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役員報酬の決め方|定期同額給与の3か月ルールと事前確定届出給与の期限

結論から言うと、役員報酬は金額をいくらにするかより先に、「どの型に当てはめるか」で損金になるかどうかが決まります。法人税法34条1項は、役員に支給する給与のうち定期同額給与・事前確定届出給与・業績連動給与のいずれにも該当しないものの額は損金の額に算入しないと定めています。金額が相場どおりでも、型を外せば全額が経費になりません。

中小企業が実際に使えるのは、ほぼ前の2つです。定期同額給与は「毎月同額を払い、変えるのは期首から3か月を経過する日まで」。事前確定届出給与は「賞与を出す前に税務署へ届け出る」。そしてこの届出の期限が、よく言われる「期首から4か月以内」とは限りません。条文は「決議から1か月を経過する日」と「会計期間開始から4か月を経過する日」のいずれか早い日としているので、株主総会が早いほど締切も前倒しになります。

3月決算の会社なら、定期同額給与の改定期限は6月30日、5月25日に総会で決議したなら事前確定届出給与の届出期限は6月25日です。以下、3つの型の違い、日付が何条から出てくるのか、期の途中で変えられる2つの例外、手取り額を同額にする方式、そして臨時改定事由のときだけ判定の向きが逆になる点までを、条文で確かめながら整理します。

損金にできるのは3つの型だけ

法人税法34条1項は、内国法人が役員に支給する給与のうち、次の3つのいずれにも該当しないものの額は損金に算入しない、という書き方をしています。禁止リストではなく許可リストである点が要点です。どれにも当てはまらなければ、それだけで損金不算入になります。

条文要件の中心中小企業での使いやすさ
定期同額給与34条1項1号支給時期が1か月以下の一定期間ごとで、各支給時期の支給額が同額◎ 実質の本命。毎月の役員報酬はこれ
事前確定届出給与34条1項2号所定の時期に確定額を支給する定めをし、原則として事前に税務署へ届出○ 役員賞与を出すならこれ
業績連動給与34条1項3号利益・株価・売上高の指標を基礎とした客観的な算定方法× 事実上使えない(下記)
業績連動給与が中小企業で使えない理由は、条文にはっきり書いてある34条1項3号イ(3)は、算定方法の内容が「有価証券報告書に記載されていることその他財務省令で定める方法により開示されていること」を要件にしています。同号イ本文も、指標を「有価証券報告書に記載されるものに限る」としています。有価証券報告書を提出していない非上場会社は、この要件を満たしようがありません。さらに同族会社は、同族会社以外の法人による完全支配関係がある場合に限られます(同号柱書)。「業績に応じて役員賞与を出す」を思いついたときに検討すべきなのは、業績連動給与ではなく事前確定届出給与です。

なお、この3つの型の話から除かれているものが3つあります。退職給与(業績連動給与に該当しないもの)、使用人兼務役員に支払う使用人分の給与、そして事実を隠蔽・仮装して支給したものです(34条1項柱書・3項)。前の2つは34条1項の対象外ですが、不相当に高額な部分は別途落ちます。3つめは全額が損金不算入です。

ここまでは「誰が役員か」が決まっている前提で書いてきましたが、その入口にも注意が要ります。法人税法上の役員は登記された取締役だけではなく、施行令7条が使用人以外の者で経営に従事しているもの(会長・相談役・顧問など)と、同族会社の使用人のうち一定の持株要件を満たして経営に従事しているものを役員の範囲に加えているためです。後者に当たると、肩書きが部長のままでも上の3つの型の制限がその人の給与にかかり、期中の増額が損金にならなくなります。判定の仕方は同族会社とは — 「3人以下」で50%超。判定された瞬間に3つの規定が動くで条文から整理しています。

定期同額給与——期首から3か月を経過する日まで

定期同額給与は、条文上は2段構えです。まず34条1項1号が「支給時期が1か月以下の一定の期間ごとである給与(=定期給与)で、当該事業年度の各支給時期における支給額が同額であるもの」と定めます。年間ずっと同額なら、これだけで要件を満たします。

問題は、期の途中で金額を変える場合です。ここを受けるのが法人税法施行令69条1項1号で、一定の「給与改定」がされた場合には、改定前の区間と改定後の区間でそれぞれ同額であればよいとしています。認められる改定は3つだけで、その1つめが通常改定です。

通常改定(施行令69条1項1号イ)「その事業年度開始の日の属する会計期間開始の日から三月……を経過する日まで……にされた定期給与の額の改定」。つまり期首から3か月を経過する日までに改定すれば、その期は「改定前は同額・改定後も同額」で定期同額給与になります。
例外の月数もこの条文に書かれています。確定申告書の提出期限の延長の特例(法人税法75条の2第1項)で税務署長の指定を受けている法人は指定に係る月数に2を加えた月数、一定の通算法人は4か月です。

逆に言えば、期首から3か月を経過する日を過ぎてから増額した場合、その改定は施行令69条1項1号イに当たりません。ロ・ハの事由もなければ、その事業年度の定期給与は「各支給時期における支給額が同額」という34条1項1号の要件を満たさなくなります。年度の途中で気軽に上げられないのは、この構造によります。

4月1日 期首 (会計期間開始) 5月25日 定時株主総会 で決議 6月25日 事前確定届出給与 の届出期限(早い方) 6月30日 定期同額給与の 改定期限(3月経過日) 7月31日 会計期間 4月経過日
3月決算・5月25日に定時株主総会を開いた場合。事前確定届出給与の届出期限は「決議から1か月を経過する日(6月25日)」と「会計期間4月経過日(7月31日)」の早い方なので、点線の7月31日ではなく6月25日で切れます。横軸の間隔は日数に比例していません。

なぜ「6月30日」なのか——日付は通則法10条で出る

条文が書いているのは「3月を経過する日」であって「6月30日」ではありません。日付にするには国税通則法10条1項の期間計算を当てます。ここを知っていると、決算月が変わっても自分で計算できます。

「会計期間開始の日から3か月」は、会計期間が4月1日の午前零時から始まるので1号ただし書により初日を算入します。起算日は4月1日、3か月後の応当日は7月1日、その前日で満了して6月30日。同じ計算で「会計期間開始の日から4か月」は7月31日になります。

一方「決議をした日から1か月」は、決議が日の途中で行われるため初日不算入です。5月25日の決議なら起算日は5月26日、応当日6月26日の前日で6月25日。3号ただし書が効くのは、たとえば1月31日に決議した場合で、応当日である2月31日は存在しないため2月末日で満了します。

土日祝でずれるものと、ずれないものがある通則法10条2項は、期限が日曜日・祝日その他一般の休日に当たるときは翌日を期限とみなす、と定めていますが、その対象は「申告、申請、請求、届出その他書類の提出、通知、納付又は徴収に関する期限」です。事前確定届出給与の届出期限は書類の提出なので、この規定が働きます。他方、定期同額給与の「3月経過日」は書類の提出等に関する期限ではなく、改定という行為そのものの時期であり、条文上この列挙に含まれていません。総会の日程を組むときは、この違いを踏まえておくと安全側に倒せます。個別の判断は税理士にご確認ください。

期の途中で変えられる2つの例外

施行令69条1項1号のロとハが、3か月ルールの外で改定を認める2つの事由です。名前は似ていますが、片方は増額もでき、もう片方は減額しかできません

臨時改定事由(ロ)業績悪化改定事由(ハ)
条文の言い方役員の職制上の地位の変更、その役員の職務の内容の重大な変更その他これらに類するやむを得ない事情法人の経営の状況が著しく悪化したことその他これに類する理由
典型例取締役が代表取締役になった、担当職務が大きく変わった経営状況の著しい悪化
増額できるできない(条文が「減額した改定に限り」と明記)
減額できるできる

業績悪化改定事由については、国税庁タックスアンサーNo.5211が注記で範囲を狭く示しています。曰く、「法人の一時的な資金繰りの都合や、単に業績目標値に達しなかったことなどはこれに含まれません」。売上が計画に届かなかったから役員報酬を下げる、という理由だけでは足りない、という読み方になります。

手取りを同額にする方式でもよい

ここは意外に知られていない条文です。施行令69条2項は、定期給与の各支給時期の支給額から源泉税等の額を控除した金額が同額である場合には、その支給額は同額であるものとみなすと定めています。国税庁No.5211も、定期同額給与の定義に「支給額または支給額から源泉税等の額を控除した金額が同額であるもの」と両方を書いています。

源泉税等の額とは、源泉徴収される所得税、特別徴収される地方税、給与から控除される社会保険料その他これらに類するものの合計額です(施行令69条2項)。額面を固定する方式と、手取りを固定する方式のどちらでもよいということになります。

なぜこの規定が要るのか社会保険料率や住民税の特別徴収額は期の途中で変わります。手取り額を一定にする運用をとると、額面は毎月わずかに動きます。この2項がなければ「各支給時期における支給額が同額」を満たさなくなってしまうため、逆側から同額とみなす規定が置かれています。額面固定でも住民税の年次切替で手取りは動きますから、どちらを固定するかは実務の設計の問題です。

事前確定届出給与の届出期限は「いずれか早い日」

役員に賞与を出すなら事前確定届出給与です。所定の時期に確定した額を支給する定めをし、原則として事前に届出書を提出します。この届出期限が本記事でいちばん誤解の多いところです。施行令69条4項1号と国税庁の手続案内は、次のいずれか早い日としています。

区分期限3月決算・5/25決議の場合
(1) 決議した日から1か月を経過する日
決議日が職務執行開始日より後なら、その開始日から起算
決議日+1か月6月25日
(2) 会計期間開始の日から4か月を経過する日
申告期限延長の指定を受けている法人は指定月数+3、一定の通算法人は5か月
期首+4か月7月31日
届出期限=(1)と(2)のいずれか早い日6月25日
新設法人が設立時に開始する職務について定めた場合設立の日以後2か月を経過する日

「期首から4か月以内に出せばよい」と覚えていると、5月に総会を開いた会社は1か月以上早く締切が来ます。実務では、株主総会を早く開くほど届出期限も前倒しになる、という関係になります。

届出を出し忘れたら施行令69条7項に宥恕規定があります。届出期限までに届出がなかった場合でも、やむを得ない事情があると税務署長が認めるときは、期限内に届出があったものとして扱うことができる、という条文です。ただし「認めることができる」という書き方で、事情の内容を条文は定義していません。期限内に出すこと以外の設計をしない前提で考えるのが安全です。

提出先は納税地の所轄税務署長で、様式は「事前確定届出給与に関する届出書」に加えて、金銭交付用の付表1または株式交付用の付表2を添えます。定めた内容を変更する場合は「事前確定届出給与に関する変更届出書」という別の様式になります(国税庁の手続案内。根拠は施行令69条4項)。

法人税の簡易計算 — 役員報酬をいくらにすると法人税がいくらになるか試算する

臨時改定事由のときだけ「遅い日」になる

ここが条文を読まないと逆に覚えてしまう箇所です。原則の届出期限は上のとおり「いずれか早い日」ですが、臨時改定事由が生じたことにより定めをした場合は「いずれか遅い日」になります(施行令69条4項柱書・2号)。

場面比べる2つ採る方
原則決議+1か月/期首+4か月早い日
臨時改定事由により定めをした場合上の原則の日/臨時改定事由が生じた日+1か月遅い日

向きが逆なのには理由があります。臨時改定事由は期の途中に突然生じるもので、原則の期限(期首+4か月など)はとうに過ぎていることがあります。そこで事由発生から1か月という枠を後ろに足して、届け出る余地を残しています。緩和のための規定なので「遅い方」なのです。

定めの内容を変更する場合の期限は、施行令69条5項が別に定めています。臨時改定事由によるときは事由が生じた日から1か月を経過する日。業績悪化改定事由によるとき(支給額の減額や交付株式数の減少に限られます)は変更の決議をした日から1か月を経過する日ですが、ここに前倒しの条件が付きます。

変更届出は、支給日が来ると締切が前に動く施行令69条5項2号のかっこ書きは、変更前の届出に係る定めに基づく給与の支給の日(決議日後に最初に到来するもの)が1か月を経過する日より前にある場合には、その支給の日の前日が期限だとしています。減額を決議しても、元の定めの支給日が10日後に来るなら、締切は1か月後ではなくその支給日の前日です。

型に当てはめても、不相当に高額な部分は落ちる

3つの型のどれかに当てはめれば終わり、ではありません。法人税法34条2項が、役員給与のうち不相当に高額な部分の金額は損金に算入しないと定めており、その金額は施行令70条が決めています。

基準条文見るもの
実質基準施行令70条1号イ役員の職務の内容、法人の収益、使用人への給与の支給状況、同種・類似規模の法人の役員給与の支給状況などに照らして相当と認められる金額を超える部分
形式基準施行令70条1号ロ定款の規定または株主総会等の決議で定めた限度額等を超える部分

注意したいのは条文の結合の仕方です。70条1号は「次に掲げる金額のうちいずれか多い金額」としています。両方で計算して、多い方が損金不算入になります。株主総会の決議枠に収めても、実質基準で過大と判断されればそちらの金額が採られます。逆に実質的に相当な額でも、決議した限度額を超えていればその超過額が落ちます。

同条2号は役員退職給与の過大部分(在職期間・退職の事情・同種類似規模法人の支給状況に照らす)、3号は使用人兼務役員の使用人分賞与のうち他の使用人と支給時期が異なるものを、それぞれ損金不算入としています。

9月決算の会社でやってみる

決算月が変わると日付がどう動くか、9月決算(会計期間10月1日〜9月30日)で通則法10条を当ててみます。

項目計算日付
定期同額給与の改定期限(3月経過日)10月1日は午前零時から始まるので初日算入。起算日10月1日、応当日1月1日の前日12月31日
会計期間4月経過日同じく起算日10月1日、応当日2月1日の前日1月31日
11月20日に定時株主総会で決議した場合の「決議+1か月」初日不算入で起算日11月21日、応当日12月21日の前日12月20日
事前確定届出給与の届出期限12月20日と1月31日のいずれか早い日12月20日

ここで通則法10条2項が効く例も出ます。仮に総会が翌年1月に入り、原則の期限が1月31日側で決まったとすると、2027年1月31日は日曜日です。届出は書類の提出なので、期限は翌日の2月1日(月)とみなされます。他方、定期同額給与の12月31日は書類の提出期限ではないため、この規定の対象として条文に列挙されていません。

実務の順番一般には、決算の数字が固まる → 翌期の利益計画を立てる → 役員報酬の額を決めて株主総会で決議する → 3月経過日までに改定する → 賞与を出すなら届出期限までに届け出る、という順で進みます。3月経過日は期首から数えるので、決算作業が長引いても後ろには動きません。9月決算なら12月31日、3月決算なら6月30日が、毎年決まった位置にあります。

よくある質問

Q. 役員報酬を期の途中で増額したら、増額分だけが損金不算入になりますか?

A. 条文が定めているのは、施行令69条1項1号イ〜ハのいずれにも当たらない改定をした場合、その定期給与は34条1項1号の「各支給時期における支給額が同額であるもの」に該当しなくなる、というところまでです。実際にいくらが損金不算入となるかは個々の事実関係によるため、所轄の税務署または税理士にご確認ください。

Q. 3か月を1日でも過ぎたら、もう改定できないのですか?

A. 施行令69条1項1号イには続きがあり、定期給与の額の改定(継続して毎年所定の時期にされるものに限る)が3月経過日等後にされることについて特別の事情があると認められる場合には、その改定の時期までとされています。また臨時改定事由・業績悪化改定事由に当たる場合は、時期を問わず改定が認められます。

Q. 役員報酬をゼロにすることはできますか?

A. 定期同額給与は「各支給時期における支給額が同額であるもの」なので、期首から一貫してゼロであれば損金算入の問題は生じません。期の途中で減額してゼロにする場合は、施行令69条1項1号イの通常改定の時期内か、ロ・ハの事由に当たるかで判断することになります。

Q. 事前確定届出給与を届け出たのに、業績が悪くて支給をやめました。どうなりますか?

A. 一般に、届け出た定めのとおりに支給しなかった場合、その給与は事前確定届出給与に該当しないものとして扱われます。支給額を減額する場合の変更届出は、業績悪化改定事由に基因するときに限り、施行令69条5項2号の期限までに提出することとされています。個別の取扱いは税理士にご確認ください。

Q. 届出期限は「期首から4か月以内」と聞きましたが違うのですか?

A. 4か月の方は2つある期限のうちの1つです。施行令69条4項1号は「決議をした日から1か月を経過する日」を原則としつつ、それが会計期間4月経過日である場合に4月経過日とする、という書き方をしています。結果としていずれか早い日が期限になるため、決議が早ければ1か月側で切れます。

Q. 設立したばかりの会社はいつまでに届け出ますか?

A. 新設法人がその役員の設立の時に開始する職務について事前確定届出給与に関する定めをした場合は、設立の日以後2か月を経過する日が期限です(施行令69条4項1号)。国税庁の手続案内も同じ日を示しています。

Q. 定期給与を支給しない役員に賞与だけ出す場合も届出が必要ですか?

A. 法人税法34条1項2号イは、定期給与を支給しない役員に対して支給する給与で、同族会社に該当しない内国法人が支給する金銭によるものを届出の対象から外しています。国税庁No.5211も届出は必要ないと記載しています。同族会社かどうかの判定は、その定めをした日の現況によります(施行令69条6項)。

Q. 手取り額を毎月同じにしたいのですが、定期同額給与から外れませんか?

A. 施行令69条2項が、支給額から源泉税等の額を控除した金額が同額である場合はその支給額を同額とみなすと定めています。源泉税等の額とは、源泉徴収される所得税、特別徴収される地方税、給与から控除される社会保険料その他これらに類するものの合計額です。

Q. 株主総会の決議枠の範囲内なら、いくら払っても損金になりますか?

A. なりません。施行令70条1号は実質基準(イ)と形式基準(ロ)のいずれか多い金額を不相当に高額な部分とします。決議枠に収まっていても、職務の内容や同種・類似規模の法人の支給状況に照らして相当と認められる金額を超えていれば、その超える部分が損金不算入になります。

出典

本記事は一般的な情報提供を目的としたものです。個別の判断は税理士または所轄の税務署にご確認ください。

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