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会社をたたむときの税務 — 解散しても会社は消えない。事業年度は2回切られ、最後の申告期限は1か月

結論から言うと、解散は「会社が消えること」ではありません。解散した会社は清算の目的の範囲内でそのまま存続し、法人格が消えるのは清算結了のときです。会社法476条が「清算が結了するまではなお存続するものとみなす」と書いています。存続している以上、申告も納税も帳簿の作成も続きます。「解散したのでもう申告は要らない」という理解は、条文の上でも実務の上でも成り立ちません。

経理の実務でいちばん効くのは事業年度の切られ方です。法人税法14条1項は、①解散の日②残余財産の確定の日の2か所で事業年度を終了させます。定款で決めた決算日とは無関係に切られるので、解散した年は1年のあいだに2回以上の確定申告が発生します。しかも残余財産の確定の日を含む事業年度だけは申告期限が2か月ではなく1か月で、さらに最後の分配を先に済ませてしまうとその前日まで前倒しになります(法人税法74条2項)。ここは実務でいちばん事故が起きる場所です。

そのうえで、税額に直接効くのが期限切れ欠損金(法人税法59条4項)です。残余財産がないと見込まれるときは、10年の期限を過ぎて使えなくなったはずの古い欠損金まで損金に算入できます。ただし枠の計算には順序があり、まず青色欠損金を使い、その残りが期限切れ欠損金の枠になります(法人税法施行令117条の5)。そしてこの条の第1号には「資本金等の額が零以下である場合には、当該欠損金額の合計額から当該資本金等の額を減算した金額」という括弧書きがあり、資本金等の額がマイナスの会社は枠がその分だけ増えます。この括弧書きは、すぐ隣の民事再生用の条(施行令117条の4)には存在しません。

解散しても会社は消えない — 消えるのは清算結了のとき

会社法471条は、株主総会の決議・定款で定めた存続期間の満了・定款で定めた解散事由の発生・合併・破産手続開始の決定・解散を命ずる裁判の6つを解散の事由として挙げています。中小企業で実際に使われるのはほぼ株主総会の決議(3号)です。

解散すると清算が始まります。ここで押さえておくべきなのは、清算中の会社の法人格がどこまで残るかです。会社法476条はこう定めています。

前条の規定により清算をする株式会社(以下「清算株式会社」という。)は、清算の目的の範囲内において、清算が結了するまではなお存続するものとみなす。

「清算の目的の範囲内において」という限定が付いている点が実務では効きます。清算株式会社は新しい商売を始めることはできませんが、債権の取立て・債務の弁済・残余財産の分配という清算の仕事はできますし、そのために契約もします。清算人の職務を定めた会社法481条が、まさにその3つを挙げています。

清算人は、次に掲げる職務を行う。

続く各号が「現務の結了」「債権の取立て及び債務の弁済」「残余財産の分配」の3つです。1号の「現務の結了」は、進行中の取引を終わらせる仕事を指します。仕掛かりの受注を完成させて請求まで持っていく行為はここに含まれるので、解散した瞬間に売上が立たなくなるわけではありません。解散の日以後にも売上と利益が発生することはあり、その所得には通常どおり法人税がかかります。

「清算所得課税」はもうありません

かつては清算中の所得に対して、通常の各事業年度の所得とは別の「清算所得に対する法人税」という仕組みがありました。現在の法人税法にこの制度は残っておらず、条文の上では附則の経過規定の中にだけ名前が残っています。いまは清算中も通常どおり「各事業年度の所得に対する法人税」を計算します。古い解説書やひな型を参照するときは、この点が入れ替わっていることに注意してください。

事業年度は2回切られる — 決算日は関係ない

法人税法14条1項は、一定の事実が生じたときに事業年度を強制的に終了させる規定です。柱書はこう書いています。

次の各号に掲げる事実が生じた場合には、その事実が生じた法人の事業年度は、前条第一項の規定にかかわらず、当該各号に定める日に終了し、これに続く事業年度は、第二号又は第五号に掲げる事実が生じた場合を除き、同日の翌日から開始するものとする。

解散に関係するのは1号(内国法人が事業年度の中途において解散をしたこと → その解散の日)と5号(清算中の法人の残余財産が事業年度の中途において確定したこと → その残余財産の確定の日)です。

ここで柱書の「第二号又は第五号に掲げる事実が生じた場合を除き」という一言を読み落とさないでください。1号(解散)で切られたときは翌日から次の事業年度が始まりますが、5号(残余財産の確定)で切られたときは、次の事業年度が始まりません。会社としての時間がそこで終わるからです。残余財産の確定の日を含む事業年度が、その会社の最後の事業年度になります。

清算中の事業年度の区切りは、定款の決算日ではなく解散の日を起点に1年ごとになります。会社法494条1項が「清算事務年度」を次のように定義しています。

清算株式会社は、法務省令で定めるところにより、各清算事務年度(第四百七十五条各号に掲げる場合に該当することとなった日の翌日又はその後毎年その日に応当する日(応当する日がない場合にあっては、その前日)から始まる各一年の期間をいう。)に係る貸借対照表及び事務報告並びにこれらの附属明細書を作成しなければならない。

括弧の中にさらに括弧で「応当する日がない場合にあっては、その前日」と書かれています。うるう年の2月29日に解散した会社を想定した読替えです。翌年は2月29日が無いので、清算事務年度は2月28日から始まります。

3月決算の会社が 2026年9月30日に解散決議した場合 ① 解散事業年度 2026/4/1 → 2026/9/30 法人税法14条1項1号で「解散の日」に終了する。決算日3/31は来ていない 申告期限 2026/11/30(終了の日の翌日から2か月) ② 清算事務年度 2026/10/1 → 2027/9/30 会社法494条1項。解散の日の翌日から1年ごと(決算日ではない) 申告期限 2027/11/30(2か月) ③ 最後の事業年度 2027/10/1 → 2027/12/20(残余財産の確定の日) 法人税法14条1項5号。柱書の「第五号を除き」により、翌日から次の 事業年度は始まらない=これが最後の申告になる 申告期限 2028/1/20(1か月・法人税法74条2項) ★ ただし 2028/1/10 に最後の分配をすると 申告期限は「その行われる日の前日」= 2028/1/9 へ前倒しになる 10日ぶん短くなる。分配を急ぐと申告が間に合わなくなる向きに効く ※ 解散した年だけで①②の2回、最後に③でもう1回。決算日と関係なく申告が増える
解散から清算結了までの事業年度の区切りと申告期限。①は解散の日、③は残余財産の確定の日で切られる。

最後の申告期限だけ1か月。分配を先にすると前倒しになる

法人税の確定申告期限は、原則として事業年度終了の日の翌日から2か月以内です(法人税法74条1項)。ところが残余財産が確定した事業年度だけは、この2か月が1か月に読み替えられます。74条2項の条文はこうです。

清算中の内国法人につきその残余財産が確定した場合には、当該内国法人の当該残余財産の確定の日の属する事業年度(当該内国法人が通算法人である場合には、当該内国法人に係る通算親法人の事業年度終了の日に終了するものを除く。)に係る前項の規定の適用については、同項中「二月以内」とあるのは、「一月以内(当該翌日から一月以内に残余財産の最後の分配又は引渡しが行われる場合には、その行われる日の前日まで)」とする。

読替えの括弧の中身が実務では決定的です。1か月以内に最後の分配または引渡しをするなら、期限は「その行われる日の前日」になります。つまり分配を早く済ませるほど、申告期限は前に動きます。

ここが事故になりやすい理由

清算の実務では、残余財産が確定したら株主へ早く配ってしまいたくなります。ところが分配を先に実行すると、申告期限が自動的にその前日まで縮みます。「1か月あるから来月頭に申告しよう」と考えて分配だけ先に済ませると、分配した時点ですでに期限を過ぎているということが起こります。順序は「申告書を仕上げてから分配する」のほうが安全です。なお、この読替えは期限を延ばす方向には働きません。

期限を延長する制度(申告期限の延長の特例)も、この1か月には使えないと考えるのが実務の前提です。延長の特例は「各事業年度終了の日の翌日から2か月以内」を前提に組み立てられており、残余財産確定事業年度は会社そのものが消える直前なので、そもそも延長する時間的な余地がありません。

期限切れ欠損金 — 青色欠損金を使った「残り」が枠になる

清算の局面では、債務免除益や資産の売却益で思いがけず所得が出ることがあります。ここで効くのが法人税法59条4項です。

内国法人が解散した場合において、残余財産がないと見込まれるときは、その清算中に終了する事業年度(前三項の規定の適用を受ける事業年度を除く。以下この項において「適用年度」という。)前の各事業年度において生じた欠損金額を基礎として政令で定めるところにより計算した金額に相当する金額(当該相当する金額がこの項及び第六十二条の五第五項の規定を適用しないものとして計算した場合における当該適用年度の所得の金額を超える場合には、その超える部分の金額を控除した金額)は、当該適用年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入する。

要件は「解散した場合」「残余財産がないと見込まれるとき」の2つです。債務超過が解消できずに終わる会社が対象で、株主に配れる財産が残る会社では使えません。

「政令で定めるところにより計算した金額」の中身は、法人税法施行令117条の5です。第1号に掲げる金額から第2号に掲げる金額を控除した金額とされており、第2号はこう書かれています。

法第五十七条第一項(欠損金の繰越し)の規定により適用年度の所得の金額の計算上損金の額に算入される欠損金額

つまり青色欠損金として使える分は先に使い、その分だけ期限切れ欠損金の枠から差し引くという構造です。両方を重ねて二重に使うことはできません。順序は次のようになります。

設例: 清算中の事業年度に債務免除益 5,000万円が出た(他の所得は0) 前提① 期首の繰越欠損金の合計 … 6,000万円 別表五(一)の期首現在利益積立金額のマイナス。10年を過ぎた古い分も含む 前提② そのうち青色欠損金(まだ期限内) … 2,000万円 法人税法57条1項で損金算入できる分 STEP1 まず青色欠損金 2,000万円を損金算入(57条1項) 所得 5,000万 − 2,000万 = 残り 3,000万円 STEP2 期限切れ欠損金の枠 = 6,000万 − 2,000万 = 4,000万円 うち残り所得 3,000万円まで損金算入(59条4項の括弧書きで所得が上限)→ 所得 0
期限切れ欠損金の枠は「繰越欠損金の合計」から「その年に使う青色欠損金」を引いた額(施行令117条の5)。損金算入額はその年の所得が上限になる。

59条4項の本文にある「その超える部分の金額を控除した金額」という括弧書きも重要で、期限切れ欠損金の損金算入額はその事業年度の所得が上限です。使い切れなかった枠が翌期に繰り越されるわけではありません。清算の途中で所得が出た年ごとに、その年の所得の範囲で使うことになります。

資本金等の額がマイナスなら枠が増える — 解散の条だけにある括弧書き

施行令117条の5の第1号には、実務であまり知られていない括弧書きがあります。

適用年度終了の時における前事業年度以前の事業年度から繰り越された欠損金額の合計額(当該適用年度終了の時における資本金等の額が零以下である場合には、当該欠損金額の合計額から当該資本金等の額を減算した金額)

資本金等の額がゼロ以下のときは、欠損金額の合計額から資本金等の額を「減算」すると書かれています。資本金等の額がマイナスなのですから、マイナスを引く=枠が増えます。資本金等の額が △500万円の会社であれば、繰越欠損金の合計が6,000万円でも枠は6,500万円になります。

ここが踏み込んだ一段です。同じ構造の条文が隣に並んでいるのに、この括弧書きは解散の条にしかありません。民事再生等の場合の欠損金額の範囲を定める施行令117条の4の第1号は、同じ位置がこうなっています。

適用年度終了の時における前事業年度以前の事業年度から繰り越された欠損金額の合計額

括弧書きがありません。民事再生では資本金等の額のマイナスを足せないが、解散では足せるということです。自己株式の取得を繰り返した会社や、資本の払戻しをした会社は資本金等の額がマイナスになっていることがあり、そこに気づかないまま計算すると使えるはずの枠を自分から狭めてしまいます。

資本金等の額は「資本金」ではない

ここでいう資本金等の額は、法人税法上の概念で、別表五(一)のⅡで管理されている金額です。登記されている資本金の額とは一致しません。自己株式を取得すると、その対価のうち資本金等の額に対応する部分だけでなく、みなし配当に相当する部分も含めて資本金等の額が減るため、繰り返すとマイナスに沈むことがあります。解散の局面では、まず別表五(一)を開いて資本金等の額の符号を確かめてください。

説明書類を付けないと適用されない

期限切れ欠損金は、条件に当たれば自動的に使えるわけではありません。法人税法59条6項が適用の条件として書類の添付を求めています。

第一項から第四項までの規定は、確定申告書、修正申告書又は更正請求書にこれらの規定により損金の額に算入される金額の計算に関する明細を記載した書類及び更生手続開始の決定があつたこと若しくは再生手続開始の決定があつたこと若しくは第二項若しくは第三項に規定する政令で定める事実が生じたことを証する書類又は残余財産がないと見込まれることを説明する書類その他の財務省令で定める書類の添付がある場合に限り、適用する。

「適用する」ではなく「添付がある場合に限り、適用する」という書き方です。つまり添付が無ければ適用されません。要求されているのは2種類で、①損金算入額の計算明細と、②残余財産がないと見込まれることを説明する書類です。実務では②として、清算中の事業年度終了時の財産を処分価額で並べた実態貸借対照表を作成し、負債が資産を上回っていることを示す方法が広く採られています。

ただし、まったく救済がないわけではありません。続く59条7項がこう定めています。

税務署長は、前項に規定する財務省令で定める書類の添付がない確定申告書、修正申告書又は更正請求書の提出があつた場合においても、その書類の添付がなかつたことについてやむを得ない事情があると認めるときは、第一項から第四項までの規定を適用することができる。

「やむを得ない事情があると認めるとき」という判断が税務署長に委ねられており、しかも「適用することができる」という書き方です。当然に救われる規定ではないので、添付を落とさないことが唯一の確実な対策になります。

債権申出の2か月は「弁済してはいけない期間」

解散したら、清算株式会社は債権者に対して債権の申出を求める公告をします。会社法499条1項です。

清算株式会社は、第四百七十五条各号に掲げる場合に該当することとなった後、遅滞なく、当該清算株式会社の債権者に対し、一定の期間内にその債権を申し出るべき旨を官報に公告し、かつ、知れている債権者には、各別にこれを催告しなければならない。ただし、当該期間は、二箇月を下ることができない。

この2か月が、会社をたたむのに最低でも2か月以上かかる理由です。そして誤解が多いのが、この期間の性質です。2か月は「待っていればよい期間」ではなく「弁済してはいけない期間」です。会社法500条1項を読んでください。

清算株式会社は、前条第一項の期間内は、債務の弁済をすることができない。この場合において、清算株式会社は、その債務の不履行によって生じた責任を免れることができない。

後段が効いています。法律が弁済を禁じているのに、払わなかったことによる遅延損害金などの責任は免れないという作りです。法律が弁済を禁じていることを理由に遅延の責任を免れる、という言い分は通りません。取引先との関係では、この期間に入る前に支払いを済ませておくか、遅延が生じることを事前に伝えておくのが実務的な対応になります。

もっとも、例外の道は用意されています。500条2項は、裁判所の許可を得れば少額の債権や担保付債権など「他の債権者を害するおそれがない債権」について弁済できると定めており、その申立ては清算人が2人以上いるときは全員の同意によることまで書かれています。

残余財産を株主に配れるようになるのは、債務の弁済が終わってからです。会社法502条が定めています。

清算株式会社は、当該清算株式会社の債務を弁済した後でなければ、その財産を株主に分配することができない。ただし、その存否又は額について争いのある債権に係る債務についてその弁済をするために必要と認められる財産を留保した場合は、この限りでない。

ただし書があるので、係争中の債権があっても清算が永久に止まるわけではありません。弁済に必要と認められる財産を留保すれば、残りは分配できます。

残余財産の分配は、配当とみなされる部分がある

残余財産を株主に分配すると、その全額が株式の払戻しになるわけではありません。法人税法24条1項は、一定の事由で金銭等の交付を受けた場合に、資本金等の額のうち対応する部分を超える金額を配当とみなすと定めており、その4号が次のように書いています。

資本の払戻し(剰余金の配当(資本剰余金の額の減少に伴うものに限る。)のうち分割型分割によるもの及び株式分配以外のもの並びに出資等減少分配をいう。)又は解散による残余財産の分配

末尾に「又は解散による残余財産の分配」と明記されています。したがって残余財産の分配額は、①資本金等の額のうち交付の基因となった株式に対応する部分(=出資の払戻し)と、②それを超える部分(=みなし配当)に分かれます。②は配当として扱われるため、支払う側に源泉徴収の義務が生じます。会社をたたむ最後の場面で現金を配って終わりにするつもりが、源泉所得税の納付という作業がもう1つ残ることになります。

資本金等の額がマイナスの会社では

前述のとおり資本金等の額はマイナスになることがあります。その場合、分配額のほぼ全額がみなし配当になる方向に働きます。期限切れ欠損金の枠が増えるのと、みなし配当が増えるのは、同じ「資本金等の額のマイナス」から来ています。片方だけを見て有利・不利を判断しないでください。具体的な計算は株主構成と資本金等の額の内訳で変わるので、税理士に確認するのが確実です。

帳簿は登記から10年。義務者は会社ではなく清算人

清算事務が終わったら、清算人は決算報告を作成して株主総会の承認を受けます(会社法507条1項・3項)。この承認には副次的な効果があり、507条4項は「任務を怠ったことによる清算人の損害賠償の責任は、免除されたものとみなす」と定めています。ただし「清算人の職務の執行に関し不正の行為があったときは、この限りでない」というただし書が付いています。

承認を受けたら2週間以内に清算結了の登記をします。会社法929条1号が、株式会社については507条3項の承認の日を起算日と定めています。この登記で法人格が消えます。

しかし、そこで全部が終わるわけではありません。会社法508条1項です。

清算人(清算人会設置会社にあっては、第四百八十九条第七項各号に掲げる清算人)は、清算株式会社の本店の所在地における清算結了の登記の時から十年間、清算株式会社の帳簿並びにその事業及び清算に関する重要な資料(以下この条において「帳簿資料」という。)を保存しなければならない。

義務者は「清算人」です。会社ではありません。会社はもう存在しないので、当然といえば当然なのですが、実務的には個人が10年間、段ボールを抱えるということです。しかも起算日は解散の日でも承認の日でもなく清算結了の登記の時なので、登記が遅れればその分だけ後ろへずれます。

なお、清算人が保存し続けられない事情があるときは、508条2項により裁判所が利害関係人の申立てで保存者を選任できます。この場合の費用は清算株式会社の負担とすると4項が定めていますが、清算結了後にその負担を誰がどう出すかという問題は残ります。

清算の途中で作る書類にも保存期間の定めがあります。清算人が就任後遅滞なく作る財産目録および貸借対照表について、会社法492条4項は「財産目録等を作成した時からその本店の所在地における清算結了の登記の時までの間」保存しなければならないと定めています。清算事務年度ごとの貸借対照表も、494条3項が同じく作成時から清算結了の登記の時までとしています。この2つは登記の時までで、508条の帳簿資料は登記の時から10年です。終点と起点が入れ替わる形で連続しているので、混同しないでください。

実務の順序 — いつ何を出すか

会社法と法人税法の期限を1本の時間軸に並べると次のようになります。日数は最短の目安で、実際には債権債務の整理に時間がかかります。

時点やること期限の根拠
解散の日株主総会で解散決議・清算人の選任会社法471条3号
解散から2週間以内解散および清算人の登記会社法926条・928条
解散後 遅滞なく官報公告(2か月以上)+知れている債権者への各別の催告会社法499条1項
清算人就任後 遅滞なく財産目録・貸借対照表を作成し株主総会の承認を受ける会社法492条1項・3項
解散の日から2か月以内解散事業年度の確定申告法人税法14条1項1号・74条1項
公告期間中債務の弁済をしない(少額債権等は裁判所の許可で可)会社法500条1項・2項
公告期間の経過後債務を弁済し、残った財産を株主へ分配会社法502条
清算事務年度ごと貸借対照表・事務報告の作成/確定申告(2か月)会社法494条1項/法人税法74条1項
残余財産の確定の日最後の事業年度がここで終わる(次は始まらない)法人税法14条1項5号
確定から1か月以内最後の確定申告。最後の分配を先にするならその前日まで法人税法74条2項
清算事務の終了後決算報告を作成し株主総会の承認を受ける会社法507条1項・3項
承認の日から2週間以内清算結了の登記会社法929条1号
登記の時から10年清算人が帳簿資料を保存会社法508条1項

税務署・都道府県・市町村への異動届出書、給与を払っていた場合の給与支払事務所等の廃止届、社会保険の適用事業所全喪届、労働保険の確定精算など、法人税の申告以外の届出も並行して必要になります。これらは提出先ごとに様式も期限も違うため、解散を決めた時点で一覧にしてしまうのが確実です。

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よくある質問

Q. 解散したら、その年の確定申告は1回で済みますか?

A. 済みません。法人税法14条1項1号により事業年度は解散の日で終了するため、そこまでの期間で1回申告が必要です。そのうえで解散の日の翌日から新しい事業年度が始まり、清算中も事業年度ごとに申告が続きます。決算日の到来とは無関係に区切られるので、解散した年は少なくとも2回の申告になります。

Q. 残余財産が確定した後の事業年度は、いつ始まりますか?

A. 始まりません。法人税法14条1項の柱書は「これに続く事業年度は、第二号又は第五号に掲げる事実が生じた場合を除き、同日の翌日から開始するものとする」と書いており、残余財産の確定は第五号です。したがって残余財産の確定の日を含む事業年度がその法人の最後の事業年度になります。

Q. 最後の申告期限を2か月と考えて準備していました。間に合いますか?

A. 残余財産の確定の日を含む事業年度は1か月です。法人税法74条2項が74条1項の「二月以内」を「一月以内」に読み替えています。さらに1か月以内に最後の分配または引渡しを行う場合は、その行われる日の前日が期限になります。分配を先に実行すると期限が前へ動くため、申告書を仕上げてから分配する順序が安全です。

Q. 10年より前の古い欠損金は、清算のときも使えないのですか?

A. 残余財産がないと見込まれるときは使えます。法人税法59条4項が、清算中に終了する事業年度について、前の各事業年度に生じた欠損金額を基礎に政令で計算した金額を損金に算入すると定めています。ただし損金算入できるのはその事業年度の所得までで、使い切れなかった枠が翌期へ繰り越されるわけではありません。

Q. 青色欠損金と期限切れ欠損金は、両方を重ねて使えますか?

A. 重ねては使えません。法人税法施行令117条の5は、繰り越された欠損金額の合計額から、法人税法57条1項によりその年の所得の計算上損金の額に算入される欠損金額を控除した金額を枠とすると定めています。青色欠損金として使った分は枠から差し引かれるため、先に青色欠損金を使い、その残りが期限切れ欠損金の枠になります。

Q. 資本金等の額がマイナスだと、期限切れ欠損金の計算は変わりますか?

A. 変わります。法人税法施行令117条の5第1号の括弧書きが、適用年度終了の時における資本金等の額がゼロ以下である場合には、繰り越された欠損金額の合計額からその資本金等の額を減算した金額とすると定めています。マイナスの金額を減算するため、枠はその分だけ大きくなります。この括弧書きは民事再生等について定めた施行令117条の4第1号にはありません。

Q. 期限切れ欠損金を使うのに、申告書へ添付する書類はありますか?

A. あります。法人税法59条6項が、損金算入額の計算に関する明細を記載した書類と、残余財産がないと見込まれることを説明する書類の添付がある場合に限り適用すると定めています。添付がない場合でも、同条7項によりやむを得ない事情があると税務署長が認めるときは適用できるとされていますが、当然に認められるものではありません。

Q. 官報公告の2か月のあいだ、仕入先への支払いは続けてよいですか?

A. 原則としてできません。会社法500条1項が、債権申出の期間内は債務の弁済をすることができないと定めています。しかも同項後段は、その債務の不履行によって生じた責任を免れることができないとしています。同条2項により、少額の債権など他の債権者を害するおそれがない債権については裁判所の許可を得て弁済することができます。

Q. 清算結了の登記が済めば、書類はすべて処分してよいですか?

A. できません。会社法508条1項が、清算人は清算結了の登記の時から10年間、帳簿並びに事業および清算に関する重要な資料を保存しなければならないと定めています。保存義務を負うのは会社ではなく清算人個人です。同条2項により、裁判所が利害関係人の申立てで清算人に代わって保存する者を選任することもできます。

Q. 残余財産を株主に配ると、源泉徴収は必要ですか?

A. 配当とみなされる部分について必要になります。法人税法24条1項4号が「解散による残余財産の分配」を掲げており、交付した金銭等の額が資本金等の額のうち対応する部分を超えるときは、その超える部分が配当とみなされます。具体的な計算と納付の手続は株主の区分によって異なるため、税理士に確認してください。

出典

この記事は一般的な情報提供であり、個別の申告や清算手続についての助言ではありません。期限切れ欠損金の計算、残余財産の分配に伴うみなし配当の計算、清算中の各種届出は、資本金等の額の内訳・株主構成・債権債務の状況によって結論が変わります。実際の清算手続および申告については、税理士および司法書士にご確認ください。数値例は理解のための設例であり、実際の税額を示すものではありません。

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