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繰越欠損金の10年ルール|50%制限が外れる中小法人と、青色取消しで消える境界

結論から言うと、赤字(欠損金)は10年繰り越せます。ただし翌期以降に実際へ引ける金額には上限があり、原則はその事業年度の所得の50%までです。所得の全額から引ける(=100%控除できる)のは「中小法人等」に当たる場合だけで、これは法人税法57条11項が同条1項ただし書の「所得の金額の百分の五十に相当する金額」を「所得の金額」と読み替える、という形で定められています。

実務で取り違えが起きやすいのは、次の2点です。ひとつは資本金1億円以下でも100%控除にならない会社があること。もうひとつは、繰越しの継続要件として条文が求めているのが「青色申告書」ではなく「確定申告書」の連続提出だという点です。後者は、青色申告をやめた場合と、青色申告の承認を取り消された場合とで結論が変わります。

繰り越せるのは10年以内に開始した事業年度の欠損金

法人税法57条1項は、内国法人の各事業年度開始の日前十年以内に開始した事業年度において生じた欠損金額がある場合には、その金額に相当する額を当該各事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入すると定めています。条文の数え方は「開始の日前十年以内に開始した事業年度」なので、決算期からさかのぼって10期ぶんが対象になるという読み方になります。

同項の括弧書きは、すでに前の事業年度で損金算入されたものと、法人税法80条(欠損金の繰戻しによる還付)により還付を受けるべき金額の計算の基礎となったものを除いています。つまり一度使った欠損金や、還付の原資にした欠損金は、二重には使えません。

古い年度のものから使う複数の年度に欠損金がある場合、57条1項ただし書は損金算入限度額から「当該欠損金額の生じた事業年度前の事業年度において生じた欠損金額」で損金算入される額を控除した残りを限度とする構造になっています。先に古い年度の欠損金が限度額を埋めるため、結果として発生の古いものから順に使われる形になります。期限切れが近いものから消化されるので、通常はこれが有利な順序でもあります。

控除できるのは所得の50%まで(原則)

57条1項の本文だけを読むと欠損金の全額が損金になりそうですが、続くただし書きが上限を置いています。損金算入限度額とは、本文の規定を適用せず、かつ59条3項・4項(会社更生等による債務免除等があった場合の欠損金の損金算入)と62条の5第5項(現物分配による資産の譲渡)を適用しないものとして計算した場合の、その事業年度の所得の金額の百分の五十に相当する金額である、と条文は定義しています。

ここで押さえておきたいのは、50%の分母が「繰越欠損金を引く前の所得」だという点です。所得1,000万円に対して繰越欠損金が1,000万円あっても、原則の会社が引けるのは500万円で、残る500万円には法人税がかかります。使えなかった500万円は消えるわけではなく、10年の期限内であれば翌期以降に繰り越されます。

50%制限が外れる「中小法人等」の範囲

法人税法57条11項1号は、各事業年度終了の時において中小法人等に該当する内国法人については、1項ただし書中の「所得の金額の百分の五十に相当する金額」を「所得の金額」と読み替えると定めています。読み替えの結果、限度額が所得と同額になる=実質的に100%控除できる、という組み立てです。

中小法人等として掲げられているのは、イ 普通法人(投資法人・特定目的会社・受託法人を除く)のうち資本金の額もしくは出資金の額が1億円以下であるもの、または資本もしくは出資を有しないもの、ロ 公益法人等または協同組合等、ハ 人格のない社団等、の3つです。

1億円以下でも外れる場合があるイの括弧書きは、資本金1億円以下であっても法人税法66条5項2号または3号に掲げる法人に該当するものと、同条6項に規定する大通算法人を除いています。66条5項2号は「大法人(資本金の額または出資金の額が5億円以上である法人、相互会社、受託法人)との間に当該大法人による完全支配関係がある普通法人」です。3号は、複数の大法人に完全支配されていて、その全ての大法人の持分をいずれか一の法人が持つとみなした場合に完全支配関係が成立するときの普通法人を指します。
つまり資本金1,000万円の会社でも、資本金5億円以上の親会社に100%保有されていれば中小法人等ではなく、控除は所得の50%までということになります。グループ入りした年度から扱いが変わる点なので、資本金の額だけで判定しないよう注意が要ります。
所得1,000万円/繰越欠損金1,000万円のとき、その期に引ける額 大法人など(原則) 引けるのは 500万円(所得の50%)/残り500万円に課税 中小法人等(57条11項1号) 引けるのは 1,000万円(所得の100%)/課税所得は0 ※資本金1億円以下でも、資本金5億円以上の大法人に完全支配されていれば50%のまま
57条1項ただし書の50%が、57条11項1号で「所得の金額」に読み替えられる。分母は繰越欠損金を引く前の所得。

なお57条11項2号は、中小法人等に当たらない法人であっても、更生手続開始の決定があった場合や再生手続開始の決定があった場合に、一定の期間内の日の属する事業年度について同じ読み替えを認めています。更生計画認可の決定の日以後7年を経過する日までの期間、という形で条文に期間が書かれています。

連続提出が求められるのは「確定申告書」であって青色申告書ではない

繰越欠損金は「青色申告をしている間しか使えない」と説明されることがありますが、条文の言葉はもう少し細かく分かれています。法人税法57条10項は、1項の規定は、欠損金額の生じた事業年度について確定申告書を提出し、かつ、その後において連続して確定申告書を提出している場合であって、欠損金額の生じた事業年度に係る帳簿書類を財務省令で定めるところにより保存している場合に限り、適用すると定めています。ここに出てくるのは「確定申告書」であって、「青色申告書」ではありません。

では青色はどこで効くのか。法人税法58条1項が、10年以内に開始した事業年度のうち青色申告書を提出する事業年度でない事業年度において生じた欠損金額については、災害損失金額(棚卸資産・固定資産・一定の繰延資産について震災、風水害、火災その他政令で定める災害により生じた損失の額)を超える部分の金額をないものとすると定めています。つまり青色が要るのは欠損金が生じた、その事業年度についてであり、その後の各年度に求められるのは確定申告書を連続して出していることだ、という切り分けになります。

「やめた」と「取り消された」で結論が違うこの切り分けが効いてくるのが青色申告をやめるときです。将来に向かって青色でなくなるだけなら、過去の青色年度に生じた欠損金は58条に触れません。連続して確定申告書を提出していれば、10年の期限内は57条1項の対象として残ります。
一方、青色申告の承認の取消しは事情が違います。法人税法127条1項は、税務署長が各号に定める事業年度まで遡って承認を取り消すことができるとし、「その取消しがあつたときは、当該事業年度開始の日以後その内国法人が提出したその承認に係る青色申告書は、青色申告書以外の申告書とみなす」と定めています。遡及の対象になった年度は「青色申告書を提出する事業年度でない事業年度」になるため、その年度に生じた欠損金は58条により災害損失金額を超える部分が消えます。取消事由は、帳簿書類の備付け・記録・保存が財務省令の定めに従って行われていないこと(1号)、帳簿書類について税務署長の指示に従わなかったこと(2号)、帳簿書類に取引の全部または一部を隠蔽・仮装して記載したこと等(3号)などが掲げられています。

帳簿書類の保存も適用要件のひとつ

57条10項をもう一度読むと、要件は「確定申告書の連続提出」だけではありません。欠損金額の生じた事業年度に係る帳簿書類を財務省令で定めるところにより保存している場合に限り適用する、と条件が並んでいます。繰越欠損金は最大で10年先まで使うものなので、使う側の年度ではなく、欠損が生じた側の年度の帳簿書類が必要になるという点が実務上のポイントです。10年前の帳簿を出せるかどうかが、控除できるかどうかに直結する構造になっています。

この保存要件は、前節の127条1項1号(帳簿書類の備付け・記録・保存が財務省令の定めに従っていないこと)とも地続きで、帳簿保存の不備は57条10項の入口と青色申告の承認取消しの両方につながり得ます。

法人税額をためしに計算する(法人税の簡易計算)

繰り越すか、繰り戻して還付を受けるか

赤字が出たときの選択肢は、翌期以降に繰り越すことだけではありません。法人税法80条1項は、青色申告書である確定申告書を提出する事業年度において生じた欠損金額がある場合に、その確定申告書の提出と同時に、欠損事業年度開始の日前1年以内に開始したいずれかの事業年度(還付所得事業年度)の所得に対する法人税額のうち、一定の割合に相当する法人税の還付を請求することができると定めています。前期に納めた税金を取り戻す方向の制度です。

ただし租税特別措置法66条の12が「中小企業者の欠損金等以外の欠損金の繰戻しによる還付の不適用」として、掲げる法人以外の法人の平成4年4月1日から令和10年3月31日までの間に終了する各事業年度において生じた欠損金額については、法人税法80条1項を適用しないとしています。適用が残る法人として1号に掲げられているのは、資本金の額もしくは出資金の額が1億円以下である普通法人(投資法人・特定目的会社を除く)などで、その括弧書きは57条11項と同じく法人税法66条5項2号・3号に掲げる法人と大通算法人を除いています。同条ただし書きは、清算中に終了する事業年度や災害損失欠損金額などをこの不適用から外しています。

同じ「1億円以下+大法人の完全支配を除く」が2か所に出てくる繰越控除の100%枠(57条11項1号イ)と、繰戻し還付の適用対象(措法66条の12第1号)は、どちらも66条5項2号・3号を引いて同じ形で範囲を絞っています。大法人の100%子会社になると、繰越側の50%制限と繰戻し還付の不適用が同時に効いてくるということです。資本金は変えていなくても資本関係が変わればどちらも動くので、グループ再編があった年度は両方を確認することになります。

数字で見る:所得1,000万円・繰越欠損金1,000万円のとき

繰越欠損金1,000万円(前期に発生・青色申告書を提出済み)を持つ会社に、当期の所得(繰越欠損金を引く前)が1,000万円出たとします。

区分損金算入限度額当期に引ける額差引後の所得翌期へ繰り越す額
中小法人等(資本金1億円以下・大法人の完全支配なし)所得の100%=1,000万円1,000万円0円0円
原則(大法人、または大法人に完全支配される会社)所得の50%=500万円500万円500万円500万円

同じ資本金1,000万円の会社でも、資本金5億円以上の親会社に100%保有されているかどうかで、当期の課税所得が0円と500万円に分かれます。法人税の税率は法人税法66条1項が原則23.2%、同条2項が資本金1億円以下などの普通法人の年800万円以下の部分について19%と定めており(租税特別措置による軽減が別にある場合があります)、差引後の所得500万円の有無はそのまま納税額の差になります。

なお、繰り越した500万円は消滅せず、10年の期限内であれば翌期以降の所得から同じルールで控除していくことになります。期限切れが近い年度のものが残っていないかは、別表七(一)で年度ごとの残高を追うことになります。

10年を過ぎて使えなくなった欠損金が、例外的に復活する場面がひとつあります。会社を解散して残余財産がないと見込まれるときで、法人税法59条4項が、清算中に終了する事業年度について前の各事業年度に生じた欠損金額を基礎に計算した金額を損金に算入すると定めています。ただし法人税法施行令117条の5が、その枠から57条1項で当期に使う青色欠損金を控除すると定めているため、先に青色欠損金を使い、その残りが枠になるという順序になります。計算の順序と添付書類は 会社の解散・清算の税務 で条文ごとに整理しています。

よくある質問

Q. 繰越欠損金は何年繰り越せますか?

A. 法人税法57条1項は、各事業年度開始の日前十年以内に開始した事業年度において生じた欠損金額を対象としています。したがって現行の条文では10年です。ただし繰り越せる期間と、その期に実際に引ける金額は別の話で、引ける金額は同項ただし書により原則として所得の50%が限度になります。

Q. 資本金1億円以下なら必ず全額控除できますか?

A. そうとは限りません。法人税法57条11項1号イは資本金1億円以下の普通法人を中小法人等として掲げていますが、その括弧書きで同法66条5項2号または3号に掲げる法人と大通算法人を除いています。66条5項2号は資本金5億円以上の大法人などによる完全支配関係がある普通法人を指すため、資本金1億円以下でもそうした親会社に100%保有されている場合は中小法人等に当たらず、限度額は所得の50%のままとなります。

Q. 途中で青色申告をやめたら、それまでの繰越欠損金は使えなくなりますか?

A. 法人税法57条10項が求めているのは、欠損金額の生じた事業年度について確定申告書を提出し、その後において連続して確定申告書を提出していること、および欠損金額の生じた事業年度の帳簿書類を保存していることです。条文の文言は「確定申告書」であって「青色申告書」ではありません。青色が要件になるのは欠損金が生じた事業年度についてで、法人税法58条1項が青色申告書を提出する事業年度でない事業年度に生じた欠損金額のうち災害損失金額を超える部分をないものとする、という形で定めています。

Q. 青色申告の承認を取り消された場合はどうなりますか?

A. 法人税法127条1項は、税務署長が各号に定める事業年度まで遡って承認を取り消すことができるとし、取消しがあったときは当該事業年度開始の日以後に提出した青色申告書は青色申告書以外の申告書とみなすと定めています。遡及の対象となった事業年度は青色申告書を提出する事業年度でない事業年度として扱われることになるため、その年度に生じた欠損金額は法人税法58条1項により災害損失金額を超える部分がないものとされる、という関係になります。

Q. 欠損金はどの年度のものから使われますか?

A. 法人税法57条1項ただし書は、損金算入限度額から、当該欠損金額の生じた事業年度前の事業年度において生じた欠損金額で本文の規定により損金算入される金額を控除した金額を超える部分については適用しない、という構造になっています。古い事業年度の欠損金が先に限度額を占めるため、結果として発生の古いものから順に控除される形になります。

Q. 前期の黒字と相殺して税金の還付を受けることはできますか?

A. 法人税法80条1項は、青色申告書である確定申告書を提出する事業年度に生じた欠損金額について、その確定申告書の提出と同時に、欠損事業年度開始の日前1年以内に開始したいずれかの事業年度の所得に対する法人税の還付を請求することができると定めています。ただし租税特別措置法66条の12により、同号に掲げる法人以外の法人が平成4年4月1日から令和10年3月31日までの間に終了する各事業年度に生じた欠損金額については、この規定は適用されません。

Q. 繰戻し還付を受けた欠損金を、あとから繰越控除にも使えますか?

A. 法人税法57条1項の括弧書きは、対象となる欠損金額から、同項により前の事業年度の所得の計算上損金算入されたものと、80条の規定により還付を受けるべき金額の計算の基礎となったものを除いています。したがって還付の計算に使った部分は繰越控除の対象から外れることになり、同じ欠損金を両方で使うことはできない整理になっています。

Q. 繰越欠損金を使うために保存が必要な帳簿は、いつの年度のものですか?

A. 法人税法57条10項は、欠損金額の生じた事業年度に係る帳簿書類を財務省令で定めるところにより保存している場合に限り適用すると定めています。控除を受ける年度ではなく、欠損金が発生した年度の帳簿書類が要件になります。繰越期間は10年あるため、最も古い欠損金を使う時点では10年前の帳簿書類が対象になり得ます。

出典

本記事は一般的な情報提供を目的としたものです。個別の判断は税理士または所轄の税務署にご確認ください。

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