勘定科目一覧|法令の区分・名称・細分表示のルール
勘定科目の名称には選択の余地がありますが、法令には指定された区分や掲記科目もあります。会社計算規則は、貸借対照表の資産・負債・純資産の区分と必要な細分、内容を示す適当な名称に加え、損益計算書の表示も定めています。個々の項目に付ける名前について、条文はこう書いています。
資産の部又は負債の部の各項目は、当該項目に係る資産又は負債を示す適当な名称を付さなければならない。
「適当な名称」です。損益計算書は88条1項の7区分に加え、2項・3項により特別利益・特別損失を固定資産売却益・減損損失等に細分し、4項により重要でないものは細分を省略でき、各項目には7項により内容を示す適当な名称を付します。念押しのように、条文は「売上高」という一番動かせなさそうな科目についてすら、名前を変えてよいと書いています(88条1項1号)。
売上高(売上高以外の名称を付すことが適当な場合には、当該名称を付した項目。以下同じ。)
ですから「正しい勘定科目一覧」というものは存在しません。存在するのは「この資産・負債・収益・費用は、どの区分に載せなければならないか」の一覧です。会社計算規則が名指ししている項目を区分ごとに並べます。実務で毎日使う旅費交通費・消耗品費・支払手数料・車両運搬具は、会社計算規則が決めた科目名ではなく、「適当な名称」の側です。
貸借対照表の階層と、内容を示す適当な名称
会社計算規則73条1項は、貸借対照表を「資産」「負債」「純資産」の3つの部に区分せよと定めます。その下の階層も条文が決めています。74条1項は資産の部を次のように割ります。
資産の部は、次に掲げる項目に区分しなければならない。…一 流動資産 二 固定資産 三 繰延資産
さらに74条2項が固定資産を有形固定資産・無形固定資産・投資その他の資産の3つに割り、75条1項が負債の部を流動負債・固定負債に割ります。ここまでが「動かせない骨格」です。個々の項目には内容を示す適当な名称を付し、株主資本の内訳など条文が指定する区分も守ります。
貸借対照表:会社計算規則の主な項目(株式会社の個別)
とはいえ、条文は何も例を挙げていないわけではありません。74条3項と75条2項は「この資産はこの区分に属する」という形で、具体的な項目を列挙しています。ここに出てくる名前は、法令が実際に使っている項目名です。下表は株式会社の個別貸借対照表を中心とした主な項目で、連結の退職給付に係る資産・負債、非支配株主持分や持分会社の社員資本などは省略しています。
| 区分 | 条文が挙げている項目(会社計算規則74条3項・75条2項・76条) |
|---|---|
| 流動資産 | 現金及び預金(一年内に期限の到来しない預金を除く)/受取手形・売掛金(通常の取引によるもの。ただし破産更生債権等で一年内に弁済を受けられないことが明らかなものを除く)/所有権移転ファイナンス・リースのリース債権・所有権移転外ファイナンス・リースのリース投資資産(通常取引によるものは破産更生債権等で一年内に回収されないことが明らかなものを除く。通常取引以外は一年内に期限が到来するもの)/売買目的有価証券および一年内に満期の到来する有価証券/商品/製品、副産物及び作業くず/半製品/原料及び材料/仕掛品及び半成工事/消耗品、消耗工具、器具及び備品その他の貯蔵品であって相当な価額以上のもの/前渡金(商品・原材料等の購入用。ただし破産更生債権等で一年内に弁済を受けられないことが明らかなものを除く)/前払費用であって一年内に費用となるべきもの/未収収益/その他の資産であって一年内に現金化することができると認められるもの |
| 有形固定資産 | 建物及び暖房、照明、通風等の付属設備/構築物/機械及び装置ならびに搬送設備その他の付属設備/船舶及び水上運搬具/鉄道車両、自動車その他の陸上運搬具/工具、器具及び備品(耐用年数が一年以上のものに限る)/土地/使用権資産(リース対象が74条3項2号イ〜ト・ヌの資産である場合)/建設仮勘定(事業用の同号イ〜トの資産の建設支出・材料)/その他の有形資産(建物から使用権資産までは事業の用に供するものに限る) |
| 無形固定資産 | 特許権/借地権(地上権を含む)/商標権/実用新案権/意匠権/鉱業権/漁業権(入漁権を含む)/ソフトウエア/のれん/使用権資産(リース対象が74条3項3号イ〜ホ・ト・チ・ルの資産である場合)/その他の無形資産 |
| 投資その他の資産 | 関係会社の株式(売買目的有価証券を除く)その他流動資産に属しない有価証券/出資金/長期貸付金/前払年金費用/繰延税金資産/リース債権・リース投資資産のうち流動資産に属さないもの/使用権資産(リース対象が74条3項4号リ・ヌの資産である場合)/その他の資産 |
| 繰延資産 | 繰延資産として計上することが適当であると認められるもの(※個別の名称は挙げられていない) |
| 流動負債 | 支払手形/買掛金/前受金/引当金(資産に係るもの・一年内に使用されないものを除く)/通常の取引に関連して発生する未払金又は預り金で一般の取引慣行として発生後短期間に支払われるもの/未払費用/前受収益/リース負債のうち一年内に期限が到来するもの/資産除去債務のうち一年内に履行されると認められるもの/その他の負債で一年内に支払われ又は返済されると認められるもの |
| 固定負債 | 社債/長期借入金/引当金(資産に係るもの・流動負債の引当金・退職給付引当金を除く)/退職給付引当金/繰延税金負債/のれん/リース負債・資産除去債務(流動負債に属するものを除く)/その他の負債(流動負債に属しないもの) |
| 純資産 | 株式会社の個別:株主資本(資本金/新株式申込証拠金/資本剰余金=資本準備金・その他資本剰余金/利益剰余金=利益準備金・その他利益剰余金/自己株式/自己株式申込証拠金)/評価・換算差額等(その他有価証券評価差額金/繰延ヘッジ損益/土地再評価差額金ほか)/株式引受権/新株予約権。連結では非支配株主持分等、持分会社では社員資本等の別区分を用います。 |
「車両運搬具」は条文には無い
会社計算規則の有形固定資産の列挙は「鉄道車両、自動車その他の陸上運搬具」です。多くの会計ソフトが初期科目として用意している「車両運搬具」という名前は、この条文にも、後で見る財務諸表等規則にも、所得税法施行規則にも出てきません。それでも「車両運搬具」で問題がないのは、73条2項が名前を「適当な名称」に委ねているからです。名前が条文と違うことは誤りではありません。有形固定資産への区分に加え、必要な細分と資産の内容を示す適当な名称が必要です。
損益計算書:7つの区分と、5つの利益
損益計算書は88条1項が7つの区分を固定します。売上高/売上原価/販売費及び一般管理費/営業外収益/営業外費用/特別利益/特別損失の7つです。この7区分を基本とし、適当な項目への細分や、連結会社が複数事業を営む場合の事業の種類ごとの区分も認められます。動かせないぶん、そこから機械的に5つの利益が出てきます。
| 利益 | 計算 | 根拠 |
|---|---|---|
| 売上総利益金額 | 売上高 − 売上原価 | 89条 |
| 営業利益金額 | 売上総損益金額 − 販売費及び一般管理費 | 90条 |
| 経常利益金額 | 営業損益金額 + 営業外収益 − 営業外費用 | 91条 |
| 税引前当期純利益金額 | 経常損益金額 + 特別利益 − 特別損失 | 92条 |
| 当期純利益金額 | 税引前当期純損益金額 − 法人税等 − 法人税等調整額(更正等の還付・納付税額や国際最低課税額項目がない通常の場合) | 93条・94条 |
特別利益・特別損失については、条文が中身を例示している珍しい箇所です。88条2項は特別利益を「固定資産売却益、前期損益修正益、負ののれん発生益その他の項目の区分に従い」細分せよと定め、3項は特別損失を「固定資産売却損、減損損失、災害による損失、前期損益修正損その他の項目の区分に従い」細分せよと定めます。ただし4項があり、金額が重要でないものは細分しなくてよいとされています。
一方、販売費及び一般管理費については、会社計算規則は中身を1つも挙げていません。「販売費及び一般管理費」という区分名があるだけです。日々の記帳でいちばん科目数が多くなるのがこの区分なのに、法令側は空白になっています。
旅費交通費など、条文に名称がない実務上の科目もある
旅費交通費・通信費・消耗品費は、会社計算規則・財務諸表等規則・所得税法施行規則のいずれにも出てきません。
| 科目名 | 会社計算規則 | 財務諸表等規則 | 所得税法施行規則 |
|---|---|---|---|
| 売掛金 | 1 | 9 | 7 |
| 買掛金 | 1 | 8 | 2 |
| 前渡金 | 4 | 3 | 0 |
| 前払費用 | 1 | 5 | 2 |
| 未払法人税等 | 0 | 7 | 0 |
| 短期借入金 | 0 | 10 | 0 |
| 建設仮勘定 | 1 | 2 | 1 |
| ソフトウエア | 1 | 2 | 0 |
| 車両運搬具 | 0 | 0 | 0 |
| 旅費交通費 | 0 | 0 | 0 |
| 通信費 | 0 | 0 | 0 |
| 消耗品費 | 0 | 0 | 0 |
| 水道光熱費 | 0 | 0 | 0 |
| 接待交際費 | 0 | 0 | 0 |
| 会議費 | 0 | 0 | 0 |
| 広告宣伝費 | 0 | 0 | 0 |
| 福利厚生費・法定福利費 | 0 | 0 | 0 |
| 支払手数料 | 0 | 0 | 0 |
| 役員報酬 | 0 | 0 | 0 |
| 雑費・雑収入 | 0 | 0 | 0 |
| 仮払金・仮受金・立替金 | 0 | 0 | 0 |
| 荷造運賃 | 0 | 0 | 0 |
| 地代家賃 | 0 | 0 | 1(47条の3) |
| 減価償却費 | 0 | 本則2回/附則を含む全文4回 | あり(47条の3) |
読み取れることは2つあります。第一に、貸借対照表に載る科目には法令上の名前があるものが多く、損益計算書の費用科目にはほとんど無いということ。第二に、経理担当者が1日のうちに何十回も打ち込む費目ほど、法令には1文字も書かれていないということです。旅費交通費も消耗品費も支払手数料も、慣行として定着した名前であって、条文に根拠を持つ名前ではありません。
財務諸表等規則が参照している様式第五号(貸借対照表)・様式第六号(損益計算書)は、規則本文とは別です。国税庁が配布する青色申告決算書・収支内訳書の用紙に費目が印字されていても、それは法令ではなく様式です。条文に無い名前でも、区分が合っていれば使えます。
「勘定科目」という言葉自体が、計算書類の条文には出てこない
もう一段だけ踏み込みます。「勘定科目」という語は、会社計算規則の全文に7回しか出てきません。そしてその7回は、149条・150条・156条・157条・158条・附則5条に集中しています。これらはすべて剰余金の分配可能額の計算に関する条文で、会社法446条・461条が「法務省令で定める各勘定科目に計上した額の合計額」と書いていることを受けたものです。
つまり、貸借対照表と損益計算書の作り方を定めた73条〜98条には「勘定科目」という語がありません。そこで使われている言葉は「項目」と「適当な名称」です。財務諸表等規則も「勘定科目」ではなく「科目」と書きます。
各制度では、名称や区分を定める文言が異なります。会社計算規則は「表示すべき項目」を定める規則であって、帳簿の科目を定める規則ではないからです。帳簿で何という名前の勘定を立てるかは会計帳簿の問題(会社法432条1項)で、計算書類にどう区分して載せるかとは層が違います。「勘定科目一覧」を探して条文にたどり着かないのは、探し方が悪いからではなく、条文がそこを決めていないからです。
流動と固定の分かれ目は「1年」だけではない
区分が条文で決まっている以上、実務で本当に迷うのは名前ではなく「どっちの区分に置くか」です。そして流動・固定の判定は、よく言われる「1年以内かどうか」だけではありません。条文は2つの基準を書き分けています。
ひとつは取引の性質による基準です。74条3項1号ロは「通常の取引」をこう定義します。
通常の取引(当該会社の事業目的のための営業活動において、経常的に又は短期間に循環して発生する取引をいう。以下この章において同じ。)
売掛金は「通常の取引に基づいて発生した事業上の未収金」(74条3項1号ハ)と定義され、除外されるのは破産更生債権等で一年内に弁済を受けられないことが明らかなものだけです。売掛金・受取手形は通常の取引から生じたものなら回収が1年を超えても流動資産ですが、破産更生債権等で一年内に弁済されないことが明らかなものを除きます。買掛金も同じで、条文の定義はこうです。
買掛金(通常の取引に基づいて発生した事業上の未払金をいう。)
一年基準は、前払費用が一年内に費用となるか、リース負債の期限が一年内に到来するかなどにも用い、通常の取引に関するものでも項目別の条件を確認します。74条3項1号タの「その他の資産であって、一年内に現金化することができると認められるもの」がそれです。なお「一年内」の起算日も条文が定義しており(74条4項)、事業年度に係る貸借対照表であれば事業年度の末日の翌日から数えます。決算日当日から数えるのではありません。
個々の科目の見分け方は、未払費用と未払金と買掛金の違いと売掛金と未収入金と未収収益の違いで詳しく扱っています。この記事は全体の見取り図の側を担当し、個別の判定はそちらに譲ります。
財務諸表等規則の適用対象と、条文にある掲記科目
ここまでは会社計算規則、つまりすべての株式会社に適用されるルールの話でした。有価証券報告書を提出する会社には、これとは別に財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則(財務諸表等規則)がかかります。そしてこちらは科目名を条文が名指しします。
流動資産に属する資産は、次に掲げる項目の区分に従い、当該資産を示す名称を付した科目をもつて掲記しなければならない。
この後に、現金及び預金/受取手形/売掛金/契約資産/リース債権/リース投資資産/有価証券/商品及び製品/仕掛品/原材料及び貯蔵品/前渡金/前払費用/その他、という13項目が並びます(17条1項。「契約資産」は3号の2として追加された号です)。同じ形で、有形固定資産10項目(23条1項)、無形固定資産14項目(27条)、投資その他の資産15項目(32条1項)、流動負債15項目(49条1項。7号の2が「契約負債」)、固定負債10項目(52条1項)が指定されています。貸借対照表は様式第五号、損益計算書は様式第六号によることも決まっています(11条2項・69条2項)。
さらに財務諸表等規則には、「別に書き出すかどうか」を金額の割合で決める条文があります。これは会社計算規則には無い発想です。
| 基準 | 内容 | 条文 |
|---|---|---|
| 資産総額の5%超 | 「その他」に含めた流動資産(未収収益・短期貸付金・株主役員従業員に対する短期債権など)は別に掲記 | 19条 |
| 負債・純資産合計の5%超 | 「その他」に含めた流動負債/固定負債は別に掲記。未払配当金・期限経過の未償還社債も同じ | 49条1項ただし書・50条・53条 |
| 販管費合計の10%超 | 販管費を一括掲記する場合の「主要な費目」。減価償却費と引当金繰入額は金額が少額でなければ常に主要な費目 | 85条2項 |
| 営業外収益・費用の総額の10%以下 | 一括表示が適当と認められるものは一括できる | 90条ただし書・93条1項ただし書 |
| 売上高総額の20%超 | 関係会社に対する売上高は注記 | 74条 |
財務諸表等規則85条は販管費を適当な費目に分類して掲記するか、一括掲記して主要な費目と金額を注記することを求めています。85条1項はこう書くだけです。
販売費及び一般管理費は、適当と認められる費目に分類し、当該費用を示す名称を付した科目をもつて掲記しなければならない。
「適当と認められる費目」。85条2項は、少額でない減価償却費・引当金繰入額と、それ以外で販管費合計の10%を超える費目を主要な費目とし、適用対象は上場の有無だけでは決まりません。
個人事業主の必要経費は、条文で10区分を列挙
個人事業主には会社計算規則も財務諸表等規則も適用されません。代わりに所得税法施行規則47条の3が、確定申告書に添付する内訳書の区分を定めています。必要経費側はこうです。
必要経費については、商品製品等の売上原価、年初において有する農産物の棚卸高、雇人費、小作料、外注工賃、減価償却費、貸倒金、地代家賃、利子割引料及びその他の経費の別
青色申告決算書の損益計算書には20を超える費目が印字されていますが、条文が名前を与えているのはこの9つだけで、残りは「その他の経費」に含まれます。旅費交通費も消耗品費も水道光熱費も接待交際費も、条文には出てきません。しかも同条は続けてこう書いています。
その業種、業態、規模等の状況からみて当該項目により難い項目については、当該項目に準ずる他の項目によることができるものとする。
個人事業主の側でも、条文自身が費目の差し替えを認めているわけです。株式会社の「適当な名称」、上場企業の「適当と認められる費目」、個人事業主の「準ずる他の項目」。各制度の要件は異なり、所得税法施行規則の代替項目は業種・業態・規模等から既定の項目により難い場合に限られます。
法人税の簡易計算 — 決算書の当期純利益から法人税・地方法人税・住民税・事業税を試算する実務の落とし穴 — 表記ゆれ、科目の作りすぎ、未払法人税等の中身
1. ソフトウエアかソフトウェアか。会社計算規則74条3項3号チも財務諸表等規則27条11号も、表記は「ソフトウエア」(小さい「ェ」ではない)です。会計ソフトの初期科目が「ソフトウェア」になっていることもあり、社内で表記が割れます。どちらでも計算書類として誤りではありませんが、同じ会社の中で年度をまたいで表記が揺れるのは避けたほうがよいでしょう。財務諸表等規則8条の2第2項は、同一内容の事項について正当な理由による変更を除き同一の表示方法を継続して採用することを求めています。
2. 科目を増やしすぎる。名前が自由だからといって細分すればよいわけではありません。会社計算規則88条4項は特別利益・特別損失について「金額が重要でないものについては、細分しないこととすることができる」と明示しています。財務諸表等規則90条・93条は、各収益・費用がそれぞれ営業外収益・営業外費用の総額の10%以下で、かつ一括表示が適当と認められるものに限り、一括表示を認めています。細分の要否は金額の重要性で決まるという考え方が、条文の側から読み取れます。
3. 未払法人税等に何を入れるか。これは条文に列挙があります。財務諸表等規則49条3項です。
第一項第七号の未払法人税等とは、法人税、地方法人税、防衛特別法人税、住民税…、事業税及び特別法人事業税の未払額をいう。
法人税・地方法人税・住民税・事業税・特別法人事業税に加えて、防衛特別法人税が列挙に入っています。消費税の未払額はこの列挙に入っていないため、通常は未払消費税等として別に表示します。
4. 使用権資産はリースの対象になった資産の側で区分が決まる。会社計算規則74条3項は使用権資産を有形固定資産・無形固定資産・投資その他の資産のいずれにも挙げていますが、それぞれ「リースの対象となる資産が…に掲げるものである場合に限る」という限定が付いています。使用権資産という科目自体に固有の区分は無く、原資産が何かで置き場所が変わります。
5. 勘定科目内訳明細書には標準様式がありますが、おおむねそれに準じた書類で代えることも認められています。会社計算規則73条2項が「適当な名称」でよいとしているのは計算書類の話です。一方、法人税の確定申告に添付する勘定科目内訳明細書は、国税庁が公表する標準フォームの16帳票で名称が決まっています(「売掛金(未収入金)の内訳書」「買掛金(未払金・未払費用)の内訳書」など)。独自の科目名を用いる場合も内訳書との対応を整理し、標準様式またはおおむねこれに準じた書類で内訳を示します。科目を細分するかどうかを決めるときは、期末の内訳書を誰がどう埋めるかまで見ておくと手戻りが減ります。
よくある質問
会計ソフトの初期の勘定科目をそのまま使って問題ありませんか?
区分が正しければ、一般には問題ありません。会社計算規則73条2項は資産・負債の各項目に「適当な名称」を付すことを求めているだけで、特定の科目名を義務づけていないためです。損益計算書についても88条7項が同じ書き方をしています。注意すべきなのは名前ではなく、その科目を流動資産に置くか固定資産に置くか、販売費及び一般管理費に置くか営業外費用に置くかという区分の側です。
「車両運搬具」という科目は法律上正しいのですか?
会社計算規則の有形固定資産の列挙にある表現は「鉄道車両、自動車その他の陸上運搬具」で、「車両運搬具」という語は会社計算規則・財務諸表等規則・所得税法施行規則のいずれの条文本文にも出てきません。ただし条文が求めているのは資産を示す適当な名称であるため、有形固定資産の区分に置いてある限り、車両運搬具という名称を使うこと自体が規則に反するわけではありません。
勘定科目を途中で変更してもよいですか?
名称の変更自体を禁じる規定は会社計算規則にはありません。ただし財務諸表等規則8条の2第2項は、財務諸表に記載すべき事項で同一の内容のものについて、正当な理由により変更を行う場合を除き、各時期を通じて同一の表示方法を採用しなければならないと定めています。上場企業でなくても、期間比較ができなくなるため、期の途中での変更は避け、変更するなら期首からとするのが一般的です。
販売費及び一般管理費と営業外費用の線引きはどこにありますか?
会社計算規則には販売費及び一般管理費の範囲を定める条文がありません。財務諸表等規則84条は「会社の販売及び一般管理業務に関して発生したすべての費用は、販売費及び一般管理費に属する」と定めており、これが一般的な判断の基準になります。支払利息や社債利息のような財務活動に伴う費用は営業外費用として例示されています(同93条1項)。
特別損失に計上するかどうかの金額基準はありますか?
会社計算規則には金額の基準そのものはありません。88条2項3項が特別利益・特別損失を固定資産売却益、減損損失、災害による損失などの区分に従って細分することを求め、4項が「その金額が重要でないものについては、当該利益又は損失を細分しないこととすることができる」としているだけです。重要性の判断は会社の規模や損益の水準によって異なるため、個別の判断は顧問税理士または監査人へご確認ください。
個人事業主が青色申告決算書に無い費目を使ってもよいですか?
条文の側が業種に応じた差し替えを認めている形です。ただし記載の仕方と、その支出が必要経費に算入できるかどうかは別の問題です。
出典
e-Gov法令検索で会社計算規則・財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則・所得税法施行規則の全文を取得し、条単位の本文から科目名の出現回数を数えて作成。
- e-Gov法令検索「会社計算規則」(平成18年法務省令第13号)第73条(貸借対照表等の区分)、第74条(資産の部の区分)、第75条(負債の部の区分)、第76条(純資産の部の区分)、第88条(損益計算書等の区分)、第89条〜第94条(売上総損益金額・営業損益金額・経常損益金額・税引前当期純損益金額・税等・当期純損益金額)、第98条(注記表の区分)、第149条・第150条・第156条〜第158条(分配可能額の計算における各勘定科目に計上した額)
- e-Gov法令検索「財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則」(昭和38年大蔵省令第59号)第8条の2(財務諸表の作成基準及び表示方法)、第11条(貸借対照表の記載方法)、第17条(流動資産の区分表示)、第19条、第22条・第23条(有形固定資産の範囲・区分表示)、第27条(無形固定資産の範囲)、第32条(投資その他の資産の区分表示)、第47条・第49条(流動負債の範囲・区分表示)、第50条、第51条・第52条(固定負債の範囲・区分表示)、第53条、第69条(損益計算書の記載方法)、第70条(収益及び費用の分類)、第74条、第84条・第85条(販売費及び一般管理費の範囲・表示方法)、第90条・第93条(営業外収益・営業外費用の表示方法)
- e-Gov法令検索「所得税法施行規則」(昭和40年大蔵省令第11号)第47条の3(事業所得等に係る総収入金額及び必要経費の内訳書)
- 旅費交通費・消耗品費・支払手数料・車両運搬具は会社計算規則・財務諸表等規則・所得税法施行規則の本文に無い(2026年8月19日時点の施行版)
本記事の確認範囲は、上記の各条文の本文です。財務諸表等規則の別記様式(様式第五号・第六号ほか)の内容、国税庁が配布する青色申告決算書・収支内訳書の様式に印字された費目、企業会計原則および企業会計基準委員会の各会計基準、中小企業の会計に関する基本要領・中小企業の会計に関する指針、法人税法および法人税基本通達上の損金算入の可否、消費税法上の課税区分、連結財務諸表規則、業種別の別記様式(建設業・銀行業等)は確認していません。また会社計算規則は令和7年3月31日施行、財務諸表等規則は令和8年3月31日施行、所得税法施行規則は取得時点の現行リビジョンで確認しており、これより後に施行される改正は反映していません。
この記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の事案に対する助言ではありません。どの勘定科目を用いるべきか、どの区分に表示すべきかの判断は、取引の実態と会社の状況によって異なります。個別の判断については税理士・公認会計士へご確認ください。