欠勤控除の計算方法|月給30万円・遅刻早退・日割りの例
結論から言うと、欠勤控除に全国共通の唯一の割り算はありません。就業規則・賃金規程に定めた計算式で、働かなかった時間に対応する賃金を控除します。月給30万円、当月所定労働日数20日、1日欠勤なら「30万円÷20日」で15,000円というのが一例です。
ただし、固定残業代、通勤手当、家族手当まで分子へ含めるか、月ごとの所定日数か年間平均を使うかで結果は変わります。規程にない式を給与計算のたびに選ぶ運用は避け、対象賃金、分母、端数処理を明文化することが重要です。
欠勤控除の法的な位置づけ
月給制でも、欠勤した時間の賃金を支払わない「ノーワーク・ノーペイ」の考え方により控除することがあります。一方、労働基準法24条には賃金全額払いの原則があるため、欠勤時間と無関係な制裁として過大に差し引く話とは分けなければなりません。
常時10人以上の労働者を使用する事業場では、労働基準法89条により賃金の決定・計算・支払方法などを就業規則に記載します。厚生労働省モデル就業規則も、欠勤等について基本給から当該日数または時間分の賃金を控除する規定例を示しています。つまり重要なのは「会社に都合のよい式」ではなく、あらかじめ定めて周知された一貫した式です。
3つの日割り方法
| 方法 | 式 | 特徴 |
|---|---|---|
| 当月所定労働日数 | 対象月給÷当月所定日数×欠勤日数 | 月ごとに1日単価が変わる |
| 年間平均所定労働日数 | 対象月給÷1か月平均所定日数×欠勤日数 | 月間の単価が安定する |
| 暦日数 | 対象月給÷当月暦日数×不就労日数 | 月途中入退社などの規程で見られる |
どれが常に正解という関係ではありません。ただし同じ欠勤に月ごと都合よく方式を替えたり、所定休日まで欠勤日として数えたりすると説明できません。年間平均を使う場合は、年間所定労働日数を12で割った値と端数処理を賃金規程に置きます。
月給30万円の計算例
基本給30万円、当月所定労働日数20日、所定労働時間160時間、欠勤1日(8時間)とします。
300,000円 ÷ 20日 × 1日 = 15,000円
欠勤控除後の基本給は 300,000円 − 15,000円 = 285,000円
年間所定労働日数240日なら、1か月平均は20日なので同じ15,000円です。しかし当月が22日なら当月方式は300,000÷22=約13,636円、年間平均方式は15,000円となり差が出ます。どちらを使ったか給与明細だけで分からない場合、賃金規程と計算書を照合します。
手当を分子に含めるかも結果を左右します。たとえば基本給30万円と役職手当2万円を欠勤控除の対象と定めるなら、対象月給は32万円です。一方、実費弁償的な通勤手当の扱い、皆勤手当の不支給条件などは、それぞれの規程を確認します。
遅刻・早退の控除
遅刻・早退は時間単価を作り、不就労時間を掛ける形が明快です。月給30万円、月平均所定労働時間160時間、遅刻2時間なら、300,000÷160×2=3,750円です。15分未満を毎回一律に切り捨てて働いた時間を無給にするのではなく、実労働時間を適切に把握します。
欠勤控除と懲戒の減給は別物です。欠勤控除は提供されなかった労務分を支払わない計算、懲戒減給は制裁です。遅刻時間分を控除したうえで制裁も行う場合、就業規則上の根拠と労働基準法91条の制限が別途問題になります。その91条の制限は2つあり、1回の額が平均賃金の1日分の半額まで、総額が一賃金支払期における賃金の総額の10分の1までです。月給30万円の人なら1回およそ4,891円で、上の遅刻2時間の控除額3,750円とは根拠も上限もまったく別に計算します。両者を給与明細の同じ控除項目にまとめると、91条の上限を満たしているかを後から検証できなくなります。詳しくは懲戒処分の種類と減給の上限で条文と計算例を整理しています。
逆に、遅刻した日に終業後まで働いた時間を当然に相殺できるとも限りません。始業前後の労働が時間外労働になるかは、法定労働時間、変形労働時間制、当日の実労働時間で判定します。残業代は残業代計算と残業代の計算方法で切り分けられます。
就業規則で決める項目
- 欠勤控除の対象となる賃金項目
- 当月所定日数、年間平均日数、所定時間のどれを分母にするか
- 1日未満・1時間未満と円未満の端数処理
- 遅刻、早退、私用外出、無給休暇の扱い
- 月途中入退社、休職・復職時の日割り方法
- 有給休暇、会社都合休業、業務上災害との区別
月途中入退社と通常の自己都合欠勤は、同じ「日割り」に見えても規程上の式が異なることがあります。営業日を数える必要がある場合は営業日計算が使えます。
落とし穴
- 有給休暇取得日を欠勤扱いしない
- 会社都合の休業を自己都合欠勤と同じ控除にしない
- 固定残業代を全額控除してから実残業代も減らすなど二重計算をしない
- 所定休日を欠勤日数へ含めない
- 規程改定前の期間へ新しい式を遡及適用しない
休職・無給休暇は別に設計する
長期欠勤や休職では、単純に毎月の日割り式を繰り返すだけでは処理できないことがあります。社会保険料の本人負担、住民税、会社貸付や立替金など、支給がゼロでも請求が残る項目があるためです。控除しきれない額を翌月へ無断で繰り越さず、本人からの振込、復職後の精算など会社の手続を定めます。
傷病手当金は健康保険から支給される給付であり、会社が支払う通常の給与とは分けます。会社独自の休職給を支払う場合は、欠勤控除後に別項目として支給するのか、月給を一定割合に減額するのかを規程上明確にすると、社会保険や税の計算根拠も追いやすくなります。
計算例を賃金規程へ入れておくと、従業員と担当者が同じ結果を再現できます。「月給」とだけ書かず、どの手当を含めるか、年間所定日数をいつ更新するか、円未満をどの段階で処理するかまで示します。制度を変更するときは、不利益変更の問題、労働者代表からの意見聴取、労働基準監督署への届出、従業員への周知を切り離さずに進めます。
手取り額を計算するよくある質問
Q. 欠勤1日は必ず月給÷所定労働日数ですか?
A. 必ずではありません。当月所定日数、年間平均所定日数など、就業規則・賃金規程に定めた合理的な方式を確認します。
Q. 有給休暇の日も欠勤控除できますか?
A. できません。年次有給休暇は取得日の賃金を法定の方式で支払う休暇であり、無給欠勤とは異なります。パート・アルバイトの付与日、日数、取得日に支払う賃金の方式はパートの有給休暇で確認できます。
出典
- e-Gov法令API v2「労働基準法」第24条・第89条・第91条
- 厚生労働省「モデル就業規則」
本記事は一般的な情報提供を目的としたものです。個別の判断は労働基準監督署・社会保険労務士にご確認ください。