同族会社とは — 判定の3つの物差しと、該当したときに問題になる3つの規定(それぞれ追加要件あり)
結論から言うと、同族会社とは、株主等(自己株式を持つその会社自身を除く)の3人以下と、その人たちと特殊の関係にある個人・法人が、発行済株式または出資(その会社が持つ自己株式等を除く)の50%を超えて持っている会社のことで、議決権や社員数で判定して当たる場合もあります(法人税法2条10号、施行令4条5項)。日本の中小企業の大半が当てはまります。
ここでつまずきやすいのが株主等の「3人以下」の読み方です。これは株主が3人までという意味ではありません。数えるのは株主グループが3つまでで、社長が株主等であれば、社長の配偶者も子も親も、同じグループとして社長に合算されます。株主名簿に20人並んでいても、株主等である社長と親族の持分を合計して自己株式を除いた発行済株式の50%を超えれば、それだけで同族会社に当たります。
そして同族会社に当たると、各規定の追加要件を満たす場合に、次の3つの規定の適用が問題になります。①みなし役員(施行令7条)②留保金課税(法67条)③行為計算否認(法132条)の3つで、対象になる会社・人の範囲と要件は規定ごとに違うため、下の各節で条文に沿って確かめます。このうち留保金課税だけは判定の基礎となる株主等の人数が違い、「3人以下」ではなく「1人」で見ます。しかも資本金1億円以下の会社は原則として対象外です(例外は法66条5項2〜5号の法人(資本金5億円以上の大法人に100%支配されている会社など)と大通算法人で、ほかの要件も満たせば1億円以下でも対象になります)。多くの中小企業はここで外れます。ここを混同した説明が多いところです。
同族会社の判定 — 法人税法2条10号の定義
定義は法人税法2条10号にあります。会社の株主等(その会社が自己の株式・出資を持つ場合のその会社を除く)の3人以下と、これらと政令で定める特殊の関係のある個人及び法人が、その会社の発行済株式または出資(その会社が有する自己の株式・出資を除く)の総数・総額の100分の50を超える数・金額を持っている場合と、「その他政令で定める場合」(議決権・社員数による判定、施行令4条5項)に、その会社が同族会社です。
同族会社の判定で基礎となる株主等は、株式・出資や議決権の所有割合が大きい順に選ぶ必要はありません。その順に選ぶと同族会社に当たらなくても、選び方を変えて要件を満たすなら同族会社に当たります(法人税基本通達1-3-5)。使用人兼務役員の判定で使う施行令71条の順位の取扱いとは区別します。
また、同族会社の判定に使う株主等は、株主名簿・社員名簿・定款の記載や記録で確認しますが、記載された人が単なる名義人で、別の人が実際の権利者である場合は、その実際の権利者を株主等として扱います(法人税基本通達1-3-2)。これは、議決権を同じ内容で行使する同意がある場合の合算とは別の取扱いです。
「3人」は人数ではない。株主グループが3つまでという意味
誰が同じグループに入るのかを決めているのが施行令4条です。1項が個人、2項が法人を挙げています。
まず個人。株主等と次の関係にある人は、その株主等と同じグループに束ねられます。
| 号 | 同じグループに入る個人 |
|---|---|
| 1号 | 株主等の親族 |
| 2号 | 株主等と婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にある者 |
| 3号 | 個人である株主等の使用人 |
| 4号 | 1〜3号以外で、個人である株主等から受ける金銭その他の資産によって生計を維持している者(給付などを日常生活の資の主要部分としている者、法人税基本通達1-3-3) |
| 5号 | 2〜4号の者と生計を一にするこれらの者の親族 |
1号の「親族」は法人税法が独自に定義しているわけではないので、一般に民法上の親族、すなわち6親等内の血族・配偶者・3親等内の姻族を指すものとして扱われます。範囲はかなり広く、いとこの子(5親等)まで入ります。
注意したいのが3号と4号です。親族でなくても同じグループに入る場合があるということです。個人株主に雇われている使用人、そして個人株主から受ける金銭などを日常生活の資の主要部分としている人(法人税基本通達1-3-3)は、血縁がなくても合算されます。
法人側(施行令4条2項)は、支配関係の連鎖でつながります。判定しようとする会社の株主等(自己株式等を持つその会社自身を除く)の1人(個人ならその特殊関係個人を含む)が他の会社を支配している場合、その他の会社も同じグループです(1号)。さらに、その株主等(その会社自身を除く)の1人と1号の会社が合わせて支配する会社(2号)、その1人と1号・2号の会社が合わせて支配する会社(3号)も同じグループです(同一の個人・法人とこれらの特殊の関係のある2以上の会社が、判定しようとする会社の株主等(その会社自身を除く)である場合に、その2以上の会社を相互に特殊の関係のある会社とみなす規定は施行令4条4項)。ここでいう「支配している場合」は、施行令4条3項が、他の会社の発行済株式等(自己株式等を除く)の50%超を持つ場合、同項2号イ〜ニの4種類の議決権(下の「議決権による判定」に挙げるもの)のいずれかについて総数(行使できない株主等の議決権を除く)の50%超を持つ場合、持分会社の社員(業務執行社員を定めた場合はその社員)の総数の半数超を占める場合と定めています。
物差しは3つある。株式数・議決権・社員数のどれかで当たる
ここは見落とされやすいところです。法人税法2条10号は、株式の数・金額で50%超という本文のあとに「その他政令で定める場合」と続けています。その政令が施行令4条5項で、次の2つを追加しています。
- 議決権による判定 … 株主等(自己株式等を持つその会社自身を除く)の3人以下とその同族関係者が、施行令4条3項2号イ〜ニに掲げる議決権(イ=事業の全部・重要な部分の譲渡、解散、継続、合併、分割、株式交換、株式移転、現物出資、ロ=役員の選任・解任、ハ=役員の報酬・賞与など、ニ=剰余金の配当・利益の配当に関する決議に係る議決権)のいずれかにつき、総数(議決権を行使できない株主等の議決権を除く)の50%超を持つ場合
- 社員数による判定 … 合名会社・合資会社・合同会社で、株主等(その会社自身を除く)の3人以下とその同族関係者に当たる社員(業務を執行する社員を定めた場合は業務執行社員)が、その総数の半数を超える数を占める場合
つまり判定の物差しは3つあり、どれか1つで当たれば同族会社です。株式の持分割合を50%以下に調整しても、株主等(その会社自身を除く)の3人以下とその同族関係者が施行令4条3項2号イ〜ニの議決権のいずれかで、行使できない議決権を除いた総数の50%超を持っていれば、議決権の側で該当します。
帰結① みなし役員 — この語は条文に一度も出てこない
実務でいちばん頻繁に効いてくるのがこれです。役員給与には損金算入の制限(法34条)がかかりますが、登記されていない人でも「役員」として扱われることがあります。俗に「みなし役員」と呼ばれます。
「みなし役員」という語は、法人税法にも法人税法施行令にも出てきません。条文上の見出しは施行令7条の「役員の範囲」で、法2条15号の「役員」の定義に政令で足されている人、というのが正確な位置づけです。
その施行令7条は、次の2種類を挙げています。
| 1号 | 2号 | |
|---|---|---|
| 対象 | 法人の使用人(職制上使用人としての地位のみを有する者に限る)以外の者 | 同族会社の使用人 (職制上使用人としての地位のみを有する者に限る) |
| 要件 | その法人の経営に従事していること | 所有割合の3要件をすべて満たし、かつ経営に従事していること |
| 同族会社限定か | いいえ(すべての法人) | はい |
| 典型 | 会長・相談役・顧問など | 社長の親族で部長職の使用人など |
1号は同族会社に限りません。ここはよく取り違えられます。役員を退いて相談役や顧問になった人、非常勤の会長など、使用人としての地位を持たないまま経営に従事している人は、同族会社かどうかに関係なく役員として扱われます。
2号が同族会社限定の規定です。条文は要件を直接書かず、施行令71条1項5号イ〜ハの「役員」を「使用人」と読み替えた場合に、その要件をすべて満たす者という書き方をしています。読み替えて整理すると、次の3つの所有割合の要件をすべて満たし、かつ経営に従事していることが要件です。所有割合は、その会社が株式数または出資の金額で同族会社に当たるなら株式数または出資の金額(自己株式等を除く)、議決権で当たるなら議決権数(行使できない株主等の議決権を除く)、社員数で当たるなら社員数(業務を執行する社員の数で当たるなら業務執行社員の数)で計算します(施行令71条3項。議決権の行使に同意している者がいる場合は施行令4条6項を準用、施行令71条4項)。
| 要件(施行令71条1項5号イ〜ハを読み替え) | 境界 | |
|---|---|---|
| イ | 株主グループを所有割合の大きい順に並べ(同順位が2以上あればその全部を同じ順位に含める)、第1順位だけ、第1・第2順位の合計、または第1〜第3順位の合計ではじめて50%を超えるときの、それらのグループのいずれかに属していること | 50%超 |
| ロ | その人が属する株主グループの所有割合が10%を超えていること | 10%超 |
| ハ | その人本人(配偶者、およびこれらの者の所有割合が50%超である他の会社を含む)の所有割合が5%を超えていること | 5%超 |
3段階とも「超える」であって「以上」ではありません。所有割合がちょうど5%なら、ハを満たさないことになります。
なお「経営に従事している」の中身は、法人税法にも施行令にも定義が置かれていません。施行令にこの語が出てくる箇所は、いずれも要件として使う側の規定です。
帰結② 留保金課税 — 判定は「3人以下」ではなく「1人」
特定同族会社には、法人株主を除いて判定し直す取扱いもあります。被支配会社の判定の基礎となった株主等に、被支配会社ではない法人が含まれている場合は、その法人を判定の基礎となる株主等から除いても被支配会社に当たることが必要です(法人税法67条1項)。除くのは、この条件に当たる法人であり、法人株主を一律に除くわけではありません。
法人税法67条の見出しは「特定同族会社の特別税率」です。内国法人である特定同族会社(被支配会社で、その判定の基礎となった株主等のうちに被支配会社でない法人がある場合には、その法人を除外して判定しても被支配会社となるもので、資本金の額または出資金の額が1億円以下の会社は法66条5項2号から5号までに掲げるものと大通算法人に限り、清算中のものを除き、これに当たるかどうかは事業年度終了の時の現況で判定する)の各事業年度の留保金額が留保控除額を超えると、その超える部分の留保金額について、通常の法人税に上乗せして課税されます(法67条1項・8項)。個人の所得税を避けるために会社に利益を貯め込む動きを抑える趣旨の規定です。
ここでの最大の注意点は、判定の基礎となる株主等の人数が同族会社とは違うことです。67条2項が定める被支配会社は、会社の株主等(その会社自身を除く)の1人と、これと特殊の関係のある個人・法人が、発行済株式等(自己株式等を除く)の50%超を持つ場合と、施行令139条の7第3項2号イ〜ニの議決権(同族会社の判定と同じ4種類)のいずれかについて総数(行使できない株主等の議決権を除く)の50%超や、持分会社の社員(業務執行社員を定めた場合はその社員)の総数の半数超で当たる場合(施行令139条の7第5項、議決権行使に同意している者の議決権の扱いは同条6項)をいいます。
そのうえで67条1項は、資本金の額または出資金の額が1億円以下である会社については、法66条5項2号から5号までに掲げるものと、同条6項の大通算法人に限る、という限定をかけています。法66条5項2号が挙げるのは、各事業年度終了の時において、資本金5億円以上の大法人による完全支配関係がある普通法人などに当たる法人です。
したがって、資本金1億円以下で、法66条5項2〜5号の法人(大法人の100%子会社など)にも大通算法人にも当たらない会社は、留保金課税の対象になりません。日本の中小企業の多くはここで外れます。「同族会社だから内部留保に課税される」という説明は、この限定を落とすと誤りになります。
対象になる場合の税率は、課税留保金額を3段に区分して次のとおりです(法67条1項各号)。
| 課税留保金額の区分 | 税率 |
|---|---|
| 年3,000万円以下の金額(事業年度が1年に満たない場合は、3,000万円を12で除して事業年度の月数(暦に従って計算し、1か月未満の端数は1か月とする)を乗じた金額以下の金額、法67条6項・7項) | 10% |
| 年3,000万円超・年1億円以下の金額(事業年度が1年に満たない場合は、3,000万円と1億円を、それぞれ12で除して事業年度の月数(暦に従って計算し、1か月未満の端数は1か月とする)を乗じた金額に読み替える、法67条6項・7項) | 15% |
| 年1億円超の金額(事業年度が1年に満たない場合は、1億円を12で除して事業年度の月数(暦に従って計算し、1か月未満の端数は1か月とする)を乗じた金額を超える金額、法67条6項・7項) | 20% |
事業年度が1年に満たない場合は、この「年3,000万円」「年1億円」を12で除して事業年度の月数(暦に従って計算し、1か月未満の端数は1か月とする、67条7項)を乗じた金額に読み替えます(67条6項)。設立初年度や決算期を変更した期で、この月数が12か月未満になる場合は、区分の境目が下がる点に注意が必要です。
留保控除額は3つのうち最も多い金額
留保金額のすべてに課税されるわけではありません。67条1項は「留保金額が留保控除額を超える場合」に、その超える部分へ課税すると定めています。
その留保控除額は、67条5項が3つ挙げたうえで「次に掲げる金額のうち最も多い金額」としています。いずれか1つを選ぶのではなく、3つを計算して最大値を採るという構造です。
| 号 | 留保控除額の候補 |
|---|---|
| 1号 | 当該事業年度の所得等の金額の40%(損益通算で損金算入される金額は加算し、益金算入される金額は控除し、施行令139条の8に当たる法人は同条による調整後の所得等の金額) |
| 2号 | 年2,000万円(事業年度が1年未満なら2,000万円を12で除し、暦に従って計算した月数(1か月未満の端数は1か月)を乗じた金額、67条6項・7項) |
| 3号 | 期末の利益積立金額(当期の所得等の金額に係る部分を除き、施行令139条の8に当たる法人は同条による調整後の所得等の金額)が、期末の資本金の額または出資金の額の25%に満たない場合の、その満たない部分の金額 |
3号は見落とされやすい枠です。設立から間もない会社や、過去の欠損で利益積立金額が薄い会社では、この3号が1号・2号より大きくなることがあります。資本金2億円で、期末の利益積立金額(当期の所得等の金額に係る部分を除く)が1,000万円なら、25%相当額の5,000万円に4,000万円足りないので、3号の候補は4,000万円です。年2,000万円の2号より大きくなります。
帰結③ 行為計算否認 — 132条は同族会社だけの規定ではない
法人税法132条は、次の2つのいずれかに当たる内国法人(1号は同族会社、2号は下のイ〜ハのすべてに当たる法人)に係る法人税について税務署長が更正・決定をする場合に、その法人の行為・計算でこれを容認した場合には法人税の負担を不当に減少させる結果となると認められるものがあるときは、その行為・計算にかかわらず、税務署長の認めるところにより課税標準や税額を計算できる、と定めています。
見出しは「同族会社等の行為又は計算の否認」ですが、条文が挙げる対象は2つあります。1号が内国法人である同族会社、2号が次のイ〜ハのすべてに当たる内国法人です。どちらに当たるかは、更正・決定の時点ではなく、その行為・計算の事実があった時の現況で判定します(同条2項)。
- イ … 3以上の支店、工場その他の事業所を有すること
- ロ … その事業所の2分の1以上に当たる事業所につき、その所長・主任その他の事業の主宰者、またはその主宰者の親族その他の特殊の関係のある個人(施行令173条が定める者で、過去にその関係にあった者を含み、主宰者とあわせて「所長等」)が、前にその事業所において個人として事業を営んでいた事実があること
- ハ … ロの事実がある事業所の所長等(ロのとおり、過去に特殊の関係にあった者を含む)が持つその法人の株式・出資の合計が、発行済株式等(自己株式等を除く)の3分の2以上であること
つまり「同族会社でなければ132条は来ない」わけではありません。個人事業を法人化して事業所として取り込んだ形態の会社は、非同族でも対象になり得ます。見出しの「等」はここを指しています。
実数で通す
数字はすべて説明のための仮定値です。
前提:株主は社長40%、社長の配偶者15%、社長の弟8%(使用人として部長職・経営会議に参加)、取引先A社20%、従業員持株会17%。自己株式なし。資本金1億5,000万円。
①同族会社の判定:社長・配偶者・弟は親族なので同じグループです(施行令4条1項1号)。第1順位グループは 40+15+8=63%。1グループだけで50%を超えるので、同族会社に当たります。
②弟はみなし役員か:施行令7条2号の3要件を読み替えて当てます。イ=第1順位グループ63%だけではじめて50%超になるので、そのグループに属している(満たす)。ロ=属するグループの所有割合63%>10%(満たす)。ハ=本人の所有割合8%>5%(満たす)。加えて経営に従事しているので、みなし役員に当たります。この会社が内国法人なら、その給与は役員給与として法34条(役員給与の損金不算入)の対象になります(損金に算入できる給与の区分と要件は役員報酬の決め方)。もし弟の持株が4%で、弟の配偶者の持分と、弟とその配偶者の所有割合が50%を超える他の会社の持分を合わせても5%以下なら、ハの5%超を満たさないため2号には当たりません。
③留保金課税は来るか:被支配会社の判定は1グループで見ます。第1順位グループが63%>50%なので被支配会社に当たり、特定同族会社の入口には乗ります。資本金は1億5,000万円で1億円を超えているため、67条1項かっこ書きの除外にも当たりません。この株主構成と資本金が事業年度終了の時のもので、その時にこの会社が清算中でない内国法人なら、特定同族会社として対象になります(判定は事業年度終了の時の現況による、法67条8項)。
④税額:事業年度は1年とし、施行令139条の8による留保金額・所得等の金額の調整が無いものとして、所得等の金額8,000万円で、そのうち留保した金額も8,000万円(期末配当等以外の社外流出はないものとします)、67条3項で控除する法人税・地方法人税・住民税の額の合計2,400万円、67条4項で留保した金額から控除する期末配当等1,000万円とすると、留保金額は 8,000−2,400−1,000=4,600万円。留保控除額は、施行令139条の8による留保金額・所得等の金額の調整(通算法人の場合や、関連法人株式等に係る配当等から控除する利子の額に関する調整など)が無いものとして、1号=8,000×40%=3,200万円、2号=2,000万円、3号=(期末の利益積立金額(当期の所得等の金額に係る部分を除く)が資本金の25%=3,750万円以上あるとして)0円、の最大値なので3,200万円。同じ前提で、1年の事業年度なので、課税留保金額は 4,600−3,200=1,400万円で、年3,000万円以下の区分なので税率10%、上乗せされる税額は140万円です。
資本金が1億円だった場合は、法66条5項2〜5号の法人にも大通算法人にも当たらない限り、③の時点で対象外となり、④の140万円は生じません。この例外に当たらない会社では、資本金1円の差で結論が変わる境目がここにあります。
法人税額を試算する(税率・軽減税率つき)よくある質問
株主が5人いれば、同族会社にはなりませんか?
株主の人数だけでは決まりません。同族会社の判定では、選んだ株主等とその同族関係者の持分を合わせて要件を確認します。親族などの同族関係者も合算するため、名簿上の株主が多くても同族会社に当たる場合があります。判定に使う株主等を所有割合の大きい順に選ぶ必要はありません。
「みなし役員」は法人税法の何条に書いてありますか?
「みなし役員」という語は、法人税法にも法人税法施行令にも用いられていません。実務でみなし役員と呼ばれているものは、法人税法2条15号が役員の範囲を政令に委任し、これを受けた法人税法施行令7条(見出しは「役員の範囲」)が定める者を指します。同条1号は法人の使用人(職制上使用人としての地位のみを有する者に限り、2号も同じ)以外の者でその法人の経営に従事しているもの、2号は同族会社の使用人のうち施行令71条1項5号イからハまでの要件を読み替えて満たし、経営に従事しているものです。
株式を持っていなければ、みなし役員になりませんか?
そうとは限りません。所有割合(株式数・議決権・社員数のうち、その会社が同族会社に当たる方法で計算、施行令71条3項)の要件が課されているのは法人税法施行令7条2号(同族会社の使用人)だけで、同条1号には持株・所有割合の要件がありません。1号は「法人の使用人(職制上使用人としての地位のみを有する者に限る。次号において同じ。)以外の者でその法人の経営に従事しているもの」と定めており、株式を保有していない相談役、顧問、非常勤の会長などであっても、経営に従事していれば役員の範囲に含まれます。また1号は同族会社に限定されていないため、非同族の法人にも適用されます。
同族会社なら、内部留保に必ず留保金課税がかかりますか?
かかりません。留保金課税の対象は法人税法67条1項の特定同族会社(内国法人である被支配会社で、その判定の基礎となった株主等のうちに被支配会社でない法人がある場合には、その法人を除外して判定しても被支配会社となるものをいい、資本金の額または出資金の額が1億円以下の会社は法66条5項2号から5号までに掲げるものと大通算法人に限り、清算中のものを除き、これに当たるかどうかは事業年度終了の時の現況で判定する、同条8項)で、その入口である被支配会社は、株主等(自己株式等を持つその会社自身を除く)の「1人」とその特殊関係者が発行済株式等(自己株式等を除く)の50%超を持つ会社などをいいます(同条2項、議決権・社員数による判定は施行令139条の7第5項)。同族会社の判定が「3人以下」であるのに対し、被支配会社は株主等1人とその特殊関係者の1グループで判定します。さらに同条1項かっこ書きにより、資本金の額または出資金の額が1億円以下の会社は、法66条5項2号から5号までに掲げるもの(各事業年度終了の時において、資本金5億円以上の大法人による完全支配関係がある普通法人などに当たる法人)および大通算法人に限って対象となります。資本金1億円以下で、法66条5項2号から5号までの法人にも大通算法人にも当たらない会社は、対象になりません。
留保控除額の3つは、どれを選べばよいのですか?
選ぶのではなく、3つを計算して最も多い金額を採ります。法人税法67条5項が「次に掲げる金額のうち最も多い金額をいう」と定めているためです。候補は、当該事業年度の所得等の金額(損益通算による損金算入額は加算し、益金算入額は控除し、施行令139条の8に当たる法人は1号・3号とも同条による調整後の所得等の金額)の40%に相当する金額(1号)、年2,000万円(2号)、期末の利益積立金額(当該事業年度の所得等の金額に係る部分を除く)がその時の資本金の額または出資金の額の25%に相当する金額に満たない場合のその満たない部分の金額(3号)の3つです。なお事業年度が1年に満たない場合、2号の年2,000万円は12で除して事業年度の月数(暦に従って計算し、1か月未満の端数は1か月とする、同条7項)を乗じた金額に読み替えます(同条6項)。
持株を50%以下に分散させれば、同族会社から外れますか?
外れるとは限りません。法人税法施行令4条5項により、判定は株式の数・金額のほか、株主等(その会社が自己株式等を持つ場合のその会社自身を除く)の3人以下とその同族関係者が、施行令4条3項2号イからニまでに掲げる議決権のいずれかにつき総数(議決権を行使できない株主等の議決権を除く)の50%を超える数を有する場合、また持分会社では、その者に当たる社員(業務を執行する社員を定めた場合は業務執行社員)が総数の半数を超える数を占める場合にも行われます。物差しが3つあり、いずれか1つに該当すれば同族会社となります。さらに同条6項により、ある者の意思と同一の内容の議決権を行使することに同意している者がいる場合、その者が有する議決権は本人が有するものとみなし、本人が株主等でない場合も議決権による判定では株主等とみなして判定します。
行為計算否認は同族会社だけが対象ですか?
同族会社だけではありません。法人税法132条1項は対象を2つ挙げており、1号が内国法人である同族会社、2号が、3以上の支店・工場その他の事業所を有し、その事業所の2分の1以上について、所長・主任その他の事業の主宰者またはその主宰者の親族その他の特殊の関係のある個人(施行令173条が定める者で、過去にその関係にあった者を含み、主宰者とあわせて所長等)が前にその事業所において個人として事業を営んでいた事実があり、かつその事実がある事業所の所長等が持つ株式・出資の合計が発行済株式等(自己株式等を除く)の3分の2以上である内国法人です。2号は同族会社であることを要件としていないため、非同族の法人も対象になり得ます。どちらに当たるかは、その行為・計算の事実があった時の現況で判定します(同条2項)。
自己株式を買い取ると同族会社の判定は変わりますか?
変わることがあります。法人税法2条10号は、判定の分母となる発行済株式または出資の総数・総額から「その会社が有する自己の株式又は出資を除く」と定めており、株主側についても、その会社が自己の株式等を有する場合のその会社を株主等から除いています。自己株式を取得すると分母が小さくなるため、保有株式数が変わらない株主の所有割合は上昇します。判定が50%付近にある会社では、自己株式の取得によって同族会社に該当することになる場合があります。
出典
法人税法・同施行令をe-Gov法令検索で、株主等の取扱いを国税庁の法人税基本通達で確認。
- 国税庁「法人税基本通達 第3節 同族会社」の名義株についての株主等の判定、同族会社の判定の基礎となる株主等、およびe-Gov法令検索「法人税法」の特定同族会社の定義にある法人株主を除く再判定と67条7項(月数の計算)、およびe-Gov法令検索「法人税法施行令」の4条4項(相互にみなす特殊の関係)・139条の7(被支配会社の範囲)・173条(主宰者と特殊の関係のある個人の範囲)を確認(2026年10月8日)。
- e-Gov法令検索「法人税法」(昭和四十年法律第三十四号・
340AC0000000034)。API v2 のlaw_data/{law_id}による全文取得(600,520字)と?elm=Article_2ほかの条単位取得により、2条10号(同族会社の意義)、66条5項(軽減税率を適用しない法人)、67条1項〜6項(特定同族会社の特別税率・被支配会社・留保金額・期末配当等・留保控除額・短期の事業年度)、132条1項(同族会社等の行為又は計算の否認)の各条文を確認した(2026年8月16日確認) - e-Gov法令検索「法人税法施行令」(昭和四十年政令第九十七号・
340CO0000000097)。API v2 による全文取得(1,184,221字)と条単位取得により、4条1項〜3項・5項・6項(同族関係者の範囲・他の会社を支配している場合・政令で定める場合・議決権の行使に同意している者)、7条(役員の範囲)、71条1項〜3項(使用人兼務役員とされない役員・株主グループ・所有割合)の各条文を確認した(2026年8月16日確認) - 本記事における語の計数。上記2法令の全文テキストを e-Gov法令API v2 で取得して数えた結果、「みなし役員」は法人税法0回・法人税法施行令0回。同じテキストにおいて「同族会社」は35回・54回、「特定同族会社」は17回・29回、「被支配会社」は5回・3回、「経営に従事」は1回・13回、「株主グループ」は0回・18回であり、計数の経路が機能していることを確認したうえでの結果である(2026年8月16日確認)
- 本記事の試算の前提: 「実数で通す」の株主構成(社長40%、配偶者15%、弟8%、取引先20%、従業員持株会17%)、資本金1億5,000万円、所得等の金額8,000万円(そのうち留保した金額も8,000万円で、期末配当等以外の社外流出はないもの)、法人税・地方法人税・住民税の合計2,400万円、期末配当1,000万円、および利益積立金額に関する仮定は、すべて説明のための仮定値である。留保金額および留保控除額の計算は法人税法67条3項・5項の構造に沿って簡略化して示したものであり、同条3項各号が定める受取配当等の益金不算入額の加算、欠損金の損金算入額の加算などの調整項目は反映していない
- 本記事で確認していないこと(断定を避けた範囲): 「親族」の範囲について民法725条の条文そのもの(本記事は法人税法・同施行令のみを取得しており、6親等内の血族・配偶者・3親等内の姻族という範囲は一般に用いられている理解として記載した)、「経営に従事している」の具体的な判断基準(法人税法および同施行令には定義規定が置かれていない)、法人税基本通達のうち本記事で挙げた箇所以外の取扱い、みなし役員に該当した場合の役員給与の損金不算入の具体的計算(法人税法34条の各号の適用関係)、使用人兼務役員に係る使用人分給与の取扱い、留保金額の計算における法人税法67条3項各号の各調整項目の詳細、地方税法における法人住民税・法人事業税上の同族会社の取扱い、相続税法64条(同族会社等の行為又は計算の否認等)および所得税法157条との異同、租税特別措置法における中小企業向け特例の適用可否と同族会社判定との関係、ならびに個別の行為・計算が法人税法132条にいう「不当に減少させる結果となると認められるもの」に当たるかどうかの判断。これらは取得した条文の範囲内で確認できなかったか、本記事の主題を超えるため扱っていません。
本記事は一般的な情報提供であり、個別の税務相談ではありません。記載の法令確認日は出典欄に示しています。同族会社の判定、みなし役員への該当、留保金課税の要否および税額は、株主構成、資本金の額、事業年度、経営への従事の実態によって変わりますので、実際の判断にあたっては顧問税理士または所轄の税務署へご確認ください。