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株主資本等変動計算書とは — 会社法に名前が無い計算書類。純資産の1年の動きを変動事由ごとに見せる

結論から言うと、株主資本等変動計算書とは、貸借対照表の純資産の部(資本金・資本準備金・利益準備金・繰越利益剰余金・自己株式など)が、事業年度の初めから終わりまでに「いくら、どういう理由で」動いたかを、項目ごと・変動事由ごとに並べた計算書類です。貸借対照表が「期末の残高」を、損益計算書が「1年分の収益と費用」を示すのに対して、株主資本等変動計算書は純資産の「期首残高 → 当期変動額 → 期末残高」をつなぐ役目を持ちます。損益計算書の当期純利益はここで繰越利益剰余金の増加として現れ、株主総会で決めた配当はここで減少として現れ、最後の行の期末残高は貸借対照表の純資産の部と一致します。株式会社であれば規模を問わず毎期作り、定時株主総会の承認を受け、10年保存し、法人税の確定申告書に添付する書類です。

ところが、会社法の全文(e-Gov法令API v2 で取得・457,393字)に「株主資本等変動計算書」という語は1回も出てきません。法人税法(600,520字)も0回です。会社法435条2項は計算書類を「貸借対照表、損益計算書その他……法務省令で定めるもの」としか書いておらず、この書類に名前を与えているのは会社計算規則59条1項、税務の側では法人税法施行規則35条1項2号(確定申告書の添付書類)です。法律の本文に名前が無いのに、株式会社なら必ず作って承認を受け、保存し、申告書に添付する——この「名前の無さ」と「義務の重さ」の落差が、この書類の位置づけを一番よく表しています。

この記事は、①条文の中の「株主資本等変動計算書」、②何を載せるか(4区分と株主資本の6項目)、③株主資本だけ変動事由ごとに書く理由、④増資・配当・当期純利益・自己株式取得の設例、⑤配当すると準備金が動く10分の1のルール、⑥誰が承認しどこに出てどこに出ないか、⑦小さな会社でも省略できない注記、⑧合同会社の社員資本等変動計算書、⑨法人税の申告書への添付、⑩試算表から作る手順、の順に整理します。貸借対照表の純資産の部が4つに割れていること自体は 貸借対照表の見方 が、損益計算書の当期純利益の出方は 損益計算書の見方 が、キャッシュ・フロー計算書が計算書類に入らない理由は キャッシュフロー計算書とは が、申告書に添付する内訳明細書の範囲は 勘定科目内訳明細書 が、それぞれ詳しく持っているのでリンクで譲ります。

条文の中の「株主資本等変動計算書」 — 会社法・法人税法に0回、名指しは会社計算規則59条と施行規則35条

まず、この書類がどこで決まっているかを条文で確かめます。会社法435条2項は、株式会社に計算書類の作成を命じる条文です。

株式会社は、法務省令で定めるところにより、各事業年度に係る計算書類(貸借対照表、損益計算書その他株式会社の財産及び損益の状況を示すために必要かつ適当なものとして法務省令で定めるものをいう。以下この章において同じ。)及び事業報告並びにこれらの附属明細書を作成しなければならない。

名前が書いてあるのは貸借対照表と損益計算書だけで、残りは「その他……法務省令で定めるもの」です。その法務省令が会社計算規則で、59条1項がこう受けます。

法第四百三十五条第二項に規定する法務省令で定めるものは、この編の規定に従い作成される株主資本等変動計算書及び個別注記表とする。

つまり会社法上の計算書類は、貸借対照表・損益計算書・株主資本等変動計算書・個別注記表の4つで、後ろの2つは法律ではなく省令が名前を与えている書類です。会社法の全文を e-Gov法令API v2 で取得して検索すると、「株主資本等変動計算書」の語は本則・附則を通じて0回でした(「計算書類」は108回)。会社計算規則には33回出てきて、その中心が96条(株主資本等変動計算書等の表示)と105条(株主資本等変動計算書に関する注記)です。附則1条は「この省令は、法の施行の日から施行する」としており、この書類は会社法と同時に生まれたものです。上場会社などが金融商品取引法に基づいて作る財務諸表では、財務諸表等規則99条〜109条が記載方法を定め、様式第七号という雛形まで用意されています。

会計基準の側では、企業会計基準委員会の企業会計基準第6号「株主資本等変動計算書に関する会計基準」(平成17年12月27日公表・最終改正平成25年9月13日)が、その1項で、株主資本等変動計算書は貸借対照表の純資産の部の一会計期間における変動額のうち、主として株主に帰属する部分である株主資本の各項目の変動事由を報告するために作成するものだと目的を述べ、11項で会社法の施行日以後に終了する事業年度から作成するとしています。会社計算規則96条の書き方は、この会計基準と同じ設計です。

税法の側でも法人税法本体に名前はありません。法人税法74条3項は確定申告書に「当該事業年度の貸借対照表、損益計算書その他の財務省令で定める書類」を添付せよと書き、その財務省令である法人税法施行規則35条1項2号が「株主資本等変動計算書若しくは社員資本等変動計算書又は損益金の処分表」と名指しします(後述の「法人税の申告書に添付する」で条文を引きます)。会社法も法人税法も、法律本文ではこの書類を「その他の省令で定める書類」としてしか扱っていない——それでいて作成・承認・保存・添付の義務は全部かかる、というのが条文上の姿です。

何を載せるか — 4区分と株主資本の6項目。貸借対照表の純資産の部と同じ割り方

会社計算規則96条2項1号は、株主資本等変動計算書を次の4つに区分して表示せよと定めます。

イ 株主資本…ロ 評価・換算差額等…ハ 株式引受権…ニ 新株予約権

この4区分は、貸借対照表の純資産の部の区分(会社計算規則76条1項1号)とまったく同じです。貸借対照表の純資産の部を横に倒して、各項目に「期首・変動・期末」の3行を付けたものが株主資本等変動計算書だ、と考えると構造が見えます。後ろの2つ(株式引受権・新株予約権)が自己資本ではないことの意味は 貸借対照表の見方 に譲ります。

そのうち株主資本は、96条3項1号でさらに6つの項目に分かれます。

イ 資本金…ロ 新株式申込証拠金…ハ 資本剰余金…ニ 利益剰余金…ホ 自己株式…ヘ 自己株式申込証拠金

さらに4項で、資本剰余金は資本準備金とその他資本剰余金に、利益剰余金は利益準備金とその他利益剰余金に区分し、その他資本剰余金・その他利益剰余金は「適当な名称を付した項目に細分することができる」とされています。中小企業の株主資本等変動計算書で列の見出しに並ぶ 資本金・資本準備金・その他資本剰余金・利益準備金・別途積立金・繰越利益剰余金・自己株式 は、この3項・4項をそのまま並べたものです。評価・換算差額等は5項で、その他有価証券評価差額金・繰延ヘッジ損益・土地再評価差額金など5項目に細分できるとされていますが、有価証券を時価評価しない会社ではこの列自体が出てきません。

上場会社向けの財務諸表等規則100条2項は、この対応関係を明文で要求しています。

株主資本等変動計算書は、適切な項目に区分し、当該項目を示す名称を付した科目をもつて掲記しなければならない。当該項目及び科目は、前事業年度末及び当事業年度末の貸借対照表における純資産の部の項目及び科目と整合していなければならない。

「前事業年度末及び当事業年度末の貸借対照表」と両方を挙げているのがポイントで、株主資本等変動計算書の期首残高の行は前期末の貸借対照表、期末残高の行は当期末の貸借対照表と、それぞれ一致していなければならないということです。作った後の検算はここでやります。

区分(96条2項)項目(96条3項〜5項)中小企業でよく動く事由
株主資本資本金新株の発行(増資)、準備金・剰余金の資本組入れ、減資
新株式申込証拠金期末時点で払込はあるが効力発生日が翌期の増資
資本剰余金(資本準備金/その他資本剰余金)増資の払込額のうち資本金にしない部分、資本金・準備金の取り崩し
利益剰余金(利益準備金/その他利益剰余金)当期純利益(純損失)、剰余金の配当、配当に伴う利益準備金の積立、任意積立金の積立・取崩
自己株式自己株式の取得(マイナスが増える)、処分、消却
自己株式申込証拠金自己株式の処分で期末時点で払込はあるが効力発生日が翌期のもの
評価・換算差額等その他有価証券評価差額金、繰延ヘッジ損益、土地再評価差額金 など時価評価する有価証券を持つ会社のみ。当期変動額は純額でよい
株式引受権取締役の報酬として株式を無償交付する会社のみ
新株予約権(自己新株予約権を控除項目にできる)ストックオプションを発行した会社のみ

株主資本だけ「変動事由ごと」に書く — 評価・換算差額等は純額でよい

株主資本等変動計算書の核心は、どの項目を「変動事由ごと」に分解して書くか、です。会社計算規則96条7項は株主資本の各項目についてこう定めます。

資本金、資本剰余金、利益剰余金及び自己株式に係る項目は、それぞれ次に掲げるものについて明らかにしなければならない。この場合において、第二号に掲げるものは、各変動事由ごとに当期変動額及び変動事由を明らかにしなければならない。

「次に掲げるもの」は1号 当期首残高・2号 当期変動額・3号 当期末残高の3つで、当期変動額だけは各変動事由ごとに金額と事由を明らかにするよう求めています。「剰余金の配当 △1,000」「当期純利益 3,000」のように、行ごとに事由が立つのはこのためです。一方、株主資本以外の項目は8項です。

評価・換算差額等又はその他の包括利益累計額、株式引受権、新株予約権及び非支配株主持分に係る項目は、それぞれ次に掲げるものについて明らかにしなければならない。この場合において、第二号に掲げるものについては、その主要なものを変動事由とともに明らかにすることを妨げない。

こちらは「妨げない」=任意で、当期変動額を純額1行で書いてよいことになっています。企業会計基準第6号も6項で株主資本の各項目は変動事由ごと、8項で株主資本以外の各項目は純額表示(主な変動事由ごとの表示も可)と、同じ線を引いています。株主に帰属する株主資本の増減は、株主が、配当でいくら出て行き、利益でいくら増え、増資でいくら入ったかを知る必要があるから事由ごと、時価の動きで勝手に増減する評価差額はそこまで要らない、という整理です。

変動事由のうち2つは、どの列に書くかまで決まっています。財務諸表等規則101条3項・4項は次のとおりです。

剰余金の配当は、その他資本剰余金又はその他利益剰余金の変動事由として表示しなければならない。
当期純利益金額又は当期純損失金額は、その他利益剰余金の変動事由として表示しなければならない。

つまり当期純利益は必ずその他利益剰余金(繰越利益剰余金)の列に、配当は配当の原資にした剰余金の列に書きます。損益計算書の最終行と株主資本等変動計算書がつながる場所はここ1か所です。7項1号の括弧書きには、遡及適用・誤謬の訂正・前事業年度の企業結合の暫定処理の確定をした場合には「当期首残高及びこれに対する影響額」を明らかにするとあり、過年度の修正は期首残高の行に影響額として出す設計になっています。

変動事由(行)動く列根拠になる会社法の条文
新株の発行資本金(+)、資本準備金(+)445条1項〜3項(払込額の2分の1まで資本金にしないことができ、その額は資本準備金)
剰余金の配当その他利益剰余金 または その他資本剰余金(△)、利益準備金 または 資本準備金(+)453条・454条(配当の決議)、445条4項(準備金の計上)
当期純利益(当期純損失)繰越利益剰余金(+/△)(損益計算書の最終行。会社計算規則94条)
自己株式の取得・処分・消却自己株式(△/+)、処分差額はその他資本剰余金461条1項(分配可能額の制限)
資本金・準備金の額の減少資本金/準備金(△)、その他資本剰余金・その他利益剰余金(+)447条・448条
剰余金の資本組入れ・準備金組入れその他剰余金(△)、資本金・準備金(+)450条・451条
任意積立金の積立・取崩別途積立金(+)、繰越利益剰余金(△) など452条(剰余金の処分)

設例で組む — 増資・配当・当期純利益・自己株式の取得(期首18,500千円 → 期末22,000千円)

3月決算・非公開・会計監査人を置かない株式会社で、1年間に次の4つが起きたとします(単位は千円。評価・換算差額等・株式引受権・新株予約権は無い会社です)。

資本金資本準備金利益準備金繰越利益剰余金自己株式株主資本合計純資産合計
当期首残高10,00005008,000018,50018,500
当期変動額
 新株の発行1,0001,0002,0002,000
 剰余金の配当100△1,100△1,000△1,000
 当期純利益3,0003,0003,000
 自己株式の取得△500△500△500
当期変動額合計1,0001,0001001,900△5003,5003,500
当期末残高11,0001,0006009,900△50022,00022,000

読み方を3つ確かめます。第一に、当期変動額合計の 3,500 は、純資産が1年で増えた額そのものです(当期純利益 3,000 + 増資 2,000 − 配当 1,000 − 自己株式 500)。第二に、「剰余金の配当」の行が2つの列にまたがっています。株主に出て行ったのは 1,000 ですが、繰越利益剰余金は 1,100 減り、利益準備金が 100 増えています。これが次の節の445条4項です。第三に、当期末残高の行(資本金 11,000/資本準備金 1,000/利益準備金 600/繰越利益剰余金 9,900/自己株式 △500/純資産合計 22,000)は、当期末の貸借対照表の純資産の部とそのまま一致します。一致しなければ、期首残高を前期末の貸借対照表から写し間違えたか、当期純利益を損益計算書から写し間違えたか、自己株式の符号か、準備金の積立漏れか、のどれかです。

配当の 1,000 が出せる金額だったかは、会社法461条2項の分配可能額で確かめます。分配可能額の出発点は446条の剰余金の額で、この設例の期首時点では会社計算規則149条によりその他利益剰余金の 8,000 がそれに当たり、自己株式の帳簿価額 0 を引いた 8,000 が配当できる上限です。1,000 は十分に枠内です。当期純利益から法人税がいくら引かれて繰越利益剰余金に残るかは、法人税の簡易計算(年800万円以下の部分は15%) で当たりが付けられます。

損益計算書 収益 − 費用 当期純利益 3,000 株主資本等変動計算書 当期首残高 18,500(前期末B/Sと一致) 新株の発行+2,000 剰余金の配当(うち準備金+100)△1,000 当期純利益 ← 損益計算書+3,000 自己株式の取得△500 当期変動額合計+3,500 当期末残高 22,000 (変動事由ごとに書くのは株主資本だけ・96条7項) 貸借対照表 純資産の部 合計 22,000 (期末と一致)
3つの計算書類のつながり。損益計算書の当期純利益は株主資本等変動計算書の繰越利益剰余金の変動事由として入り、当期末残高の行は貸借対照表の純資産の部と一致する(財務諸表等規則100条2項・101条4項)。金額は本文の設例(千円)。

配当すると準備金も動く — 会社法445条4項と会社計算規則22条の「10分の1」

設例で「剰余金の配当」の行が利益準備金の列にも 100 を立てた根拠は、会社法445条4項です。

剰余金の配当をする場合には、株式会社は、法務省令で定めるところにより、当該剰余金の配当により減少する剰余金の額に十分の一を乗じて得た額を資本準備金又は利益準備金(以下「準備金」と総称する。)として計上しなければならない。

ただし、無限に積ませるわけではありません。受けた会社計算規則22条は、1項で資本準備金、2項で利益準備金について同じ形の定めを置き、それぞれ1号で積立が要らなくなる線を引いています。1項1号はこうです。

当該剰余金の配当をする日における準備金の額が当該日における基準資本金額(資本金の額に四分の一を乗じて得た額をいう。以下この条において同じ。)以上である場合 零

つまり、資本準備金と利益準備金の合計が資本金の4分の1に達していれば積立は零、達していなければ「4分の1までの不足額」と「配当額の10分の1」の小さい方を、配当の原資の割合(利益剰余金から配当したなら利益準備金へ、その他資本剰余金から配当したなら資本準備金へ)に応じて積みます。設例に当てはめると、配当日の資本金 10,000 の4分の1は 2,500、準備金の額は 500 で 2,500 に達していないので、不足額 2,000 と配当額 1,000 の10分の1=100 の小さい方、100 を利益準備金に積みます。原資が全額その他利益剰余金なので、利益剰余金配当割合は1です。もしこの会社の準備金が既に 2,500 以上あれば、同じ 1,000 の配当でも準備金の行は動かず、繰越利益剰余金が 1,000 減るだけになります。

配当は株主総会で決めて(454条1項)、効力発生日(同項3号)に効力が生じます。3月決算の会社が6月の定時株主総会で決める配当は、その効力発生日が翌事業年度に属するので、翌期の株主資本等変動計算書に載ります。当期の計算書に載る「剰余金の配当」は、1年前の総会で決めた配当です。このずれが、後述する法人税法施行規則35条1項2号イの「決算の確定の日までの間に行われた剰余金の処分の内容」を別途書かせる理由になっています。

誰が承認し、どこに出て、どこに出ないか — 総会承認・10年保存・公告されない・臨時計算書類に無い

株主資本等変動計算書は計算書類の1つなので、計算書類に課される手続きが全部かかります。会社法438条2項です。

前項の規定により提出され、又は提供された計算書類は、定時株主総会の承認を受けなければならない。

監査役設置会社では436条1項により監査役の監査を受け、取締役会設置会社では同条3項により取締役会の承認を経てから総会に出します。会計監査人設置会社は439条により、計算書類が法務省令で定める要件に該当すれば総会の承認は要らず報告で足ります。保存は435条4項です。

株式会社は、計算書類を作成した時から十年間、当該計算書類及びその附属明細書を保存しなければならない。

442条1項1号により、定時株主総会の日の1週間前(取締役会設置会社は2週間前)から5年間は本店に備え置き、株主と債権者はいつでも閲覧・謄本の交付を請求できます(同条3項)。ここまでは貸借対照表・損益計算書と同じ扱いです。

違いが出るのは「公告」と「臨時計算書類」です。440条1項はこう定めます。

株式会社は、法務省令で定めるところにより、定時株主総会の終結後遅滞なく、貸借対照表(大会社にあっては、貸借対照表及び損益計算書)を公告しなければならない。

公告の対象は貸借対照表(大会社は損益計算書も)だけで、株主資本等変動計算書は公告しません。株主総会と税務署には出るが、世間には出ない書類です(有価証券報告書を出す会社は440条4項で別扱い)。もう1つ、事業年度の途中で分配可能額を増やすために作る臨時計算書類(441条1項)は、次の2つに限られています。

一 臨時決算日における貸借対照表…二 臨時決算日の属する事業年度の初日から臨時決算日までの期間に係る損益計算書

臨時決算では株主資本等変動計算書は作りません。期中の純資産の動きは、461条2項2号のとおり臨時計算書類の損益計算書の利益と自己株式の処分対価を足す形で分配可能額に反映されます。

場面株主資本等変動計算書条文
各事業年度の計算書類として作成○(毎期)会社法435条2項・会社計算規則59条1項
監査役の監査・取締役会の承認○(計算書類として)会社法436条
定時株主総会の承認(会計監査人設置会社は報告)会社法438条2項・439条
本店での備置き・株主と債権者の閲覧○(5年)会社法442条1項1号・3項
保存○(10年)会社法435条4項
決算公告×(貸借対照表のみ。大会社は損益計算書も)会社法440条1項
臨時計算書類×(貸借対照表と損益計算書のみ)会社法441条1項
法人税の確定申告書への添付法人税法74条3項・施行規則35条1項2号
勘定科目内訳明細書の対象×(対象は貸借対照表・損益計算書)施行規則35条1項3号(勘定科目内訳明細書

小さな会社でも省略できない注記 — 98条2項の省略リストに「9号」が無い

株主資本等変動計算書には、個別注記表の側に対になる注記があります。会社計算規則98条1項は注記表の区分を22項目(枝番号を含む)列挙しており、その9号が「株主資本等変動計算書(連結注記表にあっては、連結株主資本等変動計算書)に関する注記」です。中身は105条です。

一 当該事業年度の末日における発行済株式の数(種類株式発行会社にあっては、種類ごとの発行済株式の数)…二 当該事業年度の末日における自己株式の数(種類株式発行会社にあっては、種類ごとの自己株式の数)

続けて3号が当該事業年度中に行った剰余金の配当に関する事項(金銭配当ならその総額)、4号が株式引受権に係る株式の数、5号が新株予約権の目的となる株式の数で、全部で5つです。株主資本等変動計算書は金額しか載せないので、株数と配当の事実はこの注記で補う設計になっています。

ここで見落とされやすいのが、98条2項です。会計監査人を置かない非公開会社(中小企業のほとんど)は、注記の多くを省略できます。

会計監査人設置会社以外の株式会社(公開会社を除く。)の個別注記表 前項第一号、第四号の二、第五号、第七号、第八号及び第十号から第十八号までに掲げる項目

省略できるのは1号(継続企業の前提)・4号の2・5号・7号(貸借対照表等)・8号(損益計算書)・10号から18号まで(税効果会計・リース・金融商品・関連当事者・一株当たり情報・後発事象など)です。この列挙に9号は入っていません。つまり、貸借対照表に関する注記も損益計算書に関する注記も省略できる小さな会社が、株主資本等変動計算書に関する注記(発行済株式数・自己株式数・配当の総額など)は省略できない、ということです。残るのは2号(重要な会計方針)・3号(会計方針の変更)・4号(表示方法の変更)・6号(誤謬の訂正)・9号・19号(その他の注記)などで、中小企業の個別注記表が「重要な会計方針に係る事項に関する注記」と「株主資本等変動計算書に関する注記」の2本立てになりがちなのは、この条文の帰結です。上場会社向けの財務諸表等規則では106条(発行済株式)・107条(自己株式)・108条(新株予約権等)・109条(配当。株式の種類ごとの配当金の総額・一株当たり配当額・基準日・効力発生日)が同じ役目を果たします。

合同会社は「社員資本等変動計算書」 — 2区分・準備金の欄が無い・注記は省略できる

持分会社(合同会社・合名会社・合資会社)の計算書類は、会社法617条2項が別に定めています。

持分会社は、法務省令で定めるところにより、各事業年度に係る計算書類(貸借対照表その他持分会社の財産の状況を示すために必要かつ適切なものとして法務省令で定めるものをいう。以下この章において同じ。)を作成しなければならない。

株式会社の435条2項と見比べると、名前が書いてあるのは貸借対照表だけで、損益計算書すら「その他」に落ちています。受けた会社計算規則71条1項2号が合同会社についてこう定めます。

合同会社 この編の規定に従い作成される損益計算書、社員資本等変動計算書及び個別注記表

合同会社は「株主」がいないので、名前が社員資本等変動計算書に変わります。同項1号により、合名会社・合資会社はこれらを作ると定めた場合にだけ作ればよく、義務ではありません。中身も株式会社より簡単で、96条2項3号により区分は社員資本と評価・換算差額等の2つだけ(株式引受権・新株予約権の区分が無い)、社員資本の項目は96条3項3号のとおり3つです。

イ 資本金…ロ 資本剰余金…ハ 利益剰余金

株式会社の96条3項1号にある新株式申込証拠金・自己株式・自己株式申込証拠金が無く、4項の「資本準備金/その他資本剰余金」「利益準備金/その他利益剰余金」の細分も持分会社には掛かっていません。合同会社の貸借対照表に準備金の区分が無いことが、変動計算書にもそのまま出ています。さらに98条2項5号は、持分会社の個別注記表について1号・4号の2・5号・7号から18号までを省略できるとしており、9号が入っている=合同会社は社員資本等変動計算書に関する注記を省略できます。株式会社が省略できないのと対照的です。法人税の確定申告書への添付は、施行規則35条1項2号が「株主資本等変動計算書若しくは社員資本等変動計算書」と並べているとおり、合同会社にも掛かります。

法人税の申告書に添付する — 施行規則35条1項2号と「決算確定の日までの剰余金の処分」

法人税法74条1項は、各事業年度終了の日の翌日から2月以内に「確定した決算に基づき」申告書を出せと命じ、3項で貸借対照表・損益計算書その他の財務省令で定める書類の添付を求めます。その施行規則35条1項の1号・2号がこれです。

一 当該事業年度の貸借対照表及び損益計算書…二 当該事業年度の株主資本等変動計算書若しくは社員資本等変動計算書又は損益金の処分表(これらの書類又は前号に掲げる書類に次に掲げる事項の記載がない場合には、その記載をした書類を含む。)…イ 当該事業年度終了の日の翌日から当該事業年度に係る決算の確定の日までの間に行われた剰余金の処分の内容…ロ 過年度事項(当該事業年度前の事業年度の貸借対照表、損益計算書又は株主資本等変動計算書若しくは社員資本等変動計算書若しくは損益金の処分表に表示すべき事項をいう。)の修正の内容

読みどころは括弧書きのイです。前の節で見たとおり、3月決算の会社が6月の定時株主総会で決めた配当は、効力発生日が翌期なので当期の株主資本等変動計算書には載りません。ところが申告書は「確定した決算」に基づくもので、その総会で配当が決まったという事実は当期の申告に関係します。そこで施行規則は、事業年度終了の日の翌日から決算確定の日までに行われた剰余金の処分の内容が計算書に載っていなければ、それを記載した書類を添付するよう求めています。ロは、過年度の計算書類を修正したときにその内容を書かせるもので、会社計算規則96条7項1号の「当期首残高に対する影響額」と対になっています。

もう1つ、35条1項3号の勘定科目内訳明細書は「第一号に掲げるものに係る」とあり、対象は貸借対照表と損益計算書だけで、2号の株主資本等変動計算書は内訳書の対象に入っていません。この構造は 勘定科目内訳明細書 が主題として持っているのでそちらに譲ります。仮決算をして中間申告をする場合も、施行規則33条1項1号により期間の損益計算書とともに株主資本等変動計算書(社員資本等変動計算書)を添付します(中間申告)。

株主資本等変動計算書は会社法・会計の書類であって、税務上の所得計算に直接使う数字ではありません。税務では、利益積立金額の増減を別表五(一)で別に追います。ただし配当・増資・自己株式の取得・減資といった純資産の動きは、税務上もみなし配当や資本金等の額の増減として別の扱いを受けるので、計算書の各行は申告書を作るときの「何が起きたか」の一覧として使われます。

作り方 — 前期末の貸借対照表・仕訳・株主総会の決議から、期首 → 事由 → 期末の順に埋める

実務でも簿記2級の問題でも、作り方は同じ5手順です。

  1. 期首残高を前期末の貸借対照表の純資産の部から写す。列の見出しも前期末の貸借対照表と同じ科目にする(財務諸表等規則100条2項の「整合」)。遡及適用や誤謬の訂正があれば、期首残高に対する影響額を区分して書く(会社計算規則96条7項1号)。
  2. 期中の純資産科目の仕訳を、変動事由ごとに拾う。増資(資本金・資本準備金)、配当(繰越利益剰余金・利益準備金)、自己株式の取得・処分、資本金・準備金の減少や組入れ、任意積立金の積立・取崩。試算表の純資産の科目の借方・貸方を、株主総会議事録・取締役会議事録と突き合わせると漏れにくくなります。
  3. 当期純利益(当期純損失)を損益計算書の最終行から繰越利益剰余金の列に入れる。損失なら△で書く(財務諸表等規則101条4項)。
  4. 列ごとに縦に足して当期末残高を出し、当期末の貸借対照表の純資産の部と突き合わせる。1円でも合わなければ、期首の写し間違い・当期純利益の転記・自己株式の符号・準備金の積立の4か所を見る。
  5. 注記を付ける。期末の発行済株式数・自己株式数・配当の総額など(会社計算規則105条)。

期中に増資も配当も自己株式の売買も無かった年でも、この書類は作ります。その場合の変動事由は「当期純利益」(赤字なら「当期純損失」)の1行だけで、期首残高+当期純利益=期末残高という短い表になりますが、計算書類である以上、総会承認・保存・申告書添付の対象であることは変わりません。

よくある質問

Q. 株主資本等変動計算書とは何ですか?

A. 貸借対照表の純資産の部(資本金・資本準備金・利益準備金・繰越利益剰余金・自己株式など)が、事業年度の初めから終わりまでに、いくら、どういう理由で動いたかを、項目ごと・変動事由ごとに並べた計算書類です。会社法435条2項の「その他……法務省令で定めるもの」を受けた会社計算規則59条1項が、個別注記表とともに計算書類として名指ししています。会社法の本文に「株主資本等変動計算書」の語は無く、法人税法にもありません。損益計算書の当期純利益は繰越利益剰余金の増加として、株主総会で決めた配当は減少として現れ、期末残高の行は貸借対照表の純資産の部と一致します。

Q. どの会社が作らなければなりませんか?

A. 株式会社は規模を問わず全部です(会社法435条2項・会社計算規則59条1項)。合同会社は社員資本等変動計算書を作ります(会社計算規則71条1項2号)。合名会社・合資会社は、損益計算書・社員資本等変動計算書・個別注記表を作ると定めた場合にだけ作ります(同項1号)。個人事業主には会社法の計算書類の義務がなく、青色申告決算書の貸借対照表・損益計算書に株主資本等変動計算書に当たるものはありません。

Q. 期中に何も変動が無かった年も作りますか?

A. 作ります。会社計算規則59条1項は各事業年度に係る計算書類として株主資本等変動計算書を挙げており、変動の有無で免除されません。増資も配当も自己株式の売買も無ければ、変動事由は当期純利益(または当期純損失)の1行だけになり、期首残高+当期純利益=期末残高の表になります。それでも定時株主総会の承認(438条2項)、10年の保存(435条4項)、法人税の申告書への添付(施行規則35条1項2号)の対象です。

Q. 配当はどの年度の株主資本等変動計算書に載りますか?

A. 配当の効力発生日(会社法454条1項3号)が属する事業年度の計算書に載ります。3月決算の会社が6月の定時株主総会で決めた配当は効力発生日が翌期なので、翌期の株主資本等変動計算書に「剰余金の配当」として出ます。当期の計算書に載っているのは前年の総会で決めた配当です。法人税の確定申告書では、施行規則35条1項2号イにより、事業年度終了の日の翌日から決算確定の日までに行われた剰余金の処分の内容を、計算書に記載が無ければ別の書類で添付します。

Q. 配当したとき準備金はいくら積みますか?

A. 会社法445条4項により、配当で減る剰余金の額の10分の1を資本準備金または利益準備金として計上します。ただし会社計算規則22条により、配当日の準備金の額(資本準備金+利益準備金)が資本金の4分の1以上であれば積立は零で、未満であれば「資本金の4分の1までの不足額」と「配当額の10分の1」の小さい方を積みます。原資がその他利益剰余金なら利益準備金へ、その他資本剰余金なら資本準備金へ、それぞれの割合に応じて振り分けます。資本金1,000万円・準備金50万円の会社が100万円を配当すると、不足額200万円と10万円の小さい方=10万円を利益準備金に積み、株主資本等変動計算書の「剰余金の配当」の行は利益準備金+10万円・繰越利益剰余金△110万円・合計△100万円になります。

Q. 期末残高が貸借対照表と合いません。どこを見ればよいですか?

A. 見る場所は4つです。①期首残高が前期末の貸借対照表の純資産の部と一致しているか(遡及修正があれば影響額を区分して書いたか)、②当期純利益(純損失)を損益計算書の最終行どおりに繰越利益剰余金の列へ入れたか、③自己株式を△(控除)として扱っているか、④配当に伴う準備金の積立を入れたか。財務諸表等規則100条2項は、項目と科目が前事業年度末と当事業年度末の両方の貸借対照表の純資産の部と整合していなければならないと定めており、期首と期末の両端で突き合わせるのが検算の基本です。

Q. 株主資本等変動計算書は公告や開示の対象ですか?

A. 決算公告の対象ではありません。会社法440条1項が公告を求めているのは貸借対照表(大会社は貸借対照表と損益計算書)だけです。定時株主総会の承認(438条2項)、本店での備置きと株主・債権者の閲覧(442条)、10年保存(435条4項)、法人税の申告書への添付(施行規則35条1項2号)の対象にはなります。金融商品取引法に基づいて有価証券報告書を出す会社は、財務諸表等規則99条により様式第七号で株主資本等変動計算書を記載し、106条から109条の注記を付けます。

Q. 決まった様式・ひな形はありますか?

A. 会社計算規則には様式がありません(同規則の全文に「様式第」の語は0回)。求めているのは96条の区分・項目と、株主資本の各項目について当期首残高・当期変動額(変動事由ごと)・当期末残高を明らかにすることで、その条件を満たせば列の並べ方は会社が決めます。有価証券報告書を出す会社は財務諸表等規則99条2項の様式第七号に従います。簿記2級の問題や会計ソフトが出す横長の表(列が科目・行が変動事由)は、96条7項の要求をそのまま表にした形です。

出典

本記事は一般的な情報提供を目的としたものです。個別の判断は税務署・税理士・公認会計士にご確認ください。

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