日分の平均賃金が80万円を超えるのは月給80万円級の人だけです。

それでも61,260円引かれることがある「退職所得の受給に関する申告書」の提出を受けていない場合、支払者は支給額に一律20.42%を掛けた額を源泉徴収します(国税庁 No.2732)。30万円 × 20.42% = 61,260円。本来の税額は0円なので、全額が取られ過ぎです。取り戻すには本人が確定申告をするしかありません。この申告書は退職金がある人だけのものだと思われがちですが、解雇予告手当も退職手当等なので対象です。

退職金と同じ年に受け取る場合は合算する

解雇予告手当と退職金はどちらも「退職手当等」なので、同じ年に受け取れば合算して計算します。退職金100万円+解雇予告手当30万円、勤続3年の例です。

手順計算
収入金額1,000,000円 + 300,000円 = 1,300,000円
退職所得控除額40万円 × 3年 = 1,200,000円
課税退職所得金額(1,300,000 − 1,200,000)× 1/2 = 50,000円
所得税・復興特別所得税50,000円 × 5% = 2,500円 → × 102.1% = 2,552円(1円未満切捨て)

解雇予告手当30万円を単独で見れば0円でしたが、退職金と合算すると税額が立ちます。「解雇予告手当は非課税」ではありません。控除の枠に収まっているから0円になっているだけで、枠は退職金と共有です。

退職金の税金計算機で、合算後の税額を計算する →

社会保険料・雇用保険料はどうなるか

定義条文を2本並べます。

法律定義
健康保険法3条5項(「報酬」)賃金、給料、俸給、手当、賞与その他いかなる名称であるかを問わず、労働者が、労働の対償として受けるすべてのもの
雇用保険法4条4項(「賃金」)賃金、給料、手当、賞与その他名称のいかんを問わず、労働の対償として事業主が労働者に支払うもの

どちらも「労働の対償」を要件にしています。解雇予告手当は、労働者が働いたことに対して支払われるものではなく、30日前の予告をしなかったことに対して支払われるものです。実務上も、社会保険料(健康保険・厚生年金保険)および雇用保険料の対象外として取り扱われています。

この節で条文から確認できるのは「報酬・賃金の定義が労働の対償を要件にしている」ところまでです。個別の支給が報酬・賃金に当たるかどうかの最終的な判断は、事業所を管轄する年金事務所およびハローワークの取扱いによります。取扱いに疑義がある場合はそちらにご確認ください。

結果として手取りが大きくなる同じ30万円でも、給与として支払われれば所得税・住民税・社会保険料・雇用保険料が引かれます。退職手当等として支払われる解雇予告手当は、申告書を出していれば所得税0円・社会保険料0円になり得ます。額面が同じでも手取りが違うのは、この分類の差によるものです。

解雇予告手当が発生しないケース

20条は「労働者を解雇しようとする場合」の規定です。解雇でなければ、そもそも適用されません。

ケース解雇予告手当理由
自己都合退職発生しない解雇ではない
退職勧奨に応じて辞めた発生しない合意による退職であって解雇ではない
有期契約の期間満了発生しない契約の終了であって解雇ではない
定年退職発生しない同上
21条の4類型(期間内)発生しない20条の適用除外
ただし書+除外認定あり発生しない20条1項ただし書・3項
30日前に予告した発生しない予告義務を果たしている

退職勧奨と解雇の線引きに注意会社から「辞めてほしい」と言われて退職届を出すと、形式上は合意退職になり、解雇予告手当は発生しません。解雇なのか退職勧奨なのかは、実務ではしばしば争いになります。労働基準法22条2項は、解雇の予告がされた日から退職の日までの間に、労働者が解雇の理由について証明書を請求したときは、使用者は遅滞なくこれを交付しなければならないと定めています。どういう扱いになっているかを書面で確認する手段が条文上用意されています。なお、勧奨によって合意退職になった場合は、解雇を縛る条文が外れる代わりに雇用保険の側で扱いが変わり、雇用保険法施行規則36条9号によって特定受給資格者となって所定給付日数が最大180日増え、33条1項の給付制限も付きません。この非対称は退職勧奨で条文ごと整理しています。

手当を払っても解雇できない期間がある(19条)

19条1項は、業務上の傷病で療養のため休業する期間とその後30日間、および産前産後の休業期間とその後30日間は解雇してはならないと定めています。これは20条とは別の条文で、解雇そのものを禁止しています。

したがって、この期間については解雇予告手当を払っても解雇できません。20条は「手続を踏めば解雇できる」という規定ですが、19条は「そもそもできない」という規定です。例外は打切補償(81条)を支払う場合と、天災事変その他やむを得ない事由で事業の継続が不可能となった場合だけで、後者には19条2項により行政官庁の認定が必要です。

払われないときに使える3つの条文

条文内容
114条(付加金)裁判所は、労働者の請求により、未払金と同一額の付加金の支払を命じることができる。対象は20条・26条・37条・39条9項の4つで、20条が筆頭に置かれている。請求は違反があった時から5年以内
119条1号(罰則)20条違反は6か月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金。19条違反も同じ号
22条(証明書)1項=退職時の証明書、2項=解雇予告の日から退職日までの間の解雇理由の証明書。使用者は遅滞なく交付しなければならない

22条は、項によって罰則の重さが違う証明書の交付義務(22条1項〜3項)に違反した場合は120条1号で30万円以下の罰金のみ。一方、22条4項(あらかじめ第三者と謀って就業を妨げる目的で通信をする、証明書に秘密の記号を記入する=いわゆるブラックリスト)に違反した場合は119条1号で、20条違反と同じ6か月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金です。同じ条文の中で、書類を出さないことより裏で手を回すことのほうが重く扱われています。

付加金は裁判所が命じるもので、労働基準監督署が課すものではありません。監督署に申告した場合の効果は是正指導であり、付加金を求めるには労働者自身が裁判で請求する必要があります。認められれば未払分と同額が上乗せされるため、30万円の解雇予告手当なら実質60万円になり得ます。

よくある質問

Q. 解雇予告手当はいくらもらえますか?

A. 平均賃金の30日分以上です。平均賃金は、解雇を告げられた日の直前の賃金締切日から遡る3か月間に支払われた賃金の総額を、その期間の総日数(暦の日数)で割って求めます。3か月の賃金総額が920,000円・総日数が92日なら平均賃金は10,000円で、30日分の解雇予告手当は300,000円です。分母は労働日数ではなく暦日数である点に注意してください。労働日60日で割ると15,333円となり、解雇予告手当が約16万円多く出てしまいます。なお30日分は下限であり、就業規則等でこれを上回る額が定められていればその額になります。

Q. 30日前に予告する代わりに、10日分だけ払うことはできますか?

A. できます。労働基準法20条2項が「前項の予告の日数は、一日について平均賃金を支払つた場合においては、その日数を短縮することができる」と定めており、支払った日数分だけ予告期間を短縮できます。10日分の平均賃金を支払えば、予告は20日前で足ります。予告した日数と手当を支払った日数の合計が30日に達していれば条文を満たします。よくある誤解は「30日前の予告か、30日分の手当か」の二択だというもので、条文はそうなっていません。実務では引き継ぎに必要な期間だけ在籍してもらい、残りを手当で払う形が使われます。

Q. 試用期間中なら、予告なしで解雇できますか?

A. 入社から14日までです。労働基準法21条4号は「試の使用期間中の者」を20条の適用除外にしていますが、同条ただし書が「第四号に該当する者が十四日を超えて引き続き使用されるに至つた場合においては、この限りでない」と定めています。試用期間を3か月と定めていても、20条が外れるのは最初の14日だけで、15日目以降は30日前の予告か30日分の平均賃金が必要になります。試用期間の長さは関係ありません。なお、これは予告という手続の話であって、解雇そのものが有効かどうかは別に判断されます。

Q. 懲戒解雇なら解雇予告手当は不要ですか?

A. 労働基準監督署長の認定を受けた場合に限り不要です。20条1項ただし書は「労働者の責に帰すべき事由に基いて解雇する場合」を除外していますが、20条3項が19条2項を準用しており、19条2項は「その事由について行政官庁の認定を受けなければならない」と定めています。この認定は解雇予告除外認定と呼ばれます。会社が自ら「これは労働者の責に帰すべき事由だ」と判断して即日解雇することは条文が想定していません。認定を受けずに予告も手当もなく解雇した場合、20条違反として114条の付加金や119条1号の罰則の対象になり得ます。

Q. 解雇予告手当に税金はかかりますか?

A. 退職所得として課税されますが、実際の税額は多くの場合0円になります。国税庁タックスアンサー No.2736 が、労働基準法20条により支払われる予告手当は退職所得とされる退職手当等に該当すると明示しています。退職所得は収入金額から退職所得控除額を引いた残額の2分の1が課税対象で、所得税法30条6項2号により退職所得控除額は最低でも80万円です。解雇予告手当が30万円なら控除額に届かないため課税退職所得は0円になります。ただし同じ年に退職金も受け取る場合は合算するため、控除額を超えれば税額が生じます。

Q. 解雇予告手当から20.42%引かれていました。なぜですか?

A. 「退職所得の受給に関する申告書」を提出していないためです。国税庁タックスアンサー No.2732 によると、この申告書の提出を受けていない場合、支払者は退職手当等の支給額に一律20.42パーセントを乗じた額を源泉徴収します。解雇予告手当30万円なら61,260円です。本来の税額は退職所得控除により0円であることが多いので、その差額は取られ過ぎになります。取り戻すには受給者本人が確定申告をして精算します。この申告書は退職金がある人だけのものと思われがちですが、解雇予告手当も退職手当等に含まれるため対象です。支払われる前に提出できるか確認するのが確実です。

Q. 解雇予告手当から社会保険料は引かれますか?

A. 一般に引かれません。健康保険法3条5項は「報酬」を、雇用保険法4条4項は「賃金」を、いずれも労働の対償として受けるもの・支払うものと定義しています。解雇予告手当は労働したことに対して支払われるものではなく、30日前の予告をしなかったことに対して支払われるものであるため、実務上これらの対象外として取り扱われています。結果として、同じ30万円でも給与として支払われる場合より手取りが大きくなります。ただし個別の支給が報酬・賃金に当たるかどうかの最終的な判断は、管轄の年金事務所およびハローワークの取扱いによります。

Q. 退職勧奨に応じて辞めた場合も解雇予告手当はもらえますか?

A. 解雇ではないため発生しません。労働基準法20条は「労働者を解雇しようとする場合」の規定なので、会社と労働者の合意で労働契約を終了させる合意退職には適用されません。会社から退職を勧められて退職届を出した場合、形式上は自己都合または合意による退職として扱われます。自分のケースが解雇なのか退職勧奨なのかを確認する手段として、労働基準法22条2項が、解雇の予告がされた日から退職の日までの間に解雇の理由について証明書を請求できると定めています。同条1項では退職後に退職の事由(解雇の場合はその理由を含む)についての証明書を請求できます。

出典

この記事は一般的な情報提供であり、個別の事案についての助言ではありません。本記事で確認したのは労働基準法・所得税法・健康保険法・雇用保険法の条文と、国税庁が公表しているタックスアンサーの記載までです。ある解雇が有効かどうかの判断、退職勧奨と解雇のどちらに当たるかの評価、解雇予告除外認定が受けられるかどうかの見通し、個別の支給が社会保険の報酬に当たるかどうかの最終的な判断までは含みません。実際の取扱いは事案ごとに異なります。個別の判断については、事業場を管轄する労働基準監督署、年金事務所、社会保険労務士、税理士または弁護士にご確認ください。

この内容をXで共有