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貸倒引当金とは|法人は中小のみ・法定繰入率と貸倒実績率、個人は5.5%【令和8年度】

結論から言うと、貸倒引当金は「まだ焦げていない債権」に対して先に損を立てる制度で、法人の場合使える会社が法律で限定されています。資本金1億円以下の普通法人などに当てはまらない会社は、決算で貸倒引当金を積んでも税務上は損金になりません(法人税法52条1項)。

そして使える会社にとっては、金額の出し方が2通りあって、どちらを選ぶかで繰入限度額が何倍も変わります。原則は過去3年の貸倒れ実績から出す貸倒実績率、中小企業者等はそれに代えて業種ごとに決まった法定繰入率(卸売・小売業なら1,000分の10)を選べます。有利な方を選べるのですが、ここに見落としやすい非対称があります。法定繰入率を使うときだけ、債権から「実質的に債権とみられない金額」を差し引くのです。同じ4,000万円の売掛金でも、ルートによって掛ける率だけでなく掛ける元の金額まで違うということです。

以下、対象になる法人、個別評価と一括評価の分け方、2つの率の計算、同じ会社で両方を計算した比較、個人事業主の場合(青色なら1,000分の55)、そして明細を書き忘れると制度ごと使えなくなる手続要件までを、条文と国税庁の資料で確かめながら整理します。

損金にできるのは誰か——法人は5区分だけ

まずここで多くの会社がふるい落とされます。法人税法52条1項は、貸倒引当金の繰入額を損金にできる内国法人を各号で限定して並べています。国税庁はこれを次の5つに整理しています(No.5501)。

区分中身条文
1普通法人(投資法人および特定目的会社を除く)のうち、各事業年度終了の時において資本金の額もしくは出資金の額が1億円以下であるもの、または資本もしくは出資を有しないもの(いずれも大通算法人を除く)52条1項1号イ
2公益法人等または協同組合等52条1項1号ロ
3人格のない社団等52条1項1号ハ
4銀行、保険会社その他これらに準ずる法人52条1項2号
5金融に関する取引に係る金銭債権を有する一定の法人(リース債権を持つ法人、第一種金融商品取引業者、質屋、割賦販売のあっせん業者、貸金業者、信用保証業を行う法人など)52条1項3号

ふつうの中小企業が入るのは区分1です。判定時点は事業年度終了の時なので、期中に増資して期末に資本金1億円を超えていれば、その事業年度は使えません。

資本金1億円以下でも外れることがある区分1には除外があり、大法人の100%子会社は資本金1億円以下でも対象外です。国税庁は大法人を「①資本金の額または出資金の額が5億円以上の法人 ②相互会社および外国相互会社 ③受託法人」とし、その大法人による完全支配関係がある普通法人を除くとしています(No.5501)。親会社が大きい中小企業は、資本金の額だけを見て判断すると間違えます。

区分5の法人については、制度の対象となる金銭債権そのものが一定のものに限定されている点にも注意が必要です(52条9項1号)。

個別評価と一括評価に分けて計算する

貸倒引当金の繰入限度額は、個別評価金銭債権一括評価金銭債権の2つに区分して、それぞれ別に計算します。混ぜて一本で出すことはできません。

個別評価金銭債権一括評価金銭債権
対象更生計画認可の決定や破産手続開始の申立てなど、政令で定める事実が生じている債権(同じ債務者に対する他の債権も含む)売掛金、貸付金その他これらに準ずる金銭債権(個別評価金銭債権を除く
考え方その債権について、取立て・弁済の見込みがない部分を個別に見積もるまだ何も起きていない債権全体に、率を掛けて包括的に見積もる
条文52条1項52条2項

どちらも「損金経理により貸倒引当金勘定に繰り入れた金額」であることが前提です。つまり会計上、決算で費用に計上していなければなりません。申告書の上だけで引当金を作ることはできません。

なお、どちらの区分でも完全支配関係がある他の法人に対して有する金銭債権は除かれます(52条9項2号)。グループ内の売掛金・貸付金は、どれだけ残高があっても引当ての対象になりません。100%子会社との取引が多い会社は、集計時に必ず抜いておく必要があります。

この完全支配関係は法人税法2条12号の7の6の定義によるもので、社長個人が2社を100%持っている場合のように頂点が個人でも成立します。判定のしかたと、同じ関係があるときに自動で働く他の取扱い(資産譲渡の損益繰延べ、寄附金・受贈益の全額不算入、寄附修正)はグループ法人税制と完全支配関係で扱っています。

個別評価:4つの事実と、5年・全額・50%

個別評価は「事実の種類ごとに、繰入限度額の計算方法が違う」というつくりです。法人税法施行令96条1項が事実を4つに分け、それぞれに金額を対応させています。

事実(施行令96条1項)具体例繰入限度額
1号 一定の事由に基づいて弁済が猶予され、または賦払により弁済されること更生計画認可の決定、再生計画認可の決定、特別清算に係る協定の認可の決定、これらに準ずる事由債権額のうち、事業年度終了の日の翌日から5年を経過する日までに弁済されることとなっている金額以外の金額(取立て等の見込みがある部分を除く)
2号 債務超過の状態が相当期間継続し、事業に好転の見通しがないこと等により、債権の一部について取立て等の見込みがないと認められること債務超過の長期化、災害・経済事情の急変による多大な損害その一部の金額に相当する金額(見積った額そのもの)
3号 債務者につき法的手続の申立てがあったこと更生手続開始の申立て、再生手続開始の申立て、破産手続開始の申立て、特別清算開始の申立て、これらに準ずる事由債権額の50%(実質的に債権とみられない部分、担保権の実行・保証債務の履行等で取立て等の見込みがある部分を除く)
4号 外国の政府・中央銀行・地方公共団体の長期の債務履行遅滞ソブリン債務の履行遅滞で経済的価値が著しく減少し、弁済を受けることが著しく困難債権額の50%(3号と同じ控除)

実務でいちばん出てくるのは3号です。取引先について破産手続開始の申立てがあったと分かった時点で、その事業年度末に債権の半分を引き当てられます。1号との違いは手続の段階で、「申立て」の段階が3号(50%)、「認可の決定」まで進むと1号(5年基準)に移ります。

1号は「5年以内に返ってくる分は引き当てられない」という意味更生計画が認可されて長期の分割弁済になった場合、5年より先に回収予定の金額が引当ての対象です。逆に言えば、たとえ計画認可を受けても5年以内に全額返ってくる計画なら繰入限度額はゼロになります。「認可決定が出たから半分積める」ではありません。

1号・3号の「これらに準ずる事由」は財務省令に置かれており、手形交換所の取引停止処分などがここに入ります。自社のケースがどの号に当たるかは事実認定の問題なので、金額が大きいときは所轄税務署または税理士に確認するのが安全です。

一括評価①原則:貸倒実績率の出し方

一括評価の原則は、自社の過去の貸倒れ実績から率を作る方法です(施行令96条6項)。

繰入限度額 = 期末の一括評価金銭債権の帳簿価額の合計額 × 貸倒実績率

貸倒実績率 = 分子 ÷ 分母(小数点以下4位未満の端数は切り上げ

分母= 前3年内事業年度終了の時における一括評価金銭債権の帳簿価額の合計額 ÷ 前3年内事業年度の事業年度の数

分子=(前3年内事業年度の売掛債権等の貸倒損失額 + 個別評価で損金算入した額 − 益金算入した額)× 12 ÷ 前3年内事業年度の月数の合計

「前3年内事業年度」は、当該事業年度開始の日前3年以内に開始した各事業年度です。月数は暦に従って計算し、1か月に満たない端数は1か月とします(施行令96条7項)。

実際に数字を入れてみます。3期とも12か月の卸売業の会社で、各期末の一括評価金銭債権が3,000万円・3,500万円・4,000万円、3期を通じた売掛債権等の貸倒損失が合計42万円、個別評価の繰入・戻入はなかったとします。

当期末の一括評価金銭債権が4,000万円なら、繰入限度額は 4,000万円 × 0.0040 = 16万円です。

端数の切り上げは納税者に有利な向きたとえば分子が13万9,000円なら 13.9万 ÷ 3,500万 = 0.0039714… で、小数点以下4位未満を切り上げて0.0040になります。切り捨てではないので、わずかな実績でも4位までは拾われます。後述する簡便法の割合が切り捨てであるのと向きが逆なので、条文を並べて確認する価値があります。

この式から分かる大事な帰結があります。設立して間もない会社や、過去3年に貸倒れが1件も無かった会社は、分子がゼロなので貸倒実績率もゼロになります。原則どおりに計算すると1円も引き当てられません。そこで次の特例が効いてきます。

一括評価②特例:中小企業者等の法定繰入率

租税特別措置法57条の9は、中小企業者等について、貸倒実績率に代えて業種別の法定繰入率を使うことを認めています。率は措置法施行令33条の7第4項が定めています。

主たる事業法定繰入率
卸売業および小売業(飲食店業および料理店業を含む。割賦販売小売業を除く)1,000分の10(1.0%)
製造業(電気業、ガス業、熱供給業、水道業および修理業を含む)1,000分の8(0.8%)
金融業および保険業1,000分の3(0.3%)
割賦販売小売業、包括信用購入あっせん業および個別信用購入あっせん業1,000分の7(0.7%)
その他の事業1,000分の6(0.6%)

掛ける率は主たる事業で決まります。サービス業・建設業・運送業・不動産業などは「その他の事業」に入り1,000分の6です。飲食店業が卸売・小売業と同じ1,000分の10に入っている点は、条文を読まないと分かりにくいところです。

法定繰入率を使えるのは中小法人・公益法人等・協同組合等・人格のない社団等だけ措置法57条の9は対象を「52条1項1号イからハまでに掲げる法人」に限っています。つまり前掲の区分1〜3だけで、区分4の銀行・保険会社と区分5の金融取引の法人は法定繰入率を使えません(貸倒実績率のみ)。また相互会社と外国相互会社も除かれます(措置法施行令33条の7第1項)。
所得が大きい中小法人は特例から外れる区分1に当たる法人(中小法人)のうち適用除外事業者は対象外です。国税庁はこれを「その事業年度開始の日前3年以内に終了した各事業年度の所得金額の年平均額が15億円を超える法人等」と説明しています(No.5501)。資本金1億円以下でも、稼いでいる会社は法定繰入率を使えないという線引きです。

法定繰入率のときだけ差し引く「実質的に債権とみられない金額」

ここが本記事でいちばん見落としやすい点です。措置法57条の9第1項は、掛ける元を「一括評価金銭債権の帳簿価額(政令で定める金銭債権にあつては、政令で定める金額を控除した残額)の合計額」と書いています。この「控除する金額」を措置法施行令33条の7第2項が定めており、その債務者から受け入れた金額があるため実質的に債権とみられない部分の金額です。

典型例は、同じ相手に売掛金と買掛金の両方がある場合です。相手に対して800万円の売掛金があり、同時にその相手から200万円の買掛金(受け入れた金額)があるなら、実質的に債権とみられない200万円は帳簿価額から差し引いてから法定繰入率を掛けます。

対して、原則の貸倒実績率を定める施行令96条6項にはこの控除がありません。条文は素の「一括評価金銭債権の帳簿価額の合計額」に貸倒実績率を掛けると書いています。2つのルートは率が違うだけでなく、掛ける元の金額(課税ベース)まで違うということです。

期末の一括評価金銭債権 4,000万円 原則:貸倒実績率 特例:法定繰入率(中小企業者等) 帳簿価額 4,000万円 (控除なし) × 貸倒実績率 0.0040 = 繰入限度額 16万円 帳簿価額 4,000万円 − 実質的に債権と  みられない額 200万円 × 10/1000(卸売・小売) = 繰入限度額 38万円 同じ債権でも繰入限度額は22万円ちがう
一括評価の2つのルート。率だけでなく、率を掛ける元の金額が違う(措置法57条の9第1項・措置法施行令33条の7第2項/法人税法施行令96条6項)。

なお、平成27年4月1日に存する法人には、この「実質的に債権とみられない金額」を基準年度の割合で機械的に出す簡便法が認められています。平成27年4月1日から平成29年3月31日までの間に開始した各事業年度の実績割合を使い、小数点以下3位未満の端数は切り捨てます(措置法施行令33条の7第3項)。相手ごとの相殺額を毎期拾い直す手間を省くための規定です。

どちらが有利か——同じ会社で計算して比べる

前の2つの節で使った数字をそのまま並べます。卸売業・資本金3,000万円・適用除外事業者ではない会社で、当期末の一括評価金銭債権が4,000万円、そのうち実質的に債権とみられない金額が200万円、貸倒実績率は0.0040とします。

原則(貸倒実績率)特例(法定繰入率)
率を掛ける元4,000万円4,000万円 − 200万円 = 3,800万円
0.004010/1000(卸売業)
繰入限度額16万円38万円

この例では法定繰入率が22万円多く損金にできます。逆に、過去に大きな貸倒れがあって貸倒実績率が高く出ている会社では、原則の方が有利になります。どちらか一方が常に得ということはないので、毎期両方を計算して比べるのが実務です。

繰入限度額が22万円増えれば、その分だけ当期の所得が小さくなります。実際の税額への影響は所得の水準と税率区分で変わるので、法人税の側で確かめてください。

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ただし洗替なので、恒久的な節税ではない損金算入した貸倒引当金勘定の金額は、翌事業年度の益金の額に算入されます(52条10項)。毎期、前期分を全額戻し入れて当期分を新たに繰り入れる「洗替方式」です。したがって効果は課税の繰延べであって、債権残高が横ばいなら2期目以降の純増はごく小さくなります。増収で売掛金が伸び続けている局面ほど効きます。

個人事業主は1,000分の55(ただし青色・事業所得だけ)

個人事業主にも貸倒引当金があります。根拠は所得税法52条で、法人とは条文も率も別です。そして率は法人よりはるかに高いのが特徴です。

個別評価貸金等(52条1項)一括評価貸金(52条2項)
使える人不動産所得・事業所得・山林所得を生ずべき事業を営む居住者(白色でも可青色申告書を提出する居住者で、事業所得を生ずべき事業を営むもの
金額取立て・弁済の見込みがない部分を基礎に政令で計算した額一括評価貸金の帳簿価額(実質的に債権とみられない部分を控除した残額)× 1,000分の55(金融業は1,000分の33
判定日その年12月31日(年の中途で死亡した場合はその時)

ここには2つの非対称があります。1つは青色要件が一括評価にしか付いていないこと。個別評価貸金等(1項)には青色の要件がなく、白色申告でも要件を満たせば必要経費にできます。もう1つは所得の種類で、一括評価(2項)は「事業所得を生ずべき事業」に限られているため、不動産所得だけの人は一括評価貸金の引当てができません(未収家賃をまとめて引き当てることはできない、という意味です)。

率の差は大きく、金融業以外は1,000分の55です(所得税法施行令145条1項)。法人の卸売業が1,000分の10であることと比べると5.5倍で、同じ3,800万円の債権に対して法人が38万円、個人が209万円という違いになります。個人の側も、法定繰入率と同じく実質的に債権とみられない金額を控除してから率を掛けます。

洗替の扱いも同じで、必要経費に算入した貸倒引当金勘定の金額は翌年分の総収入金額に算入されます(所得税法52条3項)。平成27年1月1日以後引き続き事業を営んでいる人には、法人と同様の簡便法(平成27年・28年の実績割合、小数点以下3位未満切捨て)があります(所得税法施行令145条2項)。

見落とすと制度ごと消える落とし穴

貸倒引当金は、金額の計算以外のところで丸ごと否認されうる制度です。条文が「〜がある場合に限り、適用する」という書き方をしているためです。

1. 確定申告書に明細の記載がないと適用されない(52条3項)

法人税法52条3項は「前二項の規定は、確定申告書にこれらの規定に規定する貸倒引当金勘定に繰り入れた金額の損金算入に関する明細の記載がある場合に限り、適用する」と定めています。決算で正しく繰り入れ、限度額の計算も合っていても、申告書に明細を付けなければ損金になりません。実務上は別表11がこれに当たります。

ただし救済があります。52条4項は「税務署長は、前項の記載がない確定申告書の提出があつた場合においても、その記載がなかつたことについてやむを得ない事情があると認めるときは、第一項及び第二項の規定を適用することができる」と定めています。絶対的な失権ではないのですが、認められるかどうかは税務署長の判断なので、頼るべきものではありません。個人も同じ構造で、所得税法52条4項が明細の記載を要件とし、5項が同じ救済を置いています。

2. 事実を証する書類を保存していないと「事実が生じていない」とみなされる(施行令96条2項)

個別評価には、さらに強い書き方の要件があります。施行令96条2項は、事実が生じている場合でも、それを証する書類その他財務省令で定める書類の保存がされていないときは、当該事実は生じていないものとみなすとしています。「金額を否認する」ではなく「事実がなかったことにする」という規定です。破産手続開始の申立てを知って引き当てたのなら、その根拠となる通知・裁判所の資料等を必ず綴っておく必要があります。ここにも同様の救済があり、施行令96条3項がやむを得ない事情による適用除外を認めています。

3. グループ内債権を集計に入れてしまう

前述のとおり、完全支配関係がある他の法人に対する金銭債権は個別評価・一括評価とも対象外です(52条9項2号)。会計システムから売掛金残高を一括で吸い出して率を掛けると、100%子会社・親会社に対する債権が紛れ込みます。

4. 判定を期首の資本金でしてしまう

区分1の資本金1億円以下は各事業年度終了の時で判定します。期中に増資した会社、あるいは減資した会社は、期末時点で見ます。

5. 公益法人等に該当することとなる場合

普通法人または協同組合等が公益法人等に該当することとなる場合、その該当することとなる日の前日の属する事業年度については、52条1項・2項は適用されません(52条12項)。

貸倒引当金と貸倒損失は別物

混同されやすいので整理します。貸倒引当金は「まだ焦げていない債権に、将来の損を見込んで先に立てる」もので、翌期に全額戻し入れます。貸倒損失は「実際に回収できなくなった債権を落とす」もので、戻し入れはありません。国税庁は貸倒損失が認められる場合を3つに整理しています(No.5320)。

区分内容対象金額
金銭債権が切り捨てられた場合会社更生法・民事再生法等の規定による切捨て/債権者集会の協議決定や行政機関・金融機関のあっせんによる協議で合理的な基準により切り捨てられた額/債務超過の状態が相当期間継続し弁済を受けられない場合に書面で明らかにした債務免除額切り捨てられた金額(その事実が生じた事業年度の損金)
全額が回収不能となった場合債務者の資産状況・支払能力等から全額回収できないことが明らかになった場合。担保物があるときは処分後でなければ損金経理できない。保証債務は現実に履行した後でなければ貸倒れの対象にできない全額(明らかになった事業年度に損金経理)
一定期間取引停止後に弁済がない場合等継続的取引の相手の資産状況・支払能力等の悪化で取引を停止し、取引停止時と最後の弁済時等のうち最も遅い時から1年以上経過したとき(担保物がある場合を除く)/同一地域の売掛債権の総額が取立費用より少なく、督促しても弁済がないとき売掛債権の額から備忘価額を控除した残額
「1年以上」の枠は売掛債権だけで、貸付金には使えない3つ目の区分は売掛債権が対象で、貸付金などは含まれません(No.5320)。また、不動産取引のようにたまたま取引を行った相手に対する売掛債権にはこの取扱いの適用がありません。継続的な取引先であることが前提です。

両者は接続しています。個別評価で引き当てていた債権が実際に貸倒れになれば、その事業年度に貸倒損失を計上し、引当金は洗替で戻し入れられます。そして計上した貸倒損失は、翌期以降の貸倒実績率の分子に3年間効いてきます(施行令96条6項2号イ)。

よくある質問

Q. 資本金1億円以下なら必ず貸倒引当金を損金にできますか?

A. いいえ。国税庁は、資本金または出資金が5億円以上の法人・相互会社・外国相互会社・受託法人といった大法人による完全支配関係がある普通法人を除くとしています(No.5501)。また大通算法人も除かれます。親会社が大きい中小企業は資本金の額だけで判断できません。

Q. 法定繰入率と貸倒実績率は、どちらを選んでもよいのですか?

A. 中小企業者等であれば選べます。措置法57条の9第1項は「同項の規定にかかわらず…することができる」という書き方で、原則の貸倒実績率に代えて法定繰入率を使うことを認めています。毎期どちらか有利な方を計算して選ぶのが実務です。

Q. 法定繰入率を使うとき、売掛金から何を引くのですか?

A. その債務者から受け入れた金額があるため実質的に債権とみられない部分の金額です(措置法施行令33条の7第2項)。同じ相手に買掛金がある場合の相殺可能額などが該当します。原則の貸倒実績率で計算するときはこの控除はありません。

Q. サービス業の法定繰入率は何%ですか?

A. 措置法施行令33条の7第4項の各号のうち「前各号に掲げる事業以外の事業」に当たるため、1,000分の6(0.6%)です。建設業・運送業・不動産業も同様に「その他の事業」に入ります。

Q. 設立1期目の会社でも貸倒引当金を積めますか?

A. 中小企業者等に該当すれば法定繰入率で積めます。貸倒実績率は前3年内事業年度の貸倒損失を分子とする計算なので、実績がなければ率はゼロになり、原則の方法では繰入限度額が出ません。

Q. 別表11を付け忘れて申告してしまいました。損金は認められませんか?

A. 法人税法52条3項は明細の記載がある場合に限り適用するとしていますが、同条4項は、記載がなかったことについてやむを得ない事情があると税務署長が認めるときは適用できると定めています。認められるかは判断事項なので、所轄税務署または税理士にご相談ください。

Q. 100%子会社への売掛金も引当ての対象になりますか?

A. なりません。法人税法52条9項2号は、完全支配関係がある他の法人に対して有する金銭債権を個別評価金銭債権・一括評価金銭債権に含まないとしています。

Q. 貸倒引当金は節税になりますか?

A. 繰り入れた年度の所得は減りますが、その金額は翌事業年度の益金に算入されます(52条10項)。したがって効果は課税の繰延べで、債権残高が横ばいなら2期目以降の純増は小さくなります。

Q. 個人事業主で不動産所得だけですが、一括評価で引き当てられますか?

A. できません。所得税法52条2項は「青色申告書を提出する居住者で事業所得を生ずべき事業を営むもの」を対象としているため、不動産所得のみの場合は一括評価貸金の対象外です。個別評価貸金等(同条1項)は不動産所得を生ずべき事業も対象に含みます。

出典

本記事は一般的な情報提供を目的としたものです。個別の判断は税理士または所轄の税務署にご確認ください。

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