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不服申立てとは — 条文は「選択」と書いている。8割が再調査の請求を飛ばし、認容割合は令和7年度で7.2%

結論から言うと、税務署などの処分に納得できないときの道は3つあり、そのうち最初の2つ(再調査の請求と審査請求)は、順番に踏むものではなく「どちらかを選ぶ」ものです。国税通則法75条1項1号は、この2つを並べたうえで「その処分に不服がある者の選択するいずれかの不服申立て」と書いています。再調査の請求を先に出さなければ審査請求できない、という決まりはありません。

実際、令和7年度に国税不服審判所に持ち込まれた審査請求3,159件のうち、79.8%は再調査の請求を経ずに直接来たものでした(国税不服審判所「令和7年度における審査請求の概要」)。同じ年度の認容割合は7.2%です。ただしこの割合は年によって大きく振れており、直近5年度の実測は7.1%から17.9%まで開きます。「認容率はおよそ1割」と一言で語れる数字ではありません。

もう1つ、実務でいちばん効くのに見落とされやすいのが期限が3つあり、しかも長さが違うことです。不服申立ては3月、再調査決定の後にする審査請求は1月、訴訟は6箇月。起算日と満了日の作り方は国税通則法10条が決めており、応当する日がない月に当たると末日に飛び、その日が休日ならさらに翌日へずれます。この記事では、3つの道の関係、期限の数え方、審判所という機関の作り、そして不服申立てをしている間も差押えは止まらないという原則までを、条文と公表件数だけで追いかけます。

不服申立てとは — 条文は「選択」と書いている

国税に関する法律に基づく処分(更正、決定、加算税の賦課決定、差押えなど)に不服があるとき、その取消しや変更を求める手続を不服申立てといいます。根拠は国税通則法75条1項です。

国税に関する法律に基づく処分で次の各号に掲げるものに不服がある者は、当該各号に定める不服申立てをすることができる。

そして1号が、税務署長・国税局長・税関長がした処分について、次のように定めます。

次に掲げる不服申立てのうちその処分に不服がある者の選択するいずれかの不服申立て

並べられているのは、イ「その処分をした税務署長、国税局長又は税関長に対する再調査の請求」と、ロ「国税不服審判所長に対する審査請求」の2つです。条文が使っている言葉は「選択する」であって、「まず再調査の請求をし、なお不服があるときは」ではありません。両者は上下関係ではなく並列です。

誰がした処分かで、選べる道が変わる

選択できるのは1号(税務署長・国税局長・税関長の処分)の場合だけです。2号の国税庁長官がした処分は国税庁長官に対する審査請求、3号の国税庁・国税局・税務署・税関以外の行政機関の長やその職員がした処分は国税不服審判所長に対する審査請求と、それぞれ道が1本に決まっています。再調査の請求という選択肢があるのは1号だけです。

ただし、再調査の請求を選んだ場合に審査請求ができなくなるわけでもありません。75条3項が、再調査の請求についての決定を経た後の処分になお不服があるときは審査請求ができると定めています。つまり「再調査の請求 → 審査請求」という順路も残っているので、実際の選択肢は「直接審査請求する」か「再調査の請求を挟む」かになります。

区分再調査の請求審査請求
相手処分をした税務署長・国税局長・税関長国税不服審判所長
判断する人処分をした行政機関の側第三者的立場の審判所
結論の名前決定(83条)裁決(98条)
結論の文書再調査決定書(84条7項)裁決書(101条)
次の段決定後になお不服なら審査請求(75条3項)裁決後は訴訟(115条1項)

期限は3つあり、長さが違う(3月・1月・6箇月)

不服申立ての期間は通則法77条1項です。

不服申立て(第七十五条第三項及び第四項(再調査の請求後にする審査請求)の規定による審査請求を除く。第三項において同じ。)は、処分があつたことを知つた日(処分に係る通知を受けた場合には、その受けた日)の翌日から起算して三月を経過したときは、することができない。ただし、正当な理由があるときは、この限りでない。

ここで注意したいのは、かっこ書きが「再調査の請求後にする審査請求」をこの3月から除いていることです。その分は2項が別に定めており、再調査決定書の謄本の送達があつた日の翌日から起算して一月と、3分の1の長さになります。再調査の請求を挟んだ人だけが、次の段で1月という短い期間に当たります。

さらに3項が、知ったかどうかにかかわらない上限を置いています。

不服申立ては、処分があつた日の翌日から起算して一年を経過したときは、することができない。ただし、正当な理由があるときは、この限りでない。

裁決の後に訴訟へ進む場合の期間は、通則法ではなく行政事件訴訟法14条1項です。

取消訴訟は、処分又は裁決があつたことを知つた日から六箇月を経過したときは、提起することができない。ただし、正当な理由があるときは、この限りでない。
場面期間根拠
処分に対する再調査の請求・審査請求処分を知った日の翌日から3月通則法77条1項
再調査決定の後にする審査請求再調査決定書の謄本の送達の翌日から1月通則法77条2項
知ったかどうかを問わない上限処分があった日の翌日から1年通則法77条3項
裁決の後にする取消訴訟裁決を知った日から6箇月行訴法14条1項
取消訴訟の上限裁決の日から1年行訴法14条2項
条文の書き方が2つの法律で違う

通則法77条は「翌日から起算して」と初日不算入を明記していますが、行訴法14条は「知つた日から」としか書いていません。期間計算の一般原則である民法140条は「期間の初日は、算入しない。ただし、その期間が午前零時から始まるときは、この限りでない。」と定めており、通則法10条1号もこれと同じ内容を国税の側に置いています。この記事では、行訴法14条の6箇月について起算日の細部までは確認しておらず、扱っていません。下の計算例はすべて通則法10条が適用される不服申立ての側のものです。

起算日と満了日は通則法10条が作る — 末日と休日で2回ずれる

「3月」がいつ終わるのかは、通則法10条1項が3つの号で決めています。1号が初日不算入、2号が暦に従うこと、そして3号が満了日の作り方です。

前号の場合において、月又は年の始めから期間を起算しないときは、その期間は、最後の月又は年においてその起算日に応当する日の前日に満了する。ただし、最後の月にその応当する日がないときは、その月の末日に満了する。

さらに2項が、その満了日が休日に当たるときの扱いを置いています。

国税に関する法律に定める申告、申請、請求、届出その他書類の提出、通知、納付又は徴収に関する期限(時をもつて定める期限その他の政令で定める期限を除く。)が日曜日、国民の祝日に関する法律(昭和二十三年法律第百七十八号)に規定する休日その他一般の休日又は政令で定める日に当たるときは、これらの日の翌日をもつてその期限とみなす。

この2つを重ねると、同じ「3月」でも2段階でずれることがあります。数字を置いて追いかけます。

通知を受けた日起算日(10条1号)応当日満了日
① 素直に決まる場合令和8年4月10日(金)令和8年4月11日令和8年7月11日令和8年7月10日(金)
② 応当日が無い場合令和8年11月29日(日)令和8年11月30日令和9年2月30日(存在しない)令和9年3月1日(月)

①は10条3号の本文どおりで、起算日4月11日の応当日である7月11日の前日、7月10日に満了します。②は2回ずれます。起算日が11月30日なので応当日は2月30日ですが、その日は存在しないので3号ただし書によりその月の末日、令和9年2月28日に満了します。ところが令和9年2月28日は日曜日なので、10条2項によりさらに翌日の令和9年3月1日(月)が期限になります。単純に「3か月後の同じ日」と数えると、①では1日早く、②では2日早く締め切ってしまいます。

無料ツール:日数計算・営業日計算 2つの日付の間の日数と「◯営業日後」を土日祝対応で計算します。ただし上の「3月」の満了日は日数ではなく暦の応当日で決まるため、通則法10条3号の作り方そのものはこのツールでは置き換えられません。決定書が届いてからの経過日数を確かめる用途に向きます。
期限日に投函すれば間に合う — 77条4項が22条を準用している

通則法77条4項は、22条(郵送等に係る納税申告書等の提出時期)の規定を不服申立てに係る再調査の請求書又は審査請求書について準用すると定めています。22条は、郵便または信書便で提出された場合にはその郵便物の通信日付印により表示された日に提出がされたものとみなすという規定です。つまり到達ではなく発信の日で判定されます。なお審査請求は、88条1項により処分をした行政機関の長を経由してすることもでき、その場合の期間計算は同条3項で、その行政機関の長に審査請求書が提出された時に審査請求がされたものとみなされます。

8割が再調査の請求を飛ばしている(令和7年度79.8%)

選択できるとして、実際にはどちらが選ばれているのでしょうか。国税不服審判所は毎年度「審査請求の状況」を公表しており、その中で再調査の請求を経ないで直接審査請求のあった件数と、経てきた件数を分けて集計しています。

年度審査請求の発生件数うち直接審査請求の割合
令和3年度73.0%
令和4年度3,034件73.1%
令和5年度3,917件65.7%
令和6年度3,537件69.6%
令和7年度3,159件79.8%

5年度とも、3分の2以上が再調査の請求を経ずに直接来ています。令和7年度は79.8%とこの5年で最も高い値でした。再調査の請求は、処分をした行政機関そのものが判断する仕組みなので、そこに1段挟む実益をどう見るかという判断が、この数字に表れていると読めます。

この記事では再調査の請求そのものの件数と認容割合は扱っていません。国税不服審判所が公表しているのは審査請求の統計で、再調査の請求の統計は国税庁が別に公表しています。本記事の執筆時点でその公表ページを一次情報として取得できなかったため、件数や割合を書いていません。

認容割合は「1割」では語れない — 5年で7.1%〜17.9%

審査請求のうち、納税者の請求が何らかの形で受け入れられた件数を認容件数といい、その処理件数に対する割合が認容割合です。直近5年度の実測は次のとおりです。

年度処理件数認容件数うち一部認容うち全部認容認容割合
令和3年度2,282件297件137件160件13.0%
令和4年度3,159件225件153件72件7.1%
令和5年度2,873件279件139件140件9.7%
令和6年度3,872件693件522件171件17.9%
令和7年度3,128件226件146件80件7.2%

最小の7.1%(令和4年度)と最大の17.9%(令和6年度)で、2.5倍の開きがあります。そして開きを作っているのは主に一部認容です。全部認容は160・72・140・171・80と2桁から3桁前半で動いているのに対し、一部認容だけが令和6年度に522件と、他の年度のおよそ3.5倍に跳ねています。令和7年度にはまた146件へ戻りました。

この記事が書かないこと

令和6年度に一部認容が跳ねた原因は、公表資料の数表からは読み取れません。同種の事案がまとまって処理された可能性は考えられますが、審判所の公表資料にその旨の説明は見当たらなかったため、理由は書いていません。言えるのは、単年度の認容割合を「この制度で勝てる確率」として引用すると、どの年を引くかで倍以上変わるということです。

認容以外の内訳も見ておきます。令和7年度の処理件数3,128件は、取下げ348件(11.1%)、却下379件(12.1%)、棄却2,175件(69.5%)、認容226件(7.2%)に分かれます。却下は中身を判断しないまま手続上の理由で退けられたもので、98条1項が「審査請求が法定の期間経過後にされたものである場合その他不適法である場合」と定めています。令和7年度は12.1%がここに落ちています。

税務署の処分に不服があるときの3つの道と、それぞれの期限 処分 更正・決定など 3月 3月 再調査の請求 処分をした税務署長・国税局長へ 再調査決定書の送達の翌日から1月 審査請求 国税不服審判所長へ 裁決 認容 7.2%(令和7年度) 6箇月 3月たっても裁決がなければ 処分の取消しの訴え(裁判所) 原則、裁決を経た後でなければ提起できない 期間の起算と満了は通則法10条。初日は算入せず、起算日の応当日の前日に満了する。 最後の月に応当日が無ければその月の末日、その日が休日ならさらに翌日。
再調査の請求と審査請求は上下関係ではなく選択(75条1項1号)。再調査の請求を挟んだときだけ、次の段の期間が1月に縮む(77条2項)。訴訟は原則として裁決を経た後だが、審査請求から3月たっても裁決がなければ経ずに提起できる(115条1項1号)。

国税不服審判所は、国税庁の通達に反する裁決ができるのか

国税不服審判所は、通則法78条1項が審査請求に対する裁決を行う機関と定めた組織です(同項は対象になる審査請求の範囲をかっこ書きで絞っており、国税庁長官に対する審査請求は除かれています)。ただし2項を読むと、国税不服審判所長は国税庁長官が財務大臣の承認を受けて任命するとあります。国税庁の外に置かれた完全な別組織ではありません。では、国税庁長官が出した通達と違う法令解釈で裁決することはできるのでしょうか。

この点を正面から扱っているのが99条です。1項がまず、事前の通知を義務づけます。

国税不服審判所長は、国税庁長官が発した通達に示されている法令の解釈と異なる解釈により裁決をするとき、又は他の国税に係る処分を行う際における法令の解釈の重要な先例となると認められる裁決をするときは、あらかじめその意見を国税庁長官に通知しなければならない。

そのうえで2項が、通知を受けた後の手続を定めます。国税庁長官は、審判所長の意見が審査請求人の主張を認容するもので、かつ国税庁長官がその意見を相当と認める場合を除き、審判所長と共同して国税審議会に諮問しなければなりません。そして3項が結論です。

国税不服審判所長は、前項の規定により国税庁長官と共同して国税審議会に諮問した場合には、当該国税審議会の議決に基づいて裁決をしなければならない。
条文が答えている形

「通達に反する裁決ができるか」への条文上の答えは、できるが、単独ではできないという形になっています。国税庁長官が審判所長の意見に納得すればそのまま裁決でき、納得しなければ第三者機関である国税審議会の議決に従うことになります。審判所長も国税庁長官も、どちらか一方の意向だけで結論を決められない構造です。

裁決の重みも条文に書かれています。102条1項は「裁決は、関係行政庁を拘束する。」と1文で定めています。また98条4項は、裁決をする場合には担当審判官及び参加審判官の議決に基づいてしなければならないとしており、審判所長の一存では裁決できません。国税審判官の資格は79条4項が政令に委任しています。

審理にかける時間の目安も置かれています。77条の2は、不服申立てが到達してから決定・裁決までに通常要すべき標準的な期間を定めるよう努めるとともに、定めたときは公にしておかなければならないと定めています。審判所はこれを1年と定めており、令和7年度の1年以内の処理件数割合は98.8%でした(審理を留保すべき事由が生じた事案の留保期間などを除いて算出したもの)。

不服申立てをしても、徴収は止まらない

実務でいちばん誤解されやすいのがここです。105条1項の本文は次のとおりです。

国税に関する法律に基づく処分に対する不服申立ては、その目的となつた処分の効力、処分の執行又は手続の続行を妨げない。

不服申立てをしても処分の効力は止まりません。更正処分に不服があると申し立てても、その更正で増えた税額の納付義務は残り、滞納すれば督促や差押えが進みます。これを執行不停止の原則といいます。

ただし同項のただし書が、1点だけ自動で止まるものを置いています。差し押さえた財産の滞納処分による換価は、その財産の価額が著しく減少するおそれがあるときや、不服申立人から別段の申出があるときを除き、その不服申立てについての決定または裁決があるまですることができません。差押えそのものは止まらないが、差し押さえた物を売る手続は原則として止まるという切り分けです。

それ以外は申立てか職権による個別判断になります。2項は、再調査審理庁または国税庁長官が、必要があると認める場合に、申立てによりまたは職権で徴収の猶予・滞納処分の続行の停止ができると定めています。3項は、担保を提供して差押えをしないことや差押えの解除を求めた場合に、相当と認めるときはそれができるとしています。審査請求の側では4項と5項が、国税不服審判所長が徴収の所轄庁に対してこれらを求めることができると定め、6項で求められた徴収の所轄庁は猶予・停止・解除をしなければならないとしています。

「争っているから払わなくてよい」は条文に無い

105条1項本文が「妨げない」と書いている以上、一般に、不服申立て中であることそれ自体は納付を先送りする理由にはなりません。資金繰りの問題があるときは、不服申立てとは別に徴収の猶予(105条2項)や担保提供(同3項)を申し立てるかどうかという話になります。実際の判断は所轄の税務署または税理士に確認することになります。

相手が出した書類は見られる — 97条の3の閲覧と写しの交付

審査請求では、原処分庁(処分をした行政機関の長)が答弁書を出します。93条1項が、国税不服審判所長は相当の期間を定めて原処分庁から答弁書を提出させるものとすると定め、2項が「審査請求の趣旨及び理由に対応して、原処分庁の主張を記載しなければならない」としています。3項により、その答弁書は審査請求人に送付されます。

それだけではありません。97条の3第1項は、審理関係人が審理手続の終結までの間、担当審判官に対して、提出された書類その他の物件の閲覧または写しの交付を求めることができると定めています。そして同項の後段が、拒否できる場面を絞っています。

この場合において、担当審判官は、第三者の利益を害するおそれがあると認めるとき、その他正当な理由があるときでなければ、その閲覧又は交付を拒むことができない。

「拒むことができる」ではなく「〜でなければ拒むことができない」という書き方なので、原則は開示の側にあります。ただし2項により、担当審判官は閲覧・交付をしようとするときは提出人の意見を聴かなければならず(必要がないと認めるときを除く)、3項により日時と場所を指定することができます。4項は交付に手数料がかかることを定め、5項は経済的困難その他特別の理由があるときの減額・免除を置いています。

審査請求人の側からも証拠を出せます。96条が証拠書類等の提出を、95条が反論書等の提出を、95条の2が口頭意見陳述を定めています。再調査の請求の側にも同種の規定があり、84条1項は、申立てがあった場合には口頭で意見を述べる機会を与えなければならない(申立人の所在その他の事情により困難と認められる場合を除く)としています。

代理人は弁護士・税理士に限られない

107条1項は「不服申立人は、弁護士、税理士その他適当と認める者を代理人に選任することができる。」と定めています。列挙は限定ではなく、「その他適当と認める者」が続きます。2項により代理人は一切の行為ができますが、ただし書で不服申立ての取下げと代理人の選任だけは特別の委任を受けた場合に限るとされています。

不利益に変更されることはない(83条3項・98条3項)

争ったせいでかえって税額が増えるのではないか、という心配に対しては、条文が明示的に答えています。審査請求について定める98条3項は、審査請求が理由がある場合に処分の全部または一部を取り消し、または変更するとしたうえで、こう続けます。

ただし、審査請求人の不利益に当該処分を変更することはできない。

再調査の請求についても、83条3項が同じ形の規定を置いています。

ただし、再調査の請求人の不利益に当該処分を変更することはできない。

どちらの手続でも、不利益変更は条文で明示的に禁じられています。取り消すか、変更するか、そのままにするかであって、争った側が申し立てた処分について、より重い方へ動かす道は条文に用意されていません。

ただしこれはその不服申立ての対象になっている処分についての話です。別途の調査によって別の処分が行われることまでを禁じる規定ではありません。この記事では、その関係についての裁判例・裁決例は確認しておらず、扱っていません。

結論の出し方は3通りで、83条・98条とも同じ構造です。

結論どんなときか審査請求再調査の請求
却下法定の期間経過後にされたものである場合その他不適法である場合98条1項83条1項
棄却理由がない場合98条2項83条2項
取消し・変更理由がある場合(不利益変更は不可)98条3項83条3項

教示の制度 — 3月後の教示と、誤った教示の救済

手続を知らないまま期限を過ぎてしまうことへの手当てとして、通則法は行政の側に「教示」を義務づけています。

まず84条9項が、再調査決定書に、審査請求をすることができる旨と審査請求期間を記載して教示しなければならないと定めています(再調査の請求に係る処分の全部を取り消す決定に係るものを除き、却下の決定である場合は当該却下の決定が違法な場合に限り審査請求をすることができる旨)。

次に111条1項が、時間が経ったときの教示を置いています。

再調査審理庁は、再調査の請求がされた日(第八十一条第三項(再調査の請求書の記載事項等)の規定により不備を補正すべきことを求めた場合にあつては、当該不備が補正された日)の翌日から起算して三月を経過しても当該再調査の請求が係属しているときは、遅滞なく、当該処分について直ちに国税不服審判所長に対して審査請求をすることができる旨を書面でその再調査の請求人に教示しなければならない。

これは75条4項1号と対になっています。同号は、再調査の請求をした日の翌日から起算して3月を経過しても決定がない場合には、決定を経ないで国税不服審判所長に対して審査請求をすることができると定めています。権利を与える条文と、その権利があることを本人に知らせる義務が、別々の条に置かれているという作りです。

そして112条が、教示そのものが間違っていた場合の救済です。誤って別の行政機関を教示し、その機関に不服申立てがされたときは、その機関は速やかに正しい宛先へ書類を送付し、その旨を通知しなければなりません(1項)。2項・3項は、再調査の請求ができる旨や審査請求ができる旨を誤って教示しなかった場合の送付を定めています。そして5項が結論を出します。

第一項から第三項までの規定により再調査の請求書又は審査請求書が再調査の請求をすべき行政機関又は国税不服審判所長若しくは国税庁長官に送付されたときは、初めから再調査の請求をすべき行政機関に再調査の請求がされ、又は国税不服審判所長若しくは国税庁長官に審査請求がされたものとみなす。

「初めから」とみなされるので、送付に要した期間で期限を過ぎることはありません。行政の側の教示の誤りが、本人の期限を食い潰さない作りになっています。

訴訟へ進むには裁決を経る。ただし3月で外れる

裁決になお納得できないときは訴訟です。ただし通則法115条1項が、順序を義務づけています。

国税に関する法律に基づく処分(第八十条第三項(行政不服審査法との関係)に規定する処分を除く。以下この節において同じ。)で不服申立てをすることができるものの取消しを求める訴えは、審査請求についての裁決を経た後でなければ、提起することができない。

これを不服申立前置といいます。いきなり裁判所へ行くことはできず、審査請求の裁決を先に受ける必要があります。ただし同項のただし書が3つの例外を置いており、実務でよく使われるのが1号です。

国税不服審判所長又は国税庁長官に対して審査請求がされた日の翌日から起算して三月を経過しても裁決がないとき。

2号は、更正決定等の取消しを求める訴えを提起した者が、その訴訟の係属中に別の更正決定等の取消しを求めようとするとき。3号は、裁決を経ることにより生ずる著しい損害を避けるため緊急の必要があるとき、その他裁決を経ないことにつき正当な理由があるときです。「3月」という数字が、再調査の請求から審査請求へ飛ぶ場面(75条4項1号)と、審査請求から訴訟へ飛ぶ場面(115条1項1号)の両方に置かれています。

訴訟に進んだ後については、通則法114条が、この節および他の国税に関する法律に別段の定めがあるものを除き、行政事件訴訟法その他の一般の行政事件訴訟に関する法律の定めるところによるとしています。その別段の定めの1つが116条です。

訴訟では、有利な事実を後出しすると却下されうる

116条1項は、更正決定等・納税の告知に係る取消訴訟において、原告が必要経費または損金の額の存在その他これに類する自己に有利な事実につき課税処分の基礎とされた事実と異なる旨を主張しようとするときは、国が課税処分の基礎となった事実を主張した日以後遅滞なくその異なる事実を具体的に主張し、あわせて証拠の申出をしなければならないと定めています(責めに帰することができない理由で遅滞なくできなかったことを証明したときを除く)。2項は、これに違反した主張・証拠の申出を、民事訴訟法157条1項(時機に後れた攻撃防御方法の却下)の適用については時機に後れて提出した攻撃又は防御の方法とみなすとしています。「後から領収書が出てきた」を後出しすると、この規定に当たる可能性があります。

なお、不服申立ての対象にならない処分もあります。76条1項は、この節または行政不服審査法の規定による処分その他不服申立てについてした処分について、75条を適用しないと定めています。裁決や決定そのものに対して、もう一度不服申立てをすることはできません。

よくある質問

Q. 再調査の請求をしてからでないと、審査請求はできませんか?

A. できます。国税通則法75条1項1号は、税務署長・国税局長・税関長がした処分について、再調査の請求と審査請求を並べたうえで「その処分に不服がある者の選択するいずれかの不服申立て」と定めており、順番を義務づけていません。国税不服審判所の公表資料によると、令和7年度に発生した審査請求3,159件のうち79.8%が、再調査の請求を経ないで直接された審査請求でした。

Q. 期限の「3月」は、いつから数えますか?

A. 通則法77条1項は、処分があったことを知った日(処分に係る通知を受けた場合には、その受けた日)の翌日から起算して三月と定めています。満了日の作り方は通則法10条1項3号で、起算日に応当する日の前日に満了し、最後の月にその応当する日がないときはその月の末日に満了します。さらに同条2項により、その日が日曜日や祝日その他一般の休日に当たるときは翌日が期限とみなされます。

Q. 再調査の請求の決定に不服がある場合、また3か月ありますか?

A. その場合は1月です。通則法77条1項のかっこ書きが「再調査の請求後にする審査請求」を3月の対象から除いており、77条2項が、再調査決定書の謄本の送達があった日の翌日から起算して一月を経過したときはすることができないと定めています。ただし正当な理由があるときはこの限りでないという但書が付いています。

Q. 審査請求をしている間、税金の納付や差押えは止まりますか?

A. 一般に止まりません。通則法105条1項本文が、不服申立ては処分の効力、処分の執行または手続の続行を妨げないと定めています。同項ただし書により、差し押さえた財産の滞納処分による換価だけは、その財産の価額が著しく減少するおそれがあるときなどを除き、決定または裁決があるまでできません。徴収の猶予や差押えの解除は、105条2項・3項に基づく個別の申立てまたは職権による判断になります。

Q. 審査請求で認められる割合はどのくらいですか?

A. 国税不服審判所の公表資料によると、認容割合は令和3年度13.0%、令和4年度7.1%、令和5年度9.7%、令和6年度17.9%、令和7年度7.2%です。5年度の幅は7.1%から17.9%で、単年度の数字を一般的な確率として引用すると、どの年度を引くかで倍以上変わります。令和6年度が高いのは主に一部認容が522件と他の年度のおよそ3.5倍に増えたためですが、その原因は公表資料の数表からは読み取れません。

Q. 審査請求で税務署が出した書類を見ることはできますか?

A. 通則法97条の3第1項が、審理関係人は審理手続が終結するまでの間、担当審判官に対して提出された書類その他の物件の閲覧または写しの交付を求めることができると定めています。同項後段は、担当審判官は第三者の利益を害するおそれがあると認めるとき、その他正当な理由があるときでなければ拒むことができないとしています。写しの交付には手数料がかかりますが、経済的困難その他特別の理由があると認めるときは減額・免除の規定が同条5項にあります。

Q. 争ったことで、かえって税額が増えることはありますか?

A. その不服申立ての対象になっている処分については、条文で禁じられています。通則法98条3項ただし書が「審査請求人の不利益に当該処分を変更することはできない。」と定め、再調査の請求についても83条3項が同じ形の規定を置いています。ただしこれは対象となっている処分についての規定であり、別途の調査によって別の処分が行われる場合まで扱う規定ではありません。

Q. 裁決を待たずに裁判所へ訴えることはできますか?

A. 原則としてできません。通則法115条1項が、取消しを求める訴えは審査請求についての裁決を経た後でなければ提起することができないと定めています。ただし同項1号により、国税不服審判所長または国税庁長官に対して審査請求がされた日の翌日から起算して三月を経過しても裁決がないときは、裁決を経ずに提起できます。2号(訴訟係属中の他の更正決定等)と3号(著しい損害を避けるため緊急の必要があるとき、その他正当な理由があるとき)も例外として置かれています。

出典

この記事は一般的な情報提供であり、個別の税務についての助言ではありません。実際に不服申立てをするかどうか、どの手続を選ぶか、期限がいつかの判断は、処分の内容と通知書の記載によって変わります。再調査の請求の件数と認容割合、裁判例・裁決例、地方税の不服申立て(地方税法・行政不服審査法)の手続、および審査請求書の具体的な記載方法は、この記事では扱っていません。実際の手続にあたっては所轄の税務署、税理士または弁護士にご確認ください。

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