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グループ法人税制とは — 届出も選択も要らない強制適用。「一の者」は個人でもよく、99.5%でも完全支配関係になる

結論から言うと、グループ法人税制には申請も届出も選択もありません。条件に当たった瞬間から自動的に適用されます。よく似た名前のグループ通算制度のほうは国税庁長官の承認が要る選択制度で、こちらとは別物です。「うちは何も申請していないから関係ない」という理解は、グループ法人税制については成り立ちません。

当たるかどうかを決めるのは完全支配関係という1つの概念だけです。法人税法2条12号の7の6が定義しており、平たく言えば「一の者」が発行済株式等の全部を直接または間接に持っている関係です。ここに実務でいちばん多い誤解が2つあります。①「一の者」は個人でもよいので、社長が2社の株を100%ずつ持っているだけで、その2社の間に完全支配関係が生まれます。②持株比率がぴったり100%でなくても当たることがある — 従業員持株会やストックオプション由来の株式は、合計が5%未満なら発行済株式等の数から外して判定するからです(法人税法施行令4条の2第2項)。99.5%しか持っていない会社が完全支配関係にある、という状況は普通に起こります。

そのうえで、この記事がいちばん伝えたいのは「グループ法人税制」と一括りにされる4つの取扱いのうち、寄附金と受贈益の2つだけは適用範囲が狭いということです。条文(法人税法25条の2第1項・37条2項)は完全支配関係(法人による完全支配関係に限る。)と書いています。つまり頂点が個人のグループには、寄附金と受贈益の全額不算入は適用されません。一方で資産譲渡の繰延べ(61条の11)にこの限定は無く、社長が100%持つ2社の間でも当たります。同じ「完全支配関係」という言葉で、当たる範囲が違います。

申請も届出もない — 当たれば自動で適用される

グループ法人税制という名前の条文はありません。100%グループ内の取引について、法人税法のあちこちに置かれた個別の規定をまとめて呼ぶ通称です。だからこそ「適用を受けるための手続」というものが存在せず、条件に当たれば黙って適用されます。

対照的に、グループ通算制度のほうは条文にはっきり手続が書かれています。法人税法64条の9第1項は、適用を受けようとする場合の要件をこう定めています。

内国法人が前目の規定の適用を受けようとする場合には、当該内国法人及び当該内国法人との間に完全支配関係がある他の内国法人の全て(親法人(内国法人である普通法人又は協同組合等のうち、第一号から第七号までに掲げる法人及び第六号又は第七号に掲げる法人に類する法人として政令で定める法人のいずれにも該当しない法人をいう。以下この項において同じ。)及び当該親法人との間に当該親法人による完全支配関係(第三号から第十号までに掲げる法人及び外国法人が介在しないものとして政令で定める関係に限る。以下この目において同じ。)がある他の内国法人(第三号から第十号までに掲げる法人を除く。次項において同じ。)に限る。)が、国税庁長官の承認を受けなければならない。

「適用を受けようとする場合には」「承認を受けなければならない」という書き方が、選択制度であることをそのまま示しています。グループ法人税制の各規定(25条の2・37条2項・61条の11・62条の5)には、この種の文がひとつもありません。

ここが分かれ目

グループ通算制度を選んでいない会社でも、100%グループがあればグループ法人税制は動いています。「通算していないから無関係」ではありません。むしろ通算を選んでいない中小グループのほうが、気づかないまま適用されている数は多くなります。

完全支配関係とは — 条文を読む

法人税法2条12号の7の6が、完全支配関係をこう定義しています。

一の者が法人の発行済株式等の全部を直接若しくは間接に保有する関係として政令で定める関係(以下この号において「当事者間の完全支配の関係」という。)又は一の者との間に当事者間の完全支配の関係がある法人相互の関係をいう。

読み取るべき点が2つあります。1つは「直接若しくは間接に」で、孫会社も入るということ。もう1つは後半の「一の者との間に当事者間の完全支配の関係がある法人相互の関係」で、親子だけでなく兄弟会社どうしにも完全支配関係があるということです。親会社Pが子会社A・Bを100%持っていれば、A社とB社の間にも完全支配関係があります。実務でグループ法人税制が発動するのは、じつはこの兄弟間の取引が多くなります。

ひとつ手前の号(2条12号の7の5)にある支配関係と混同しないでください。

一の者が法人の発行済株式若しくは出資(当該法人が有する自己の株式又は出資を除く。以下この条において「発行済株式等」という。)の総数若しくは総額の百分の五十を超える数若しくは金額の株式若しくは出資を直接若しくは間接に保有する関係として政令で定める関係(以下この号において「当事者間の支配の関係」という。)又は一の者との間に当事者間の支配の関係がある法人相互の関係をいう。
用語条文持株の水準主な出番
支配関係法2条12号の7の550%超組織再編成の適格判定、繰越欠損金の引継ぎ制限
完全支配関係法2条12号の7の6100%グループ法人税制、グループ通算制度の対象範囲

50%超と100%は、まったく別の線です。「グループ会社だから」で判断すると必ず外します。

「一の者」は個人でもよい — 社長が2社を持てば当たる

条文は「一の者」としか書いていません。法人に限る、とはどこにも書かれていない。そして施行令4条の2第2項が、個人の場合の数え方を明示しています。

法第二条第十二号の七の六に規定する政令で定める関係は、一の者(その者が個人である場合には、その者及びこれと前条第一項に規定する特殊の関係のある個人)が法人の発行済株式等(発行済株式(自己が有する自己の株式を除く。)の総数のうちに次に掲げる株式の数を合計した数の占める割合が百分の五に満たない場合の当該株式を除く。以下この項において同じ。)の全部を保有する場合における当該一の者と当該法人との間の関係(以下この項において「直接完全支配関係」という。)とする。

括弧書きの「その者及びこれと前条第一項に規定する特殊の関係のある個人」が効きます。前条第一項=施行令4条1項は、特殊の関係のある個人を次の5つで定めています(号数は木構造から機械的に数えたもので、5号です)。

一株主等の親族二株主等と婚姻の届出をしていないが事実上婚姻関係と同様の事情にある者三株主等(個人である株主等に限る。次号において同じ。)の使用人四前三号に掲げる者以外の者で株主等から受ける金銭その他の資産によつて生計を維持しているもの五前三号に掲げる者と生計を一にするこれらの者の親族

つまり本人だけでなく、親族の持分も合算して数えます。次のようなよくある形は、どれも完全支配関係です。

A社B社判定
社長ひとりで両方を保有社長 100%社長 100%A社とB社に完全支配関係あり
夫婦で分けて保有社長 60% / 配偶者 40%社長 100%配偶者は親族なので合算。あり
親子で分けて保有社長 100%社長 50% / 長男 50%長男は親族なので合算。あり
社長と第三者の共同出資社長 100%社長 70% / 取引先 30%取引先は特殊の関係にない。なし
完全支配関係の判定(法2条12号の7の6・令4条の2第2項) STEP 1 「一の者」を決める 法人でも個人でもよい。個人なら本人+特殊の関係のある個人(令4条1項の5つ)を合算 STEP 2 分母から外すものを外す 従業員持株会の株式とストックオプション行使で取得した株式は、 合計が発行済株式(自己株式を除く)の 5% 未満なら母数から除外 STEP 3 残った発行済株式等の「全部」を保有しているか 直接でも間接でもよい(孫会社も入る) 保有していれば完全支配関係 その頂点の下にある法人どうしにも、相互に完全支配関係がある(兄弟会社)
完全支配関係の判定は3段階。「一の者」を法人だと思い込むと、社長が頂点のグループを丸ごと見落とす。

99.5%でも完全支配関係になる — 5%未満は数から外す

前の節で引いた施行令4条の2第2項には、もうひとつ大きな括弧書きが入っていました。発行済株式等から「次に掲げる株式」を除くという部分です。除かれるのは次の2つで、条文はどちらも「当該法人の株式」と書いています。

この2つを合計した数が、自己株式を除いた発行済株式の総数の5%未満であれば、その株式は母数から外れます。

実際の当てはめ

発行済株式 10,000株、うち自己株式なし。親会社Pが 9,950株(99.5%)、従業員持株会が 50株(0.5%)を保有。
持株会分は 50 ÷ 10,000 = 0.5% で 5% 未満なので母数から外れ、判定の分母は 9,950株になります。Pはその全部を持っているので、完全支配関係があります。

逆に持株会が 600株(6%)を持っていれば 5% 以上なので外れず、Pの保有は 94% にとどまり、完全支配関係はありません(支配関係はあります)。

0.5%と6%で結論が正反対になります。「100%子会社ではないから関係ない」と処理を決める前に、株主名簿で持株会とストックオプション分を実際に数えてください。

何が起きるか — 4つの柱

完全支配関係があると、次の4つが働きます。適用範囲が同じではないところが要点です。

条文内容「法人による」限定
① 資産の譲渡損益の繰延べ法61条の11譲渡損益調整資産の譲渡益・譲渡損を、その期の所得から外すなし(個人が頂点でも当たる)
② 寄附金・受贈益の全額不算入法37条2項・25条の2払った側は全額損金不算入、受けた側は全額益金不算入あり
③ 寄附修正令9条1項7号・令119条の3第9項②が起きたとき、株主である法人が株式の帳簿価額と利益積立金額を調整あり(②が前提のため)
④ 適格現物分配法2条12号の15・法62条の5帳簿価額のまま資産を移し、受けた側は益金不算入なし(ただし受け手は内国法人に限る)

このほか、大法人の100%子会社について中小企業向けの特例が使えなくなるという扱いがあります(後述)。

① 譲渡損益調整資産 — 損益は消えない。繰り延べられるだけ

法人税法61条の11第1項の全文です。

内国法人(普通法人又は協同組合等に限る。)がその有する譲渡損益調整資産(固定資産、土地(土地の上に存する権利を含み、固定資産に該当するものを除く。)、有価証券、金銭債権及び繰延資産で政令で定めるもの以外のものをいう。以下この条において同じ。)を他の内国法人(当該内国法人との間に完全支配関係がある普通法人又は協同組合等に限る。)に譲渡した場合には、当該譲渡損益調整資産に係る譲渡利益額(その譲渡に係る収益の額が原価の額を超える場合におけるその超える部分の金額をいう。以下この条において同じ。)又は譲渡損失額(その譲渡に係る原価の額が収益の額を超える場合におけるその超える部分の金額をいう。以下この条において同じ。)に相当する金額は、その譲渡した事業年度(その譲渡が適格合併に該当しない合併による合併法人への移転である場合には、次条第二項に規定する最後事業年度)の所得の金額の計算上、損金の額又は益金の額に算入する

末尾に注目してください。譲渡利益額を「損金の額」に、譲渡損失額を「益金の額」に算入する — 向きが逆になっています。会計上は売却益が出ているのに、税務上はそれと同額を損金にして打ち消す。これが繰延べの仕組みです。非課税ではありません。取り消した金額は、61条の11第2項により譲受法人の側で譲渡・償却・評価換え・貸倒れ・除却などが起きたときに、譲渡した法人の所得へ戻ってきます。

戻し方は施行令122条の12第4項が事由ごとに定めています。同項3号は、譲受法人でその資産が減価償却資産に該当し償却費が損金算入された場合について、こう定めています。

当該譲渡損益調整資産が譲受法人において減価償却資産に該当し、その償却費が損金の額に算入されたこと当該譲渡利益額又は譲渡損失額に相当する金額に、当該譲受法人における当該譲渡損益調整資産の取得価額のうちに当該損金の額に算入された金額の占める割合を乗じて計算した金額

つまり子会社が償却するペースに合わせて、親会社が少しずつ益金に戻すという形になります。土地のように償却しない資産であれば、子会社がそれを手放すまで動きません。

繰り延べられた譲渡益は、外に出たときに戻る(法61条の11第1項・第2項) X1期 A社 → B社(100%子)へ土地を譲渡 帳簿価額 3,000万円 / 譲渡価額 5,000万円 / 会計上の譲渡益 2,000万円 A社の申告:譲渡益 2,000万円 を損金算入 → この期の課税所得への影響はゼロ B社の土地の取得価額は 5,000万円 X2期・X3期 グループ内に置いたまま 何も起きない。繰り延べたままで、申告書の別表に金額が残り続ける X4期 B社が第三者へ土地を売却 A社の申告:繰り延べていた 2,000万円 を益金算入 課税されるのは B社ではなく A社。売った会社と課税される会社が違う
グループ内の譲渡で税額は消えない。外に出た期に、最初に譲渡した法人の側で課税される。

もうひとつ、61条の11第3項は完全支配関係が切れたときにも繰延べを打ち切ると定めています(適格合併による解散という2つの例外を除く。号数は木構造から数えて2号)。子会社株式を外部へ売る、あるいは第三者割当で持分が薄まると、その前日の属する事業年度で全額が戻ってきます。株式売却の税負担を見積もるときに、この繰延べ残高を忘れると数字が合いません。

1,000万円未満は対象外。その単位は省令が決めている

61条の11第1項の「政令で定めるもの以外のもの」を受けて、施行令122条の12第1項が除外される資産を3つ挙げています。3つ目がいちばん実務に効きます。

その譲渡の直前の帳簿価額(その譲渡した資産を財務省令で定める単位に区分した後のそれぞれの資産の帳簿価額とする。)が千万円に満たない資産

帳簿価額1,000万円未満の資産は、そもそも譲渡損益調整資産になりません。グループ内で売っても、ふつうに譲渡損益がその期の所得になります。中小企業のグループ内取引の大半は、この線の下に収まります。

問題は「財務省令で定める単位」のほうです。ここを合計で判定すると答えが変わってしまうので、法人税法施行規則27条の13の2が同27条の15第1項を引き、単位を6つの区分で定めています(号数は木構造から機械的に数えて6号)。

一金銭債権一の債務者ごとに区分するものとする。二減価償却資産次に掲げる区分に応じそれぞれ次に定めるところによる。イ建物一棟(建物の区分所有等に関する法律第一条(建物の区分所有)の規定に該当する建物にあつては、同法第二条第一項(定義)に規定する建物の部分)ごとに区分するものとする。ロ機械及び装置一の生産設備又は一台若しくは一基(通常一組又は一式をもつて取引の単位とされるものにあつては、一組又は一式)ごとに区分するものとする。ハその他の減価償却資産イ又はロに準じて区分するものとする。三土地等(令第百二十三条の八第二項第一号に規定する土地等をいう。以下この号において同じ。)土地等を一筆(一体として事業の用に供される一団の土地等にあつては、その一団の土地等)ごとに区分するものとする。四有価証券その銘柄の異なるごとに区分するものとする。五資金決済に関する法律第二条第十四項(定義)に規定する暗号資産その種類の異なるごとに区分するものとする。六その他の資産通常の取引の単位を基準として区分するものとする。

読みやすく並べ直すと次のとおりです。

資産の区分1,000万円を判定する単位
金銭債権一の債務者ごと
建物一棟ごと(区分所有なら専有部分ごと)
機械及び装置一の生産設備、または一台・一基ごと(一組・一式が取引単位なら一組・一式)
その他の減価償却資産建物・機械装置に準じて区分
土地等一筆ごと(一体として使う一団の土地ならその一団)
有価証券銘柄ごと
暗号資産種類ごと
その他の資産通常の取引の単位
合計で判定しない

帳簿価額 800万円の機械を2台まとめて 1,600万円でグループ会社へ売った場合。単位は一台なので、それぞれ 800万円 < 1,000万円 となり、2台とも譲渡損益調整資産になりません。譲渡損益はその期の所得に載ります。

逆に、隣接する土地を 3筆(各 600万円)まとめて売っても、一体として事業の用に供される一団の土地であればその一団が単位になり、1,800万円 ≧ 1,000万円 で対象になります。同じ「まとめ売り」でも、資産の種類で結論が逆になります。

もうひとつ、条文の列挙そのものにも意味があります。61条の11第1項が挙げているのは固定資産・土地・有価証券・金銭債権・繰延資産の5つで、棚卸資産は入っていません。グループ会社どうしの通常の商品売買は、金額がいくら大きくても繰延べの対象外です。

法人税・地方法人税の概算を計算する(法人税額シミュレーター)

② 寄附金と受贈益 — ここだけ「法人による」に限られる

払った側の規定(法人税法37条2項)です。

内国法人が各事業年度において当該内国法人との間に完全支配関係(法人による完全支配関係に限る。)がある他の内国法人に対して支出した寄附金の額(第二十五条の二(受贈益)の規定の適用がないものとした場合に当該他の内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上益金の額に算入される同条第二項に規定する受贈益の額に対応するものに限る。)は、当該内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入しない。

受けた側の規定(法人税法25条の2第1項)です。

内国法人が各事業年度において当該内国法人との間に完全支配関係(法人による完全支配関係に限る。)がある他の内国法人から受けた受贈益の額(第三十七条(寄附金の損金不算入)の規定の適用がないものとした場合に当該他の内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上損金の額に算入される同条第七項に規定する寄附金の額に対応するものに限る。)は、当該内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上、益金の額に算入しない。

2つの条文に共通して完全支配関係(法人による完全支配関係に限る。)という括弧書きが入っています。61条の11にはこの括弧書きがありません。同じ法律の中で、意図的に書き分けられています。

グループの頂点資産譲渡の繰延べ(61条の11)寄附金の全額損金不算入(37条2項)受贈益の益金不算入(25条の2)
親会社(法人)が100%保有適用あり適用あり適用あり
社長個人が2社を100%保有適用あり適用なし適用なし

個人が頂点の場合、寄附をした側は37条1項の一般の損金算入限度額の計算に戻り、受けた側は受贈益が全額そのまま益金になります。グループ全体では二重に不利になるので、オーナー会社のあいだで資金や資産を無償で動かす前に、頂点が法人か個人かを必ず確かめてください。

なお25条の2第2項は、受贈益の中身を「寄附金、拠出金、見舞金その他いずれの名義をもつてされるかを問わず」と定めており、名目では逃げられません。第3項は低額譲渡も拾います — 対価が時価に比べて低いとき、その差額のうち実質的に贈与と認められる金額は受贈益に含まれます。「1円で売った」「無利息で貸した」は、名前を変えた寄附として扱われます。

③ 寄附修正 — 当事者ではない親法人が、仕訳なしで動かす

②が起きると、取引の当事者ではない株主の側で調整が要ります。これが寄附修正で、施行令9条1項7号が事由をこう定義しています。

子法人が他の内国法人から法第二十五条の二第二項に規定する受贈益の額で同条第一項の規定の適用があるものを受け、又は子法人が他の内国法人に対して法第三十七条第七項(寄附金の損金不算入)に規定する寄附金の額で同条第二項の規定の適用があるものを支出したことをいう。

この事由が生じると、株主である法人は利益積立金額を動かします。同号が定める金額は、受贈益の額に持分割合を乗じた金額から、寄附金の額に持分割合を乗じた金額を減算したものです。持分割合とは、寄附修正事由が生じた時の直前の発行済株式等のうちにその法人が持つ株式が占める割合をいいます。同時に、その子法人株式の帳簿価額も動かします。施行令119条の3第9項です。

内国法人の有する第九条第七号(利益積立金額)に規定する子法人の株式(出資を含むものとし、移動平均法によりその一単位当たりの帳簿価額を算出するものに限る。以下この項において同じ。)について同号に規定する寄附修正事由が生じた場合には、その株式の当該寄附修正事由が生じた直後の移動平均法により算出した一単位当たりの帳簿価額は、当該寄附修正事由が生じた時の直前の帳簿価額に同号に掲げる金額を加算した金額をその株式の数で除して計算した金額とする。
兄弟会社間の寄附で何が起きるか

親会社Pが A社・B社を 100% ずつ保有。A社が B社へ 1,000万円を無償で供与した場合。

  • A社:寄附金 1,000万円を全額損金不算入(37条2項)
  • B社:受贈益 1,000万円を全額益金不算入(25条の2)
  • P社:A社株式の帳簿価額を −1,000万円、B社株式の帳簿価額を +1,000万円。利益積立金額も同額動く(令9条1項7号・令119条の3第9項)

P社は取引の当事者ではありません。それでも申告調整が要ります。しかも会計上の仕訳は1本も立ちません — 動くのは申告書別表五(一)の上だけです。当事者2社の顧問税理士が処理しても、親会社の申告担当が知らなければ黙って漏れます。

条文の括弧書きにも注意してください。119条の3第9項が対象にしているのは「移動平均法によりその一単位当たりの帳簿価額を算出するもの」に限られます。総平均法を採っている場合は施行令119条の4が受け持ちます。どちらの評価方法を届け出ているかで、読む条文が変わります。

寄附修正を漏らすと、その子会社株式を将来売却したときの譲渡損益が狂います。寄附をした年ではなく、株を売った年に誤りが表面化するので、発見が何年も遅れます。

④ 適格現物分配 — 完全支配関係だけが要件の組織再編成

現物分配とは、剰余金の配当や残余財産の分配を金銭以外の資産で行うことです。法人税法2条12号の15が、適格現物分配をこう定義しています。

内国法人を現物分配法人とする現物分配のうち、その現物分配により資産の移転を受ける者がその現物分配の直前において当該内国法人との間に完全支配関係がある内国法人(普通法人又は協同組合等に限る。)のみであるものをいう。

ここが他の組織再編成と決定的に違うところです。適格合併や適格分割には、従業者引継要件・事業継続要件・株式継続保有要件といった追加の要件が並んでいます。適格現物分配にはそれがありません。要件は、資産の移転を受ける者が完全支配関係のある内国法人だけであること、これ1つです。

効果は法人税法62条の5第3項と第4項です。渡す側は直前の帳簿価額による譲渡をしたものとして所得を計算し、受け取る側は次のとおりです。

内国法人が適格現物分配により資産の移転を受けたことにより生ずる収益の額は、その内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上、益金の額に算入しない。

つまり渡す側に譲渡損益が出ず、受ける側にも収益が立ちません。グループ内で資産を動かす手段としては、61条の11の繰延べ(あとで戻ってくる)よりも徹底しています。ただし受け手は内国法人(普通法人または協同組合等)に限られるので、個人株主へ現物で配当しても適格現物分配にはなりません。

中小企業向けの特例が止まる — 大法人による完全支配関係

完全支配関係のもうひとつの効き方が、資本金1億円以下でも中小企業向けの特例が使えなくなるという扱いです。法人税の軽減税率について、法人税法66条5項が適用除外を定めています(号数は木構造から機械的に数えて6号)。2号はこう始まります。

大法人(次に掲げる法人をいう。以下この号及び次号において同じ。)との間に当該大法人による完全支配関係がある普通法人

大法人とは、資本金の額または出資金の額が5億円以上である法人、相互会社、受託法人です。5億円「以上」であって「超」ではありません。ちょうど5億円の親会社は大法人です。

そして3号が、実務でいちばん見落とされる規定です。

普通法人との間に完全支配関係がある全ての大法人が有する株式及び出資の全部を当該全ての大法人のうちいずれか一の法人が有するものとみなした場合において当該いずれか一の法人と当該普通法人との間に当該いずれか一の法人による完全支配関係があることとなるときの当該普通法人(前号に掲げる法人を除く。)

読み解くと、複数の大法人が株式を分け合って持っている場合、それを1社が持っているものとみなして判定するということです。

「親が1社では100%ではない」は理由にならない

資本金 3,000万円のC社の株式を、大法人X(資本金 8億円)が 50%、大法人Y(資本金 6億円)が 50% 保有している場合。X単独ではCを完全支配していません。それでも66条5項3号により、XとYの持分をどちらか一方が持つものとみなすと 100% になるので、C社に年800万円以下の19%の軽減税率は適用されません。

止まるのは軽減税率だけではありません。貸倒引当金の法定繰入率、交際費の定額控除限度額、少額減価償却資産の特例など、資本金1億円以下を条件とする各制度に同じ趣旨の適用除外が置かれています。それぞれの条文は制度ごとに別なので、詳しくは法人税の税率貸倒引当金交際費と会議費の違いの各記事を参照してください。

グループ通算制度との違い — 選択と強制

項目グループ法人税制グループ通算制度
手続なし(強制適用)国税庁長官の承認が必要(法64条の9第1項)
対象完全支配関係があるすべての法人(内国法人)親法人と、親法人による完全支配関係がある内国法人の全て
頂点が個人資産譲渡の繰延べは適用あり不可(親法人は内国法人である普通法人等)
損益通算できないできる(法64条の5)
申告各社が個別に申告各社が個別に申告(連結申告ではない)
やめるとき完全支配関係が切れれば自動で止まる取りやめには手続が要る

グループ通算制度を選んでいる会社にも、グループ法人税制はそのまま働きます。二者択一ではありません。通算グループの中では61条の11に通算法人向けの特則(8項)が入るなど、条文が二重に重なる作りになっています。

実務の落とし穴

まとめ

  • グループ法人税制は申請も届出も選択もない強制適用。承認が要るのはグループ通算制度のほう
  • 完全支配関係の「一の者」は個人でもよく、親族の持分も合算する
  • 持株会・ストックオプション由来の株式は合計5%未満なら母数から外れるので、99.5%でも完全支配関係になる
  • 資産譲渡の繰延べは帳簿価額1,000万円以上だけ。単位は建物一棟・機械一台・土地一筆・有価証券は銘柄ごと
  • 寄附金と受贈益の全額不算入だけが「法人による完全支配関係」限定。頂点が個人なら適用されない
  • 寄附修正は当事者ではない株主法人が、仕訳なしで行う申告調整

よくある質問

Q. グループ法人税制を適用するには、税務署に届出が必要ですか?

A. 必要ありません。グループ法人税制は完全支配関係があれば自動的に適用される強制適用の制度で、法人税法25条の2、37条2項、61条の11、62条の5のいずれにも承認や届出を求める規定はありません。承認が必要なのはグループ通算制度のほうで、法人税法64条の9第1項が国税庁長官の承認を受けなければならないと定めています。

Q. 社長が個人で2つの会社を100%持っている場合も、完全支配関係になりますか?

A. なります。法人税法2条12号の7の6は「一の者」としか書いておらず、法人に限っていません。法人税法施行令4条の2第2項は、一の者が個人である場合にはその者および施行令4条1項に規定する特殊の関係のある個人を合わせて判定すると定めています。したがって社長本人だけでなく、配偶者や子など親族の持分も合算します。

Q. 100%ではなく99.5%しか持っていない子会社は、完全支配関係になりませんか?

A. なることがあります。法人税法施行令4条の2第2項は、従業員が組合員となっている持株会が取得した株式と、役員または使用人がストックオプションの行使によって取得した株式について、それらを合計した数が発行済株式(自己株式を除く)の総数の5%未満である場合には、その株式を発行済株式等から除いて判定すると定めています。持株会が0.5%を持つ99.5%保有であれば、判定の分母から持株会分が外れるため完全支配関係があります。

Q. グループ会社に資産を売ると、譲渡益は非課税になりますか?

A. 非課税にはなりません。法人税法61条の11第1項は譲渡利益額に相当する金額を損金の額に算入すると定めており、その期の所得から外すだけです。同条2項により、譲受法人でその資産の譲渡・償却・評価換え・貸倒れ・除却などが生じたときに、譲渡した法人の所得へ益金として戻ります。また同条3項により、完全支配関係を有しないこととなったときにも全額が戻ります。

Q. 1,000万円未満かどうかは、売った資産の合計額で判定しますか?

A. 合計ではありません。法人税法施行令122条の12第1項3号は、譲渡の直前の帳簿価額が財務省令で定める単位に区分した後の金額で1,000万円に満たない資産を除くと定めています。その単位は法人税法施行規則27条の13の2が同27条の15第1項を引く形で定められており、建物は一棟ごと、機械及び装置は一の生産設備または一台・一基ごと、土地等は一筆ごと、有価証券は銘柄ごとです。帳簿価額800万円の機械を2台まとめて譲渡しても、一台ごとに判定するため両方とも対象外になります。

Q. 棚卸資産をグループ会社に売った場合も繰延べになりますか?

A. なりません。法人税法61条の11第1項が譲渡損益調整資産として挙げているのは、固定資産、土地(土地の上に存する権利を含み固定資産に該当するものを除く)、有価証券、金銭債権、繰延資産の5つで、棚卸資産は含まれていません。グループ会社間の通常の商品売買は、金額の大小にかかわらず通常どおり譲渡損益がその事業年度の所得になります。

Q. 社長が頂点のグループでも、子会社への無償の資金援助は全額損金不算入になりますか?

A. なりません。法人税法37条2項と25条の2第1項は、いずれも括弧書きで「法人による完全支配関係に限る」と限定しています。頂点が個人の場合はこの限定に当たらないため、支出した側は法人税法37条1項の一般の損金算入限度額の範囲でのみ損金算入でき、受けた側は受贈益が全額益金に算入されます。グループ全体で見ると法人が頂点の場合より不利になります。

Q. 寄附修正は、寄附をした会社と受けた会社のどちらが行いますか?

A. どちらでもありません。行うのは、その子法人の株式を保有している株主である法人です。法人税法施行令9条1項7号が利益積立金額の調整を、同令119条の3第9項が株式の一単位当たりの帳簿価額の調整をそれぞれ定めています。取引の当事者ではない親会社の側で申告調整が必要になり、会計上の仕訳は生じないため、当事者だけを見ていると漏れやすい処理です。

Q. 適格現物分配には、適格合併のような事業継続要件がありますか?

A. ありません。法人税法2条12号の15は、資産の移転を受ける者が現物分配の直前において完全支配関係がある内国法人(普通法人または協同組合等に限る)のみであるもの、と定めているだけです。従業者引継要件や事業継続要件は課されていません。効果は法人税法62条の5第3項により帳簿価額による譲渡とされ、同条4項により受けた側の収益は益金に算入されません。

Q. 親会社の資本金が1億円以下なら、100%子会社も中小企業向けの軽減税率を使えますか?

A. 親会社の資本金が5億円未満であれば、法人税法66条5項2号の大法人には当たりません。ただし同項3号は、完全支配関係がある全ての大法人が持つ株式をいずれか一の法人が持つものとみなして判定すると定めています。資本金5億円以上の法人が複数で株式を分け合って100%保有している場合は、1社あたりの持分が100%でなくても軽減税率は適用されません。なお大法人の基準は5億円「以上」であり、ちょうど5億円の法人は大法人です。

Q. グループ通算制度を選んでいれば、グループ法人税制は関係なくなりますか?

A. 関係なくなりません。両者は二者択一ではなく、通算グループの中でもグループ法人税制の各規定は働きます。法人税法61条の11には8項として通算法人向けの特則が置かれており、通算法人が他の通算法人の株式を譲渡した場合には2項から7項までを適用しないと定めています。条文が二重に重なる作りになっているため、通算を選んでいる場合はどちらの規定が先に効くかを条文ごとに確認する必要があります。

出典

この記事は一般的な情報提供であり、個別の申告についての助言ではありません。完全支配関係の判定や譲渡損益調整資産の戻入れ計算は、株主構成・資産の種類・事業年度の組み合わせによって結論が変わります。法人税の申告および具体的な処理については税理士にご確認ください。数値例は理解のための設例であり、実際の税額を示すものではありません。

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