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懲戒処分の種類と減給の上限 — 労働基準法に「懲戒」の語は無い。1回の減給は平均賃金の半額、総額は賃金の10分の1まで

結論から言うと、減給の制裁には上限が2つあり、給与計算で先に効くのは「1回の額」のほうです。労働基準法91条は「その減給は、一回の額が平均賃金の一日分の半額を超え、総額が一賃金支払期における賃金の総額の十分の一を超えてはならない」と定めています。よく引用されるのは後者の「10分の1」ですが、月給30万円の人を実際に計算すると、1回に引ける額はおよそ4,891円。6回重ねても29,347円で、まだ10分の1(30,000円)の枠には届きません。

もうひとつ、意外に知られていないことがあります。「戒告」「譴責(けん責)」「出勤停止」「降格」「諭旨解雇」「懲戒解雇」といった処分名は、労働基準法にも労働契約法にも1回も出てきません。この記事を書くにあたって両法の全文を取得し、語の出現回数を数えて確かめました。法律が名前を出している懲戒処分は「減給」ただ1つです。処分の段階をどう並べるかは、法律ではなく各社の就業規則が決めています。

さらに、労働基準法は「懲戒」という語を1度も使いません(使うのは「制裁」で3回)。逆に労働契約法は「懲戒」を5回使い、「制裁」は0回です。同じ現象を、2つの法律が別の語で呼んでいます。以下では、条文に書かれていることと、条文には書かれていないため私たちが断定を避けたことを、はっきり分けて示します。

「懲戒処分の7種類」は法律に書かれていない

懲戒処分を解説する記事の多くは、軽いものから順に「戒告 → 譴責 → 減給 → 出勤停止 → 降格 → 諭旨解雇 → 懲戒解雇」という一覧を載せます。実務でよく使われる並びであることは確かですが、この序列自体を定めた条文はありません。

実際に数えてみました。e-Gov法令APIから労働基準法(63,820字)と労働契約法(5,929字)の全文を取得し、処分名の出現回数を機械的に数えた結果が次の表です。

労働基準法労働契約法
減給2回(91条)0回
制裁3回(89条9号・91条)0回
懲戒0回5回(15条)
戒告0回0回
譴責・けん責0回0回
出勤停止0回0回
降格0回0回
諭旨(諭旨解雇・諭旨退職)0回0回
訓告0回0回
ここが実務のポイント

法律が名前を挙げて規律している懲戒処分は「減給」だけです。裏返すと、戒告・譴責・出勤停止・降格・諭旨解雇には、労働基準法が定めた金額や日数の上限が存在しません。「出勤停止は何日まで」という上限を法律に探しても見つからないのは、探し方が悪いのではなく、条文に無いからです。

では何が処分の種類を決めているかというと、就業規則です。労働基準法89条9号は、就業規則の記載事項として「表彰及び制裁の定めをする場合においては、その種類及び程度に関する事項」を挙げています。種類程度の両方を書くことが求められている点が重要で、この条文があるために、各社の就業規則が「その会社における懲戒処分の一覧」として機能しています。

減給の上限は2つある(労働基準法91条)

労働基準法91条は、見出しを「制裁規定の制限」といい、本文は一文だけです。

労働基準法91条(制裁規定の制限)

就業規則で、労働者に対して減給の制裁を定める場合においては、その減給は、一回の額が平均賃金の一日分の半額を超え、総額が一賃金支払期における賃金の総額の十分の一を超えてはならない。

ここには性質の違う2つの上限が入っています。混同されやすいので分けて整理します。

①1回の額の上限②総額の上限
何を縛るか1つの処分の重さ同じ賃金支払期に処分を重ねたときの合計
基準平均賃金の1日分の半額一賃金支払期における賃金の総額の10分の1
分母の作り方労働基準法12条の平均賃金(直近3か月の賃金総額 ÷ その期間の総日数その賃金支払期に支払われる賃金の総額
賞与の扱い算入しない(12条4項が明文で除外)91条に除外の定めは置かれていない

両方を同時に満たす必要があります。片方を守っていればよい、というものではありません。

減給の制裁 — 2つの上限は同時に効く(労基法91条) ① 1回の額 ← 上限=半額 枠の全体=平均賃金の1日分 9,782円 / 塗った部分=上限 約4,891円 ② 総額 ← 上限=10分の1 枠の全体=一賃金支払期の賃金総額 300,000円 / 塗った部分=上限 30,000円 先に当たるのは①のほう。月給30万円なら 4,891円 × 6回 = 29,347円 で、 6回処分を重ねてもまだ②の枠(30,000円)に届かない。
減給の2つの上限。実務で先に効くのは①「1回の額」であり、②「10分の1」に当たる場面はまれ。

月給30万円だと1回いくらまで引けるか

①の基準になる平均賃金は、労働基準法12条1項が「算定すべき事由の発生した日以前3箇月間にその労働者に対し支払われた賃金の総額を、その期間の総日数で除した金額」と定めています。分母は労働日数ではなく暦の日数です。ここを労働日数だと思い込むと、上限を大きく見積もりすぎます。

また12条2項により、賃金締切日がある場合は直前の賃金締切日から起算します。月末締めの会社で8月に処分を行うなら、遡る3か月は5月1日〜7月31日です。

計算例|月給30万円・月末締め・8月に減給の制裁

  • 対象期間:5月1日〜7月31日(12条2項により直前の賃金締切日から起算)
  • 総日数:31日+30日+31日=92日
  • 賃金総額:300,000円 × 3か月=900,000円
  • 平均賃金:900,000円 ÷ 92日=9,782.60…円
  • ①1回の上限:9,782.60…円 ÷ 2=約4,891円
  • ②総額の上限:300,000円 ÷ 10=30,000円

この2つを並べると、実務での効き方が見えてきます。1回に引けるのが約4,891円ですから、②の30,000円という枠に到達するには7回目の処分が必要です。6回目までの合計は29,347円で、まだ枠の中に収まっています。「10分の1まで引ける」と考えて計算すると、1回あたりの上限を6倍以上超えてしまうことになります。

同じ月給でも、処分の時期で上限が動く

平均賃金の分母は暦日数なので、どの3か月を見るかで結果が変わります。同じ月給30万円でも、遡る3か月が12月1日〜2月28日(31+31+28=90日)であれば、平均賃金は 900,000 ÷ 90=10,000円、その半額は5,000円です。8月の例(4,891円)とは109円の差が出ます。「うちは月給30万円だから1回5,000円まで」と固定して運用すると、月によって上限を超えます。

なお、平均賃金の計算では賞与を算入しません。12条4項が「臨時に支払われた賃金及び三箇月を超える期間ごとに支払われる賃金」を賃金総額から除いているためです。一方、②の分母である「一賃金支払期における賃金の総額」については、91条にこうした除外の定めは置かれていません。2つの上限は、分母の作り方の根拠が異なります。

平均賃金の銭未満の端数をどう処理するかについては、この記事では扱っていません。また12条1項ただし書の最低保障(賃金総額 ÷ 労働日数 × 60%)は、賃金が労働した日や時間によって算定される場合などに関する定めであり、上記の完全月給制の計算例では登場しません。

額面から手取りを計算する(社会保険料・所得税・住民税つき)

減給・欠勤控除・出勤停止は条文上まったく別物

給与計算の現場でいちばん混同されるのがここです。91条が上限を定めているのは「減給の制裁」だけであって、給与が減る場面すべてではありません。

性質91条の上限
減給の制裁労務の提供はあったが、制裁として賃金を減額するかかる
欠勤控除・遅刻早退控除労務の提供がなかった分を支払わない(ノーワーク・ノーペイ)制裁ではないため、91条が定める「減給の制裁」に当たらない
出勤停止期間中の賃金出勤停止という処分の結果として、その期間の労務提供がない労働基準法に出勤停止の期間の上限を定めた条文は無い(「出勤停止」の語は0回)

この違いは金額に直結します。出勤停止10日の処分は、月給30万円の人でおよそ10万円の減収になりえます。これは②の枠(30,000円)をはるかに超えますが、91条が縛っているのは「減給の制裁」であって出勤停止そのものではありません。条文の上では、軽い処分に見える減給のほうが厳格に上限を定められ、重い処分である出勤停止のほうに金額の定めが無いという構造になっています。

出勤停止期間中の賃金の取り扱いについては、労働基準法に明文がなく、就業規則の定めと個別の事情によります。この記事では条文に書かれている範囲を示すにとどめ、具体的な処分の適法性については断定していません。実際の運用は社会保険労務士にご確認ください。

就業規則に書いていない懲戒はできるか(89条9号)

労働基準法89条は、常時10人以上の労働者を使用する使用者に就業規則の作成・届出を義務づけ、記載事項を10号にわたって列挙しています。懲戒に関わるのは9号です。

労働基準法89条9号

表彰及び制裁の定めをする場合においては、その種類及び程度に関する事項

条文が「定めをする場合においては」という形になっている点に注意してください。これは相対的必要記載事項と呼ばれる形式で、懲戒制度を置くこと自体は義務ではありません。ただし置くのであれば、種類(戒告・減給・出勤停止など)と程度(どの程度の重さか)の両方を記載する必要があります。「会社は懲戒処分を行うことがある」とだけ書いた規定は、9号が求める「程度」を満たしていないことになります。

そして、懲戒そのものの有効性については労働契約法15条が定めています。

労働契約法15条(懲戒)

使用者が労働者を懲戒することができる場合において、当該懲戒が、当該懲戒に係る労働者の行為の性質及び態様その他の事情に照らして、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、当該懲戒は、無効とする。

この条文は「懲戒することができる場合において」という条件から始まっています。15条は懲戒権を与える規定ではなく、懲戒できることを前提にして、その濫用を無効とする規定です。では「できる場合」がどこから来るのかというと、条文の構造上は89条9号を受けた就業規則の定めということになります。就業規則に定めのない種類の処分を新たに科すことは、15条の入口である「懲戒することができる場合」に当たるのかという問題を先に生じさせます。

個別の事案で懲戒が有効と認められるかどうかは、就業規則の定め方、行為の性質、過去の同種事案との均衡など多くの事情によって結論が変わります。この記事は条文の構造を示すもので、個別の処分の有効性を判断するものではありません。

懲戒解雇でも解雇予告は原則として要る(20条3項の準用)

「懲戒解雇なら即日で辞めさせられる、解雇予告手当も要らない」と理解されていることがありますが、条文をそのまま読むとそうはなりません。

労働基準法20条1項は、解雇には少なくとも30日前の予告か、30日分以上の平均賃金(=解雇予告手当)を要求しています。ただし但書があり、「天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となつた場合」または「労働者の責に帰すべき事由に基いて解雇する場合」は、この限りでないとしています。懲戒解雇は後者に当たりうる、という話です。

問題はその先です。20条3項が、こう定めています。

労働基準法20条3項

前条第二項の規定は、第一項但書の場合にこれを準用する。

準用元である19条2項は「その事由について行政官庁の認定を受けなければならない」という規定です。つまり20条1項但書を使って予告なしに解雇するには、行政官庁(所轄の労働基準監督署長)の認定が要るという構造になっています。これがいわゆる解雇予告除外認定です。

ここが条文の読みどころ

19条2項を単体で読むと「前項但書後段の場合においては」とあり、これは19条1項但書の後段=天災事変の場合だけを指しています。ところが20条3項は、その規定を「第一項但書の場合」に準用します。20条1項但書には天災事変と労働者の責に帰すべき事由の両方が入っていますから、準用によって認定が必要な範囲が広がっていることになります。準用の一文を読み飛ばすと、懲戒解雇には認定が要らないように見えてしまいます。

懲戒解雇と解雇予告(労基法20条) 労働者を解雇しようとする場合 20条1項但書に当たるか (天災事変で事業継続不可/労働者の責に帰すべき事由) 当たらない 30日前の予告 または予告手当 当たる 行政官庁の認定を受けたか (20条3項 → 19条2項を準用) 受けた 予告・予告手当 ともに不要 受けていない 但書は使えず、原則どおり 予告または予告手当が要る
「懲戒解雇だから予告は不要」とはならない。20条3項が19条2項を準用しており、行政官庁の認定が挟まる。

あわせて押さえておきたいのは、懲戒解雇が有効かどうか(労働契約法15条・16条)と、解雇予告除外認定が下りるかどうか(労働基準法20条)は、別の条文の別の判断だということです。前者は「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合」に無効とする基準、後者は「労働者の責に帰すべき事由」に当たるかを行政官庁が認定するもので、文言も判断する主体も違います。片方が通ったからもう片方も通る、という関係にはありません。

労基法は「制裁」、労契法は「懲戒」

最後に、条文を読むときに戸惑いやすい点を挙げておきます。2つの法律が、同じ現象を別の語で呼んでいます。

使う語どこで何を定めているか
労働基準法制裁(懲戒は0回)89条9号・91条就業規則への記載義務と、減給の額の上限
労働契約法懲戒(制裁は0回)15条権利濫用に当たる懲戒を無効とすること

役割分担で見ると分かりやすくなります。労働基準法は「いくらまで引いてよいか」という金額の線引きを担当し、労働契約法は「そもそもその処分は有効か」という効力を担当しています。給与計算の実務で直接効いてくるのは前者(91条の2つの上限)ですが、処分そのものが無効であれば減額の根拠も失われますから、金額だけを確認して済ませられる話ではありません。

よくある質問

Q. 減給の制裁は、月給の10分の1まで引けるのですか?

A. 1回の処分で10分の1まで引くことはできません。労働基準法91条は2つの上限を同時に課しており、1回の額は平均賃金の1日分の半額まで、総額が一賃金支払期における賃金の総額の10分の1までです。月給30万円で遡る3か月が92日の場合、平均賃金は約9,782円ですから、1回に引けるのは約4,891円にとどまります。10分の1に当たる30,000円という枠は、同じ賃金支払期に複数回の処分を行ったときの合計に対する上限であって、1回の処分で使える金額ではありません。実際、約4,891円を6回重ねても29,347円で、まだ30,000円の枠の中です。「10分の1まで」という数字だけが独り歩きしていますが、給与計算で先に当たるのは1回の額の上限のほうです。

Q. 「平均賃金の1日分の半額」は、日給の半分ということですか?

A. 違います。平均賃金は労働基準法12条1項により「算定すべき事由の発生した日以前3箇月間に支払われた賃金の総額を、その期間の総日数で除した金額」と定められており、分母は労働日数ではなく暦の日数です。月給30万円の人であれば、3か月の賃金総額900,000円を92日で割って約9,782円となり、いわゆる日給(月給を所定労働日数で割った額)よりかなり小さくなります。したがって1回の上限である約4,891円は、月給のおよそ61分の1です。なお12条2項により、賃金締切日がある場合は直前の賃金締切日から起算します。分母が暦日数である以上、遡る3か月の組み合わせによって平均賃金は変動し、同じ月給でも処分の時期によって上限額が変わります。

Q. 遅刻や欠勤の分を給与から引くのは、減給の制裁に当たりますか?

A. 労働基準法91条が上限を定めているのは「減給の制裁」であり、これは労務の提供があったにもかかわらず制裁として賃金を減額する場合を指しています。遅刻・早退・欠勤に対応する分を支払わない取り扱いは、労務の提供がなかった部分について賃金が発生しないという考え方(ノーワーク・ノーペイ)に基づくもので、制裁として賃金を減らすものとは性質が異なります。ただし、実際の給与規程が控除をどのように位置づけているかによって整理は変わりますし、控除の計算方法自体は就業規則や賃金規程の定めによります。自社の規程がどちらの性質のものとして定められているかを確認したうえで、判断に迷う場合は社会保険労務士にご確認ください。

Q. 出勤停止にすると10日分の賃金が失われますが、91条に違反しませんか?

A. 労働基準法に「出勤停止」という語は1回も出てきません。この記事では同法の全文を取得して語の出現回数を数えており、出勤停止・戒告・譴責・降格・諭旨解雇はいずれも0回でした。91条が上限を定めているのは「減給の制裁」であって、出勤停止という処分そのものや、その期間中の賃金の取り扱いについて金額や日数の上限を定めた条文は労働基準法にありません。結果として、条文の上では軽い処分に見える減給のほうに厳格な上限があり、より重い出勤停止のほうに金額の定めが無いという構造になっています。もっとも、上限が条文に無いことと、どんな長さの出勤停止でも有効であることは別の問題です。処分の効力については労働契約法15条の枠組みで判断されますので、具体的な運用は社会保険労務士にご確認ください。

Q. 就業規則に書いていない種類の懲戒処分を行えますか?

A. 労働基準法89条9号は、就業規則の記載事項として「表彰及び制裁の定めをする場合においては、その種類及び程度に関する事項」を挙げています。「定めをする場合においては」という形式なので、懲戒制度を設けること自体は義務ではありませんが、設けるのであれば種類と程度の両方を記載する必要があります。また労働契約法15条は「使用者が労働者を懲戒することができる場合において」という条件から始まっており、この条文自体は懲戒権を新たに与えるものではなく、懲戒できることを前提としてその濫用を無効とする規定です。条文の構造からは、就業規則の定めが「懲戒することができる場合」の根拠として置かれていると読めます。就業規則に無い処分を科そうとする場合は、その入口の部分から問題になりますので、事前に社会保険労務士にご確認ください。

Q. 懲戒解雇なら解雇予告手当は払わなくてよいのですか?

A. 条文をそのまま読むと、そうはなりません。労働基準法20条1項但書は「労働者の責に帰すべき事由に基いて解雇する場合」に予告義務を外していますが、同条3項が「前条第二項の規定は、第一項但書の場合にこれを準用する」と定めており、準用される19条2項は「その事由について行政官庁の認定を受けなければならない」という規定です。つまり但書を使うには所轄の労働基準監督署長による認定(解雇予告除外認定)が必要になります。認定を受けないまま即日解雇した場合は、原則どおり30日前の予告か30日分以上の平均賃金が必要という整理になります。なお19条2項は単体では「前項但書後段の場合」=天災事変の場合を指していますが、20条3項が準用する先は20条1項但書の全体ですので、労働者の責に帰すべき事由による解雇にも認定の要求が及ぶ構造です。

Q. 「戒告」と「譴責」はどう違いますか?

A. どちらの語も労働基準法・労働契約法には出てきません。この記事では両法の全文について語の出現回数を数え、いずれも0回であることを確認しています。したがって両者の違いを定めた法律上の基準は存在せず、各社の就業規則がどう定義しているかによります。一般には、戒告は将来を戒める旨を申し渡すもの、譴責は始末書の提出を伴うものとして区別されている例が多いのですが、これは慣行であって法律の定義ではありません。自社の就業規則で両者を並べて置いている場合は、その規程における定義と、どの程度の行為にどちらを適用するかの基準を確認してください。労働基準法89条9号が「種類及び程度」の記載を求めているのは、まさにこの部分に当たります。

Q. 降格して基本給が下がるのは、91条の減給に当たりますか?

A. 労働基準法に「降格」という語は出てきません。91条が定めているのは「減給の制裁」の1回の額と総額の上限であり、降格そのものについての定めは置かれていません。降格に伴って基本給が下がる場合、それが91条にいう減給の制裁として行われているのか、それとも職位や職務内容の変更に対応した賃金の再設定なのかによって位置づけが変わり得ますが、この記事ではどちらであるとも断定していません。就業規則における降格の定め方、賃金規程と職位の結びつき、実際の運用の実態などによって結論が変わる領域です。具体的な事案については社会保険労務士にご確認ください。

Q. 減給の制裁を行った月は、賃金台帳や給与明細にどう書けばよいですか?

A. 記載の様式について、この記事では扱っていません。労働基準法108条は賃金台帳の調製を、同法施行規則54条が記載事項を定めていますが、減給の制裁に固有の記載方法を定めた条文は本記事の確認範囲にはありませんでした。実務上は、欠勤控除と減給の制裁を同じ控除項目にまとめてしまうと、91条の上限を満たしているかどうかを後から検証できなくなります。2つは条文上まったく別のものですので、区別できる形で記録しておくと、上限の管理と説明の両方が容易になります。具体的な様式については社会保険労務士にご確認ください。

出典

この記事は一般的な情報提供であり、個別の事案に対する助言ではありません。特定の行為に対してどの懲戒処分が相当か、就業規則の定めが有効か、実際に行った処分が労働契約法15条により無効とならないかは、個別の事情によって結論が変わります。就業規則の整備や個別の処分の適否については社会保険労務士または弁護士へ、解雇予告除外認定の申請については所轄の労働基準監督署へ、賃金から控除した額の税務上の取り扱いについては税理士へご確認ください。

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