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みなし配当とは — 1回の入金が「配当所得」と「株式の譲渡収入」に割れる

結論から言うと、みなし配当とは「受け取った金額」ではなく「差額」です。会社から金銭の交付を受けたとき、その金額がその株式に対応する資本金等の額を超えるなら、超えた部分だけが配当を受け取ったものとみなされます(法人税法24条1項、所得税法25条1項)。会社が「配当」と呼んだかどうかは関係ありません。

実務でいちばん効くのは、1回の入金が税法上は2つに割れることです。非上場株式を発行会社に買い取ってもらった場合、超えた部分は配当所得(源泉徴収20.42%・総合課税・配当控除あり)になり、残りは株式等の譲渡収入(申告分離課税)になります。税率も申告の仕方も違う2つの所得が、1本の振込から発生します。

そしてもうひとつ。この言葉を条文で探すと、ほとんど見つかりません。本記事で法人税法・所得税法の全文を取得して数えたところ、「みなし配当」という語は所得税法には本則・附則とも0回、法人税法の本則ではただ1回しか出てきませんでした(しかも租税回避を否認する132条の2の中です)。条文の見出しは「配当等の額とみなす金額」で、「みなし配当」は条文の言葉ではなく実務の呼び名です。以下、条文から確認できたことと、確認範囲を超えるため断定を避けたことを分けて示します。

結論 — もらった額ではなく「差額」が配当になる

法人税法24条1項は、株主が一定の事由により金銭その他の資産の交付を受けた場合に、その合計額が「当該法人の資本金等の額のうちその交付の基因となつた当該法人の株式又は出資に対応する部分の金額」を超えるときは、その超える部分の金額を受取配当等とみなす、と定めています。所得税法25条1項も、条文の言い回しは違いますが同じ構造です。

みなし配当の式

みなし配当の額 = 交付を受けた金銭その他の資産の額その株式に対応する資本金等の額

差額がマイナス(交付額のほうが小さい)なら、みなし配当は生じません。条文が「超えるとき」と書いているため、超えていなければ0です。

考え方は単純です。会社が株主に払う金銭のうち、もともと株主が出資したお金の払い戻しにあたる部分は配当ではなく、会社が稼いで積み上げた部分の払い出しが配当だ、という切り分けです。会社法上の手続が「自己株式の取得」であっても「資本剰余金の配当」であっても、税法はこの1本の物差しで測ります。

具体例を置きます。非上場のA社が、創業株主から株式を買い取る(金庫株にする)ケースです。

例:非上場A社が創業株主から自己株式を取得した場合
A社の資本金等の額(取得の直前)3,000万円
A社の発行済株式総数(同)1,000株
買い取る株式数200株
会社が支払う金額2,000万円
株主がその株式を取得したときの価額(取得費)300万円
会社が支払う 2,000万円(1回の振込) 2,000万円 税法上は2つに割れる 株式に対応する 資本金等の額 600万円 超える部分 = みなし配当 1,400万円 → 株式等の譲渡収入 (申告分離課税) → 配当所得(総合課税) 支払時に20.42%を源泉徴収
帯の幅は金額に比例させています(全体700px=2,000万円、600万円分が210px、1,400万円分が490px)。個人株主・非上場株式の場合。

みなし配当が生じる7つの事由

法人税法24条1項は、みなし配当が生じる事由を1号から7号まで7つ列挙しています。所得税法25条1項も同じ7つです。ここに挙がっていない事由では、みなし配当は生じません。

事由実務でよくある形
1号合併(適格合併を除く)非適格の吸収合併で、消滅会社の株主に金銭が交付された
2号分割型分割(適格分割型分割を除く)非適格の分割型分割
3号株式分配(適格株式分配を除く)子会社株式を株主に現物で分配した
4号資本の払戻しまたは解散による残余財産の分配資本剰余金を原資とする配当、有償減資、会社の清算
5号自己の株式または出資の取得(一定の取得を除く)相対取引での金庫株の買取り、株主からの買戻し
6号出資の消却、出資の払戻し、社員の退社・脱退による持分の払戻しなど合同会社の社員が退社して持分の払戻しを受けた
7号組織変更(株式・出資以外の資産を交付したものに限る)組織変更に際して金銭が交付された

中小企業の実務で圧倒的に多いのは4号と5号です。とくに4号の「資本の払戻し」は、条文上「剰余金の配当(資本剰余金の額の減少に伴うものに限る。)」と定義されており、いわゆる資本剰余金からの配当がここに入ります。

その4号は、末尾で「又は解散による残余財産の分配」も拾っています。会社をたたむときに株主へ財産を配る行為も、資本金等の額のうち対応する部分を超えれば配当とみなされるということです。清算の最後に現金を配って終わりのつもりが、源泉徴収と納付の作業がもう1つ残ります。解散から清算結了までの事業年度の切られ方や申告期限は 会社の解散・清算の税務 にまとめています。

資本剰余金からの配当は、そもそも「配当所得」の定義から外されている

見落とされやすい点です。所得税法24条1項(配当所得)は、配当所得の対象となる「剰余金の配当」から「資本剰余金の額の減少に伴うもの」を明示的に除いています。つまり、資本剰余金を原資にした瞬間、その支払は所得税法24条の配当所得ではなくなります。

そのうえで所得税法25条1項4号が「資本の払戻し」として拾い直し、資本金等の額を超える部分だけを「前条第一項に規定する剰余金の配当…とみなす」としています。一度外してから、一部だけ戻すという二段構えです。同じことは法人税法でも起きており、法人税法23条1項(受取配当等の益金不算入)に24条が接続する形になっています。

自己株式の取得でも、みなし配当にならない12の取得

5号は「自己の株式又は出資の取得」と書きつつ、かっこ書きで「金融商品取引所の開設する市場における購入による取得その他の政令で定める取得」を除いています。この政令が法人税法施行令23条4項で、1号から12号まで12種類の取得を挙げています。ここに当たれば、対価の全額が株式の譲渡収入となり、みなし配当は生じません。

除外される取得
1号金融商品取引所の開設する市場における購入(外国の同種の市場を含む)
2号店頭売買登録銘柄として登録された株式の店頭売買による購入
3号金融商品取引業者が売買の媒介・取次ぎ・代理をする場合のその売買(一定の価格決定方法によるものを除く)
4号事業の全部の譲受け
5号合併・分割・現物出資による被合併法人等からの移転(一定のものに限る)
6号適格分社型分割による分割承継法人からの交付(分割承継親法人株式が交付されるものに限る)
7号金銭等不交付株式交換による株式交換完全親法人からの交付(一定のものに限る)
8号合併に反対する被合併法人の株主等の買取請求に基づく買取り
9号単元未満株式の買取請求(会社法192条1項)、反対株主の株式買取請求(同182条の4第1項)、1株に満たない端数の処理(同234条4項)による買取り
10号全部取得条項付種類株式を発行する定款変更に反対する株主等の買取請求に基づく買取り(一定の場合に限る)
11号全部取得条項付種類株式の取得決議のうち、端数となる者からの取得に係る部分(一定の場合に限る)
12号会社法167条3項・283条の1株に満たない端数、投資法人の1口に満たない端数に相当する部分の対価としての金銭の交付

この一覧の性格が分かると、判定が早くなります。市場を通じた取得(1〜3号)と、会社の側に選択の余地がない取得(8〜12号の買取請求・端数処理)、そして組織再編に伴って自動的に自己株式を抱えてしまう場合(4〜7号)の3系統です。裏を返すと、非上場会社が株主と相対で価格を決めて買い取る取得は、どこにも当たりません。中小企業の金庫株が原則としてみなし配当になるのはこのためです。

会社が自己の株式を取得した 施行令23条4項の12事由に当たるか 市場購入・買取請求・端数処理・組織再編に伴う移転など 当たる 当たらない みなし配当は生じない 対価の全額が譲渡収入 みなし配当が生じる 資本金等の額を超える部分 例外: 相続した非上場株式を発行会社へ譲渡し 措置法9条の7の期間内なら みなし配当課税なし
非上場会社が株主と相対で価格を決めて買い取る取得は、12事由のいずれにも当たりません。

計算 — 「株式に対応する資本金等の額」の出し方は事由で違う

式そのものは単純でも、引き算する「株式に対応する資本金等の額」の出し方は事由ごとに変わります。法人税法24条4項が計算方法を政令に委任し、法人税法施行令23条1項が1号から6号までの区分で定めています。

事由施行令23条1項計算の考え方
自己株式の取得等(法24条1項5〜7号)6号イ直前の資本金等の額 ÷ 直前の発行済株式等の総数 × 取得した株式数(資本金等の額が0以下なら0)
資本の払戻し・残余財産の分配(同4号)4号イ直前の資本金等の額に割合を乗じたうえで、株式総数で割って持株数を乗じる(下記)
合併(同1号)1号被合併法人の前事業年度末の資本金等の額を発行済株式等の総数で割り、持株数を乗じる
分割型分割・株式分配(同2・3号)2号・3号分割・分配に対応する資本金額等を算定して按分

自己株式の取得は単純な按分です。前掲の例で 3,000万円 ÷ 1,000株 × 200株 = 600万円 と計算したのがこれにあたります。難しいのは資本の払戻しのほうです。施行令23条1項4号イは、まず次の割合を出します。

資本の払戻しの割合(施行令23条1項4号イ(1)(2))

割合 = (2) 減少した資本剰余金の額 ÷ (1) 前事業年度末の簿価純資産価額

(1)は「資産の帳簿価額 − 負債の帳簿価額」に、期末から払戻し直前までの資本金等の額・利益積立金額の増減を加減したものです。

端数処理: この割合に「小数点以下三位未満の端数があるときはこれを切り上げる」と条文に明記されています。四捨五入ではありません。小数第3位まで、切り上げです。

この(1)には、実務で見落としやすい但し書きが付いています。基準となるのは原則として前事業年度終了の時ですが、払戻し等の日以前6か月以内に中間申告書を提出し、かつその提出の日から払戻し等の日までに確定申告書を提出していなかった場合には、その中間申告に係る期間の終了の時で測ることになっています。前期末と中間期末では簿価純資産価額が変わるため、割合が変わり、みなし配当の額も変わります。

資本の払戻しの計算には上限が2つある(1つは令和4年4月に入った)

施行令23条1項4号イの条文をよく読むと、上限が2か所入っています。方向が違うので、分けて押さえます。

どこに書いてあるか内容効き方
上限14号イ(2)のかっこ書き減少した資本剰余金の額が(1)の簿価純資産価額を超える場合は、(1)の金額とする割合が1を超えないようにする
上限24号イの末尾のかっこ書き資本の払戻しの場合において、計算した金額が払戻し等により減少した資本剰余金の額を超えるときは、その超える部分の金額を控除する払戻等対応資本金額等が、減った資本剰余金を超えないようにする

この上限2は、以前からあったものではありません。e-Gov法令API v2 で法人税法施行令の過去のリビジョンを取得して条文を突き合わせたところ、次のことが確認できました。

条文の履歴(本記事で新旧のリビジョンを取得して比較した実測)
  • 2021年8月2日施行版340CO0000000097_20210802_503CO0000000114)の23条1項… 「減少した資本剰余金の額を超えるときは」という文言は0回。「超える部分の金額を控除した金額」も0回
  • 2022年4月1日施行版340CO0000000097_20220401_504CO0000000137/令和4年政令第137号による改正後)の23条1項… 同じ文言が入っている

つまり「払戻等対応資本金額等 ≦ 減少した資本剰余金の額」という上限は、2022年4月1日施行の改正で加わったものです。同じ改正で条文の構造も変わっており、旧版にあった「連結個別資本金等の額」の語が新版では消えています(連結納税制度からグループ通算制度への移行によるものです)。

この上限が無い状態では、繰越損失などにより簿価純資産価額が資本金等の額を下回っている会社で、減らした資本剰余金より大きい金額が「資本の払戻し」とされ、結果としてみなし配当がゼロになるうえ資本金等の額まで大きく削られる、という計算が成立し得ました。上限2はそれを塞ぐ位置に置かれています。

同じ上限は個人株主側にも入っています。所得税法施行令61条にも「当該計算した金額が当該払戻し等により減少した資本剰余金の額を超えるときは、その超える部分の金額を控除した金額」という同文が置かれており、法人株主と個人株主で計算がずれないようになっています。

過年度の資本剰余金配当を検算するときの注意

2022年4月1日より前に行われた資本の払戻しを今から検算する場合、いま e-Gov で表示される現行条文をそのまま当てると答えが変わります。当時適用されていたリビジョンの条文で計算する必要があります。e-Gov法令API v2 は law_revisions/{law_id} でリビジョンの一覧を返し、law_data/{law_revision_id} でその時点の条文を取得できます。

源泉徴収20.42% — かかるのはみなし配当部分だけ

みなし配当は配当等として扱われるので、支払う会社に源泉徴収義務が生じます。所得税法181条1項は、居住者に対し国内において配当等の支払をする者は、その支払の際、その配当等について所得税を徴収し、その徴収の日の属する月の翌月10日までに、これを国に納付しなければならないと定めています。

税率は所得税法182条2号で100分の20。これに所得税額の2.1%が上乗せされるので、合計は次のとおりです。

非上場株式のみなし配当に対する源泉徴収

20% × 1.021 = 20.42%(所得税および上乗せ分)

前掲の例では、みなし配当1,400万円 × 20.42% = 285万8,800円。会社が国に納付し、株主への実際の送金は 2,000万円 − 285万8,800円 = 1,714万1,200円 になります。

譲渡収入とされる600万円には源泉徴収はかかりません。源泉徴収の対象は、あくまで配当等とみなされた部分だけです。

上乗せ2.1%の内訳は2027年1月1日で組み替わる(合計は変わらない)

本記事で復興財源確保法28条の新旧リビジョンを取得して突き合わせたところ、次のとおりでした。

  • 令和8年(2026年)中の支払分… 上乗せは復興特別所得税だけで、同条2項の税率は100分の2.1
  • 令和9年(2027年)1月1日以後の支払分(リビジョン 423AC0000000117_20270101_508AC0000000012・令和8年法律第12号による改正後)… 同項の税率が100分の1.1に下がり、徴収の対象期間の終わりが令和29年12月31日まで延びます。下がった1%分は防衛特別所得税として徴収されるため、上乗せの合計2.1%は変わりません

したがって20.42%という合計は組み替えの前後で同じですが、内訳の名称と根拠条文が変わります。源泉徴収票や納付書の記載を扱う場合はこの点に注意が必要です。

ここが実務で問題になります。会社は「2,000万円で買い取る」と決めているのに、実際に振り込む額は源泉徴収の分だけ減ります。株主側が満額の入金を想定していると、金額の食い違いで揉めます。買取価額を決める時点で、源泉徴収後の手取りがいくらになるかまで合意しておくのが安全です。

納付期限は翌月10日です。加えて所得税法181条2項は、支払の確定した日から1年を経過しても支払われない配当等については、その1年を経過した日に支払があったものとみなして源泉徴収義務を適用すると定めています。「決議はしたが払っていない」状態を放置すると、払っていなくても納付義務が立ち上がります。

受け取った側の課税 — 個人と法人で分かれる

個人株主の場合

1回の入金が2つの所得に割れ、それぞれ別の課税方式になります。

みなし配当部分残り(譲渡収入部分)
所得区分配当所得一般株式等に係る譲渡所得等
根拠所得税法25条1項租税特別措置法37条の10第3項(みなし配当部分を除いて譲渡収入とみなす)
課税方式総合課税(超過累進税率)申告分離課税
税率他の所得と合算して累進所得税15%(措置法37条の10第1項)+復興特別所得税+住民税
取得費の控除できない(収入金額がそのまま所得)できる(収入 − 取得費 − 譲渡費用)
配当控除あり(所得税法92条)

措置法37条の10第3項は、株主が交付を受ける金額について「所得税法第二十五条第一項の規定に該当する部分の金額を除く」としたうえで、残りを「一般株式等に係る譲渡所得等に係る収入金額とみなす」と定めています。先にみなし配当を切り出し、残りを譲渡側に回すという順番が条文に書かれています。

配当控除については、所得税法92条1項がその年分の課税総所得金額が1,000万円以下の場合は配当所得の10%、1,000万円を超える部分に対応する分は5%を所得税額から控除すると定めています。みなし配当は所得税法25条により「剰余金の配当…とみなす」とされるため、配当控除の対象に含まれます。

前掲の例を最後まで通すと、譲渡側は次のようになります。

一方、配当所得1,400万円は他の所得と合算されるため、その人の所得水準によって負担が大きく変わります。所得の高い株主ほど、みなし配当部分が大きいことの不利が効きます。

法人株主の場合

法人が株主の場合は、みなし配当は法人税法23条1項の受取配当等の益金不算入の対象になります(法人税法24条1項が「第二十三条第一項第一号又は第二号に掲げる金額とみなす」と書いているためです)。持株割合に応じた不算入割合が適用されます。

その不算入割合は、完全子法人株式等なら100%ですが、関連法人株式等(3分の1超)は配当等の額の4%が負債利子相当額として控除されるため原則96%、5%超3分の1以下のその他株式等は50%、5%以下の非支配目的株式等は20%と分かれます。区分の判定時期も、完全子法人株式等が最長1年、関連法人株式等が最長6か月、非支配目的株式等が基準日等の1日と区分ごとに違います。詳しくは受取配当等の益金不算入を参照してください。ただしみなし配当は、短期保有株式等による適用除外(法人税法23条2項)の対象からは外れています。同項が「第二十四条第一項の規定により…受ける配当等の額とみなされる金額を除く」としているためです。

譲渡側については、法人税法61条の2第1項1号が明示しています。譲渡対価の額について「第二十四条第一項の規定により…とみなされる金額がある場合には、そのみなされる金額に相当する金額を控除した金額」とされており、みなし配当を差し引いた残額と帳簿価額を比べて譲渡損益を計算します。ここを差し引かずに全額を譲渡対価として計算すると、譲渡益が過大になります。

法人税の計算機で試算する(法人税・地方法人税・法人住民税・事業税)

会社には株主への通知義務がある

株主の側は、自力ではみなし配当の額を計算できません。会社の資本金等の額や発行済株式総数は、株主には見えないからです。この非対称を埋めるため、法人税法施行令23条5項が会社側に通知義務を課しています。

会社が株主に通知しなければならない事項(施行令23条5項1号・2号)
  • 1号… 交付の基因となった24条1項各号の事由、その事由の生じた日、および同日の前日(分割型分割・株式分配・資本の払戻しの場合は基準日等)における発行済株式等の総数
  • 2号… その事由に係るみなし配当額の1株当たり(口数の定めがある出資は1口当たり)の金額

条文は「通知しなければならない」と書いており、任意ではありません。株主が確定申告でみなし配当と譲渡収入を分けて申告するには、この通知が前提になります。

実務上は、自己株式を買い取るときに買取価額・1株当たりみなし配当額・源泉徴収税額・実際の振込額を1枚にまとめて株主に渡しておくと、後の確定申告まで滞りません。

相続した非上場株式を発行会社に売るときの特例

相続で非上場株式を承継したものの、相続税を払う現金がない——という場面はよくあります。会社に株式を買い取ってもらって納税資金を作ろうとすると、原則どおりならみなし配当が生じ、総合課税で重い負担になります。

ここには特例があります。租税特別措置法9条の7第1項です。

相続財産に係る株式をその発行した非上場会社に譲渡した場合のみなし配当課税の特例(措置法9条の7第1項)

次の条件をすべて満たす場合、資本金等の額を超える部分について所得税法25条1項の規定を適用しないみなし配当課税をしないと定めています。

  • 相続または遺贈により財産を取得した個人であること
  • その相続・遺贈につき納付すべき相続税額があること
  • 相続税の課税価格の計算の基礎に算入された非上場会社の株式であること
  • 譲渡先がその株式を発行した非上場会社自身であること
  • 相続の開始があった日の翌日から、相続税の申告書の提出期限の翌日以後3年を経過する日までの間に譲渡すること

相続税の申告期限は相続開始を知った日の翌日から10か月なので、実務では「相続開始からおよそ3年10か月以内」と言われる期間です。

効果は大きく変わります。みなし配当が生じないため、交付を受けた金額の全額が株式等の譲渡収入になり、取得費を引いた残りに申告分離課税(合計20.315%)がかかるだけになります。前掲の例をこの特例に当てはめると、次のとおりです。

原則(特例なし)措置法9条の7の適用あり
みなし配当1,400万円(総合課税・源泉20.42%)なし
譲渡収入600万円2,000万円
取得費300万円300万円
譲渡所得300万円1,700万円
譲渡側の税(20.315%)60万9,450円345万3,550円
配当所得1,400万円の扱い他の所得と合算して累進課税

譲渡所得が増えるため譲渡側の税額そのものは増えますが、累進課税される配当所得1,400万円が消えるので、所得水準の高い人ほど有利になります。加えて、措置法9条の7第2項は、この特例の適用がある場合の措置法37条の10第3項等の適用について読替えを設け、二重に拾わないよう調整しています。

期限を過ぎると戻らない

この特例は期間で切られています。申告期限の翌日以後3年を経過した日までに譲渡していなければ適用されません。相続税の納税資金を自社株の買取りで作る計画があるなら、相続開始の時点でこの期限を台帳に入れておくことになります。なお、適用にあたっては会社への届出など手続要件が政令に委ねられており(同条3項)、本記事では手続の詳細までは確認していません。

「みなし配当」は条文の言葉ではない

最後に、条文を読むときに必ず引っかかる点を書いておきます。「みなし配当」で条文を検索しても、ほとんど当たりません。

本記事では、法人税法・所得税法・両施行令の全文を e-Gov法令API v2 で取得し、本則(MainProvision)と附則(SupplProvision)に分けて語を数えました。結果は次のとおりです。

「みなし配当」の出現回数(本記事で全文を取得して計数。2026年8月16日時点の現行施行版)
法令本則附則参考: 「配当」全体(本則)
法人税法1回13回140回
所得税法0回0回153回
法人税法施行令10回10回499回
所得税法施行令6回0回179回

条文が使っている言葉は、見出しに表れています。法人税法24条の見出しは「配当等の額とみなす金額」、所得税法25条の見出しは「配当等とみなす金額」です。同じことを定めた条なのに、「の額」が付くかどうかが違います。条文検索でどちらか一方だけを打つと、もう一方に当たりません。

そして、法人税法の本則にただ1回だけ現れる「みなし配当」がどこにあるかというと、132条の2(組織再編成に係る行為又は計算の否認)です。税務署長が更正・決定をする場合に、不当に減少させられた項目のひとつとして「みなし配当金額(第二十四条第一項の規定により…とみなされる金額をいう。)」と、その場で定義しながら使っています。

読み取れること

みなし配当の額を計算する条文(24条・25条とそれぞれの施行令)は、この言葉を使いません。使っているのは、みなし配当を減らす操作を否認する条文と、施行令のうち通知すべき金額を特定するような場面(施行令23条5項2号の「みなし配当額」)です。条文の中では、この語は計算の道具ではなく出来上がった金額を指す略称として現れます。

実務上の含意は単純です。調べものをするときは「配当等とみなす金額」「資本の払戻し」「払戻等対応資本金額等」で当たるほうが速い、ということです。

よくある質問

Q. みなし配当は、会社が「配当」と決議していなくても生じますか?

A. 生じます。法人税法24条1項および所得税法25条1項は、株主が同項各号に掲げる事由により金銭その他の資産の交付を受けた場合において、その額が株式に対応する資本金等の額を超えるときに、その超える部分を配当等とみなすと定めています。会社法上どのような決議をしたかではなく、掲げられた事由に当たるかどうかで決まります。自己株式の取得、資本剰余金の額の減少に伴う剰余金の配当、解散による残余財産の分配、出資の払戻しなどが該当します。

Q. みなし配当の計算式を教えてください。

A. 一般に、交付を受けた金銭の額および金銭以外の資産の価額の合計額から、その株式に対応する資本金等の額を差し引いた金額が、みなし配当の額となります。差し引く金額の求め方は事由で異なり、自己株式の取得等の場合は法人税法施行令23条1項6号イにより、取得直前の資本金等の額を直前の発行済株式等の総数で除し、取得した株式数を乗じて計算します。資本の払戻しの場合は同項4号イにより、直前の資本金等の額に、前事業年度末の簿価純資産価額のうちに減少した資本剰余金の額の占める割合を乗じて計算します。この割合は小数点以下3位未満の端数を切り上げます。

Q. 非上場株式のみなし配当の源泉徴収税率は何%ですか?

A. 一般に20.42%です。所得税法182条2号が配当等について100分の20の税率を定めており、東日本大震災からの復興のための施策を実施するために必要な財源の確保に関する特別措置法28条2項が、源泉徴収すべき所得税額に100分の2.1を乗じた額を併せて徴収すると定めているためです。20%に2.1%を上乗せして20.42%になります。なお令和9年(2027年)1月1日以後の支払分については、同項の税率が100分の1.1となり、下がった1%分は防衛特別所得税として徴収されるため、上乗せの合計2.1%および20.42%という数字は変わりません。源泉徴収の対象はみなし配当とされた部分のみで、株式等の譲渡収入とされる部分には及びません。納付期限は徴収の日の属する月の翌月10日です。

Q. 会社が自己株式を買い取ると、必ずみなし配当になりますか?

A. なりません。法人税法24条1項5号は「金融商品取引所の開設する市場における購入による取得その他の政令で定める取得」を除いており、法人税法施行令23条4項が除外される取得を1号から12号まで挙げています。市場での購入、店頭売買登録銘柄の店頭売買による購入、事業の全部の譲受け、合併・分割・現物出資による移転、単元未満株式の買取請求に基づく買取り、1株に満たない端数の処理に伴う金銭の交付などが該当します。これらに当たる場合は、対価の全額が株式等の譲渡収入となります。一方、非上場会社が株主と相対で価格を決めて買い取る取得は、これらのいずれにも当たりません。

Q. 資本剰余金を原資に配当した場合、全額が配当所得になりますか?

A. なりません。所得税法24条1項は配当所得の対象となる剰余金の配当から「資本剰余金の額の減少に伴うもの」を除いており、資本剰余金を原資とする配当はそのままでは配当所得になりません。そのうえで同法25条1項4号が、これを「資本の払戻し」として、資本金等の額のうち株式に対応する部分を超える金額に限り剰余金の配当とみなすと定めています。したがって、超えない部分は株式等の譲渡収入として扱われ、租税特別措置法37条の10第3項4号により譲渡所得等に係る収入金額とみなされます。

Q. 資本の払戻しの計算に上限があると聞きました。いつからのものですか?

A. 法人税法施行令23条1項4号イには、資本の払戻しの場合に計算した金額が払戻し等により減少した資本剰余金の額を超えるときはその超える部分を控除する、という上限が置かれています。本記事で e-Gov法令API v2 により同施行令の新旧リビジョンを取得して比較したところ、2021年8月2日施行版の23条1項にはこの文言が含まれておらず、2022年4月1日施行版(令和4年政令第137号による改正後)には含まれていました。したがってこの上限は2022年4月1日施行の改正で加わったものです。同じ上限は所得税法施行令61条にも同文で置かれています。過年度の資本の払戻しを検算する場合は、当時適用されていたリビジョンの条文で計算する必要があります。

Q. 株主はみなし配当の額をどうやって知るのですか?

A. 会社から通知を受けます。法人税法施行令23条5項は、法人税法24条1項各号に掲げる事由により株主等に金銭その他の資産の交付が行われる場合には、その法人は株主等に対し、交付の基因となった事由・その事由の生じた日・同日の前日(分割型分割、株式分配または資本の払戻しの場合は基準日等)における発行済株式等の総数(1号)と、その事由に係るみなし配当額に相当する金額の1株当たりの金額(2号)を通知しなければならないと定めています。株主の側からは会社の資本金等の額や発行済株式総数が分からないため、この通知が確定申告の前提になります。

Q. 相続した非上場株式を会社に買い取ってもらう場合、有利になる制度はありますか?

A. 租税特別措置法9条の7第1項に特例があります。相続または遺贈により財産を取得した個人で、その相続等につき納付すべき相続税額がある人が、相続税の課税価格の計算の基礎に算入された非上場会社の株式を、その発行会社に譲渡した場合には、資本金等の額のうち株式に対応する部分を超える金額について所得税法25条1項を適用しない、すなわちみなし配当課税を行わないとされています。期間は、相続の開始があった日の翌日から相続税の申告書の提出期限の翌日以後3年を経過する日までです。相続税の申告期限が相続開始を知った日の翌日から10か月であることから、実務上はおおむね相続開始から3年10か月以内と言われます。適用を受けると交付額の全額が株式等の譲渡収入となり、取得費を控除した残額に申告分離課税が適用されます。

Q. 法人が株主の場合、譲渡損益はどう計算しますか?

A. 一般に、みなし配当とされた金額を対価から差し引いてから計算します。法人税法61条の2第1項1号は、譲渡により通常得べき対価の額について「第二十四条第一項の規定により第二十三条第一項第一号又は第二号に掲げる金額とみなされる金額がある場合には、そのみなされる金額に相当する金額を控除した金額」と定めており、同項2号の譲渡原価の額との差額が譲渡利益額または譲渡損失額になります。みなし配当部分そのものは法人税法23条1項の受取配当等の益金不算入の対象となります。控除せずに交付額の全額を対価として計算すると、譲渡益が過大になります。

Q. 「みなし配当」という言葉で条文を検索しても見つかりません。

A. 条文の言葉ではないためです。本記事で法人税法・所得税法・両施行令の全文を取得して数えたところ、「みなし配当」は所得税法には本則・附則とも0回、法人税法の本則では132条の2(組織再編成に係る行為又は計算の否認)にただ1回しか現れませんでした。条文の見出しは、法人税法24条が「配当等の額とみなす金額」、所得税法25条が「配当等とみなす金額」です。検索するのであれば「配当等とみなす金額」「資本の払戻し」「払戻等対応資本金額等」といった語のほうが確実に当たります。

出典

本記事は一般的な情報提供であり、個別の税務相談ではありません。記載は2026年8月16日時点で確認した法令に基づいています。みなし配当の額、源泉徴収の要否、譲渡損益の計算、特例の適用可否は、事由の区分、資本金等の額および発行済株式総数、事業年度、株主の属性によって変わりますので、実際の判断にあたっては顧問税理士または所轄の税務署へご確認ください。

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