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減資とは — 手続きの流れ・無償減資と有償減資の違い・均等割はいつ下がるかを条文で

結論から言うと、減資とは会社法447条の「資本金の額の減少」のことで、登記されている資本金の額という「数字」を減らす手続きです。減らした額は貸借対照表の中でその他資本剰余金に移るだけなので、減資そのものでは会社からお金は1円も出ていきません。株主総会の決議(原則は特別決議)と、官報公告・個別催告を伴う債権者異議手続(異議を述べられる期間は1か月以上)を経て効力が生じ、効力発生から2週間以内に変更登記をします。登録免許税は1件3万円です。

実務で「無償減資」「有償減資」と呼び分けているのは、減資のあとに何をするかの違いです。移したその他資本剰余金で繰越損失を埋める(欠損填補)のが無償減資、その他資本剰余金を原資に株主へ配当する(資本の払戻し)のが有償減資で、後者は配当の一部がみなし配当になります。そして経理担当者がいちばん間違えやすいのが税務です。法人税法の「資本金等の額」は、株主にお金を払い戻さない減資では1円も動きません(施行令8条1項12号が減資額を足し戻す)。法人住民税の均等割が下がるのは、減資で作った剰余金を1年以内に欠損填補に充てた額だけで、その額もその他利益剰余金のマイナス分が上限です(地方税法23条1項4号の2・同施行規則1条の9の6)。「資本金を1,000万円以下にすれば均等割が下がる」と短絡すると外れます。

この記事は、①条文の中の減資、②無償減資と有償減資、③手続きの流れ(決議→債権者異議→効力発生→登記)、④会計処理、⑤税務(法人税法・地方税法・みなし配当の3つを分けて追う)、⑥設例2本、⑦減資で変わる線・変わらない線、の順に、条文を引用しながら整理します。資本金そのものの決まり方と、資本金の額で変わる制度の一覧は資本金とはに、みなし配当の計算の細部はみなし配当に、外形標準課税の入口は外形標準課税の対象になる会社に譲ります。

減資とは — 会社法447条「資本金の額の減少」。お金は動かず、0円まで減らせる

会社法には「減資」という語はありません。条文の見出しは「資本金の額の減少」で、447条1項が株式会社にそれを認め、株主総会で決めるべき3つの事項を挙げています。

株式会社は、資本金の額を減少することができる。この場合においては、株主総会の決議によって、次に掲げる事項を定めなければならない。

3つの事項とは、①減少する資本金の額、②その全部または一部を準備金にするときはその旨と準備金とする額、③効力発生日です。減らせる上限は効力発生日の資本金の額で(447条2項)、下限の定めはありません。会社法に最低資本金が無いのと同じ理屈で、条文上は資本金0円まで減らせます。

前項第一号の額は、同項第三号の日における資本金の額を超えてはならない。

ここで押さえたいのは、減資は「額」の操作であって、株式の操作ではないという点です。会社法の資本金の額と発行済株式数は切り離されているので、減資をしても株式数も株主の持株比率も動きません(株式数を減らす株式の併合・消却は別の手続です)。また、減らした資本金の額は会社計算規則27条1項1号でその他資本剰余金に移るだけで、会社の資産は1円も減りません。「減資=会社が小さくなる」「減資=株主にお金が戻る」はどちらも減資そのものの効果ではなく、そのあとに何をするかの話です。

会社計算規則25条2項は、資本金の額が減るのは447条による場合だけだと閉じています。

株式会社の資本金の額は、法第四百四十七条の規定による場合に限り、同条第一項第一号の額に相当する額が減少するものとする。

減資が使われる場面は、一般に①繰越損失を消して貸借対照表を整える(欠損填補)、②株主に出資を払い戻す、③資本金の額で決まる税や法律上の線(1,000万円・1億円など)の内側に入る、の3つに整理されます。③については「減資をすれば均等割が下がる」「1億円以下にすれば中小企業の税制が使える」と語られがちですが、それぞれ別の条文が別の「資本金」を見ているので、後半で1つずつ確かめます。

無償減資と有償減資 — 条文に無い言葉。「減資」と「そのあと何をするか」の組み合わせで読む

「無償減資」「有償減資」も会社法の言葉ではありません。会社法上の減資(447条)はいつも「資本金の額→その他資本剰余金」への振替だけで、お金が動くかどうかは、そのあとに剰余金をどう処分するかで決まります。

減資のあとに何をするか会社法の根拠お金の動き税務の要点
無償減資(形式的減資)その他資本剰余金に置いたまま、または株主総会の決議で繰越損失の填補に充てる(欠損填補)447条+452条(剰余金の処分)動かない法人税法の資本金等の額は不変(施行令8条1項12号)。均等割は欠損填補に充てた額だけ下がる(地方税法23条1項4号の2)。みなし配当なし
有償減資(実質的減資)その他資本剰余金を原資に剰余金の配当をして株主に払い戻す447条+453条・454条(剰余金の配当)株主へ出ていく「資本の払戻し」として配当の一部がみなし配当(法人税法24条1項4号・所得税法25条1項4号)。資本金等の額は減資資本金額だけ減る(施行令8条1項18号)

つまり有償減資=「減資」+「資本剰余金を原資とする配当」の2段階です。2段目の配当は剰余金の配当そのものなので、分配可能額の範囲内でしか行えず(461条1項8号)、株主総会でその都度決めます(454条1項)。この記事では以下、会社法の手続きは1段目に共通なものとして説明し、税務の節で無償・有償を分けて追います。

手続きの流れ — 株主総会決議・債権者異議(1か月以上)・効力発生・2週間以内に登記

減資(資本金の額の減少)の手続きの流れ — 株式会社の場合 ①株主総会の決議減少額・準備金・効力発生日(447条) ②官報公告+知れている債権者に個別催告(449条2項) ③異議があれば弁済・担保・信託(449条5項) ④効力発生日手続未了なら生じない(449条6項) ⑤変更登記商業登記法70条登録免許税3万円 異議を述べられる期間は1か月以上(449条2項ただし書) 効力発生から2週間以内(915条1項) ※ 定款の公告方法が日刊新聞紙か電子公告なら、官報と二重に公告して個別催告を省略できる(449条3項)
図1 減資の手続きの流れ。資本金の減少には債権者異議手続が必ず付き、その手続が終わるまで効力は生じない(449条6項ただし書)。

① 株主総会の決議 — 原則は特別決議、「定時総会で欠損の範囲内」なら普通決議

447条1項の決議は、309条2項9号により原則として特別決議(議決権の過半数を持つ株主が出席し、その3分の2以上の賛成)です。ただし同号は、定時株主総会で決め、かつ減少額が「欠損の額」を超えない場合を除いています。

第四百四十七条第一項の株主総会(次のいずれにも該当する場合を除く。)イ定時株主総会において第四百四十七条第一項各号に掲げる事項を定めること。ロ第四百四十七条第一項第一号の額がイの定時株主総会の日(第四百三十九条前段に規定する場合にあっては、第四百三十六条第三項の承認があった日)における欠損の額として法務省令で定める方法により算定される額を超えないこと。

この「欠損の額」は会社計算規則151条が定めていて、分配可能額がマイナスのときのその絶対値(プラスなら0)です。つまり「定時総会で、赤字の穴埋めに必要な範囲内だけ減資する」なら普通決議で足ります。

法第四百四十九条第一項第二号に規定する法務省令で定める方法は、次に掲げる額のうちいずれか高い額をもって欠損の額とする方法とする。

もう1つ例外があります。447条3項により、株式の発行と同時に減資をして、効力発生後の資本金の額が減資前を下回らない場合は、株主総会ではなく取締役の決定(取締役会設置会社では取締役会の決議)で足ります。増資と減資を同日に行って資本金の額を据え置く「資本金の組替え」がこれに当たります。

② 債権者異議手続 — 資本金の減少なら目的を問わず必ず要る

449条1項は、資本金または準備金の額を減少する場合に債権者が異議を述べられるとし、例外を準備金だけを減らす場合に限っています。

株式会社が資本金又は準備金(以下この条において「資本金等」という。)の額を減少する場合(減少する準備金の額の全部を資本金とする場合を除く。)には、当該株式会社の債権者は、当該株式会社に対し、資本金等の額の減少について異議を述べることができる。

ただし書の例外(定時総会で欠損の範囲内なら異議手続不要)は「準備金の額のみを減少する場合」に掛かっているので、資本金を減らす減資は、欠損填補が目的でも、お金が動かなくても、債権者異議手続を省略できません。ここが実務の所要期間を決めます。

手続の中身は449条2項です。官報に公告し、「知れている債権者」には個別に催告します。異議を述べられる期間は1か月以上です。

前項の規定により株式会社の債権者が異議を述べることができる場合には、当該株式会社は、次に掲げる事項を官報に公告し、かつ、知れている債権者には、各別にこれを催告しなければならない。ただし、第三号の期間は、一箇月を下ることができない。

公告に載せるのは、①減少の内容、②計算書類に関する事項(会社計算規則152条。直近の貸借対照表をどこで公告しているか等)、③一定期間内に異議を述べられる旨、の3つです。定款で公告方法を日刊新聞紙か電子公告にしている会社は、官報と併せてその方法でも公告すれば、個別催告を省けます(449条3項)。

前項の規定にかかわらず、株式会社が同項の規定による公告を、官報のほか、第九百三十九条第一項の規定による定款の定めに従い、同項第二号又は第三号に掲げる公告方法によりするときは、前項の規定による各別の催告は、することを要しない。

期間内に異議が無ければ、その債権者は減資を承認したものとみなされます(4項)。異議が出たときは、弁済する・相当の担保を提供する・信託会社等に相当の財産を信託する、のいずれかが要ります(5項)。ただし、その減資をしても当該債権者を害するおそれが無いときは不要です。

債権者が第二項第三号の期間内に異議を述べなかったときは、当該債権者は、当該資本金等の額の減少について承認をしたものとみなす。
ただし、当該資本金等の額の減少をしても当該債権者を害するおそれがないときは、この限りでない。

③ 効力発生日 — 決議で定めた日。ただし債権者異議手続が終わっていなければ生じない

効力が生じるのは447条1項3号で定めた日ですが、債権者異議手続(449条2項〜5項)が終わっていなければ、その日が来ても効力は生じません(449条6項ただし書)。手続が遅れそうなら、効力発生日は事前にいつでも変更できます(7項)。

次の各号に掲げるものは、当該各号に定める日にその効力を生ずる。ただし、第二項から前項までの規定による手続が終了していないときは、この限りでない。
株式会社は、前項各号に定める日前は、いつでも当該日を変更することができる。

実務上は「官報掲載日の翌日から1か月」を見込んで効力発生日を置くことになります。官報は申込みから掲載まで日数が掛かるので、決議から効力発生まで、短くても1か月半前後を見込むのが一般的です(掲載までの日数は国立印刷局の案内で確認します)。

④ 変更登記 — 効力発生から2週間以内、添付書類は商業登記法が決めている

資本金の額は登記事項(911条3項5号)なので、効力が生じたら本店所在地で変更登記をします。期限は2週間以内です。

会社において第九百十一条第三項各号又は前三条各号に掲げる事項に変更が生じたときは、二週間以内に、その本店の所在地において、変更の登記をしなければならない。

添付書類は商業登記法が決めています。株主総会の議事録(46条2項)のほか、減資に固有のものとして70条が、公告・催告をしたこと、異議を述べた債権者がいればその債権者に弁済等をしたこと(または害するおそれが無いこと)を証する書面を要求しています。

資本金の額の減少による変更の登記の申請書には、会社法第四百四十九条第二項の規定による公告及び催告(同条第三項の規定により公告を官報のほか時事に関する事項を掲載する日刊新聞紙又は電子公告によつてした場合にあつては、これらの方法による公告)をしたこと並びに異議を述べた債権者があるときは、当該債権者に対し弁済し若しくは相当の担保を提供し若しくは当該債権者に弁済を受けさせることを目的として相当の財産を信託したこと又は当該資本金の額の減少をしても当該債権者を害するおそれがないことを証する書面を添付しなければならない。

登録免許税は、登録免許税法別表第一24号(一)ツの「登記事項の変更」に当たり、申請1件につき3万円です。増資のように資本金の額に比例する税率ではありません。

登記事項の変更、消滅又は廃止の登記(これらの登記のうちイからソまでに掲げるものを除く。)申請件数一件につき三万円
同じ「減資」でも合同会社は条文が違う

持分会社の資本金の額の減少は会社法620条(損失の填補のため)と626条(出資の払戻し・持分の払戻しのため)で、債権者異議は627条です。株式会社と違って効力発生日は手続が終了した日です。条文は資本金とは — 増資と減資に引用しています。

会計処理 — 減らした額はその他資本剰余金へ。欠損填補は別の決議

減資の効力発生日に、減少する資本金の額はその他資本剰余金に移ります(会社計算規則27条1項1号)。447条1項2号で「準備金とする額」を定めていれば、その額は資本準備金に移り(26条1項1号)、残りがその他資本剰余金です。

法第四百四十七条の規定により資本金の額を減少する場合同条第一項第一号の額(同項第二号に規定する場合にあっては、当該額から同号の額を減じて得た額)に相当する額
法第四百四十七条の規定により資本金の額を減少する場合(同条第一項第二号に掲げる事項を定めた場合に限る。)同号の準備金とする額に相当する額

仕訳で書くと、減資の効力発生日は次の1本だけです(2,500万円減らし、準備金にしない場合)。

日付借方金額貸方金額
効力発生日資本金25,000,000その他資本剰余金25,000,000

欠損填補はこれとは別の行為です。その他資本剰余金で繰越利益剰余金のマイナスを埋めるのは452条の「損失の処理」に当たり、株主総会の決議で行います(減資と同じ総会で決議するのが普通です)。

株式会社は、株主総会の決議によって、損失の処理、任意積立金の積立てその他の剰余金の処分(前目に定めるもの及び剰余金の配当その他株式会社の財産を処分するものを除く。)をすることができる。この場合においては、当該剰余金の処分の額その他の法務省令で定める事項を定めなければならない。
日付借方金額貸方金額
処分の効力発生日その他資本剰余金25,000,000繰越利益剰余金25,000,000

どちらの仕訳も純資産の部の中の振替で、資産・負債は動きません。有償減資の2段目(資本剰余金を原資とする配当)は、通常の配当と同じく「その他資本剰余金 / 未払配当金(または現金預金)」で、ここで初めて会社の資産が減ります。株主資本等変動計算書の書き方は株主資本等変動計算書とはに譲ります。

税務 — 「資本金」は3つあり、減資で別々に動く

減資の税務を読み解く鍵は、「資本金」と呼ばれる数字が3つあって、別々の条文が別々に動かしていることです。①会社法の「資本金の額」(登記される数字)、②法人税法の「資本金等の額」(2条16号)、③地方税法の「資本金等の額」(23条1項4号の2。均等割と外形標準課税の資本割が見る)。減資は①を減らしますが、②③が連動するかは、減資のあとに何をしたかで決まります。

減資で「資本金」はどう動くか — 3つの条文を分けて追う 無償減資(置いたまま) 無償減資+欠損填補 有償減資(資本剰余金の配当) ①会社法の資本金の額(447条) ②法人税法の資本金等の額(2条16号) ③地方税法の資本金等の額(均等割) ↓ 減る登記も変わる ↓ 減る登記も変わる ↓ 減る登記も変わる → 動かない施行令8条1項12号 → 動かない施行令8条1項12号 ↓ 減資資本金額だけ減る施行令8条1項18号 → 動かない23条1項4号の2 ↓ 填補額だけ減る1年以内・欠損の範囲 ↓ ②と同じ額だけ減る法人税法の額を引き継ぐ
図2 「資本金」は3つあり、減資で別々に動く。無償減資で動くのは会社法の資本金の額だけで、均等割が見る地方税法の資本金等の額は、欠損填補に充てた額(1年以内・その他利益剰余金の負の額まで)だけ減る。

② 法人税法の資本金等の額 — 無償減資では1円も動かない

法人税法2条16号は資本金等の額を「株主等から出資を受けた金額」として政令に委ね、施行令8条1項がその計算を列挙しています。

法人が株主等から出資を受けた金額として政令で定める金額をいう。

その12号が減資で減らした額を足し戻す規定です。資本金の額を減らしても、出資を受けた事実は変わらないからです。

資本金の額又は出資金の額を減少した場合(第十四号に規定する場合を除く。)のその減少した金額に相当する金額

したがって、その他資本剰余金に置いたままでも、欠損填補に充てても、法人税法の資本金等の額は1円も減りません。資本金等の額が動くのは、株主にお金を払い戻したとき(有償減資)だけで、同項18号が、資本の払戻し等に係る減資資本金額(払い戻した部分に対応する資本金等の額)を減算します。

資本の払戻し等(法第二十四条第一項第四号に規定する資本の払戻し(法第二十三条第一項第二号に規定する出資等減少分配を除く。以下この号において「資本の払戻し」という。)及び解散による残余財産の一部の分配をいう。以下この号において同じ。)に係る減資資本金額

③ 地方税法の資本金等の額 — 均等割が下がるのは「1年以内に欠損填補に充てた額」だけ

法人住民税の均等割は、地方税法23条1項4号の2の「資本金等の額」で段が決まります(道府県民税52条・市町村民税312条)。この額は法人税法の資本金等の額を出発点に、無償増資(剰余金の資本組入れ)を足し、欠損填補に充てた額を引いて計算します。減資に関わるのはイ(3)です。

会社法第四百四十六条に規定する剰余金(同法第四百四十七条又は第四百四十八条の規定により資本金の額又は資本準備金の額を減少し、剰余金として計上したもので総務省令で定めるものに限る。)を同法第四百五十二条の規定により総務省令で定める損失の塡補に充てた金額

つまり、減資して作ったその他資本剰余金を、452条の決議で損失の填補に充てたときに、その額だけ均等割の判定額が下がります。置いたままでは下がりません。「総務省令で定めるもの」は地方税法施行規則1条の9の6が決めていて、2つの縛りがあります。

前項各号に定める額は、会社法第四百五十二条の規定により損失の塡補に充てた日以前一年間において剰余金として計上した額に限るものとする。
法第二十三条第一項第四号の二イ(3)に規定する総務省令で定める損失は、会社法第四百五十二条の規定により損失の塡補に充てた日における会社計算規則第二十九条に規定するその他利益剰余金の額が零を下回る場合における当該零を下回る額とする。

①減資から1年以内に填補に充てたものに限る、②引ける「損失」は填補の日のその他利益剰余金のマイナス分まで、の2つです。欠損が1,000万円しか無いのに3,000万円減資して全額を「填補」しても、均等割の判定額から引けるのは1,000万円です。なお、外形標準課税の資本割(72条の21)も同じ仕組みで、同施行規則3条の16が同じ1年・同じ上限を置いています。

もう1つ、地方税法52条4項・312条6項には下限があります。資本金等の額が「資本金の額+資本準備金の額」の合算額を下回るときは、合算額の方で判定します。有償減資で資本金等の額を小さくしても、登記上の資本金と準備金の合計がそれより大きければ、均等割はそちらで決まります。

みなし配当 — 有償減資の2段目で生じる

有償減資の2段目、その他資本剰余金を原資とする配当は、法人税法24条1項4号の「資本の払戻し」に当たります。

資本の払戻し(剰余金の配当(資本剰余金の額の減少に伴うものに限る。)のうち分割型分割によるもの及び株式分配以外のもの並びに出資等減少分配をいう。)又は解散による残余財産の分配

株主が受け取った金額のうち、「株式に対応する資本金等の額」(施行令23条1項4号。払戻し直前の資本金等の額に、減らした資本剰余金の額が前期末の簿価純資産に占める割合を掛けた額が基礎)を超える部分がみなし配当です。個人株主は所得税法25条1項4号で同じ構造になっていて、みなし配当部分は配当所得として源泉徴収(非上場株式なら20.42%)の対象になります。

当該法人の資本の払戻し(株式に係る剰余金の配当(資本剰余金の額の減少に伴うものに限る。)のうち分割型分割によるもの及び株式分配以外のもの並びに出資等減少分配をいう。)又は当該法人の解散による残余財産の分配

計算の割合の丸め方、令和4年4月に入った上限、受け取る側の課税の違いはみなし配当で条文を追っています。ここでは次の設例で数字だけ置きます。

設例 — 無償減資+欠損填補で均等割はいくら下がるか/有償減資でみなし配当はいくらか

以下の数値はすべて説明のための仮定です。均等割は地方税法の標準税率(道府県民税52条1項・市町村民税312条1項)で、従業者数50人以下・事業年度12か月の前提です。自治体ごとの超過課税や、東京23区のように都民税に一本化されている地域では額が変わります。

設例1 無償減資+欠損填補 — 資本金3,000万円・繰越損失2,500万円の会社

前提(減資前)金額
資本金の額(会社法)3,000万円
資本準備金・その他資本剰余金0円
その他利益剰余金(繰越利益剰余金)▲2,500万円
法人税法の資本金等の額3,000万円(設立時の払込みのみ)
やること定時株主総会で資本金を2,500万円減らし(→500万円)、移した2,500万円を同じ総会の決議で損失の填補に充てる
減資前減資+填補後根拠
①会社法の資本金の額(登記)3,000万円500万円447条・会社計算規則25条2項
その他資本剰余金0円0円(2,500万円が入って、2,500万円が填補に出る)会社計算規則27条1項1号・452条
その他利益剰余金▲2,500万円0円452条の損失の処理
②法人税法の資本金等の額3,000万円3,000万円(不変)施行令8条1項12号
③地方税法の資本金等の額3,000万円500万円(3,000万円 − 填補2,500万円。1年以内・その他利益剰余金の負の額2,500万円の範囲内)23条1項4号の2イ(3)・施行規則1条の9の6
52条4項の下限(資本金+資本準備金)3,000万円500万円=③と同額なので③で判定52条4項・312条6項
均等割(標準税率・50人以下)道府県5万円+市町村13万円=18万円道府県2万円+市町村5万円=7万円52条1項・312条1項
みなし配当生じない(株主に金銭の交付が無い)法人税法24条1項

この設例では、分配可能額が▲2,500万円(=欠損の額2,500万円)で、減少額2,500万円はその範囲内です。定時株主総会で決めるなら、309条2項9号の除外に当たり普通決議で足ります。一方、債権者異議手続は省略できません(449条1項の例外は準備金だけの場合)。また、均等割の税率は事業年度の末日現在の資本金等の額で判定する(52条2項1号)ので、填補まで期末までに終えていることが前提です。仮に減資だけして填補を翌期に回すと、その期末の③は3,000万円のままで、18万円のままです。

設例2 有償減資 — 資本金3,000万円の会社が1,000万円減資して、全額を株主に払い戻す

前提(減資前)金額
資本金の額(会社法)=法人税法の資本金等の額3,000万円
その他利益剰余金+2,000万円
前事業年度末の簿価純資産(資産の帳簿価額 − 負債の帳簿価額)5,000万円
株主法人1社が全株(1,000株)を保有
やること資本金を1,000万円減らしてその他資本剰余金にし、その1,000万円を原資に剰余金の配当(資本の払戻し)をする
計算金額根拠
割合=減らした資本剰余金1,000万円 ÷ 前期末簿価純資産5,000万円0.2(小数点以下3位未満切上げ)施行令23条1項4号イ(1)(2)
払戻等対応資本金額等(減資資本金額)=3,000万円 × 0.2600万円(減らした資本剰余金1,000万円を超えないので上限に掛からない)施行令23条1項4号イ・8条1項18号
みなし配当=交付1,000万円 − 600万円400万円法人税法24条1項4号
株主側: 株式の譲渡対価とされる額600万円(法人株主は61条の2で譲渡損益を計算)法人税法61条の2
②法人税法の資本金等の額(払戻し後)3,000万円 − 600万円=2,400万円施行令8条1項18号
①会社法の資本金の額(登記)2,000万円447条
③地方税法の資本金等の額と均等割2,400万円(②を引き継ぐ)。資本金+資本準備金2,000万円より大きいので2,400万円で判定→1,000万円超1億円以下のまま=18万円で変わらず23条1項4号の2・52条4項

有償減資では法人税法の資本金等の額が確かに減りますが、減る額は減資額1,000万円ではなく600万円で、残り400万円は配当として株主側で課税され、会社側では源泉徴収の対象になります。そして均等割の段は動きませんでした。「お金を払い戻す減資なら税務上の資本金も同じだけ減る」わけではない、というのがこの設例の要点です。

減資で変わる線・変わらない線

減資の目的③「資本金の額で決まる線の内側に入る」が成り立つかどうかは、その制度が①〜③のどの「資本金」を見ているかで決まります。主なものを並べます(線の一覧表そのものは資本金とは — 資本金の額で変わる制度)。

制度見ている数字無償減資で動くか注意
法人住民税の均等割③地方税法の資本金等の額(下限は資本金+資本準備金)欠損填補に充てた額だけ1年以内・その他利益剰余金の負の額まで。期末時点で判定
法人税の軽減税率15%・交際費800万円・欠損金の全額控除など①資本金の額(1億円以下)動く資本金5億円以上の大法人との完全支配関係がある会社は1億円以下でも対象外(法人税法66条5項2号)。法人税率参照
外形標準課税①資本金の額(1億円超)+附則の入口本則では動く前事業年度に対象だった法人は払込資本10億円超なら残る(附則8条の3の3)。外形標準課税の対象になる会社参照
消費税の納税義務(設立1・2期目)①事業年度開始の日の資本金の額(1,000万円以上で課税)基準期間が無い事業年度の開始日前に効力が生じていれば動く3期目以降は基準期間の課税売上高で判定するので資本金は無関係(消費税法12条の2)
役員変更登記の登録免許税①資本金の額(1億円以下なら1万円)動く登録免許税法別表第一24号(一)カ
会社法の大会社(会計監査人の設置義務など)貸借対照表の資本金の額(5億円以上)動く会社法2条6号。負債200億円以上でも大会社
法人税 計算機 — 所得と資本金(1億円以下か)を入れて、15%・23.2%の2段と均等割の目安を試算する

よくある質問

Q. 減資とは何ですか?

A. 会社法447条の「資本金の額の減少」のことで、登記されている資本金の額を減らす手続きです。減らした額はその他資本剰余金に移るだけなので、減資そのものでは会社の資産は動かず、株主にお金も戻りません。株主総会の決議(原則特別決議)と債権者異議手続を経て効力が生じ、2週間以内に変更登記をします。

Q. 無償減資と有償減資はどう違いますか?

A. 会社法上の減資はどちらも同じで、違いは減資のあとに何をするかです。その他資本剰余金を繰越損失の填補に充てる(または置いておく)のが無償減資、その他資本剰余金を原資に株主へ配当して払い戻すのが有償減資です。有償減資では配当の一部がみなし配当になり、法人税法の資本金等の額も減資資本金額だけ減ります。

Q. 減資に債権者異議手続は必ず要りますか?

A. 資本金の額を減らすなら、目的が欠損填補でも、お金が動かなくても、必ず要ります(会社法449条1項)。官報公告と知れている債権者への個別催告を行い、異議を述べられる期間は1か月以上です。定款の公告方法が日刊新聞紙か電子公告なら、官報と二重に公告して個別催告を省けます(449条3項)。省略できるのは、定時総会で欠損の範囲内だけ準備金を減らす場合に限られます。

Q. 減資の株主総会は特別決議ですか?

A. 原則は特別決議です(309条2項9号)。例外は、定時株主総会で決め、かつ減少額が欠損の額(分配可能額がマイナスのときのその絶対値。会社計算規則151条)を超えない場合で、このときは普通決議で足ります。また、株式の発行と同時に減資して資本金の額が減資前を下回らない場合は、取締役(会)の決定で足ります(447条3項)。

Q. 減資すれば法人住民税の均等割は下がりますか?

A. 減資しただけでは下がりません。均等割が見る地方税法の資本金等の額は、法人税法の資本金等の額を出発点にし、法人税法の額は無償減資では動かない(施行令8条1項12号)からです。下がるのは、減資で作った剰余金を1年以内に損失の填補に充てた額だけで、その額も填補の日のその他利益剰余金のマイナス分が上限です(地方税法23条1項4号の2・施行規則1条の9の6)。さらに、資本金+資本準備金の合算額を下回る場合は合算額で判定します(52条4項)。

Q. 減資の登録免許税はいくらですか?

A. 申請1件につき3万円です(登録免許税法別表第一24号(一)ツ「登記事項の変更」)。増資のように資本金の額に比例する税率ではありません。登記の期限は効力発生から2週間以内(会社法915条1項)で、添付書類は株主総会議事録(商業登記法46条2項)と、公告・催告や異議への対応を証する書面(同70条)です。

Q. 有償減資で株主に払い戻した額は、全部が配当になりますか?

A. なりません。払戻額のうち「株式に対応する資本金等の額」を超える部分だけがみなし配当で、残りは株式の譲渡対価として扱われます(法人税法24条1項4号・所得税法25条1項4号)。株式に対応する資本金等の額は、払戻し直前の資本金等の額に、減らした資本剰余金の額が前期末の簿価純資産に占める割合を掛けて計算し、減らした資本剰余金の額が上限です(法人税法施行令23条1項4号)。

Q. 資本金を1億円以下に減資すれば中小企業の税制が使えますか?

A. 法人税の軽減税率や交際費の定額控除などは資本金の額1億円以下で判定するので、減資で入れます。ただし資本金5億円以上の大法人と完全支配関係がある会社は1億円以下でも対象外です(法人税法66条5項2号)。外形標準課税は、前事業年度に対象だった法人だと払込資本10億円超なら附則の入口で残ります。消費税は3期目以降は課税売上高で判定するので、減資しても変わりません。

出典

本記事は一般的な情報提供を目的としたものです。個別の判断は税務署・税理士・司法書士にご確認ください。

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