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源泉所得税の納期の特例|年2回の期限・10人未満の判定

結論から言うと、給与の支給人員が常時10人未満の源泉徴収義務者は、承認申請により毎月の納付を年2回にまとめられます。令和8年中に源泉徴収した分のうち、1〜6月分は2026年7月10日、7〜12月分は2027年1月20日が納期限です。

ただし、特例は自動適用ではなく、対象もすべての源泉所得税ではありません。給与・退職手当と、税理士や弁護士等の一定の報酬が中心です。原稿料や外注費を一律に半年分へ混ぜると誤納付につながります。

源泉徴収税額を確認する 給与・賞与の源泉所得税を計算し、納付対象額の確認に使えます。

年2回の納期限:7月10日と翌年1月20日

所得税法216条は、原則の「支払月の翌月10日」を、承認を受けた場合に半年ごとの期限へ置き換えます。基準は給与の支給月です。12月勤務分を翌年1月に支給する会社なら、その給与の源泉税は翌年1〜6月分のグループに入ります。

実際に源泉徴収した期間 納期限 令和8年の例
1月1日〜6月30日 同年7月10日 2026年7月10日
7月1日〜12月31日 翌年1月20日 2027年1月20日

納期限が土曜日・日曜日・祝日等に当たるときは、国税通則法の期限規定により休日明けになります。営業日・期限計算で暦を確認できます。

1〜6月に源泉徴収 7〜12月に源泉徴収 7月10日まで 翌年1月20日まで
「勤務月」ではなく、給与等を支払い源泉徴収した月で半年を区切る

「常時10人未満」は延べ人数ではない

判定対象は給与の支給人員です。「常時」は通常の状態を指すため、繁忙期に臨時雇いが加わって一時的に10人以上になっただけで直ちに外れるものではなく、反対に普段10人以上なのに一時的な退職で9人になっただけでも通常は該当しません。毎月の給与台帳と雇用状況から、平常時の支給人員を記録して判定します。

状況 考え方
通常8人、繁忙期だけ短期3人を雇用 一時的な増加か、雇用の継続性を含めて「常時」を判定
通常12人、退職直後だけ9人 一時的減少だけで要件を満たしたとは扱わない
給与支給者が恒常的に9人 人数要件を満たし得る。申請と承認が別途必要

「従業員数10人以下」ではありません。条文は「給与の支給人員が常時10人未満」なので、境界は9人までです。

対象になる税・ならない税

国税庁 No.2505 が示す対象は、給与・退職手当から源泉徴収した税と、所得税法204条1項2号に掲げる税理士、弁護士、司法書士等の一定の報酬から源泉徴収した税です。それ以外を「源泉税だから」と同じ納付書へまとめないことが重要です。

支払の例 納期の特例
従業員の給与・賞与 対象
退職手当 対象
税理士・弁護士・司法書士等の一定の報酬 対象
原稿料、講演料、デザイン料など 上記の限定対象に該当しなければ対象外

源泉徴収税額表の見方と納付時期は別論点です。税額を正しく計算しても、対象外の報酬を半年後まで保留すれば期限後納付になります。

申請月の分から始まるわけではない

「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書」を、給与支払事務所等の所在地を所轄する税務署長へ提出します。却下通知がなければ、提出月の翌月末日に承認されたものとみなされ、提出月の翌月に源泉徴収する分から対象になります。

2月中に申請した例2月支給分は原則どおり3月10日まで。3〜6月支給分は7月10日までにまとめます。申請した2月分まで遡って特例に入れる扱いではありません。

所得税法217条は申請、218条は却下、219条は承認の取消しを定めます。提出した事実だけで即日承認と考えず、適用開始月を給与台帳や納付管理表に明記すると、二重納付・納付漏れを防げます。

10人以上になったとき・資金管理の注意

常時10人以上になり要件を外れた場合は、「納期の特例の要件に該当しなくなったことの届出書」を提出します。国税庁の例では3月中に提出すると、1〜2月分と3月分はいずれも4月10日が期限ですが、1〜2月分は納期特例分、3月分以後は一般分の徴収高計算書を使います。

納付回数が減っても税額は減りません。毎月預かった源泉税を別管理し、半年分の資金を残す必要があります。給与計算の締め後に「預り金」残高と源泉徴収簿の累計を照合し、納付直前に差額が見つからない運用が実務的です。

要点
  • 人数要件は給与の支給人員が常時10人未満
  • 期限は1〜6月分が7月10日、7〜12月分が翌年1月20日
  • 申請月の翌月に源泉徴収する分から適用
  • 対象は給与・退職手当・一定の士業報酬に限定

納付書の人数と「常時10人未満」は同じ数字とは限らない

納期特例分の所得税徴収高計算書では、俸給・給料等、賞与、退職手当等、税理士等の報酬という区分ごとに、支払年月日、人員、支給額、税額を記載します。給与欄の人員は支払ごとの延べ人員で集計するため、同じ5人へ6か月毎月給与を払えば原則30人です。制度の入口である「給与の支給人員が常時10人未満」という在籍状態の判定と、納付書の人員欄を混同しないようにします。承認を受けると用紙そのものが一般用から納期特例分に変わり、欄ごとの書き方も変わります。用紙の種類と各欄の記載方法は所得税徴収高計算書(源泉所得税の納付書)で扱っています。

年末調整で不足税額を12月給与から徴収した場合、その税額は7〜12月分として翌年1月20日までに納付します。納期の特例は年税額の計算を変えたり税負担を軽くしたりする制度ではなく、納付期限だけをまとめる制度です。給与・賞与の源泉徴収簿、報酬の支払データ、預り金元帳を半年の途中でも毎月照合すると、納付時の集計漏れを発見しやすくなります。

なお、納期限までの期間が長くても、従業員や報酬受取人から預かった税であることは変わりません。運転資金と区分し、毎月末に納付予定額を確定しておくと、7月・1月の資金不足を防げます。

半年に1度しか納付機会がないぶん、うっかり期限を越えたときの影響も大きくなります。ここで注意したいのが、源泉所得税は口座振替(振替納税)の対象外だという点です。国税庁が振替納税の利用可能税目として挙げているのは申告所得税及び復興特別所得税と、個人事業者の消費税及び地方消費税だけで、源泉所得税は含まれていません。所得税の確定申告のように「依頼書を1枚出しておけば毎年自動で引き落とされる」状態にはできないので、7月10日と翌年1月20日は自分でカレンダーに置く必要があります。振替納税の対象範囲と、依頼書を出す期限については口座振替依頼書の書き方で扱っています。

よくある質問

Q. 申請書を出せば、その月の給与分からまとめられますか?

A. 原則としてできません。却下通知がなければ提出月の翌月末日に承認があったものとみなされ、提出月の翌月に源泉徴収する分から適用されます。

Q. 賞与の源泉所得税も対象ですか?

A. 対象です。賞与は給与等に含まれます。適用開始後に支給して源泉徴収した賞与税額は、その支給月を含む半年分にまとめます。

Q. 納付額が0円でも手続は必要ですか?

A. 納付すべき税額がない場合でも、給与等の支払と税額の事実を税務署へ知らせるため、一般に所得税徴収高計算書を提出します。e-Taxでも送信できます。

出典

本記事は一般的な情報提供を目的としたものです。個別の判断は税務署・税理士にご確認ください。

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