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外形標準課税の対象になる会社 — 「資本金+資本剰余金」は地方税法に一度も出てこない

結論から言うと、外形標準課税の対象になる入口は3つあります。よく知られているのは「資本金1億円超」ですが、令和6年度の改正で資本金1億円以下でも対象から外れない場合が2つ加わりました。ひとつは減資しても戻れないという措置、もうひとつは大きな親会社の100%子法人という入口です。

そして、この2つを条文で確かめようとすると妙なことが起きます。後者は地方税法の本則(72条の2)に書いてあるのに、前者は本則をいくら読んでも出てきません。前者は附則第8条の3の3に、本則の語を読み替える形で、しかも「当分の間」という限定つきで置かれているからです。同じ改正の2つの柱が、片方は本体に、片方は附則に分かれて入っています。

もうひとつ、解説記事でほぼ必ず「資本金と資本剰余金の合計額」と説明される金額があります。これは結論としては正しいのですが、「資本剰余金」という語は地方税法の全文にも地方税法施行令にも一度も出てきません(本記事で全文を取得して数えました。いずれも0回)。条文が使っているのは「払込資本の額」で、その中身は法 → 政令 → 総務省令と3段たどった先の会社計算規則で決まります。以下、条文から確認できたことと、確認範囲を超えるため断定を避けたことを分けて示します。

結論 — 対象になる3つの入口

法人事業税のうち付加価値割と資本割を課される法人(=外形標準課税の対象法人)は、電気・ガス・保険業などを除く一般の事業では、次のいずれかに当たる法人です。

入口要件根拠いつから
①資本金基準 資本金の額または出資金の額が1億円超 地方税法72条の2第1項1号イ・ロ 従来から
②減資しても戻れない 前事業年度の事業税で対象法人だった法人で、払込資本の額が10億円超のもの 地方税法附則8条の3の3(当分の間) 令和7年4月1日以後開始事業年度
③大法人の100%子法人 払込資本50億円超の法人等による完全支配関係がある法人で、払込資本の額が2億円超のもの 地方税法72条の2第1項1号ロ(1)(2) 令和8年4月1日以後開始事業年度
②と③はどちらも「資本金1億円以下」の会社を捕まえる規定です

①は資本金そのものを見ますが、②と③は資本金が1億円以下であることを前提にしたうえで、払込資本の額(=資本金+資本剰余金)で判定します。つまり「うちは資本金1億円だから関係ない」という確認だけでは足りず、資本剰余金を含めた金額を見る必要がある、という構造です。

外形標準課税の対象判定の流れ 法人事業税を納める法人 ① 資本金・出資金が1億円超か YES NO ② 前事業年度に対象法人で、 払込資本が10億円超か(附則8条の3の3) YES NO ③ 払込資本50億円超の法人の100%子法人で、 払込資本が2億円超か(72条の2第1項1号ロ) YES NO 所得割のみ(外形標準課税の対象外) 付加価値割 +資本割
対象判定の流れ。①で外れても②③で捕まる場合がある。②は附則、③は本則に置かれている。

そもそも何が課税されるのか(付加価値割・資本割)

法人事業税の課税標準は、地方税法72条の12が4つ挙げています。付加価値割は各事業年度の付加価値額、資本割は各事業年度の資本金等の額、所得割は所得、収入割は収入金額です。外形標準課税の対象法人は、このうち付加価値割・資本割・所得割の3つを合算して納めます(72条の2第1項1号イ)。

標準税率は72条の24の7第1項1号が定めており、付加価値割1.2%・資本割0.5%・所得割1.0%です。対象外の法人(同項3号「その他の法人」)は所得割だけで、税率は所得の区分に応じ年400万円以下3.5%・400万円超800万円以下5.3%・800万円超7.0%です。

「赤字でも課税される」のは付加価値割と資本割の部分です

所得割は所得がゼロなら発生しませんが、付加価値割の課税標準である付加価値額は、後述のとおり報酬給与額などの合計に単年度損益を足したものです。損失が出ていても報酬給与額や賃借料は発生するため、付加価値額がプラスであれば付加価値割は生じます。資本割も同様に所得と無関係です。

入口を条文で確かめる — 本則と附則に分かれている

③の100%子法人の規定は、地方税法72条の2第1項1号ロの中にあります。ロは「所得割額」だけを課される法人(=対象外の法人)を定義した箇所で、その末尾のかっこ書きで「次に掲げる法人に該当するものを除く」として(1)(2)を挙げ、そこに100%子法人が書かれています。除外の除外という書き方なので、読み落としやすい構造です。

(1)が定義する特定法人とは、払込資本の額が50億円超の法人および保険業法に規定する相互会社です。その特定法人による完全支配関係がある法人のうち、払込資本の額が2億円超のものが対象になります。(2)は、複数の特定法人が株式を分けて持っている場合に、それらを1社が持っているとみなしたときに完全支配関係が成立するケースを拾う規定です。

一方、②の減資対応は72条の2をいくら読んでも出てきません。附則第8条の3の3が次のように置かれています。

(事業税の納税義務者等の特例)第八条の三の三 第七十二条の二第一項及び第二項の規定の適用については、当分の間、同条第一項第一号ロ中「一億円以下のもの」とあるのは「一億円以下のもの(前事業年度の事業税についてイに掲げる法人に該当したものであつて、払込資本の額(略)が十億円を超えるものを除く。)」と(略)する。

②は「もともと対象だった会社」しか捕まえません

この読替えの条件は「前事業年度の事業税についてイに掲げる法人に該当したもの」です。イに掲げる法人とは付加価値割・資本割・所得割を課される法人、つまり前事業年度に外形標準課税の対象だった法人を指します。したがって、もともと資本金1億円以下で対象外だった会社は、払込資本の額が10億円を超えていても②では対象になりません。②は一般的な10億円基準ではなく、いったん対象になった会社が減資で抜けることを防ぐ規定です。

また、この規定には「当分の間」という限定が付いています。③が本則に恒久的な形で置かれているのに対し、②は期限を切らない暫定措置として附則に置かれている、という違いがあります。同じ令和6年度改正の2つの柱が、条文上は別々の場所に別々の性格で入っていることになります。

「資本金+資本剰余金」は条文に無い — 3段の委任

②③が使う払込資本の額は、72条の2第1項1号ロ(1)がこう定義しています。

払込資本の額(法人が株主又は合名会社、合資会社若しくは合同会社の社員その他法人の出資者から出資を受けた金額として政令で定める金額をいう。)

金額の中身は政令に投げられています。そこで地方税法施行令を見ると、第10条の2(払込資本の額)がこう書いています。

法第七十二条の二第一項第一号ロ(1)に規定する政令で定める金額は、資本金の額又は出資金の額と総務省令で定める金額との合計額とする。

政令もまた「総務省令で定める金額」と書くだけで、具体的な中身を持っていません。ここまでで「資本剰余金」という語は一度も出てきません。実際に数えると、地方税法の全文で0回、地方税法施行令の全文でも0回です。最後に地方税法施行規則第3条の13の4まで来て、ようやく現れます。

政令第十条の二に規定する総務省令で定める金額は、会社法第四百三十一条又は第六百十四条に規定する一般に公正妥当と認められる企業会計の慣行に従い、会社計算規則の規定に基づき計算した同令第七十六条第二項第三号又は第三項第三号に規定する資本剰余金の金額(会社以外の法人にあつては、これらに準ずる金額)とする。

払込資本の額を決めるまでの3段の委任 法:地方税法 72条の2第1項1号ロ(1) 「出資を受けた金額として政令で定める金額」 — 資本剰余金の語は 0回 委任① 政令:地方税法施行令 10条の2 「資本金の額 + 総務省令で定める金額」 — 資本剰余金の語は 0回 委任② 省令:地方税法施行規則 3条の13の4 会社計算規則 76条2項3号・3項3号の「資本剰余金」 ← ここで初めて現れる 金額の中身を決めているのは税法ではなく会社計算規則(企業会計)の側
払込資本の額は法・政令・省令の3段をたどって初めて確定する。最終的な参照先は会社計算規則。

実務上の結論は「資本金+資本剰余金」で差し支えありませんが、その金額が会社計算規則に基づいて計算された資本剰余金であるという点は押さえておく価値があります。税法独自の調整規定ではなく、計算書類に載っている金額がそのまま入口の判定に使われるということだからです。

配当で払込資本を減らしても、減った分は足し戻されます

③の条文には長いかっこ書きがあり、地方税法等の一部を改正する法律(令和六年法律第四号)の公布の日以後に完全支配関係がある状態で剰余金の配当(払込資本の額のうち政令で定める額の減少に伴うものに限る)または出資の払戻しをしたときは、それにより減少した払込資本の額を加算した額で判定すると書かれています。資本剰余金を配当に回して2億円以下に下げる、という対応をあらかじめ封じる形になっています。

なお、ここでいう「資本剰余金の額の減少に伴う剰余金の配当」は、外形標準課税の判定を離れてもそれ自体が独立した課税関係を生みます。法人税法・所得税法はこれを「資本の払戻し」として扱い、株主に交付した金銭のうち株式に対応する資本金等の額を超える部分を配当とみなします。1回の支払が株主側で配当所得と株式の譲渡収入に割れるため、源泉徴収の要否も申告の仕方も変わります。計算方法と、令和4年4月に施行令へ入った上限についてはみなし配当とは — 1回の入金が「配当所得」と「株式の譲渡収入」に割れるで扱っています。

いつの時点で判定するか — 親会社は親会社の決算日で見る

判定時点は72条の2第2項が定めています。ここに見落としやすい非対称があります。

何を判定するかいつの現況で見るか根拠
資本金1億円以下かどうか、および100%子法人に当たるかどうか 当該事業年度終了の日 72条の2第2項1号
親会社が「特定法人」(払込資本50億円超)に当たるかどうか その日以前に最後に終了した当該他の法人の事業年度終了の日
(親会社に事業年度がない場合は設立の日)
72条の2第2項2号

つまり、自社の判定は自社の決算日、親会社が50億円超かどうかの判定は親会社の決算日で行います。3月決算の子会社と12月決算の親会社であれば、子会社の3月末時点ではなく、その前の12月末の親会社の払込資本の額を見ることになります。親会社が1月に増資して50億円を超えた場合、子会社の当期の判定には反映されない、という順序になります。

付加価値額と雇用安定控除 — 70%を超えると賃金の重みが0.7になる

付加価値額の定義は72条の14がひとことで書いています。

各事業年度の付加価値額は、各事業年度の報酬給与額、純支払利子及び純支払賃借料の合計額(=収益配分額)と各事業年度の単年度損益との合計額による。

ここで効いてくるのが雇用安定控除(72条の20)です。収益配分額のうちに報酬給与額の占める割合が70%を超える法人は、付加価値額から「報酬給与額 − 収益配分額 × 70%」を控除します。人件費の比率が高い法人ほど付加価値割が重くなる、という性質を和らげるための規定です。

控除が効く領域では、賃金1円の増加が課税標準を0.7円しか増やしません

報酬給与額をR、純支払利子と純支払賃借料の合計をO、単年度損益をPとすると、収益配分額はR+O、付加価値額はR+O+Pです。R÷(R+O)が70%を超えている場合、課税標準は
(R+O+P) −(R − 0.7×(R+O))= 0.7R + 1.7O + P
となり、Rの係数が1から0.7に下がります。たとえばR=80・O=20・P=0なら、付加価値額100に対し控除額は80−70=10で、課税標準は90。ここでRを1増やして81にすると課税標準は90.7で、増加分は0.7です。付加価値割の標準税率1.2%と合わせると、賃金1円あたりの限界的な負担は1.2%ではなく0.84%になります。

付加価値額の内訳と雇用安定控除 付加価値額の内訳(72条の14)/R が収益配分額の80%の例 報酬給与額 R 利子・賃借料 単年度損益 P 収益配分額の70% 雇用安定控除額 = R − 収益配分額×70% 収益配分額 = 報酬給与額 + 利子・賃借料 付加価値額 = 収益配分額 + 単年度損益 この領域では R を1増やしても課税標準は0.7しか増えない(限界税率 1.2% → 0.84%)
付加価値額の内訳と雇用安定控除。控除額は「報酬給与額 − 収益配分額×70%」。

資本割には下限と上限がある

資本割の課税標準は資本金等の額(法人税法2条16号の資本金等の額をもとに、無償増資の加算・欠損塡補の減算などの調整を加えたもの。72条の21第1項)ですが、そこには下限と上限が両方あります。

下限は72条の21第2項です。第1項で計算した金額が事業年度終了の日における資本金の額および資本準備金の額の合算額(または出資金の額)に満たない場合には、その合算額を課税標準とすると定めています。調整の結果がいくら小さくなっても、資本金+資本準備金を下回ることはありません

上限は同条第7項です。資本金等の額が1,000億円を超える法人は、次のように段階的に圧縮した金額の合計を課税標準とします。しかも資本金等の額が1兆円を超える場合は1兆円とすると書かれているため、頭打ちがあります。

資本金等の額の区分算入率算入額
1,000億円以下の金額100%1,000億円
1,000億円超5,000億円以下の金額50%2,000億円
5,000億円超1兆円以下の金額25%1,250億円
合計(課税標準の上限)4,250億円

つまり資本割の課税標準は最大でも4,250億円で、標準税率0.5%を掛けると資本割の年額は21億2,500万円が上限ということになります。資本金等の額が1兆円でも2兆円でも、資本割は同額です。

このほか第6項に持株会社の特例があり、総資産の帳簿価額のうちに特定子会社(発行済株式の50%超を直接・間接に保有する法人)の株式の帳簿価額が占める割合が50%を超える内国法人は、資本金等の額にその割合を乗じた金額を控除します。

法人税・法人住民税・事業税の計算ツールで試算する

対象になると必ず損か — 所得割1%と特別法人事業税260%

ここは誤解が生じやすいところです。外形標準課税の対象になると付加価値割と資本割が増える一方で、所得割の標準税率は7.0%から1.0%に下がります。ただしこれだけを見て比べると答えを間違えます。特別法人事業税という国税が上に乗っており、その率が法人の区分で大きく違うからです。

特別法人事業税及び特別法人事業譲与税に関する法律第7条は、基準法人所得割額に乗じる率を次のように定めています。

法人の区分事業税・所得割
(標準税率)
特別法人事業税
(第7条)
所得に比例する部分の合計
外形標準課税の対象法人 1.0% 260% 1.0% + 1.0%×2.6 = 3.6%
対象外の法人(所得800万円超の部分) 7.0% 37% 7.0% + 7.0%×0.37 = 9.59%
特別法人(協同組合等) 3.5%/4.9% 34.5%

所得に比例する部分は3.6%対9.59%で、対象法人のほうが5.99ポイント低くなります。したがって、付加価値割と資本割という固定的な負担を、所得が大きくなるほど広がるこの差が埋め合わせる、という構造になります。所得が一定額を超えると対象になったほうが税額が小さくなります

付加価値額5億円・資本金等の額2億円の会社を例に、標準税率で計算すると次のようになります(付加価値割 5億円×1.2%=600万円、資本割 2億円×0.5%=100万円)。

所得対象法人の税額
(付加価値割+資本割+所得割+特別法人事業税)
対象外の税額
(所得割+特別法人事業税)
5,000万円880.0万円451.0万円対象法人が429.0万円 高い
1億円1,060.0万円930.5万円対象法人が129.5万円 高い
約1億2,162万円1,137.8万円1,137.8万円分岐点(ほぼ一致)
2億円1,420.0万円1,889.5万円対象法人が469.5万円 安い
この試算の前提

すべて標準税率で計算しています。東京都をはじめ多くの自治体は一定規模以上の法人に超過税率を適用しているため、実際の税額は変わります。また対象外の法人の所得割は年400万円以下3.5%・400万円超800万円以下5.3%・800万円超7.0%の累進で計算していますが、3以上の道府県に事務所等があり資本金1,000万円以上の法人は72条の24の7第5項により一律7.0%となるため、この表とは異なります。法人住民税・法人税は含めていません(対象法人かどうかで変わらないため差には影響しませんが、総額の比較には別途必要です)。

言い換えると、外形標準課税から抜けることに意味があるのは、付加価値額や資本金等の額に比べて所得が小さい会社です。所得が大きい会社にとっては、抜けたほうがかえって負担が増えます。②の減資対応が「前事業年度に対象だった法人」だけを狙って置かれているのは、この非対称と整合的な形になっています。

よくある質問

Q. 資本金を1億円に減資すれば、外形標準課税から外れますか?

A. 一般には、それだけでは外れない場合があります。地方税法附則8条の3の3が「当分の間」の措置として、前事業年度の事業税について付加価値割・資本割・所得割を課される法人に該当していた法人であって、払込資本の額(資本金の額と、会社計算規則に基づく資本剰余金の合計額)が10億円を超えるものを、資本金1億円以下であっても対象法人として扱うと定めているためです。この規定は令和7年4月1日以後に開始する事業年度から適用されます。したがって、資本金だけを1億円以下に下げても、資本剰余金を含めた金額が10億円を超えていれば対象のままとなります。

Q. 資本金1億円の会社ですが、親会社が大きい場合は関係ありますか?

A. 関係する場合があります。地方税法72条の2第1項1号ロ(1)は、払込資本の額が50億円を超える法人(および保険業法に規定する相互会社)を「特定法人」とし、その特定法人による完全支配関係がある法人のうち払込資本の額が2億円を超えるものを、資本金1億円以下であっても外形標準課税の対象としています。同号ロ(2)は、複数の特定法人が株式を分散して保有している場合に、それらが1社に集約されているとみなして完全支配関係を判定する規定です。これらは令和8年4月1日以後に開始する事業年度から適用されます。

Q. 「資本金+資本剰余金」とありますが、条文のどこに書いてありますか?

A. 地方税法の条文には書かれていません。法律が使っている語は「払込資本の額」で、72条の2第1項1号ロ(1)はその金額を政令に委任しています。地方税法施行令10条の2が「資本金の額又は出資金の額と総務省令で定める金額との合計額」と定め、地方税法施行規則3条の13の4が、その総務省令で定める金額を、会社法431条・614条にいう一般に公正妥当と認められる企業会計の慣行に従い会社計算規則の規定に基づき計算した同令76条2項3号・3項3号の資本剰余金の金額としています。本記事で地方税法および地方税法施行令の全文を取得して数えたところ、「資本剰余金」の語はいずれも0回でした。

Q. 資本剰余金を配当に回して2億円以下にすれば、100%子法人の判定から外れますか?

A. 条文はそうならないように書かれています。72条の2第1項1号ロ(1)のかっこ書きは、地方税法等の一部を改正する法律(令和六年法律第四号)の公布の日以後に、完全支配関係がある場合その他政令で定める場合において、その法人が剰余金の配当(払込資本の額のうち政令で定める額の減少に伴うものに限る)または出資の払戻しをしたときは、それにより減少した払込資本の額を加算した額によって判定すると定めています。つまり減少させた分は足し戻して2億円超かどうかを見る形になっています。

Q. 赤字でも外形標準課税は課されますか?

A. 一般には課されます。付加価値割の課税標準である付加価値額は、地方税法72条の14により報酬給与額・純支払利子・純支払賃借料の合計額(収益配分額)と単年度損益との合計額と定められています。単年度損益がマイナスであってもその分が差し引かれるだけで、報酬給与額などが残るため、付加価値額がプラスであれば付加価値割は生じます。資本割の課税標準は資本金等の額であり、所得とは無関係です。所得割は所得がゼロであれば生じません。

Q. 人件費の比率が高いと付加価値割で不利になりませんか?

A. それを緩和する規定があります。地方税法72条の20の雇用安定控除で、収益配分額のうちに報酬給与額の占める割合が70%を超える法人は、付加価値額から「報酬給与額 − 収益配分額×70%」を控除します。この控除が効いている領域では、報酬給与額が1円増えたときに課税標準が増えるのは0.7円分となり、付加価値割の標準税率1.2%と合わせた限界的な負担は0.84%相当になります。なお特定内国法人については、同条3項により国外の事業に帰属する分を除いて割合を計算します。

Q. 資本割の課税標準に上限はありますか?

A. あります。地方税法72条の21第7項は、資本金等の額が1,000億円を超える法人について、1,000億円以下の部分は100%、1,000億円超5,000億円以下の部分は50%、5,000億円超1兆円以下の部分は25%を乗じた金額の合計を課税標準とし、さらに資本金等の額が1兆円を超える場合は1兆円とすると定めています。この結果、課税標準は最大でも4,250億円となり、標準税率0.5%を掛けた資本割の額は年21億2,500万円が上限となります。反対に下限もあり、同条2項により、計算結果が資本金の額および資本準備金の額の合算額に満たない場合はその合算額が課税標準となります。

Q. 外形標準課税の対象になると、必ず税負担は増えますか?

A. 所得の水準によります。対象法人の所得割の標準税率は1.0%で対象外の7.0%より低く、さらに特別法人事業税及び特別法人事業譲与税に関する法律7条により、基準法人所得割額に乗じる率は対象法人が260%、対象外の法人が37%です。所得に比例する部分を合計すると対象法人は3.6%、対象外は9.59%となり、対象法人のほうが5.99ポイント低くなります。したがって付加価値割と資本割の負担を所得の差が上回る水準を超えると、対象になったほうが税額は小さくなります。標準税率で付加価値額5億円・資本金等の額2億円という前提であれば、分岐点は所得およそ1億2,162万円です。実際には自治体の超過税率などにより変わりますので、具体的な試算は顧問税理士にご確認ください。

Q. 親会社が期中に増資して50億円を超えました。今期から子会社は対象になりますか?

A. 判定の時点が条文で分けられています。地方税法72条の2第2項1号は、資本金1億円以下かどうかの判定および100%子法人に当たるかどうかの判定を当該事業年度終了の日の現況によるとしていますが、同項2号は、事業年度終了の日に完全支配関係がある他の法人がその事業年度において特定法人に該当するかどうかの判定については、同日以前に最後に終了したその他の法人の事業年度終了の日(その日がない場合はその法人の設立の日)の現況によるとしています。したがって親会社が特定法人に当たるかどうかは、子会社の決算日ではなく、それ以前に最後に終了した親会社の事業年度末で見ることになります。

出典

本記事は一般的な情報提供であり、個別の税務相談ではありません。記載は2026年8月16日時点で確認した法令に基づいています。外形標準課税の対象に当たるかどうか、および具体的な税額は、資本金等の額や払込資本の額の算定、事業年度、事務所の所在する都道府県の税率によって変わりますので、実際の判断にあたっては顧問税理士または所轄の都道府県税事務所へご確認ください。

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