会社設立でやること — 設立後に出す税務書類の期限と、消費税の免税期間を決める事業年度の選び方
結論から言うと、会社設立の手続きは「登記」で終わりではなく、そこから税務署に出す書類の期限が動き出します。しかもその期限は書類ごとにばらばらで、給与支払事務所等の開設届出書は1か月以内、法人設立届出書は2か月以内です。
そのなかで青色申告の承認申請だけは、期限の決まり方そのものが違います。「設立から3か月以内」と説明されることが多いのですが、条文が定めているのは「設立の日以後3か月を経過した日」と「第1期の事業年度終了の日」のうち、いずれか早い日の前日です(法人税法122条2項1号)。第1期が3か月に満たない決算月を選ぶと、締切が決算日より前に来ます。
もうひとつ、設立のときに決めた資本金の額と第1期の長さが、消費税を払うかどうかを2期分まとめて決めてしまいます。とくに第1期を7か月以下にすると、第2期の判定に使う「特定期間」が条文上まるごと外れます(消費税法9条の2第4項2号)。以下、順に確認します。
会社設立の日は「登記した日」
会社法49条は「株式会社は、その本店の所在地において設立の登記をすることによって成立する」と定めています。定款を作った日でも、資本金を払い込んだ日でも、登記が完了して登記事項証明書が取れるようになった日でもなく、登記によって会社が成立します。
この「設立の日」を起点に、以下の税務書類の期限がすべて動きます。
なお登記そのものにも期限があります。会社法911条1項は、発起設立の場合、設立時取締役等による調査が終了した日と発起人が定めた日のうちいずれか遅い日から2週間以内に本店所在地で設立の登記をしなければならないと定めています。
設立後に税務署へ出す書類と期限
設立の日を起点に、期限が条文で定まっているものを整理すると次のようになります。
| 書類 | 期限 | 根拠 |
|---|---|---|
| 給与支払事務所等の開設届出書 | その事実があった日から1か月以内 | 所得税法230条 |
| 法人設立届出書 | 設立の日以後2か月以内 | 法人税法148条1項 |
| 会計期間の届出(定款に定めがない場合のみ) | 設立の日以後2か月以内 | 法人税法13条2項1号 |
| 青色申告の承認申請書 | 「設立の日以後3か月を経過した日」と「第1期の事業年度終了の日」のいずれか早い日の前日 | 法人税法122条2項1号 |
| 源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書 | 期限の定めなし(承認の効果が及ぶ範囲が提出時期で変わる) | 所得税法216条・217条 |
| 消費税の新設法人に該当する旨の届出書 | 速やかに | 消費税法57条2項 |
法人設立届出書について、法人税法148条1項は「定款の写しその他の財務省令で定める書類を添付し」と定めています。添付書類の範囲は財務省令に委ねられているため、何を付けるかは提出前に所轄の税務署で確認してください。
上の表は国税(税務署)に出すものだけです。法人住民税・法人事業税のための設立届出書を都道府県税事務所と市町村にも出す必要がありますが、こちらの期限は各自治体の条例で定められており、国税とは異なります。
青色申告の承認申請だけ、期限の決まり方が違う
法人税法122条1項の原則は「当該事業年度開始の日の前日まで」ですが、設立初年度は開始の日の前日に会社が存在しません。そこで2項1号が、設立の日の属する事業年度については提出期限を「設立の日以後3か月を経過した日」と「当該事業年度終了の日」とのうちいずれか早い日の前日に置き換えています。
ここで実務上の落とし穴になるのが、第1期を短くしたときです。具体例で確認します。
第1期は2026年8月14日から2026年9月30日までの約1.5か月です。「設立の日以後3か月を経過した日」は11月なので、早いのは第1期の事業年度終了の日である9月30日です。したがって青色申告の承認申請の期限は、その前日の2026年9月29日になります。
一方、法人設立届出書の期限は「設立の日以後2か月以内」なので10月です。つまり青色申告の承認申請のほうが、設立届出書より先に締切を迎えます。設立届を出しに行くタイミングで青色申告も一緒に、と考えていると間に合いません。
第1期が3か月以上あるなら早いのは①のほうで、「設立の日以後3か月を経過した日の前日」が期限です。いずれにしても「設立から3か月以内」と覚えていると、第1期が短い会社では間に合いません。
なお、設立の日から第1期の終了の日までが3か月に満たない場合には、第2期についても提出期限が延びます(法人税法122条2項4号)。この場合の期限は「設立等の日以後3か月を経過した日」と「翌事業年度終了の日」のうち早い日の前日です。第1期に間に合わなくても、第2期から青色申告に切り替える道は条文上残されています。
「3か月を経過した日」が具体的に何月何日になるかは期間計算の問題で、日単位で結論が変わります。上の例では②が明らかに早いため①を日付で特定する必要がありませんでした。①が先に来るケースで正確な日付が必要なときは、所轄の税務署に確認してください。
法人税の簡易計算 — 所得を入れて法人税と地方法人税を試算する消費税は資本金1,000万円「未満」で第1期が免税になる
消費税法9条1項は、基準期間における課税売上高が1,000万円以下の事業者について納税義務を免除しています。基準期間とは原則として2期前の事業年度なので、設立したばかりの会社には基準期間がなく、第1期・第2期は原則として免税になります。
ただし、これを打ち消す規定が消費税法12条の2です。事業年度開始の日における資本金の額または出資の金額が1,000万円「以上」である法人(新設法人)は、基準期間がない事業年度について免税の規定を適用しない、と定めています。
条文は「千万円以上である法人」です。資本金900万円なら免税、1,000万円ちょうどなら第1期から課税事業者になります。1円の差ではありませんが、資本金を「とりあえずキリのいい1,000万円」で登記すると、免税を2期分まるごと失うことになります。
また、この判定は事業年度開始の日で行われます。第1期の途中で増資して1,000万円以上になった場合、第1期の判定は動きませんが、第2期の開始の日に1,000万円以上であれば第2期は課税事業者になります。
新設法人に該当することとなった場合は、その旨を記載した届出書を速やかに納税地の所轄税務署長に提出しなければなりません(消費税法57条2項)。
第1期を7か月以下にすると、第2期の判定が外れる
資本金1,000万円未満で設立しても、第2期については別の関門があります。消費税法9条の2は、基準期間の課税売上高が1,000万円以下であっても、特定期間の課税売上高が1,000万円を超えるときは免税の規定を適用しないと定めています。
特定期間とは、法人の場合、原則として前事業年度開始の日以後6か月の期間です(9条の2第4項2号)。設立1期目の前半6か月で売上が1,000万円を超えると第2期は課税事業者になる——というのが、一般によくある説明です。
ただしこの2号は、対象となる前事業年度に条件を付けています。条文はこうです。
その事業年度の前事業年度(七月以下であるものその他の政令で定めるもの(次号において「短期事業年度」という。)を除く。)がある法人 当該前事業年度開始の日以後六月の期間
つまり前事業年度が7か月以下であれば、そもそも「特定期間」を持つ法人に当たりません。そして続く3号は、前事業年度が短期事業年度である場合には前々事業年度から特定期間を取ると定めていますが、設立2期目の会社に前々事業年度は存在しません。
第1期が7か月以下 → 第1期は「短期事業年度」に当たる → 第2期は9条の2第4項2号の対象外 → 3号により前々事業年度を見るが、設立2期目にはそれがない → 第2期に特定期間がなく、9条の2による課税転換が起きない、という流れになります。
結果として、資本金1,000万円未満で第1期を7か月以下に設定すると、第1期の売上がどれだけ大きくても、第1期と第2期の両方が原則として免税のまま進みます。決算月をどこに置くかという、一見すると事務都合の判断が、消費税の負担を2期分左右します。
9条の2第4項2号のかっこ書きは「七月以下であるものその他の政令で定めるもの」と書かれており、短期事業年度の範囲は消費税法施行令にも委ねられています。本記事で確認したのは法律の条文までです。実際に決算月を決めるにあたっては、政令の定めを含めて顧問税理士に確認してください。
なお特定期間の判定は、課税売上高に代えて給与等の支払額の合計額で行うこともできます(9条の2第3項)。条文は「することができる」=事業者が選べる形なので、課税売上高が1,000万円を超えていても給与等の支払額が1,000万円以下なら、給与のほうで判定して免税を維持する余地があります。
インボイス登録をすると、免税は使えなくなる
ここまでの免税は、すべて消費税法9条1項が出発点です。その9条1項の本文をもう一度読むと、対象者にかっこ書きが付いています。
事業者のうち、その課税期間に係る基準期間における課税売上高が千万円以下である者(適格請求書発行事業者を除く。)については、…消費税を納める義務を免除する。
つまりインボイス(適格請求書)の発行事業者として登録した時点で、免税の対象から外れます。資本金を900万円に抑えても、第1期を7か月以下にしても、インボイス登録をすれば第1期から課税事業者です。
インボイスを発行するとは消費税を預かって納める側に回るということなので、これ自体は当然の帰結です。ただし会社設立時の判断としては、「2期分の免税」と「取引先にインボイスを出せること」がトレードオフになるという形で現れます。取引先が課税事業者中心か消費者中心かで、答えは変わります。
源泉所得税の納期の特例は、申請した月には効かない
源泉徴収した所得税は原則として翌月10日までに納付しますが、給与の支払を受ける者が常時10人未満の事務所は、税務署長の承認を受けて年2回にまとめられます(所得税法216条)。
- 1月から6月までに支払った分 → 7月10日まで
- 7月から12月までに支払った分 → 翌年1月20日まで
この申請書には提出期限がありません。代わりに、いつ出したかによって特例が効き始める時期が変わります。所得税法217条5項は、申請書の提出があった日の属する月の翌月末日までに承認も却下もなかったときは、同日に承認があったものとみなすと定めています。
そして216条は、対象期間について「当該各期間のうちその承認を受けた日の属する期間については、その日の属する月から当該期間の最終月までの期間とする」というかっこ書きを置いています。
8月に申請書を出すと、217条5項により9月30日にみなし承認となります。承認を受けた日の属する月は9月なので、特例が適用されるのは9月から12月に支払った給与の分で、これを翌年1月20日までに納付します。
一方、8月に支払った給与から源泉徴収した所得税は特例の対象に入らず、原則どおり9月10日までに納付が必要です。「申請したから次からまとめて払えばいい」と考えていると、この1回分を納め忘れます。
設立直後は役員報酬の初回支払いと申請書の提出が近い時期に重なるため、特に取り違えやすいところです。
なお、会社をたたむときの期限は設立とは対照的な作りになっています。設立の届出は「設立の日から○か月以内」と後ろに向かって数えますが、清算の最後の確定申告は残余財産の確定の日の翌日から1か月以内で、しかも最後の分配を先に行うとその前日まで前倒しになります(法人税法74条2項)。入口と出口で期限の動く向きが逆です。詳しくは 会社の解散・清算の税務 をご覧ください。
よくある質問
Q. 会社設立の日はいつになりますか?
A. 設立の登記をした日です。会社法49条は「株式会社は、その本店の所在地において設立の登記をすることによって成立する」と定めており、定款を作成した日でも資本金を払い込んだ日でもありません。この設立の日を起点として、法人設立届出書の2か月、給与支払事務所等の開設届出書の1か月といった税務上の期限が数えられます。登記そのものについては、会社法911条1項が調査終了日と発起人が定めた日のいずれか遅い日から2週間以内と定めています。
Q. 青色申告の承認申請は設立から3か月以内でよいですか?
A. 第1期が3か月以上ある場合に限ります。法人税法122条2項1号が定める期限は「設立の日以後3か月を経過した日」と「設立第1期の事業年度終了の日」のうちいずれか早い日の前日です。第1期が3か月に満たない場合は事業年度終了の日のほうが早いため、決算日の前日が期限になります。たとえば2026年8月14日に設立して決算月を9月にすると、期限は2026年9月29日で、法人設立届出書の期限より先に来ます。
Q. 第1期に青色申告の申請が間に合わなかったらどうなりますか?
A. 第1期は白色申告になりますが、第2期から青色申告に切り替えることは可能です。とくに設立の日から第1期終了の日までが3か月に満たない場合には、法人税法122条2項4号により第2期の提出期限も「設立等の日以後3か月を経過した日」と「翌事業年度終了の日」のうち早い日の前日まで延びる取扱いが定められています。第1期が短い会社は、この号の対象になるかどうかを確認してください。
Q. 資本金はいくらにすると消費税で有利ですか?
A. 消費税法12条の2は、事業年度開始の日における資本金の額または出資の金額が1,000万円以上である法人について、基準期間がない事業年度の免税を適用しないと定めています。「以上」なので1,000万円ちょうどは課税事業者になり、900万円であれば対象外です。判定は事業年度開始の日で行うため、第1期の途中で増資しても第1期の結論は変わりませんが、第2期開始の日に1,000万円以上であれば第2期は課税事業者になります。
Q. 第1期を短くすると消費税が変わるというのは本当ですか?
A. 消費税法9条の2第4項2号は、特定期間を持つ法人を「その事業年度の前事業年度(七月以下であるものその他の政令で定めるものを除く。)がある法人」と定めています。前事業年度が7か月以下であればこの号の対象から外れ、続く3号は前々事業年度から特定期間を取ると定めていますが、設立2期目に前々事業年度はありません。結果として第2期に特定期間がなく、9条の2による課税転換が起きないことになります。ただし短期事業年度の範囲は政令にも委ねられているため、実際の決算月の決定は税理士に確認してください。
Q. インボイス登録をしても2期分の免税は使えますか?
A. 使えません。消費税法9条1項は免税の対象者を「基準期間における課税売上高が千万円以下である者(適格請求書発行事業者を除く。)」と定めており、適格請求書発行事業者として登録した事業者はかっこ書きで除かれます。資本金を1,000万円未満にしても、第1期を7か月以下にしても、インボイス登録をすれば第1期から課税事業者です。免税期間とインボイスを発行できることは、設立時点ではトレードオフの関係になります。
Q. 源泉所得税の納期の特例はいつから使えますか?
A. 申請書を出した月の翌月末日にみなし承認となり、その承認を受けた日の属する月からの支払分が対象です。所得税法217条5項は、提出のあった日の属する月の翌月末日までに承認も却下もなかったときは同日に承認があったものとみなすと定めており、216条のかっこ書きが対象期間を「その日の属する月から当該期間の最終月まで」としています。8月に申請すると9月30日にみなし承認となるため、対象は9月から12月の支払分で、8月支払分は原則どおり9月10日までの納付が必要です。
出典
- e-Gov法令検索「会社法」(平成十七年法律第八十六号)第25条(株式会社の設立の方法)・第49条(株式会社の成立。「株式会社は、その本店の所在地において設立の登記をすることによって成立する」)・第911条第1項(株式会社の設立の登記。「次に掲げる日のいずれか遅い日から二週間以内にしなければならない」)。API v2で取得(取得した版は 417AC0000000086_20260812_508AC0000000064、current_revision_status は CurrentEnforced)
- e-Gov法令検索「法人税法」(昭和四十年法律第三十四号)第13条第2項第1号(会計期間の届出。法令及び定款等に定めがない法人は設立の日以後「二月以内」)・第122条第1項(青色申告の承認の申請の原則。「当該事業年度開始の日の前日までに」)・第122条第2項第1号(設立の日の属する事業年度の提出期限。「同日以後三月を経過した日と当該事業年度終了の日とのうちいずれか早い日」の前日)・第122条第2項第4号(設立等の日から事業年度終了の日までの期間が三月に満たない場合の翌事業年度の期限)・第148条第1項(内国普通法人等の設立の届出。「その設立の日以後二月以内に」「定款の写しその他の財務省令で定める書類を添付し」)。API v2で取得(取得した版は 340AC0000000034_20260812_508AC0000000064、current_revision_status は CurrentEnforced)
- e-Gov法令検索「所得税法」(昭和四十年法律第三十三号)第216条(源泉徴収に係る所得税の納期の特例。「給与等の支払を受ける者が常時十人未満であるものに限る」、対象期間のかっこ書き「その承認を受けた日の属する期間については、その日の属する月から当該期間の最終月までの期間とする」、納付期限「七月十日」「翌年一月二十日」)・第217条第5項(みなし承認。「その申請書の提出があつた日の属する月の翌月末日までにその申請につき承認又は却下の処分がなかつたときは、同日においてその承認があつたものとみなす」)・第230条(給与等の支払をする事務所の開設等の届出。「その事実があつた日から一月以内に」)。API v2で取得(取得した版は 340AC0000000033_20260812_508AC0000000064、current_revision_status は CurrentEnforced)
- e-Gov法令検索「消費税法」(昭和六十三年法律第百八号)第9条第1項(小規模事業者に係る納税義務の免除。「基準期間における課税売上高が千万円以下である者(適格請求書発行事業者を除く。)」)・第9条の2第1項(特定期間における課税売上高による免除の特例)・第9条の2第3項(給与等の支払額による判定。「とすることができる」)・第9条の2第4項第2号(特定期間の定義。前事業年度から「七月以下であるものその他の政令で定めるもの(次号において「短期事業年度」という。)」を除く)・第9条の2第4項第3号(前事業年度が短期事業年度である場合に前々事業年度から取る旨)・第12条の2第1項(新設法人の納税義務の免除の特例。「当該事業年度開始の日における資本金の額又は出資の金額が千万円以上である法人」)・第57条第2項(新設法人に該当することとなった場合の届出。「速やかに」)。API v2で取得(取得した版は 363AC0000000108_20260401_508AC0000000012。なお同法は law_revisions に current_revision_status が CurrentEnforced の版が存在せず、施行日が到来している最新版はこの2026年4月1日施行版)
- 本文中の日付の例(2026年8月14日設立・決算月9月の場合に青色申告の承認申請の期限が2026年9月29日になること、8月申請の納期の特例が9月30日にみなし承認となり対象が9月から12月の支払分になること)は、上記の各条文の定めを当てはめて算出したもの
この記事は一般的な情報提供であり、個別の事案についての助言ではありません。届出の期限は条文で定まりますが、添付書類の範囲は財務省令に、短期事業年度の範囲は政令にそれぞれ委ねられており、本記事で確認したのは法律の条文までです。また法人住民税・法人事業税の設立届出の期限は自治体の条例によって異なります。資本金の額や決算月の決定は消費税の負担を複数期にわたって左右するため、具体的な設立の設計については顧問税理士または所轄の税務署にご確認ください。