修正申告と更正の請求 — 申告を間違えたときの直し方と、加算税・延滞税はいくらかかるか
結論から言うと、直す向きで手続の名前が変わります。納める税額が増える(または還付される額が減る)向きが修正申告(国税通則法19条)、納めた税額が多すぎた(または還付される額が少なすぎた)向きが更正の請求(同23条)です。同じ「間違いを直す」でも、根拠条文も、提出する書類も、期限もそれぞれ別です。
そして期限は対称ではありません。19条には期限の定めがなく、「更正があるまでは」修正申告書を提出できると書いてあるだけです。一方23条1項は「法定申告期限から五年以内に限り」と明示しています。払い足す方向にだけ期限がなく、取り戻す方向にだけ5年の壁があるという形です。
費用の面では、覚えておく数字が2つあります。ひとつは加算税の率が「いつ出したか」で決まること。税務署の調査の事前通知より前に自主的に修正申告すれば、過少申告加算税はかかりません(65条6項)。もうひとつは延滞税の割合が令和8年に5年ぶりに上がったことです。令和4年から令和7年までは4年続けて年2.4%(納期限の翌日から2か月経過後は年8.7%)でしたが、令和8年は年2.8%/年9.1%になりました。昨年書かれた記事の数字をそのまま使うと合いません。以下、条文から確認できることと、条文の外にあるため断定を避けたことを分けて示します。
結論:増える向きは修正申告、減る向きは更正の請求
国税通則法は、納税者が自分の申告を直す方法を2つに分けて書いています。分け方の基準は「間違いの内容」ではなく「直した結果、税額がどちらに動くか」です。
| 修正申告 | 更正の請求 | |
|---|---|---|
| 根拠条文 | 通則法19条 | 通則法23条 |
| 使う場面 | 納付すべき税額に不足がある/還付される税額が過大だった/純損失等の金額が過大だった | 納付すべき税額が過大だった/還付される税額が過少だった/純損失等の金額が過少だった |
| 出す書類 | 修正申告書(19条3項) | 更正請求書(23条3項) |
| 期限 | 定めなし(更正があるまで) | 法定申告期限から5年(法人税の純損失等は10年) |
| 効果 | 提出した時点で税額が確定する | 税務署が調査し、更正するか、理由がない旨を通知する(23条4項) |
| お金の向き | 追加で納付(+加算税・延滞税) | 還付(+還付加算金) |
大きな違いは効果のところにあります。修正申告は、提出しただけで税額が確定します。これに対して更正の請求は「請求」であって確定行為ではありません。23条4項は、税務署長が調査したうえで「更正をし、又は更正をすべき理由がない旨をその請求をした者に通知する」と定めています。つまり出せば必ず戻るわけではなく、認められなければ理由がない旨の通知が来ます。
もう一点、23条5項は「更正の請求があつた場合においても、税務署長は、その請求に係る納付すべき国税の徴収を猶予しない」と定めています。更正の請求をしたからといって、今の納税義務が止まるわけではないという意味です。ただし同項ただし書で、相当の理由があると認めるときは徴収を猶予できるとされています。
期限は非対称。5年の壁があるのは更正の請求だけ
19条1項は、修正申告書を提出できる場面を「その申告について第二十四条(更正)の規定による更正があるまでは」と限っています。ここに年数は書かれていません。税務署から更正が来るまでは、いつでも出せるという構造です。
一方、23条1項は「当該申告書に係る国税の法定申告期限から五年(第二号に掲げる場合のうち法人税に係る場合については、十年)以内に限り」としています。かっこ書きの10年は、法人税の純損失等の金額(欠損金)が過少だった場合に限った延長です。納付税額そのものが過大だった場合は法人税でも5年です。
23条1項各号が挙げているのは、①計算が国税に関する法律の規定に従っていなかった、または②計算に誤りがあったことにより税額が過大になった場合です。国税庁のタックスアンサーNo.2026も、所得金額の増減や所得控除の追加があっても最終的な税額または純損失の金額に異動がない場合は更正の請求はできないと説明しています。動くのが税額でなければ請求の対象になりません。
5年を過ぎても使える道が、条文上は用意されている
23条2項は、後から事情が変わった場合について別の期間を定めています。ここが実務で効くのは、5年を過ぎてしまった場面です。
| 号 | 事由 | 期間 |
|---|---|---|
| 1号 | 計算の基礎となった事実に関する訴えについての判決(判決と同一の効力を有する和解等を含む)により、その事実が違っていたことが確定した | 確定した日の翌日から2か月 |
| 2号 | 自分に帰属するとされていた所得が他の者に帰属するとする、その他の者に係る更正または決定があった | その日の翌日から2か月 |
| 3号 | 法定申告期限後に生じた、1号・2号に類する政令で定めるやむを得ない理由 | その理由が生じた日の翌日から2か月 |
3号の「政令で定めるやむを得ない理由」は、通則法施行令6条1項が5つ列挙しています。①行為の効力に係る官公署の許可その他の処分が取り消されたこと、②計算の基礎となった事実に係る契約が、解除権の行使によって解除され、もしくは契約の成立後に生じたやむを得ない事情によって解除され、または取り消されたこと、③帳簿書類の押収その他やむを得ない事情により計算できなかった場合に、その事情が消滅したこと、④租税条約の権限のある当局間の協議で異なる内容の合意が行われたこと、⑤国税庁長官の法令解釈が裁決・判決に伴って変更され、変更後の解釈が公表されたことを知ったことです。②の契約解除は、売買が後から解除された場合など、実務でも起こりうる形です。
23条2項の本文には、納税申告書を提出した者については「当該各号に定める期間の満了する日が前項に規定する期間の満了する日後に到来する場合に限る」という限定が付いています。つまり、まだ5年以内なのであれば1項の5年でそのまま請求できるので、2項の2か月は5年を過ぎた後に効いてくる救済という位置づけです。判決が出たからといって、5年以内の分について2か月に短縮されるわけではありません。
税務署の側にも期間制限がある
納税者が直せる期間と、税務署が更正・決定できる期間は別々に決まっています。70条1項は更正または決定を法定申告期限から5年を経過した日以後はできないとし、70条5項は偽りその他不正の行為により税額を免れた場合について7年としています。70条2項は法人税の純損失等の金額を増減させる更正を10年としています。更正の請求の5年・10年と数字が揃っているのは、この対応関係によるものです。
過少申告加算税は0%・5%・10%の3段(3段目は6項にある)
ここが、この記事でいちばん実益のある部分です。過少申告加算税の率は、間違いの重さではなく「いつ出したか」で決まります。
65条1項の本文は「百分の十の割合」と書き、そのすぐ後のかっこ書きで「修正申告書の提出が、その申告に係る国税についての調査があつたことにより当該国税について更正があるべきことを予知してされたものでないときは、百分の五の割合」としています。ここまでで10%と5%の2段です。
3段目は同じ条の6項にあります。6項は、更正を予知したものでない修正申告のうち「調査通知がある前に行われたものであるときは、適用しない」と定めています。つまり調査通知より前に自主的に出せば、過少申告加算税は課されません(0%)。1項だけを読むと「必ず5%か10%」に見えるので、ここは条文をまたいで読む必要があります。
ここでいう「調査通知」は、事前通知そのものではありません。65条6項は、74条の9第1項4号(調査の対象となる税目)と5号(調査の対象となる期間)その他政令で定める事項の通知、と書いています。政令(国税通則法施行令27条4項)が定めているのは「実地の調査において質問検査等(中略)を行わせる旨」です。つまり調査通知はこの3つで成立し、事前通知の10項目すべてが揃うことを要件にしていません。実務では同じ連絡の中で伝えられることが多いと思われますが、条文が分岐点として指しているのは調査通知のほうです。事前通知の中身や調査の手続そのものは税務調査とは|事前通知10項目・何年分さかのぼるかにまとめました。
もうひとつ、令和6年1月1日以後に法定申告期限が到来する国税から、帳簿の不備による加重が加わりました。65条4項は、調査で帳簿の提示・提出を求められたときに、提示等をしなかった場合や特定事項の記載が著しく不十分な場合に10%、記載が不十分な場合に5%を上乗せすると定めています。国税庁の説明では、売上金額の記載等が本来記載すべき金額の2分の1未満なら10%、3分の2未満なら5%とされています。
「50万円を超えたら15%」は正確ではない
過少申告加算税の説明でよく見る「新たに納める税金が50万円を超える部分は15%」という言い方は、条文の一部だけを取り出したものです。65条2項の実際の文言はこうです。
前項に規定する納付すべき税額……がその国税に係る期限内申告税額に相当する金額と五十万円とのいずれか多い金額を超えるときは、……その超える部分に相当する税額……に百分の五の割合を乗じて計算した金額を加算した金額とする。
閾値は50万円ではなく、「期限内申告税額」と「50万円」のいずれか多い金額です。期限内申告税額が50万円以下の人にとっては結果的に50万円が閾値になりますが、もともと大きな税額を申告している法人や個人事業主では、閾値は50万円ではなくその申告税額になります。
| 期限内申告税額 | 増差税額 | 閾値(多い方) | 正しい加算税 | 「50万円」と誤解した場合 |
|---|---|---|---|---|
| 20万円 | 70万円 | 50万円 | 80,000円 | 80,000円(差なし) |
| 60万円 | 70万円 | 60万円 | 75,000円 | 80,000円(5,000円多い) |
| 300万円 | 200万円 | 300万円 | 200,000円 | 275,000円(75,000円多い) |
※ いずれも調査による更正を予知した後の修正申告(本則10%)として計算しています。3行目は増差税額200万円が閾値300万円を超えないので、5%の加算がまったく発生しません。
この非対称は意図されたものと読めます。もともと申告していた税額に対して、追加分がどのくらい大きいかを見ているので、規模の大きい納税者ほど「重い方の段」に入りにくい構造になっています。
無申告加算税の30%は、全体にはかからない
期限内に申告書を出さなかった場合は、過少申告加算税ではなく無申告加算税です(66条)。率は3段階に分かれますが、この3段は所得税の税率と同じ「ブラケット」で、超えた部分だけに高い率がかかります。66条3項は「加算後累積納付税額を次の各号に掲げる税額に区分してそれぞれの税額に当該各号に定める割合を乗じて計算した金額の合計額」と書いています。
| 納付すべき税額の区分 | 調査後(予知後) | 事前通知後・予知前 | 事前通知より前 |
|---|---|---|---|
| 50万円以下の部分 | 15% | 10% | 5% (66条8項) |
| 50万円超300万円以下の部分 | 20% | 15% | |
| 300万円を超える部分 | 30% | 25% |
※ 300万円超の30%は、令和5年度改正で設けられた区分で、令和6年1月1日以後に法定申告期限が到来する国税から適用されます。「事前通知後・予知前」の列が各段5%低いのは、66条3項のかっこ書きが「その割合から百分の五の割合を減じた割合」と定めているためです。
納付すべき税額が500万円で、調査を受けた後に期限後申告をした場合を計算してみます。
- 50万円以下の部分:500,000円 × 15% = 75,000円
- 50万円超300万円以下の部分:2,500,000円 × 20% = 500,000円
- 300万円を超える部分:2,000,000円 × 30% = 600,000円
- 合計 1,175,000円
これを「300万円を超えているから全体に30%」と読むと 5,000,000円 × 30% = 1,500,000円 となり、325,000円も過大になります。同じケースで事前通知の後・予知の前に出していれば各段5%低い10/15/25%が適用され、合計は925,000円です。
期限後申告でも無申告加算税がゼロになる道
66条9項は、期限後申告書の提出が更正・決定を予知したものでない場合において、期限内申告書を提出する意思があったと認められる場合として政令で定める場合に該当し、かつ法定申告期限から一月を経過する日までに行われたものであるときは、無申告加算税を適用しないと定めています。国税庁の説明では、この「意思があったと認められる場合」とは、期限後申告に係る納付すべき税金の全額を法定納期限(口座振替納付の手続をした場合は期限後申告書を提出した日)までに納付していること、および提出日の前日から起算して5年前までの間に無申告加算税・重加算税を課されたことがなく、かつこの不適用を受けていないこと、の両方を満たす場合とされています。
66条6項は、過去5年以内に同じ税目について無申告加算税等を課されたことがある場合などに10%の上乗せを定めています。令和6年1月1日以後に法定申告期限が到来する国税については、前年・前々年に無申告加算税等を課されたことがある場合も加重の対象に加わりました(同項2号)。一度きりの無申告と、繰り返している無申告とでは条文上の扱いが違います。
重加算税は「代えて」課す。上乗せではない
事実の全部または一部を隠蔽し、または仮装した場合には重加算税が課されます(68条)。ここで条文の言葉遣いが重要です。68条1項は「過少申告加算税に代え、当該基礎となるべき税額に百分の三十五の割合を乗じて計算した金額に相当する重加算税を課する」と書いています。「代え」であって「加え」ではありません。
| 場面 | 本来の加算税 | 重加算税 | 繰り返しの加重(68条4項) |
|---|---|---|---|
| 過少申告に隠蔽・仮装があった | 過少申告加算税に代えて | 35% | +10% = 45% |
| 無申告に隠蔽・仮装があった | 無申告加算税に代えて | 40% | +10% = 50% |
| 源泉所得税の不納付に隠蔽・仮装があった | 不納付加算税に代えて | 35% | +10% = 45% |
先ほどの500万円の例で言えば、無申告加算税1,175,000円に重加算税が上乗せされるのではなく、無申告加算税に代えて 5,000,000円 × 40% = 2,000,000円が課される形です。過去5年以内に同じ税目で無申告加算税等を課されたことがあれば68条4項1号により10%が加わり、50%=2,500,000円になります。
後述する延滞税の「1年ルール」(61条1項)は、「偽りその他不正の行為により国税を免れ……予知して提出した」修正申告を除くと書いています。つまり隠蔽・仮装があった場面ではこの期間控除が働かず、延滞税が全期間ぶんかかります。さらに70条5項により税務署が更正できる期間も5年ではなく7年になります。率の35%・40%だけを見ていると、この2つを見落とします。
延滞税は令和8年に上がった(2.8%/9.1%)
延滞税は、法定納期限までに納めなかった税額に対して日割りでかかる利息に相当するものです(60条)。60条2項の本則は年14.6%で、ただし書が「納期限までの期間又は納期限の翌日から二月を経過する日までの期間」は年7.3%としています。
ただし、この14.6%と7.3%は実際にはそのまま適用されません。租税特別措置法94条1項が、延滞税特例基準割合(平均貸付割合+年1%)が年7.3%に満たない場合に、次のように読み替えると定めているためです。
- 年7.3%の方 → 延滞税特例基準割合+年1%(年7.3%を超える場合は年7.3%)
- 年14.6%の方 → 延滞税特例基準割合+年7.3%
国税庁が公表している実際の割合は次のとおりです。
| 期間 | ①納期限まで/その翌日から2か月 | ②2か月を経過した日の翌日以後 |
|---|---|---|
| 令和3年 | 2.5% | 8.8% |
| 令和4年 | 2.4% | 8.7% |
| 令和5年 | 2.4% | 8.7% |
| 令和6年 | 2.4% | 8.7% |
| 令和7年 | 2.4% | 8.7% |
| 令和8年 | 2.8% | 9.1% |
令和4年から令和7年まで4年続けて据え置かれていた割合が、令和8年に動きました。還付加算金・利子税の特例基準割合も同じく年0.9%から年1.3%へ上がっています。
令和8年の①2.8%は「平均貸付割合+1%+1%」なので、平均貸付割合は0.8%と逆算できます。②9.1%は「平均貸付割合+1%+7.3%」なので、こちらも0.8%。還付加算金特例基準割合1.3%は「平均貸付割合+0.5%」なので、やはり0.8%です。独立に公表された3つの数字が、同じ0.8%に収束します。数字を書き写すときの検算に使えます。
修正申告の「納期限」は、提出した日
ここが延滞税の額を大きく左右します。35条2項1号は、期限後申告書または修正申告書の提出により納付すべき税額について、納期限を「その期限後申告書又は修正申告書を提出した日」と定めています。
60条2項ただし書の低い方の率(令和8年なら2.8%)が適用されるのは「納期限までの期間」と「納期限の翌日から2か月を経過する日までの期間」です。修正申告では納期限=提出日ですから、提出した日にそのまま納付すれば、法定納期限の翌日から提出日までの全期間が低い方の率で計算されます。高い方の率(9.1%)が出てくるのは、提出してから2か月を超えて放置した場合だけです。
※ 税務署から更正を受けた場合は納期限が異なります。35条2項2号は「更正通知書……が発せられた日の翌日から起算して一月を経過する日」を納期限としています。
5年前の申告を直しても、延滞税は5年分ではない
古い年分の間違いに気づいたとき、多くの人が「4年も5年も分の延滞税がかかるのでは」と考えます。期限内申告書を出していた場合は、そうなりません。61条1項1号が期間の控除を定めているためです。
その申告又は更正に係る国税について期限内申告書が提出されている場合において、その法定申告期限から一年を経過する日後に当該修正申告書が提出され……たとき その法定申告期限から一年を経過する日の翌日から当該修正申告書が提出され……た日までの期間
この期間が60条2項の計算期間から差し引かれます。結果として、延滞税がかかるのは①法定納期限の翌日から1年経過日までの1年間と、②修正申告書を提出した日の翌日から完納日までだけになります。間の期間は、何年空いていても計算に入りません。
令和3年分の所得税(法定申告期限は令和4年3月15日)について、令和8年2月10日に増差税額100万円の修正申告をして同日納付したとします。
- 1年ルールが働く場合:令和4年3月16日から令和5年3月15日までの365日。令和4年・令和5年とも①の割合は2.4%なので、1,000,000円 × 2.4% × 365/365 = 24,000円
- 控除が働かない場合(偽りその他不正の行為があったとき):令和4年3月16日から令和8年2月10日までの1,428日。年ごとの割合が変わるため区切って計算し、令和4年291日・令和5年365日・令和6年366日・令和7年365日が2.4%、令和8年41日が2.8%で、合計94,300円(100円未満切捨て後)
およそ4倍の差です。61条1項のかっこ書きが「偽りその他不正の行為により国税を免れ……予知して提出した当該申告書……を除く」としているので、隠蔽・仮装があった場面ではこの控除は使えません。重加算税の35%・40%とは別に、ここでも差がつきます。
措置法94条1項は「その年中においては」と書いています。したがって年をまたぐ延滞は、年ごとに割合を切り替えて計算します。上の例では令和7年12月31日までが2.4%、令和8年1月1日からが2.8%です。令和8年に入ってから延滞している日数の分だけ、割合が上がっていることになります。
端数で消える金額(5,000円と1,000円の線)
加算税も延滞税も、条文上は「附帯税」という区分に入ります(60条4項ほか)。附帯税には専用の端数処理が2段階で用意されていて、これを知らないと「本来かからないはずの金額」を計算してしまいます。
| 条文 | 対象 | 処理 |
|---|---|---|
| 118条3項 | 附帯税の額の計算の基礎となる税額 | 1万円未満の端数を切り捨てる。全額が1万円未満ならその全額を切り捨てる |
| 119条4項 | 附帯税の確定金額 | 100円未満の端数を切り捨てる。全額が1,000円未満(加算税は5,000円未満)ならその全額を切り捨てる |
この2条から、次のことが言えます。
- 増差税額が1万円未満なら、加算税も延滞税も計算の基礎がゼロになる(118条3項)。たとえば増差税額が9,000円なら、どちらも課されません
- 計算した加算税が5,000円未満なら、その全額が切り捨てられる(119条4項)。過少申告加算税10%で5,000円に届かないのは増差税額が5万円未満のときなので、増差税額4万円の修正申告なら、調査後であっても過少申告加算税は0円になります
- 計算した延滞税が1,000円未満なら、その全額が切り捨てられる(同項)。増差税額40万円・令和8年の割合2.8%なら、1,000円に達するのは約32.6日目です。32日以内に納付すれば延滞税は0円、33日目で1,000円を超えて確定金額が1,000円(100円未満切捨て後)になります
※ 118条3項の「1万円未満切捨て」は基礎となる税額に対する処理なので、増差税額が15万7,000円なら15万円で計算します。切り捨てた7,000円は加算税・延滞税の計算には乗りません。
実際に計算してみる
令和7年分の所得税を期限内に申告して60万円を納付していた個人事業主が、令和8年9月1日に売上の計上もれ(増差税額40万円)に気づいた場合を、3つの出し方で比べます。令和7年分の確定申告期限は、令和8年3月15日が日曜日にあたるため令和8年3月16日(月)です。
| A:調査の事前通知より前に自主的に修正申告 | B:事前通知の後、更正を予知する前に修正申告 | C:調査を受けた後(更正を予知した後)に修正申告 | |
|---|---|---|---|
| 根拠 | 65条6項(適用しない) | 65条1項かっこ書き(5%) | 65条1項本文(10%) |
| 過少申告加算税の率 | — | 5% | 10% |
| 閾値の判定 | — | 増差40万円 ≦ 閾値60万円(期限内申告税額と50万円の多い方)なので加算なし | |
| 過少申告加算税 | 0円 | 20,000円 | 40,000円 |
| 延滞税(169日・2.8%) | 400,000円 × 2.8% × 169/365 = 5,185円 → 100円未満切捨てで 5,100円(A・B・Cとも同じ) | ||
| 追加負担の合計 | 5,100円 | 25,100円 | 45,100円 |
3つの違いは提出のタイミングだけで、間違いの内容も金額もまったく同じです。それでも追加負担は5,100円から45,100円まで開きます。
延滞税の169日は、法定納期限の翌日である令和8年3月17日から完納日の令和8年9月1日までの日数です。修正申告の納期限は提出日(9月1日)なので、この169日はすべて「納期限までの期間」にあたり、低い方の割合2.8%で計算されます。もし提出だけして納付を2か月超放置すると、令和8年11月2日以後の期間には年9.1%が適用されます。
更正の請求が認められて還付を受けるときは、還付加算金が付きます。その割合は延滞税とは別の特例基準割合で決まり、令和8年は年1.3%(令和4年から令和7年までは年0.9%)です。納める側の2.8%と受け取る側の1.3%は、そもそも別の計算式(前者は平均貸付割合+2%、後者は平均貸付割合+0.5%)から出ています。
よくある質問
Q. 修正申告に期限はありますか?
A. 国税通則法19条1項には期間の定めが置かれていません。条文は「その申告について第二十四条(更正)の規定による更正があるまでは」修正申告書を提出することができるとしており、税務署から更正を受けるまでは提出できる形になっています。19条2項は、すでに更正または決定を受けた者についても、その更正または決定について26条の再更正があるまでは修正申告書を提出できると定めています。これに対して更正の請求は23条1項が「法定申告期限から五年以内に限り」と明示しているため、期限の扱いは方向によって非対称です。なお税務署の側が更正・決定をできる期間には70条1項が5年、同条5項が偽りその他不正の行為の場合に7年という制限を設けています。
Q. 更正の請求は5年を過ぎたらもうできませんか?
A. 原則としてできませんが、通則法23条2項が後発的な事由について別の期間を定めています。判決により計算の基礎となった事実が違っていたことが確定した場合、所得が他の者に帰属するとする更正・決定があった場合、および施行令6条1項が列挙するやむを得ない理由が生じた場合には、その日の翌日から2か月以内に請求することができます。施行令6条1項が挙げているのは、官公署の許可その他の処分が取り消されたこと、契約が解除権の行使や成立後のやむを得ない事情によって解除または取り消されたこと、帳簿書類の押収等で計算できなかった事情が消滅したこと、租税条約に基づく当局間の協議で異なる合意が行われたこと、国税庁長官の法令解釈が裁決・判決に伴って変更され公表されたことを知ったこと、の5つです。ただし23条2項は、この期間の満了日が1項の5年の満了日より後に到来する場合に限ると限定しているため、5年以内であれば1項によって請求することになります。
Q. 自分で間違いに気づいて修正申告すれば、加算税はかかりませんか?
A. 調査の事前通知より前であれば、過少申告加算税は課されません。通則法65条6項が、更正があるべきことを予知してされたものでない修正申告のうち、調査通知がある前に行われたものについては1項を適用しないと定めているためです。事前通知の後で、まだ更正を予知していない段階の修正申告であれば5%(閾値を超える部分は10%)、調査を受けて更正を予知した後であれば10%(閾値を超える部分は15%)になります。ただしこれは過少申告加算税の話であり、延滞税は法定納期限の翌日から自動的に発生するため、タイミングによって消えることはありません。期限内申告書を出していなかった場合は無申告加算税の側の規定(66条)が適用されます。
Q. 「50万円を超える部分は15%」と聞きましたが、正しいですか?
A. 条文の閾値は50万円ではなく、期限内申告税額と50万円のいずれか多い金額です。通則法65条2項は、修正申告等により納付すべき税額が「その国税に係る期限内申告税額に相当する金額と五十万円とのいずれか多い金額」を超えるときに、その超える部分について5%を加算すると定めています。期限内申告税額が50万円以下であれば結果的に50万円が閾値になりますが、たとえば期限内申告税額が300万円あった場合、増差税額が200万円でも閾値の300万円を超えないため、5%の加算は発生しません。50万円を閾値として計算すると27万5,000円になるところ、正しくは20万円です。もともとの申告税額が大きいほど重い段に入りにくい構造になっています。
Q. 無申告加算税の30%は、税額の全体にかかりますか?
A. かかりません。通則法66条3項は「加算後累積納付税額を次の各号に掲げる税額に区分してそれぞれの税額に当該各号に定める割合を乗じて計算した金額の合計額」と定めており、所得税の税率と同じように区分ごとに率を掛けるブラケット方式です。調査後の期限後申告で納付すべき税額が500万円の場合、50万円以下の部分に15%、50万円超300万円以下の部分に20%、300万円を超える部分に30%を掛けて合計117万5,000円となります。全体に30%を掛けた150万円とは32万5,000円の差が出ます。なお300万円超の30%という区分は令和5年度改正で設けられたもので、国税庁の説明では令和6年1月1日以後に法定申告期限が到来する国税から適用されるとされています。
Q. 重加算税は、過少申告加算税に上乗せされるのですか?
A. 上乗せではなく置き換えです。通則法68条1項は、隠蔽または仮装があった場合に「過少申告加算税に代え」て35%の重加算税を課すと定めており、2項は無申告加算税に代えて40%、3項は不納付加算税に代えて35%としています。したがって過少申告加算税10%と重加算税35%が合計45%になるわけではありません。ただし68条4項は、過去5年以内に同じ税目について無申告加算税等を課されたことがある場合などに、基礎となるべき税額の10%を加算すると定めているため、繰り返しの場合は45%または50%になります。また隠蔽・仮装があった場面では61条1項の延滞税の期間控除が使えず、70条5項により税務署が更正できる期間も7年に延びます。
Q. 令和8年の延滞税は何パーセントですか?
A. 国税庁が公表している令和8年1月1日から令和8年12月31日までの割合は、納期限までの期間および納期限の翌日から2か月を経過する日までの期間が年2.8%、それ以後が年9.1%です。令和4年から令和7年までは4年続けて年2.4%・年8.7%だったので、令和8年に上がったことになります。この割合は租税特別措置法94条1項により、延滞税特例基準割合(平均貸付割合に年1%を加えた割合)に、それぞれ年1%または年7.3%を加えて求めます。令和8年の割合から逆算すると平均貸付割合は0.8%で、還付加算金・利子税の特例基準割合1.3%(平均貸付割合+0.5%)とも整合します。延滞税は年ごとの割合で計算するため、年をまたぐ場合は期間を区切って計算することになります。
Q. 5年前の申告を修正すると、延滞税も5年分かかりますか?
A. 期限内申告書を提出していた場合はかかりません。通則法61条1項1号が、法定申告期限から1年を経過する日後に修正申告書が提出されたときは、1年を経過する日の翌日から修正申告書を提出した日までの期間を計算期間から控除すると定めているためです。この結果、延滞税がかかるのは法定納期限の翌日から1年間と、修正申告書を提出した日の翌日から完納日までだけになります。増差税額100万円で令和3年分を令和8年2月に修正申告した場合、控除が働けば約2万4,000円、働かなければ約9万4,300円という差になります。ただし61条1項は、偽りその他不正の行為により国税を免れた納税者が更正を予知して提出した修正申告書を除くとしているため、隠蔽・仮装があった場面ではこの控除は使えません。
Q. 増差税額が小さければ、加算税や延滞税はかからないことがありますか?
A. あります。通則法118条3項は、附帯税の額の計算の基礎となる税額に1万円未満の端数があるとき、またはその全額が1万円未満であるときは切り捨てると定めています。したがって増差税額が9,000円であれば計算の基礎がゼロになり、加算税も延滞税も生じません。さらに119条4項は、附帯税の確定金額に100円未満の端数があるとき、または全額が1,000円未満(加算税は5,000円未満)であるときは切り捨てるとしています。過少申告加算税10%で5,000円に達しないのは増差税額が5万円未満のときなので、その範囲であれば調査後であっても加算税は0円です。延滞税についても、増差税額40万円・年2.8%であれば約32.6日目に1,000円へ達するため、32日以内に納付すれば0円になります。
Q. 修正申告した税金は、いつまでに納めればよいですか?
A. 通則法35条2項1号は、修正申告書の提出により納付すべき税額の納期限を「その期限後申告書又は修正申告書を提出した日」と定めています。つまり提出したその日が納期限です。延滞税の観点でもここは重要で、60条2項ただし書の低い方の割合(令和8年なら年2.8%)が適用されるのは納期限までの期間と納期限の翌日から2か月を経過する日までの期間なので、提出日に納付すれば法定納期限の翌日から提出日までの全期間が低い割合で計算されます。高い方の割合(年9.1%)が適用されるのは、提出後2か月を超えて納付しなかった場合です。なお税務署から更正を受けた場合の納期限は、35条2項2号により更正通知書が発せられた日の翌日から起算して1か月を経過する日となります。
出典
- e-Gov法令検索「国税通則法」(昭和三十七年法律第六十六号・
337AC0000000066)。API v2 のlaw_data/{law_id}?elm=Article_Nで条単位に取得し、第19条(修正申告。第1項の「更正があるまでは」および各号、第3項の「修正申告書という」、第4項の記載事項)、第23条(更正の請求。第1項の「法定申告期限から五年(……法人税に係る場合については、十年)以内に限り」および各号、第2項各号の後発的事由と「その確定した日の翌日から起算して二月以内」および「前項に規定する期間の満了する日後に到来する場合に限る」、第3項の更正請求書、第4項の「更正をすべき理由がない旨」の通知、第5項の徴収を猶予しない旨)、第35条(申告納税方式による国税等の納付。第2項第1号の「その期限後申告書又は修正申告書を提出した日」、第2号の「更正通知書……が発せられた日の翌日から起算して一月を経過する日」、第3項の加算税の納付期限)、第60条(延滞税。第1項各号、第2項の年14.6%とただし書の年7.3%、第4項の「延滞税は……国税とする」)、第61条(延滞税の額の計算の基礎となる期間の特例。第1項第1号の1年ルールと、かっこ書きの「偽りその他不正の行為により国税を免れ……予知して提出した当該申告書……を除く」、第2号の期限後申告の場合)、第65条(過少申告加算税。第1項本文の百分の十とかっこ書きの百分の五、第2項の「期限内申告税額に相当する金額と五十万円とのいずれか多い金額」、第3項第2号の期限内申告税額の定義、第4項の帳簿不備による加重、第6項の「調査通知がある前」の不適用)、第66条(無申告加算税。第1項本文の百分の十五とかっこ書きの百分の十、第2項の五十万円超の加算、第3項の「区分して」による15/20/30%とかっこ書きの5%減、第6項の繰り返しによる加重、第8項の調査通知前の百分の五、第9項の法定申告期限から一月以内の不適用)、第68条(重加算税。第1項の「過少申告加算税に代え」百分の三十五、第2項の「無申告加算税に代え」百分の四十、第3項の不納付加算税に代えて百分の三十五、第4項の百分の十の加算)、第70条(更正、決定等の期間制限。第1項の五年、第2項の法人税の純損失等に係る十年、第5項の偽りその他不正の行為に係る七年)、第118条(第3項の附帯税の計算の基礎となる税額の一万円未満切捨て)、第119条(第4項の附帯税の確定金額の百円未満切捨てと、全額が千円未満〈加算税は五千円未満〉の場合の切捨て)を確認した - e-Gov法令検索「国税通則法施行令」(昭和三十七年政令第百三十五号・
337CO0000000135)。第6条第1項(法23条2項3号の「政令で定めるやむを得ない理由」の5号列挙。処分の取消し、契約の解除・取消し、帳簿書類の押収等の事情の消滅、租税条約に基づく当局間の合意、国税庁長官の法令解釈の変更と公表)および第2項(更正請求書への証明書類の添付)を確認した - e-Gov法令検索「租税特別措置法」(昭和三十二年法律第二十六号・
332AC0000000026)。第94条第1項(延滞税の割合の特例。「延滞税特例基準割合(平均貸付割合に年一パーセントの割合を加算した割合……)」、年14.6%は延滞税特例基準割合+年7.3%、年7.3%は延滞税特例基準割合+年1%〈年7.3%を上限〉、および「その年中においては」)を確認した - 国税庁「延滞税の割合」(納税・納税証明書手続>延滞税)。令和3年1月1日以後の各年の割合の表から、令和8年1月1日〜令和8年12月31日が年2.8%/年9.1%、令和4年〜令和7年が年2.4%/年8.7%、令和3年が年2.5%/年8.8%であることを確認した。あわせて参考表から令和8年の利子税特例基準割合および還付加算金特例基準割合が年1.3%(令和4年〜令和7年は年0.9%)であること、および延滞税特例基準割合の定義(前々年9月から前年8月までの銀行の新規の短期貸出約定平均金利をもとに前年11月30日までに財務大臣が告示する割合に年1%を加算)を確認した
- 国税庁 タックスアンサー No.2026「確定申告を間違えたとき」(令和7年4月1日現在法令等)。更正の請求ができる期間が原則5年であること、税額または純損失の金額に異動がない場合は更正の請求ができないこと、事前通知前の自主的な修正申告では過少申告加算税がかからないこと、事前通知後・予知前は5%(閾値超は10%)、調査後は10%(閾値超は15%)であること、および帳簿不備による加重の基準(本来記載すべき金額の2分の1未満で10%、3分の2未満で5%)が令和6年1月1日以後に法定申告期限が到来するものに適用されることを確認した
- 国税庁 タックスアンサー No.2024「確定申告を忘れたとき」(令和7年4月1日現在法令等)。無申告加算税の率が事前通知前5%、事前通知後・予知前は50万円まで10%・50万円超300万円まで15%・300万円超25%、調査後は15%・20%・30%であること(いずれも令和6年1月1日以後に法定申告期限が到来するもの)、繰り返しによる10%加重の要件、および法定申告期限から1か月以内の自主的な期限後申告で無申告加算税が不適用となる場合の要件(納付すべき税金の全額を法定納期限までに納付していること、過去5年間に無申告加算税・重加算税を課されておらず本不適用も受けていないこと)を確認した
- 本記事の計算例について。令和7年分の所得税の確定申告期限が令和8年3月16日である点は、令和8年3月15日が日曜日であることを日付計算により確認したうえで記載した。延滞税の日数(169日・365日・1,428日)および金額(5,100円・24,000円・94,300円)は、上記の割合と118条3項・119条4項の端数処理を機械的に適用して算出したものである
- 本記事で扱っていない事項について。地方税(住民税・事業税・地方消費税など)の修正申告・更正の請求の期限および加算金・延滞金、「隠蔽し、又は仮装した」に該当するかどうかの判断基準および裁判例、65条4項・66条5項の帳簿不備加重に係る財務省令の具体的な定め、66条9項の「期限内申告書を提出する意思があつたと認められる場合として政令で定める場合」の政令の条番号、不納付加算税(67条)の詳細、納税の猶予や延滞税の免除(63条)、更正の請求が認められなかった場合の不服申立ての手続、脱税に係る罰則は、いずれも条文の外にあるか本記事の確認範囲を超えるため、断定していない。また修正申告書・更正請求書の具体的な様式および記載方法についても扱っていない
この記事は一般的な情報提供であり、個別の事案に対する助言ではありません。どの手続を使うべきか、加算税や延滞税が実際にいくらになるか、更正の請求が認められるかは、申告の内容・提出のタイミング・調査の経緯といった個別の事情によって結論が変わります。個別の申告や調査対応については税理士へ、地方税の取り扱いについては都道府県・市区町村の課税担当課へご確認ください。