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資本金とは — 決まり方・1円でも会社は作れるか・1,000万円と1億円の線・資本金等の額との違いを条文で

結論から言うと、資本金とは、株主(出資者)が会社に払い込んだ財産のうち、会社法445条の定めに従って「資本金の額」として計上した額です。原則は払い込まれた財産の全額で、その2分の1までは資本金にせず資本準備金にすることができます。会社法に最低額の定めは無く、理屈の上では1円の払込みでも株式会社は成立します。資本金の額は登記事項なので、登記事項証明書を取れば誰でも見られます。

ただし実務で資本金が問題になるのは、定義そのものよりも、「資本金の額」が税金と法律上の扱いを分ける線として使われているからです。消費税は資本金1,000万円以上だと設立1期目から課税、法人税の軽減税率15%・交際費の定額控除800万円・欠損金の全額控除・留保金課税の適用除外は資本金1億円以下、外形標準課税と電子申告の義務は資本金1億円超、会社法の「大会社」は資本金5億円以上、法人住民税の均等割は「資本金等の額」が1,000万円・1億円・10億円・50億円で段が変わります。設立登記の登録免許税は資本金の額の0.7%(最低15万円)です。

もう1つ、経理担当者が最初につまずくのが、会社法の「資本金の額」と税法の「資本金等の額」は別物だという点です。法人税法2条16号の資本金等の額には資本準備金に回した分も入るので、払込1,000万円を資本金500万円・資本準備金500万円に分けても、法人住民税の均等割は下がりません。下がるのは消費税の判定だけです。この記事は、①条文の中の「資本金」、②決まり方、③資本金の額で変わる制度の一覧、④「資本金の額」と「資本金等の額」の違い、⑤設例(払込1,000万円と2,000万円の4パターン)、⑥増資と減資、⑦個人事業主・合同会社・出資金との違い、の順に、条文を引用しながら整理します。法人税率の詳細は法人税率、外形標準課税の入口は外形標準課税の対象になる会社、設立後の届出と消費税の免税期間の作り方は会社設立でやることに譲ります。

条文の中の「資本金」 — 決めているのは会社法445条、定款の必須事項ではなく登記事項

最初に、この言葉が法令のどこにどれだけ出てくるかを数えます。e-Gov 法令API で各法令の全文を取得し、「資本金」「資本金の額」「資本金等の額」の出現回数を数えた結果が次の表です。

法令「資本金」うち「資本金の額」「資本金等の額」何を決めているか
会社法77回50回4回445条(資本金の額=払込額、2分の1まで準備金)、447条(減少)、450条(増加)、449条(債権者異議)、2条6号(大会社=5億円以上)、911条3項5号(登記事項)
会社計算規則137回45回4回43条(設立時の株主資本)、25条(資本金の額の増減)、27条(その他資本剰余金)、30条(持分会社の資本金)、76条(純資産の部の区分)
法人税法26回17回9回2条16号(資本金等の額の定義)、66条2項(1億円以下の軽減税率)、67条(留保金課税)、57条11項(欠損金)、75条の4(電子申告の義務=1億円超)
法人税法施行令261回39回172回8条(資本金等の額の計算。1項1号〜22号)
租税特別措置法81回70回3回42条の3の2(15%)、61条の4(交際費800万円)、67条の5(少額減価償却資産)。「最低資本金」は附則の経過措置に2回だけ
地方税法202回42回153回23条1項4号の2(地方税の資本金等の額)、52条・312条(均等割の段)、72条の2(外形標準課税=1億円超)
消費税法2回2回0回12条の2(新設法人=1,000万円以上)、46条の2(電子申告の義務=1億円超)
登録免許税法18回15回0回別表第一24号(設立・増資の税率、役員変更登記の1億円の線)
中小企業基本法4回4回0回2条1項(3億円・1億円・5,000万円)
中小受託取引適正化法(旧下請法)13回13回0回2条(3億円・1,000万円・5,000万円の区分)
所得税法4回1回3回個人事業主に資本金は無い(後述)

並べると、「資本金の額」を定義しているのは会社法と会社計算規則で、税法はその額を「線」として借りていることが分かります。法人税法と地方税法だけは「資本金等の額」という自前の概念(施行令8条で1項22号にわたって計算)を持っていて、ここが後で効いてきます。

会社法445条1項は資本金の額をこう定めます。

株式会社の資本金の額は、この法律に別段の定めがある場合を除き、設立又は株式の発行に際して株主となる者が当該株式会社に対して払込み又は給付をした財産の額とする。

そして資本金の額は、27条の定款の絶対的記載事項には入っていません。定款に書くのは4号の「設立に際して出資される財産の価額又はその最低額」で、資本金の額そのものではありません。

設立に際して出資される財産の価額又はその最低額

代わりに911条3項5号が登記事項に「資本金の額」を挙げているので、資本金は定款ではなく登記で公示されます。取引先が登記事項証明書を取れば資本金の額はすぐ分かる、というのはこの条文のためです。

なお、会社法には最低資本金の規定はありません。租税特別措置法の全文3,174,346字で「最低資本金」という語が出るのは、附則に置かれた経過措置の見出し2か所(「最低資本金を満たすまでの利益等の資本組入れに係るみなし配当の非課税に関する経過措置」と有限会社に関する同種の見出し)だけで、いずれも旧法の制度の後始末です。現行法の本則で最低資本金を求める条文はありません。

資本金の額はどう決まるか — 払込額が原則、2分の1まで資本準備金、1円でも会社は成立する

445条1項の「払込み又は給付をした財産の額」が原則です。その上で2項・3項が、半分までを資本準備金に回す道を開いています。

前項の払込み又は給付に係る額の二分の一を超えない額は、資本金として計上しないことができる。
前項の規定により資本金として計上しないこととした額は、資本準備金として計上しなければならない。

つまり払込1,000万円なら、資本金は1,000万円(全額)から500万円(半分)の間で会社が決め、資本金にしなかった分は必ず資本準備金になります(その他資本剰余金や利益剰余金にはできません)。設立時については会社計算規則43条が細部を決めていて、2項で設立時のその他資本剰余金は零、3項で利益準備金も零と定めます。

設立(法第二十五条第一項各号に掲げる方法によるものに限る。以下この条において同じ。)時の株式会社のその他資本剰余金の額は、零とする。

払込みの方法は会社法34条が定めます。発起人は引き受けた株式について、金銭の全額を払い込むか、現物出資なら財産の全部を給付しなければなりません。

発起人は、設立時発行株式の引受け後遅滞なく、その引き受けた設立時発行株式につき、その出資に係る金銭の全額を払い込み、又はその出資に係る金銭以外の財産の全部を給付しなければならない。

同条2項で、払込みは発起人が定めた銀行等の払込みの取扱いの場所でしなければならないとされています。設立前は会社名義の口座が作れないので、実務では発起人個人の口座に振り込み、その通帳の写しを払込みを証する書面として登記申請に添付する、という流れになります。

「1円でも会社を作れる」は条文からそのまま出てきます。27条4号は「価額又はその最低額」を定款に書けと言うだけで下限を置かず、445条1項は払込額をそのまま資本金とするので、1円を払い込めば資本金1円の株式会社が成立します。ただし次の2点は別の条文が縛ります。①会社法458条は、純資産額が300万円を下回る会社に剰余金の配当を認めません。

第四百五十三条から前条までの規定は、株式会社の純資産額が三百万円を下回る場合には、適用しない。

②設立登記の登録免許税は資本金の額の1,000分の7ですが、15万円に満たないときは15万円です(登録免許税法別表第一24号(一)イ。合同会社は6万円)。資本金を1円にしても設立コストの下限は変わりません。

株主資本の中で「資本金の額」はここ、「資本金等の額」はここ(会社計算規則76条・法人税法2条16号) 株主資本(会社計算規則76条2項) 資本金 会社法445条1項 資本剰余金 資本準備金(445条3項) その他資本剰余金(減資の受け皿) 利益剰余金 利益準備金(445条4項) その他利益剰余金(繰越利益剰余金) 自己株式(控除項目) 会社法・消費税法・法人税の軽減税率 が見る「資本金の額」 法人住民税の均等割が見る「資本金等の額」(おおむね資本金+資本剰余金) ※資本金等の額の正確な計算は法人税法施行令8条(22号の加減算)と地方税法23条1項4号の2(無償増資の加算・欠損填補の控除)
資本金の額は株主資本の一番左の箱だけ。税法の「資本金等の額」は資本剰余金(資本準備金・その他資本剰余金)まで含むので、払込額を準備金に振っても均等割の判定額は動かない。

資本金の額で変わる制度 — 1,000万円・1億円・3億円・5億円の線(一覧表)

資本金の額が実務で効くのは、次の制度の線として使われているからです。判定に使う額が「資本金の額」なのか「資本金等の額」なのか、判定日がいつかまで含めて一覧にします。

制度判定に使う額・時点条文詳しくは
1,000万円以上消費税 — 基準期間がない設立1期目・2期目も課税事業者(「新設法人」)資本金の額又は出資の金額。各事業年度開始の日で判定(1,000万円ちょうどは課税)消費税法12条の2第1項会社設立でやること
1,000万円以下/超法人住民税の均等割 — 都道府県分 年2万円/5万円、市町村分(従業者50人以下)年5万円/13万円資本金等の額(法人税法の額に地方税法の加減算。資本金+資本準備金を下回るときはその合算額)。事業年度末日地方税法52条1項・4項、312条1項・6項、23条1項4号の2法人税とは
1億円以下法人税の軽減税率 — 年800万円以下の所得に19%(令和9年3月31日までに開始する事業年度は15%)資本金の額又は出資金の額。事業年度終了の時。資本金5億円以上の大法人の100%子会社などは除外法人税法66条2項・5項、措置法42条の3の2法人税率
1億円以下交際費 — 年800万円までの定額控除(100億円超は全額損金不算入)資本金の額又は出資金の額。適用年度終了の日措置法61条の4第1項・2項交際費と会議費の違い
1億円以下欠損金の繰越控除 — 所得の全額まで控除(1億円超は所得の50%)資本金の額又は出資金の額。各事業年度終了の時(「中小法人等」)法人税法57条1項ただし書・11項繰越欠損金
1億円以下留保金課税の対象外(大法人の完全支配下にある場合を除く)資本金の額又は出資金の額法人税法67条1項同族会社とは
1億円以下少額減価償却資産の特例(令和8年4月1日以後の取得は40万円未満)など「中小企業者」向け措置資本金の額又は出資金の額。大規模法人に2分の1以上・3分の2以上を持たれている会社は除外措置法67条の5、42条の4第19項7号、同施行令27条の4第17項少額減価償却資産と一括償却資産
1億円超法人事業税の外形標準課税(付加価値割・資本割)資本金の額又は出資金の額。事業年度終了の日。ほかに払込資本の額による入口が附則にある地方税法72条の2第1項1号・2項1号外形標準課税の対象になる会社
1億円超法人税の電子申告(e-Tax)の義務化(「特定法人」)資本金の額又は出資金の額。事業年度開始の時法人税法75条の4第2項1号勘定科目内訳明細書
1億円以下/超役員変更登記の登録免許税 — 1件1万円/3万円資本金の額登録免許税法別表第一24号(一)カ
3億円/1億円/5,000万円以下中小企業基本法の「中小企業者」(補助金・支援策の対象の目安)— 製造業等3億円、卸売業1億円、サービス業・小売業5,000万円(または従業員300/100/100/50人以下)資本金の額又は出資の総額中小企業基本法2条1項1号〜4号補助金
3億円超/1,000万円超中小受託取引適正化法(旧下請法)の委託事業者・中小受託事業者の区分(令和8年1月1日から従業員数300人・100人の基準が加わった)資本金の額又は出資の総額(と常時使用する従業員の数)同法2条取適法とフリーランス法
5億円以上会社法の「大会社」 — 会計監査人の設置義務、損益計算書も公告最終事業年度の貸借対照表に資本金として計上した額(負債200億円以上でも該当)会社法2条6号、328条、440条1項株主資本等変動計算書とは
(税率)設立登記の登録免許税 — 資本金の額の1,000分の7、最低15万円(合同会社は6万円)。増資は増加額の1,000分の7、最低3万円資本金の額登録免許税法別表第一24号(一)イ・ハ・ニ法人成りとは

会社法2条6号イの大会社の定義はこうです。判定が「登記された資本金の額」ではなく「貸借対照表に資本金として計上した額」である点に注意してください。

最終事業年度に係る貸借対照表(第四百三十九条前段に規定する場合にあっては、同条の規定により定時株主総会に報告された貸借対照表をいい、株式会社の成立後最初の定時株主総会までの間においては、第四百三十五条第一項の貸借対照表をいう。ロにおいて同じ。)に資本金として計上した額が五億円以上であること。

法人税の軽減税率の入口、66条2項は次のとおりです。条文の税率は19%で、15%は措置法42条の3の2が令和9年3月31日までに開始する事業年度について引き下げているものです(国税庁 No.5759 の表も15%。令和7年4月1日現在法令等)。

前項の場合において、普通法人(通算法人を除く。)若しくは一般社団法人等のうち、各事業年度終了の時において資本金の額若しくは出資金の額が一億円以下であるもの若しくは資本若しくは出資を有しないもの又は人格のない社団等の各事業年度の所得の金額のうち年八百万円以下の金額については、同項の規定にかかわらず、百分の十九の税率による。

電子申告の義務は、珍しく事業年度「開始の時」の資本金で判定します(ほかの多くは終了の時)。

当該事業年度開始の時における資本金の額又は出資金の額が一億円を超える法人

中小企業者の措置(少額減価償却資産の特例など)は、資本金1億円以下でも「大規模法人に持たれている会社」を外します。措置法施行令27条の4第17項の柱書です。

法第四十二条の四第十九項第七号に規定する政令で定めるものは、資本金の額若しくは出資金の額が一億円以下の法人のうち次に掲げる法人以外の法人又は資本若しくは出資を有しない法人のうち常時使用する従業員の数が千人以下の法人(当該法人が通算親法人である場合には、第三号に掲げる法人を除く。)とする。

中小企業基本法2条1項1号は、資本金と従業員数のどちらかを満たせば中小企業者に入る書き方です(「並びに」で会社の資本金基準と、会社及び個人の従業員基準を並べている)。

資本金の額又は出資の総額が三億円以下の会社並びに常時使用する従業員の数が三百人以下の会社及び個人であつて、製造業、建設業、運輸業その他の業種(次号から第四号までに掲げる業種を除く。)に属する事業を主たる事業として営むもの
資本金の額で扱いが変わる4本の線(判定額は制度ごとに「資本金の額」か「資本金等の額」) 1円 (下限なし) 1,000万円 消費税: 以上で設立1期目から課税 均等割: 資本金等の額が超えると 年7万円 → 18万円(標準・50人以下) 1億円 以下: 軽減税率15%・交際費800万円 欠損金全額控除・留保金課税なし・少額特例 超: 外形標準課税・e-Tax義務 役員変更登記 1万円 → 3万円 3億円 中小企業基本法(製造業等) 取適法の委託事業者の区分 5億円 会社法の大会社 会計監査人・P/L公告 ※目盛りは等間隔ではない。均等割の線だけは「資本金等の額」で引かれる(本文の次節)。
線は4本だが、使われ方は「以上/以下/超」と「資本金の額/資本金等の額」で微妙に違う。消費税の1,000万円は「以上」、法人税の1億円は「以下」、外形標準課税は「超」。

「資本金の額」と「資本金等の額」は別物 — 資本準備金に振っても均等割は下がらない

法人税法2条16号は「資本金等の額」を、会社法の資本金の額とは別に定義します。

法人が株主等から出資を受けた金額として政令で定める金額をいう。

受けた施行令8条1項は、資本金の額又は出資金の額に、1号から12号までの金額を足し、13号から22号までの金額を引くという構造です。1号は、株式の発行で払い込まれた金銭の額のうち「その発行により増加した資本金の額」を超える部分、つまり資本準備金に回した分です。だから資本金500万円・資本準備金500万円の会社の資本金等の額は、1,000万円になります。

もう1つ、12号は資本金の額を減少した場合の減少額を足し戻す規定です。

資本金の額又は出資金の額を減少した場合(第十四号に規定する場合を除く。)のその減少した金額に相当する金額

つまり法人税法の世界では、株主に払い戻さない減資(無償減資)をしても資本金等の額は1円も減りません。資本金からその他資本剰余金へ動いただけで、出資を受けた金額の合計は変わっていない、という考え方です。

法人住民税の均等割は、この「資本金等の額」で段が決まります(地方税法52条1項・312条1項の表)。標準税率は次のとおりです。

資本金等の額都道府県民税(52条1項)市町村民税・従業者50人以下(312条1項)同・50人超合計(50人以下の場合)
1,000万円以下年2万円年5万円年12万円年7万円
1,000万円超 1億円以下年5万円年13万円年15万円年18万円
1億円超 10億円以下年13万円年16万円年40万円年29万円
10億円超 50億円以下年54万円年41万円年175万円年95万円
50億円超年80万円年41万円年300万円年121万円

判定に使う資本金等の額は地方税法23条1項4号の2が定めていて、法人税法の資本金等の額をもとに、剰余金を資本金に組み入れた額(無償増資)を足し、資本金や資本準備金を減らして損失の填補に充てた額(欠損填補の減資)を引きます。さらに52条4項・312条6項は、こうして計算した資本金等の額が「資本金の額及び資本準備金の額の合算額」を下回るときは、その合算額で判定すると定めています。

実務上の帰結①払込額を資本金と資本準備金に分けても、均等割は1円も変わらない(どちらも資本金等の額に入る)。②株主に払い戻さない減資をしても、その他資本剰余金に置いたままなら均等割は変わらない。③減資して欠損填補に充てた分だけは地方税法の資本金等の額から引かれるので、段が下がることがある。④逆に剰余金を資本金に組み入れる無償増資は、法人税法では資本金等の額が動かなくても地方税法では加算されるので、均等割が上がることがある。

一方、消費税法12条の2は「資本金の額又は出資の金額」で判定し、資本準備金は見ません。

当該事業年度開始の日における資本金の額又は出資の金額が千万円以上である法人(以下この項及び次項において「新設法人」という。)

国税庁 No.6503(令和7年4月1日現在法令等)も「その事業年度開始の日における資本金の額または出資の金額が1,000万円以上である法人」と書き、資本金の額を1,000万円未満で設立した後に1期目の途中で増資して1,000万円以上になった場合は、設立2期目は課税事業者になると説明しています。判定日は「各事業年度開始の日」なので、期中の増資は翌期の判定に効きます。

設例 — 払込1,000万円・2,000万円を資本金と準備金にどう分けると何が変わるか

設立時の払込額を4パターンに分け、消費税・均等割・登録免許税の3つがどう動くかを並べます。均等割は標準税率・従業者50人以下、消費税は他の特例(特定期間の課税売上高、特定新規設立法人など)に当たらない前提です。

払込額資本金資本準備金資本金等の額消費税(設立1・2期目)均等割(年)設立の登録免許税
A1,000万円1,000万円01,000万円課税(1,000万円以上)7万円15万円(7万円<15万円)
B1,000万円500万円500万円1,000万円免税の余地あり7万円15万円(3.5万円<15万円)
C2,000万円2,000万円02,000万円課税18万円15万円(14万円<15万円)
D2,000万円1,000万円1,000万円2,000万円課税(1,000万円ちょうどは「以上」)18万円(準備金に振っても下がらない)15万円

読み方は3つです。①AとBの差は消費税だけ。同じ1,000万円を集めても、資本金を半分にすれば設立1期目・2期目の消費税の判定が変わります。②CとDの差はありません。資本準備金に振っても均等割は資本金等の額で見るので年18万円のままで、消費税も資本金1,000万円「以上」に当たります。資本金を999万円・資本準備金1,001万円にすると資本準備金が2分の1を超えるので445条2項に反します(払込2,000万円なら資本金の下限は1,000万円)。③登録免許税はこの規模では全部15万円です。1,000分の7が15万円を超えるのは資本金が約2,143万円を超えてからです。

仕訳の型は単純です。設立日に、発起人口座から会社口座へ資金を移した時点で次のように記録します(パターンB)。

借方金額貸方金額摘要
普通預金10,000,000資本金5,000,000設立時払込(会社法445条1項)
資本準備金5,000,000445条2項・3項により資本金に計上しなかった額
創立費150,000普通預金150,000設立登記の登録免許税(会社計算規則43条1項3号により定款で定めれば資本金から控除もできる)

法人税の方は、資本金1億円以下なら所得1,000万円のとき 800万円×15%+200万円×23.2%=166.4万円、1億円超なら1,000万円×23.2%=232万円で、差は65.6万円です。設立直後の会社でこの線が問題になることはまれですが、増資で1億円を超える前に確認する線ではあります(法人税率に計算例)。

増資と減資 — 手続き・登録免許税・税務上の資本金等の額

資本金の額が動くのは、①株式を発行して払込みを受けたとき(445条1項)、②剰余金や準備金を資本金に組み入れたとき(450条・448条1項2号)、③資本金の額を減少したとき(447条)の3つです。会社計算規則25条は、資本金の額の増減をこの場合に限ると閉じています。

剰余金の資本組入れ(無償増資)は450条1項です。株主総会の決議が要ります(同条2項)。

株式会社は、剰余金の額を減少して、資本金の額を増加することができる。

減資は447条1項で、株主総会の決議で「減少する資本金の額」「準備金とする額」「効力発生日」を定めます(手続きの全体像・無償減資と有償減資の違い・均等割への効き方は減資とはに分けて書いています)。

株式会社は、資本金の額を減少することができる。この場合においては、株主総会の決議によって、次に掲げる事項を定めなければならない。

この決議は原則として特別決議(309条2項9号)ですが、定時株主総会で、かつ減少額が欠損の額を超えない場合だけは普通決議で足ります。

第四百四十七条第一項の株主総会(次のいずれにも該当する場合を除く。)イ定時株主総会において第四百四十七条第一項各号に掲げる事項を定めること。ロ第四百四十七条第一項第一号の額がイの定時株主総会の日(第四百三十九条前段に規定する場合にあっては、第四百三十六条第三項の承認があった日)における欠損の額として法務省令で定める方法により算定される額を超えないこと。

減資には債権者異議手続が必ず付きます(449条1項)。官報に公告し、知れている債権者には個別に催告し、異議を述べられる期間は1か月以上です。

前項の規定により株式会社の債権者が異議を述べることができる場合には、当該株式会社は、次に掲げる事項を官報に公告し、かつ、知れている債権者には、各別にこれを催告しなければならない。ただし、第三号の期間は、一箇月を下ることができない。

効力が生じるのは決議で定めた効力発生日ですが、債権者異議手続が終わっていなければ生じません(449条6項)。

次の各号に掲げるものは、当該各号に定める日にその効力を生ずる。ただし、第二項から前項までの規定による手続が終了していないときは、この限りでない。

会計上、減らした資本金はその他資本剰余金に移ります(会社計算規則27条1項1号)。

法第四百四十七条の規定により資本金の額を減少する場合同条第一項第一号の額(同項第二号に規定する場合にあっては、当該額から同号の額を減じて得た額)に相当する額

ここから先が税務との分かれ目です。その他資本剰余金に置いたまま、あるいは繰越損失の填補に充てるだけなら、株主にお金は出ていかないので法人税法の資本金等の額は動かず(施行令8条1項12号)、みなし配当も生じません。均等割は、欠損填補に充てた分だけ地方税法23条1項4号の2で引かれます。一方、減資と同時に剰余金を配当する(有償減資)と、「資本の払戻し」として配当部分の一部がみなし配当になります(みなし配当)。

会社法の手続登録免許税(別表第一24号(一))法人税法の資本金等の額地方税法の資本金等の額(均等割)
新株発行による増資募集株式の発行(199条以下)。資本金の額の変更登記(915条)ニ 増加した資本金の額の1,000分の7、最低3万円増える(施行令8条1項1号)増える
剰余金・準備金の資本組入れ(無償増資)450条・448条1項2号。株主総会決議。変更登記ニ 同上動かない(出資を受けた額が変わらない)加算される(23条1項4号の2イ(1))
減資(株主に払い戻さない)447条。原則特別決議。債権者異議(449条)。変更登記ツ 登記事項の変更 1件3万円動かない(8条1項12号で足し戻す)欠損填補に充てた額だけ控除。その他資本剰余金に置いたままなら動かない
減資+剰余金の配当(有償減資)447条+453条以下。債権者異議同上払戻しの部分に応じて減る。みなし配当減る

合同会社など持分会社の減資は620条(損失填補のため)と626条(出資の払戻しのため)で、債権者異議は627条です。株式会社と違って効力発生日は「手続が終了した日」です。

持分会社は、損失のてん補のために、その資本金の額を減少することができる。
資本金の額の減少は、前各項の手続が終了した日に、その効力を生ずる。

個人事業主・合同会社・出資金との違い

個人事業主に資本金はありません。所得税法の全文1,095,638字に「資本金」は4回しか出ず、いずれも法人の話です。個人の帳簿で資本金の位置にあるのは「元入金」で、事業主貸・事業主借と一緒に年末に振り替える科目です(事業主貸・事業主借とは)。開業資金をいくら入れても登記も公示もされず、消費税の判定も資本金ではなく課税売上高だけで行います。

合同会社には資本金があります。会社計算規則30条1項は、持分会社の資本金の額を、社員が出資の履行をした場合に、払込みや給付がされた財産の価額の範囲内で「持分会社が資本金の額に計上するものと定めた額」が増加すると定めます。株式会社の「2分の1まで準備金」という枠とは違い、出資額のうちいくらを資本金にするかを会社が定める形です。登記事項であること(914条5号)、設立登記の登録免許税が資本金の額の1,000分の7(最低6万円)であること、税法上の線が「資本金の額又は出資金の額」で同じように引かれることは、株式会社と変わりません。

「出資金」は2つの意味で使われます。①協同組合・信用金庫・医療法人(持分あり)のように「資本金」ではなく「出資金」を持つ法人の自己資本。税法が「資本金の額又は出資金の額」と並べて書くのはこのためで、線の引き方は同じです。②他社や組合に出資した側が持つ資産科目としての「出資金」。貸借対照表の投資その他の資産に載り、出した側の勘定です。同じ語でも、受けた側(純資産)か出した側(資産)かで科目が違います。

株式会社の資本金合同会社の資本金協同組合等の出資金個人事業主の元入金
根拠会社法445条、会社計算規則43条会社計算規則30条各法人の根拠法法令に名前が無い(青色申告決算書の様式)
額の決め方払込額の全額、2分の1まで資本準備金に出資額の範囲内で会社が定めた額出資1口の金額×口数開業時の元手。翌年は前年の元入金+所得−事業主貸+事業主借
登記・公示登記事項(911条3項5号)登記事項(914条5号)登記事項(各法)なし
税法の線「資本金の額」で判定同左「出資金の額」で同じ線資本金の線は無い。消費税は課税売上高のみ
勘定科目の位置純資産・株主資本(会社計算規則76条2項1号)純資産・社員資本(同3項1号)純資産貸借対照表の「元入金」欄

最後に、純資産の部の区分を定める会社計算規則76条2項の柱書を引いておきます。資本金はこの5項目の最初です。

株主資本に係る項目は、次に掲げる項目に区分しなければならない。この場合において、第五号に掲げる項目は、控除項目とする。
法人税 計算機 — 所得と資本金(1億円以下か)を入れて、15%・23.2%の2段で税額を試算する

よくある質問

Q. 資本金とは何ですか?

A. 株主が会社に払い込んだ(または現物で給付した)財産のうち、会社法445条に従って「資本金の額」として計上した額です。原則は払込額の全額で、2分の1までは資本金にせず資本準備金にできます。定款の必須記載事項ではなく、登記事項(会社法911条3項5号)として公示されます。貸借対照表では純資産の部・株主資本の最初の項目です。

Q. 資本金は1円でも会社を作れますか?

A. 作れます。会社法には最低資本金の定めが無く、27条4号は「出資される財産の価額又はその最低額」を定款に書けと言うだけで、445条1項は払込額をそのまま資本金とするからです。ただし純資産額が300万円を下回る間は剰余金の配当ができず(458条)、設立登記の登録免許税は資本金がいくらでも最低15万円(合同会社6万円)かかります。

Q. 資本金はいくらにするのが一般的ですか?

A. 法令が決める線で言えば、一般に①消費税は資本金1,000万円以上だと設立1期目から課税事業者になる(消費税法12条の2)、②法人住民税の均等割は資本金等の額1,000万円を超えると標準税率で年7万円から18万円に上がる、③法人税の軽減税率・交際費800万円などは1億円以下、の3つが考慮されます。このほか許認可(建設業・人材派遣など)で財産的基礎が求められる業種や、取引先・金融機関から見た信用は業種ごとに事情が違うので、個別の判断は専門家に確認してください。

Q. 資本金と資本準備金の違いは何ですか?

A. どちらも株主の払込みから生まれる株主資本ですが、資本金は445条1項の原則の受け皿、資本準備金は同条2項・3項で「資本金に計上しないこととした額」の受け皿です。払込額の2分の1までしか資本準備金にできません。取り崩す手続は資本金が447条、準備金が448条で、どちらも原則として債権者異議手続(449条)が付きます。税務上は両方とも法人税法の「資本金等の額」に含まれるので、均等割の判定には差がありません。

Q. 「資本金の額」と「資本金等の額」はどう違いますか?

A. 資本金の額は会社法445条の額で、登記簿に載る数字です。資本金等の額は法人税法2条16号・施行令8条が定める税法上の額で、資本金の額に資本準備金相当額などを足し、自己株式の取得などを引いて計算します。株主に払い戻さない減資をしても資本金等の額は減りません(施行令8条1項12号)。法人住民税の均等割と、外形標準課税の資本割はこの資本金等の額(地方税法23条1項4号の2で一部調整)で計算します。

Q. 資本金として払い込んだお金は使ってはいけないのですか?

A. 使えます。払い込まれた財産は会社成立後は会社の財産で、会社法に「資本金に相当する現金を別に保管せよ」という規定はありません。会社法が守っているのは金額の側で、資本金の額を登記で公示し、剰余金の配当を446条の「剰余金の額」の範囲に限り、減らすときは債権者異議手続を要求する、という形で債権者を守っています。

Q. 減資をすると何が変わりますか?

A. 会社法上は株主総会の決議(原則特別決議)と債権者異議手続(官報公告・個別催告・1か月以上)を経て、効力発生日に資本金の額が減り、その分はその他資本剰余金に移ります(会社計算規則27条1項1号)。登録免許税は3万円です。株主に払い戻さない減資なら法人税法の資本金等の額は動かず、みなし配当も生じません。均等割は欠損填補に充てた額だけ地方税法の資本金等の額から引かれます。資本金1億円以下になっても外形標準課税には附則の入口(払込資本10億円超など)があるので、減資だけで外れるとは限りません。

Q. 合同会社や個人事業主にも資本金はありますか?

A. 合同会社にはあります。会社計算規則30条により、出資額の範囲内で会社が資本金の額と定めた額が資本金になり、登記され、税法の線も株式会社と同じ「資本金の額又は出資金の額」で引かれます。個人事業主には資本金はなく、元手は「元入金」として記録します。登記も公示もされず、消費税の判定も課税売上高だけで行います。

出典

本記事は一般的な情報提供を目的としたものです。個別の判断は税務署・税理士・司法書士にご確認ください。

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