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損益計算書の見方 — 条文が区分するのは7つの収益と費用。5つの利益は計算結果

結論から言うと、損益計算書は「7つの箱」と「5つの計算結果」でできています。会社計算規則88条1項が「区分して表示しなければならない」と挙げているのは、売上高・売上原価・販売費及び一般管理費・営業外収益・営業外費用・特別利益・特別損失の7つです。この7つに、利益は1つも入っていません。すべて収益か費用です。

よく言われる「5つの利益」は、89条から94条が差し引きの結果として定義しているものです。しかも条文上の名前は「利益」ではありません。売上総損益金額・営業損益金額・経常損益金額・税引前当期純損益金額・当期純損益金額という、利益とも損失とも決めていない中立の名前で定義されています。そのうえで、零以上なら利益金額、零未満なら零から減じた額を損失金額として表示するという2段構えになっています。

これは読み方に直結します。赤字の決算書では、項目名そのものが変わります。「営業利益 △120万円」ではなく「営業損失 120万円」という、マイナス記号のつかない正の数の項目になります。同じ1枚の損益計算書の中で、上の3つは「利益」、下の2つは「損失」と名乗ることも普通に起こります。

条文が「区分」と呼ぶ7つに、利益は1つも入っていない

損益計算書の作り方を決めているのは、会社法の委任を受けた法務省令である会社計算規則です。第三編第三章がまるごと損益計算書に充てられていて、87条から95条までがその中身です。まず87条が対象を定義しています。

損益計算書等(損益計算書及び連結損益計算書をいう。以下この編において同じ。)については、この章の定めるところによる。

単体と連結をまとめて「損益計算書等」と呼び、以下の条文はこの言葉で書かれています。そして区分を定めているのが88条1項です。

損益計算書等は、次に掲げる項目に区分して表示しなければならない。この場合において、各項目について細分することが適当な場合には、適当な項目に細分することができる。

ここに列挙されているのが次の7号です(号の数は e-Gov の法令データの木構造から数えたもので、7号ちょうどです)。

項目性格
売上高収益
売上原価費用
販売費及び一般管理費費用
営業外収益収益
営業外費用費用
特別利益収益
特別損失費用

六号と七号は「特別利益」「特別損失」という名前ですが、これは差し引きの結果ではなく、その期に発生した収益・費用そのものの区分です。固定資産を売って出た益や、減損で落とした額がここに入ります。差し引きで出てくる意味での「利益」は、7つの区分の中に存在しません。

第一号には括弧書きが付いていて、名前を変える余地が明示されています。

売上高(売上高以外の名称を付すことが適当な場合には、当該名称を付した項目。以下同じ。)

銀行や保険会社の損益計算書に「売上高」という行がなく「経常収益」となっているのは、この括弧書きに基づくものです。88条7項も「損益計算書等の各項目は、当該項目に係る収益若しくは費用又は利益若しくは損失を示す適当な名称を付さなければならない。」として、内容に合った名称を付けることを求めています。科目名が教科書と違っていても、それだけでは誤りとは言えません。

特別利益・特別損失には細分の義務がある88条2項は「特別利益に属する利益は、固定資産売却益、前期損益修正益、負ののれん発生益その他の項目の区分に従い、細分しなければならない。」と定めています。3項が特別損失について同じことを定めています。ただし4項に逃げ道があり、「前二項の規定にかかわらず、前二項の各利益又は各損失のうち、その金額が重要でないものについては、当該利益又は損失を細分しないこととすることができる。」とされています。中小企業の決算書で特別損失が1行にまとまっているのは、多くの場合この4項によるものです。

5つの利益の本名は「損益金額」— 符号で名前が変わる

では利益はどこで出てくるのか。89条から94条が、1条につき1つずつ定義しています。89条を見ます。

売上高から売上原価を減じて得た額(以下「売上総損益金額」という。)は、売上総利益金額として表示しなければならない。

定義されている量の名前は「売上総損益金額」で、表示する名前が「売上総利益金額」です。この2つは別物として書き分けられています。続く2項が、その理由を明かします。

前項の規定にかかわらず、売上総損益金額が零未満である場合には、零から売上総損益金額を減じて得た額を売上総損失金額として表示しなければならない。

マイナスのときは「零から減じて得た額」、つまり符号を反転させた正の数を、「売上総損失金額」という別の名前で表示します。90条(営業損益金額)・91条(経常損益金額)・92条(税引前当期純損益金額)・94条(当期純損益金額)も、まったく同じ2項構成です。

条文が定義する量零以上のときの表示零未満のときの表示
89条売上総損益金額売上総利益金額売上総損失金額
90条営業損益金額営業利益金額営業損失金額
91条経常損益金額経常利益金額経常損失金額
92条税引前当期純損益金額税引前当期純利益金額税引前当期純損失金額
94条当期純損益金額当期純利益金額当期純損失金額

計算の連鎖は、表示名ではなく符号を持ったままの「損益金額」で進みます。90条はこう書いています。

売上総損益金額から販売費及び一般管理費の合計額を減じて得た額(以下「営業損益金額」という。)は、営業利益金額として表示しなければならない。

引かれているのは「売上総利益金額」ではなく「売上総損益金額」です。91条も「営業損益金額に営業外収益を加えて得た額から営業外費用を減じて得た額」と書きます。赤字でも式がそのまま通るのは、この書き分けのおかげです。売上総損益金額がマイナス120万円なら、そのマイナス120万円を次の式にそのまま渡します。表示のときだけ、最後に名前を利益と損失に振り分けます。

88条1項が「区分」と呼ぶ7つ(収益・費用) 89〜94条が定義する損益金額 一 売上高 二 売上原価 = 売上総損益金額(89条) 三 販売費及び一般管理費 = 営業損益金額(90条) 四 営業外収益 五 営業外費用 = 経常損益金額(91条) 六 特別利益 七 特別損失 = 税引前当期純損益金額(92条) (93条 法人税等・調整額) = 当期純損益金額(94条) 零以上 → 「◯◯利益金額」 零未満 → 零から減じた額を 「◯◯損失金額」として表示 左は7つとも収益か費用。 差し引きの「利益」は 左側に1つも無い。
会社計算規則88条〜94条。左の7区分(収益・費用)から、右の5つの損益金額が計算結果として出てくる。表示名は符号で決まる。

実際に組んでみる — 上3つが「利益」、下2つが「損失」になる決算書

条文の順に数字を入れてみます。売上は立っていて本業も黒字だが、期末に固定資産の減損を計上した会社を想定します(金額は条文の構造を示すための仮のものです)。

区分・損益金額金額(円)根拠
売上高80,000,00088条1項1号
売上原価52,000,00088条1項2号
売上総利益28,000,00089条1項(零以上)
販売費及び一般管理費24,500,00088条1項3号
営業利益3,500,00090条1項(零以上)
営業外収益200,00088条1項4号
営業外費用900,00088条1項5号
経常利益2,800,00091条1項(零以上)
特別利益(固定資産売却益)300,00088条1項6号・2項
特別損失(減損損失)4,300,00088条1項7号・3項
税引前当期純損失1,200,00092条2項(零未満)
法人税、住民税及び事業税400,00093条1項1号
当期純損失1,600,00094条2項(零未満)

税引前のところで符号が反転します。経常損益金額2,800,000円に特別利益300,000円を加え、特別損失4,300,000円を減じると△1,200,000円です。零未満なので92条2項が働き、「零から税引前当期純損益金額を減じて得た額」=1,200,000円を、税引前当期純損失金額として表示します。表の数字にマイナス記号が付いていないのはそのためです。

最後の行も同じです。当期純損益金額は△1,200,000円−400,000円=△1,600,000円なので、94条2項により1,600,000円を当期純損失金額として表示します。この1枚の中で、売上総利益・営業利益・経常利益の3つは「利益」と名乗り、税引前当期純損失・当期純損失の2つは「損失」と名乗ります。「利益」の行が並んでいるからといって、その決算が黒字とは限りません。

赤字でも法人税等の行が立つ上の例では税引前が赤字でも法人税等が400,000円あります。法人住民税の均等割のように所得と無関係に課される税が含まれるためです。93条1項1号は「当該事業年度に係る法人税等」としか書いておらず、内訳を条文が定めているわけではありません。表示科目としては「法人税、住民税及び事業税」がよく用いられます。
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税引前の次に来る項目 — 法人税等、調整額、そして国際最低課税額

93条1項は、税引前当期純利益金額(または損失金額)の次に表示する項目を定めています。号の数は2つです。

項目
当該事業年度(連結損益計算書にあっては、連結会計年度)に係る法人税等
法人税等調整額(税効果会計の適用により計上される前号に掲げる法人税等の調整額をいう。)

2号の括弧書きが、法人税等調整額とは何かを条文の中で定義しています。

法人税等調整額(税効果会計の適用により計上される前号に掲げる法人税等の調整額をいう。)

そのうえで93条2項に、多くの解説書がまだ扱っていない項目があります。グローバル・ミニマム課税に対応する表示です。

2項は、法人税法82条の2に規定する国際最低課税額に対する法人税その他これに関連する金額を課税標準として課される租税を「国際最低課税額に対する法人税等」と定義し、その金額があるときは1号の次に、内容を示す名称を付した項目(国際最低課税額項目)として表示することができると定めています。義務ではなく任意の別掲です。適用対象は大規模な多国籍企業グループに限られるため、中小企業の損益計算書には通常現れませんが、「税引前の下は法人税等と調整額の2行だけ」とは条文上は言えないことになります。

さらに3項は、更正・決定等による納付税額または還付税額があるときは、1号の項目および国際最低課税額項目の次に、内容を示す名称を付した項目として表示するものとしています。ただし書で「これらの金額の重要性が乏しい場合は、同号に掲げる項目又は国際最低課税額項目の金額に含めて表示することができる。」とされているため、重要でなければ法人税等に含めてしまってかまいません。

当期純損益金額の式には、還付税額と納付税額が別建てで入る

最後の当期純損益金額は、「税引前から法人税等を引いた額」と説明されることが多いのですが、94条1項の式はもう少し細かく、4つの号を足し引きします。

第一号及び第二号に掲げる額の合計額から第三号及び第四号に掲げる額の合計額を減じて得た額(以下「当期純損益金額」という。)は、当期純利益金額として表示しなければならない。
内容式での扱い
税引前当期純損益金額加える
更正・決定等による還付税額(重要性が乏しく法人税等に含めた場合を除く)加える
93条1項各号の金額(国際最低課税額項目を表示したときはその金額を含む)減じる
更正・決定等による納付税額(同上)減じる

2号の条文は次のとおりです。

前条第三項に規定する場合(同項ただし書の場合を除く。)において、還付税額があるときは、当該還付税額

ここで注意したいのは1号が参照しているのが「税引前当期純損益金額」だという点です。表示上は「税引前当期純損失 1,200,000」という正の数になっていても、式に入るのは△1,200,000です。前節の計算で△1,200,000から400,000を引いて△1,600,000になったのは、この参照のしかたによります。表示された正の数をそのまま足し引きすると符号を間違えます。

販管費の中身は損益計算書に載らない — 明細は附属明細書へ

貸借対照表の側では、74条3項が流動資産や有形固定資産の中身をイロハで20項目前後ずつ列挙しています。ところが損益計算書の側は事情が違います。会社計算規則は、販売費及び一般管理費の中身を1つも列挙していません。

実際に全文112,442字を検索すると、「販売費及び一般管理費」は4か所に出てくるだけで、その内訳として実務で使われる科目名は条文に現れません。

会社計算規則での出現回数
販売費及び一般管理費4回(88条1項3号・90条1項・117条3号・143条1項4号)
給料0回
役員報酬0回
広告宣伝費0回
減価償却費0回
旅費0回
受取利息0回

営業外収益の中身(受取利息・受取配当金など)も同様に、条文には列挙がありません。88条1項の柱書が「各項目について細分することが適当な場合には、適当な項目に細分することができる。」とできるで書いているとおり、細分は原則として任意です(特別利益・特別損失だけが2項・3項で細分義務の対象です)。

では販管費の内訳はどこに載るのか。損益計算書ではなく、附属明細書です。117条は、各事業年度に係る株式会社の計算書類に係る附属明細書に表示すべき事項を掲げており、公開会社以外の株式会社であっても1号から3号は必要とされています。その3号がこれです。

販売費及び一般管理費の明細

1号が「有形固定資産及び無形固定資産の明細」、2号が「引当金の明細」です。損益計算書に販管費が1行でしか出ていないからといって、内訳の開示が不要というわけではありません。計算書類の一部である附属明細書の側に回っているだけです。

売上原価をどう分けるか、確定していない原価をどう扱うかは、会社計算規則の表示区分とは別に、法人税法の側にも規定があります。売上原価とは — 確定していない原価は「見積るものとする」で条文にあたっています。
この「条文が科目名を列挙していない」という性質は、経営分析にそのまま効いてきます。会社計算規則にも財務諸表等規則にも「変動費」「固定費」「限界利益」という語自体が1回も出てきません。88条や70条の区分はどの業務で発生したかで切られていて、売上に連動するかどうかでは切られていないためです。だから損益分岐点は決算書を読むだけでは出ず、費用を並べ替える作業から始まります。損益分岐点の求め方 — 決算書には「変動費」も「固定費」も1回も出てこないで、条文の実測と実数の計算を扱っています。

公告する「要旨」では、利益が区分に入る

決算公告で使う「損益計算書の要旨」は、143条が別に定めています。そしてここでは、88条と違って利益が区分の中に入っています。143条1項の号は8つです。

143条(公告する要旨)88条(損益計算書本体)
売上高売上高
売上原価売上原価
売上総利益金額又は売上総損失金額(該当なし)
販売費及び一般管理費販売費及び一般管理費
営業外収益営業外収益
営業外費用営業外費用
特別利益特別利益
特別損失特別損失

3号に「売上総利益金額又は売上総損失金額」が区分として立っています。「又は」で両方の名前を条文が並べているところに、符号で名前が変わる仕組みがそのまま出ています。

そして143条7項は、この記事のここまでの話を条文自身が表にしたようなものです。柱書はこう書いています。

次の各号に掲げる額が存する場合には、当該額は、当該各号に定めるものとして表示しなければならない。ただし、次の各号に掲げる額(第九号及び第十号に掲げる額を除く。)が零未満である場合は、零から当該額を減じて得た額を当該各号に定めるものとして表示しなければならない。

そのうえで12の号が、売上総損益金額(零以上の額に限る。)→売上総利益金額、売上総損益金額(零未満の額に限る。)→売上総損失金額……という対応を、5つの損益金額すべてについて機械的に並べています。除外されている9号・10号は法人税等と法人税等調整額で、この2つだけは符号反転の対象外です。法人税等調整額はマイナスで表示されることがあるためです。

公告の金額は円単位ではない144条1項は「貸借対照表の要旨又は損益計算書の要旨に係る事項の金額は、百万円単位又は十億円単位をもって表示するものとする。」と定めています。官報や自社サイトの決算公告で見る数字が円単位でないのはこのためで、先ほどの例の売上高80,000,000円は「80」(百万円単位)と表示されます。決算公告の数字を自社の帳簿と突き合わせるときは、まず単位を確かめる必要があります。

なお142条は、貸借対照表の要旨には当期純損益金額を付記しなければならないとしたうえで、損益計算書の要旨を公告する場合はこの限りでないとしています。貸借対照表の見方の側にも、当期純損益金額が顔を出す形になっています。

連結だけ名前が違うところ

92条1項は、税引前当期純利益金額について括弧書きで「(連結損益計算書にあっては、税金等調整前当期純利益金額)」としています。単体では「税引前」、連結では「税金等調整前」と、同じ位置の項目の名前が変わります。この点はキャッシュフロー計算書を間接法で作るときの出発点にも関わるので、キャッシュフロー計算書とはで扱っています。

連結固有の規定は他にもあります。88条5項は、連結会社が2以上の異なる種類の事業を営んでいる場合、連結損益計算書の1号から3号(売上高・売上原価・販売費及び一般管理費)を事業の種類ごとに区分することができるとしています。88条6項は、資産に計上されたのれんの償却額と負債に計上されたのれんの償却額が生じる場合(これらの償却額が重要である場合を除く)、および持分法による投資利益と投資損失が生じる場合に、相殺した後の額を表示することができるとしています。

94条3項・4項は、連結損益計算書について当期純利益金額または当期純損失金額の次に非支配株主に帰属する額を表示し、それを加減した額を「親会社株主に帰属する当期純利益金額」として表示することを定めています。連結の損益計算書がいちばん下で2段階に分かれているのは、この4項によるものです。

章の構成上は87条から95条までが損益計算書等ですが、95条は「削除」です。条番号は改正で中身が抜けても欠番にせず残すのが立法の作法で、条数を数えるときの落とし穴になります。

よくある質問

Q. 「5つの利益」という言い方は間違いですか?

A. 実務の説明としては通っていますが、条文の言葉ではありません。会社計算規則89条から94条が定義しているのは売上総損益金額・営業損益金額・経常損益金額・税引前当期純損益金額・当期純損益金額の5つで、いずれも「利益」とも「損失」とも決めていない中立の名前です。そのうえで各条の1項が零以上のときの表示名を、2項が零未満のときの表示名を定めており、零未満のときは「零から当該額を減じて得た額」を損失金額として表示します。したがって同じ会社の同じ決算書でも、上の段は「営業利益」、下の段は「当期純損失」というように名前が混在することがあります。5つという数え方は正しく、それぞれが常に「利益」と呼ばれるわけではない、という理解が条文に沿っています。

Q. 決算書で「営業損失」と書かれていたら、マイナスを付けて読むのですか?

A. 表示されている数字はすでに正の数なので、そのまま損失額として読みます。会社計算規則90条2項は、営業損益金額が零未満である場合には「零から営業損益金額を減じて得た額を営業損失金額として表示しなければならない」と定めています。△120万円ではなく120万円という正の数を、営業損失という名前の項目として載せる、という趣旨です。ただし計算に使うときは注意が必要で、94条1項1号が参照しているのは表示された正の数ではなく符号を持ったままの税引前当期純損益金額です。表示上の正の数をそのまま足し引きすると符号を誤ります。実務では△や▲を付けて表示することもありますが、その場合も名称は損失金額のままです。

Q. 販売費及び一般管理費の内訳は、損益計算書に書かなくてよいのですか?

A. 損益計算書の側では細分は任意ですが、附属明細書には明細が必要です。会社計算規則88条1項の柱書は「各項目について細分することが適当な場合には、適当な項目に細分することができる」と定めており、細分を義務づけているのは特別利益・特別損失についての2項・3項だけです。一方で117条は附属明細書に表示すべき事項を掲げ、3号に「販売費及び一般管理費の明細」を置いています。1号から3号は公開会社以外の株式会社でも必要とされる事項です。なお会社計算規則の条文には給料・広告宣伝費・減価償却費といった具体的な科目名は現れず、全文を検索してもいずれも0回です。どの科目を立てるかは条文ではなく実務と会計基準の領域になります。

Q. 売上高の代わりに「営業収益」と書いてある決算書は誤りですか?

A. 誤りとは言えません。会社計算規則88条1項1号は「売上高(売上高以外の名称を付すことが適当な場合には、当該名称を付した項目。以下同じ。)」と括弧書きを置いており、内容に照らして適当であれば別の名称を用いることが認められています。同条7項も「損益計算書等の各項目は、当該項目に係る収益若しくは費用又は利益若しくは損失を示す適当な名称を付さなければならない」として、内容に合った名称を付すことを求めています。銀行業や保険業で「経常収益」、サービス業などで「営業収益」といった名称が用いられるのはこれによります。名称が違っても、89条以降の計算の連鎖における位置づけは変わりません。

Q. 税引前当期純利益の下は、法人税等と法人税等調整額の2行だけですか?

A. その2つが原則ですが、条文上はさらに2種類の項目があり得ます。会社計算規則93条1項が挙げる号は2つで、1号が当該事業年度に係る法人税等、2号が法人税等調整額です。これに加えて同条2項が、法人税法82条の2に規定する国際最低課税額に対する法人税等の金額があるときに、1号の次に内容を示す名称を付した項目として表示することができると定めています。さらに3項は、更正・決定等による納付税額または還付税額があるときにその次に別項目として表示するものとし、ただし書で重要性が乏しい場合は法人税等に含めてよいとしています。国際最低課税額の項目は大規模な多国籍企業グループに関わるもので、中小企業の損益計算書に現れることは通常ありません。

Q. 決算公告で見る損益計算書が簡素なのはなぜですか?

A. 公告に使うのは損益計算書そのものではなく「要旨」で、別の条文が形を定めているためです。会社計算規則143条1項は損益計算書の要旨を8項目に区分するとしており、2項は営業外収益または営業外費用の額が重要でないときにこれらを区分せず差額を営業外損益として区分できるとし、3項は特別利益・特別損失について同様に特別損益としてまとめられるとしています。また144条1項は要旨の金額を百万円単位または十億円単位で表示するものとしています。損益計算書本体の88条が7区分であるのに対し要旨が8区分になっているのは、要旨の3号に「売上総利益金額又は売上総損失金額」が入っているためです。

Q. 連結損益計算書はどこが違いますか?

A. 名称と、いちばん下の段の構成が違います。会社計算規則92条1項は括弧書きで、連結損益計算書における税引前当期純利益金額を「税金等調整前当期純利益金額」としています。94条3項は連結損益計算書について、当期純利益金額または当期純損失金額の次に、そのうち非支配株主に帰属するものを表示することを求め、4項がそれを加減した額を親会社株主に帰属する当期純利益金額または当期純損失金額として表示するとしています。このほか88条5項は2以上の異なる種類の事業を営む場合に売上高・売上原価・販売費及び一般管理費を事業の種類ごとに区分できるとし、6項はのれんの償却額や持分法による投資損益について相殺後の額を表示できるとしています。

Q. 中小企業の損益計算書で特別損失が1行だけなのは問題ありませんか?

A. 金額の重要性が乏しければ条文が認めています。会社計算規則88条3項は、特別損失に属する損失を固定資産売却損・減損損失・災害による損失・前期損益修正損その他の項目の区分に従って細分しなければならないと定めていますが、続く4項が「前二項の規定にかかわらず、前二項の各利益又は各損失のうち、その金額が重要でないものについては、当該利益又は損失を細分しないこととすることができる」としています。したがって重要性が乏しい特別損失については細分せずに表示することが認められます。何をもって重要とするかは条文が数値で定めておらず、会社の規模や利益水準との関係で判断することになります。

出典

本記事は一般的な情報提供を目的としたものです。個別の判断は税務署・税理士にご確認ください。

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